中国市場での代表的な調査手法、調査で押さえるべきポイントと注意点を解説
市場調査とは、ビジネスやマーケティングの意思決定に役立つ市場の情報を集め、分析する調査方法です。企業が市場のニーズ、トレンド、競合状況などを深く理解するのに重要な役割を果たします。市場調査は、新製品の開発、市場進出戦略の策定、既存製品の改善、顧客満足度の向上など、事業を成功させるにあたって必要不可欠なアプローチです。
この記事では、中国市場における主要な調査手法、中国での調査だからこそ押さえるべきポイントや注意点を分かりやすく解説します。 記事を読まれる方には、中国への新規参入にあたって市場を把握されたい方や中国で既にビジネスを行われており、改めてマーケットを把握されたいといった方が多いかと思います。そういった方々のお役に立てるよう、市場調査の進め方と適切な調査方法をご説明いたします。
本記事を通じて、中国市場への参入、中国市場における事業拡大の一助となれば幸いです。
また、中国市場に限らず、市場調査全般について興味のある方は下記のコラムを参考ください。
市場調査とは?調査手法や活用事例などを徹底解説
中国市場の特徴とは?
調査を行う前段階として、中国マーケットの基礎情報を把握しておく必要があります。
下記は基礎情報として常にアップデートしておくべき内容です。
人口動態
中国の人口は約14億2520万人で、世界で最も人口が多い国としての地位を長年保持してきました。しかし、2023年の時点でインドにその地位を譲り、人口増加率は減少傾向にあります。2024年の人口は約14億2510万人と予測されており、その後も人口は減少し続けると見られています。この減少は、今後数十年にわたって加速する可能性が高いです。
歴史と文化
中国の文明は一貫性、独創性、統一性、包摂性、平和な性質といった特徴を持ちます。古代からの継続した歴史を重視し、その理解を深めることが現代中国文明の発展に不可欠とされています。
政治体制
習近平の権力の集中が進み、中国共産党中央政治局常務委員会や国務院の指導部において、習近平支持派が重要な役割を果たしています。この「最大習近平」状態は、意思決定の個人主義化を進めており、大きな方針転換の可能性もあり得ます。また、中国の政治システムは、全国人民代表大会を中心とし、最初の層が直接選挙され、その後の各層が下位の層によって選出されます。
経済
COVID-19パンデミック後、中国経済は一時的な回復を見せましたが、国内需要の低迷、不動産セクターの崩壊、外国直接投資の減少、国際貿易の衰退、高い若者失業率などの問題に直面しています。中国政府は経済刺激のために主権債を発行し、地方政府に2024年の債券クオータの一部を前倒しで使用することを許可しています。
社会問題
COVID-19対策の放棄後、オミクロン変異株による感染が急増し、インフルエンザ、RSV、マイコプラズマ肺炎などの呼吸器疾患が増加しました。中国は健康コードの再導入や病院でのPCRテストの義務化を行い、再び厳格なCOVID-19対策への回帰への懸念を引き起こしています。
技術とイノベーション
中国政府は、2022年にプラットフォーム経済の標準化、健全で持続可能な発展に関する意見を発表し、技術業界への支援を強化しました。また、政府は、テクノロジー企業が国内外の株式市場に上場することを支援しています。
国際関係
中国は対外政策において、米中関係のわずかな緩和にもかかわらず、習近平時代を特徴づける敵対的な関係を継続しています。また、中国はイランとサウジアラビア間の外交関係の復元を仲介するなど、国際紛争の調停に新たな役割を果たしています。
代表的な調査手法とポイント
基礎情報を把握した後に、目的や課題に沿った調査手法を選択し、中国市場を明らかにします。
下記は中国の市場調査で用いられる代表的な調査手法とポイントです。
①公開情報調査(デスクトップリサーチ)
インターネット上で公開されている情報を収集することを意味します。日本ではGoogleやヤフーといった検索エンジンが一般的ですが、中国でのデスクリサーチは「Baidu百度」、「360捜索」、「bing」を用います。
中国語や英語でのリサーチが慣れていない方は、DeepL(翻訳ツール)やchatGTP(AIツール)を用いることで、スムーズにリサーチを行うことができます。
②有識者インタビュー
有識者へのインタビューは、デスクリサーチで収集した情報の検証や専門家の知見をヒアリングする目的で実施されます。なお、中国での競合調査を目的としたインタビューは、非常に注意しなければなりません。その理由は2023年7月1日より改正・施行された「中華人民共和国反間諜法」(以下「反スパイ法」または「新法」)です。旧反スパイ法(以下「旧法」)と比べて、スパイ行為の定義が拡大され、当局の偵察手段も強化されているため、競合調査が犯罪行為として当たる可能性があります。そのため、反スパイ法違反の嫌疑をかけられる等のトラブルに巻き込まれないように注意する必要があり、自社で行わず中国でのコネクションを有している調査会社を活用することをお勧めします。
③店頭調査
EC市場が伸びている中国ですが、実際に足を運び店頭で販売されている製品やラインナップを確認することは重要です。店頭で見るべきポイントは棚割りです。各製品がどれくらいの棚面積を占めているかを見ることで、売れ筋製品や流行を把握することができます。
④消費者調査
一般消費者への調査は主にweb定量アンケート調査とインタビュー調査の2種類があります。アンケート調査ではオンライン上でアンケートを配信することで、多くのサンプルを回収することができ、定量的な分析を行うことが可能です。一方でインタビュー調査では、複数人で行うグループインタビューと対象者一人で行うデプスインタビューがあります。アンケートでは収集できない一人一人の深ぼった生の声をヒアリングすることができます。
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中国市場の参入において調査で明らかにするべきこととは?
中国市場の基礎情報を押さえるだけでは、市場参入の意思決定は困難です。
特に自社の事業と中国市場において、どれくらいの収益を獲得できそうかという数字面をクリアにすることが非常に重要となります。その点を解決する際のフレームワークとして、TAM/SAM/SOMというものがあり、この手法を用いて自社が現地マーケットにおいて何%のシェアを獲得し、売り上げを作り出せるか推計します。まず、このフレームワークに下記で簡単に解説いたします。
TAM、SAM、SOMとは、ビジネスやマーケティングで使用される略語で、異なるレベルでの市場規模を表すものです。
TAM:Total Addressable Market
製品やサービスに対する市場全体の需要を指します。これは特定の市場において、企業が販売する製品やサービスから生み出せる最大の収益を示します。TAMは市場の潜在的な可能性を広範に理解するのに役立ちます。
SAM:Serviceable Available Market
これはTAMの中で、地理的な範囲内にあり、実際に製品やサービスを提供できる市場セグメントを意味します。自社のビジネスモデル、流通チャネル、地理的エリアを踏まえて、TAMのどの部分を獲得できる可能性があるかを把握するのに役立ちます。
SOM:Serviceable Obtainable Market
市場のシェアとも呼ばれ、SAMの中で実際に獲得できる、または到達が見込まれる部分を指します。これは短期から中期に実現可能な現実的な目標を表します。自社が製品・サービスを提供できる市場の中で、競争状況や自社の能力を考慮した上で、どの程度の市場シェアを見込めるかを考え、実現可能な販売目標を設定し、ビジネス戦略を立てる上で重要です。
これら3つの要素を理解することは、市場参入(戦略的計画、財務予測、投資決定)において企業にとって必ず必要となるものです。さらにTAM/SAM/SOMを検討する上で重要な要素となるので、現地の業界構造・流通構造です。日本とは異なる構造を形成している中国市場では、市場参入において階層を把握したうえで、どのレイヤーでのビジネスを行うかの選定が必要になります。その選定がSAMやSOMを特定するための大きな変動要素となるため、非常に重要な検討事項となります。
ここでは、中国における第三次産業について軽く触れさせていただきます。
中国経済において第三次産業は、製造業に次いで重要な役割を果たしています。特に、都市化の進展に伴い、サービス業の成長は加速しています。主な要因としては、電子商取引、デジタル決済、オンラインサービスなど、デジタル化と技術革新がサービス業の成長を促進しています。
なお、2024年の中国経済に関する最新情報によると、中国経済は一部の問題に直面しており、特に、「ゼロ・コロナ」政策の終了後も消費者の貯蓄志向が強まり、外国企業の資金撤退、製造業の需要減少、地方政府の財政不安定化、不動産業界の債務不履行が増加しています。これらの要因により、特に消費関連の業界や製造業界は減速している可能性があります。
まとめ
中国市場に参入するにあたって重要な点を網羅的に解説させていただきました。まず、中国ならではの慣習や文化について把握することが大事で、その次に自社事業の領域について深く調査・分析することが大切となってきます。
特に中国市場のリサーチは、厳しい法律が定められているため、慎重に行う必要があります。
アクシアの中国市場リサーチは、専任のプロが実施するため、適切に正確に調査・分析することができます。無料でのお問い合わせも受け付けております。お気軽にご相談ください。
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