ベトナムの市場調査の調査方法や押さえるべきポイントを徹底解説
現在、ベトナムはアジア地域でも特に成長が著しい国として注目を集めております。
そのため、多くの日系企業が進出や事業展開を検討しており、市場調査を行うことが増えています。
ベトナムの市場調査を行う理由としては、
「自社事業がベトナム市場に適しているか判断したい」
「収益が見込まれる市場なのかを調べたい」
などが多く挙げられます。
この記事では、ベトナム市場への新規参入やベトナムでの調査を検討されている方に最初に読んでいただくような入門編となる位置づけのものです。本記事を通じて、ベトナム市場の基礎情報の理解、東南アジア市場における事業拡大の一助となれば幸いです。
なぜベトナムが注目されているのか
市場調査の必要性のご説明の前に、東南アジアにおいてベトナムという国がなぜ熱視線を集めているのか、多くの日系企業が参入をしている背景やその理由をご紹介いたします。
労働力の豊富さと低コスト
ベトナムは若い人口が多く、労働年齢層(15歳から64歳)が全人口の約70%を占めています。さらに低い労働コストが魅力的です。これにより製造業を中心に多くの企業が進出しています。
経済成長と市場のポテンシャル
ベトナムは近年、高い経済成長を遂げており、市場のポテンシャルが大きいです。特に、中間層の増加により消費市場が拡大しています。
経済指標に関しては、ベトナム統計総局は2023年9月、2023年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率(推計値)を前年同期比5.33%と発表しており、2期連続で前期の伸びを上回る成長率となっています。特に、GDPの24%を占める製造業の成長率は5.61%(前期比5.01ポイント増)と、著しく伸びていることがわかります。
地政学的な位置
ベトナムはアジアの中心に位置し、東南アジア諸国連合(ASEAN)市場へのアクセスが良いため、地域的な物流ハブとしての役割を果たしています。
ベトナムから周辺国へのフライト時間は下記になります。アクセス性が優れていることが一目でわかります。
- カンボジア(プノンペン): 約1時間
- ラオス(ビエンチャン): 約1時間20分
- タイ(バンコク): 約1時間30分~2時間
- マレーシア(クアラルンプール): 約3時間
- シンガポール: 約2時間
- インドネシア(ジャカルタ): 約3時間30分
- フィリピン(マニラ): 約3時間
- ミャンマー(ヤンゴン): 約2時間
- 中国(北京): 約4時間30分~5時間
安定した政治環境
ベトナムは比較的安定した政治環境を維持しており、外国企業にとって投資しやすい環境を提供しています。
政府の積極的な外資誘致策
ベトナム政府は外国直接投資(FDI)を積極的に誘致しており、税制優遇措置などのインセンティブを提供しています。
これらの要因からわかるように、ベトナムは日系企業にとって魅力的な国であり、特に製造業やインフラ、サービス業など多岐にわたる分野で日系企業の進出が進んでいます。
ベトナムの産業構造
産業別実質GDP
実質GDP で見たベトナムの産業構成比(2020年)は、第 1 次産業が 11.3%、第 2 次産業が36.4%、第 3 次産業が 42.9%、生産上の課税補助金(Products taxes subsidies on production)が 9.4%となっています。2010 年との比較で見ると、「製造業」(17.1%→22.7%)の構成比が相対的に上昇し、「第 1 次産業」(15.4%→11.3%)が低下しています。
ベトナムの輸出入
2020年時点での輸出額は2740億ドル(対前年比3.7%増)、輸入額は2570億ドル(同1.6%増)となり、輸出入額は5310億ドル(同1.7%増)となっています。また、貿易収支は+169億ドルの黒字(対前年比138億ドル増)でした。ベトナムは中国・韓国から素材・部品を輸入し、国内で組み立て、米国、EUに完成品(縫製品、履物、PC、携帯電話)を輸出する構造が主となっているようです。
輸出品目別では、第一位が携帯電話・部品、第二位がコンピューター・部品、第三位が縫製品となっています。
日系企業のベトナム進出動向
ベトナムに進出している日系企業の業種は多くがメーカーや小売・卸です。
トヨタやホンダなどの自動車メーカーなどはもちろんのこと、イオンなどの小売業態の出店も相次いでいます。近年では、2023年11月にニトリホールディングスがベトナムに進出すると発表をしており、同社は今後10年間でベトナムに70店を展開する計画を掲げています。
日系企業の進出数でみると右肩上がりで増加しています。具体的には、外務省の国別日系企業数によると、2012年では1,081拠点だったのが、2022年では2,373拠点となっています。この約10年で日系企業の進出数は2倍強となっており、多くの日系企業がベトナム市場に注目していることが見て取れます。
ベトナムの市場調査が必要不可欠な理由
市場の多様性
注目されている理由の項目でも触れましたが、ベトナムは近年、急速な経済成長を遂げており、これに伴い消費者の嗜好や購買力が変化しています。
世代、都市部と農村部、北部と南部では消費者の行動や嗜好が異なるため、これらの特性を理解するために市場調査が必要となってきます。例えばですが、アンケート調査を行う場合はエリアごとに回収数を設定し、地域軸で結果を分析しなければなりません。
文化的背景の理解
特に、ベトナムの市場は地域によって大きく異なる特性を持っています。また、歴史に対する理解も必要不可欠です。ここではベトナムの近現代について、簡単にご説明いたします。
ベトナム戦争(アメリカ戦争)
1955年から1975年にかけてのベトナム戦争は、国の分断と深刻な社会経済的な影響をもたらしました。また戦争により南北で異なる経済システムが確立されました。戦後、南部(特にホーチミン市周辺)は急速に市場経済に適応し、国際貿易や外国投資が集中しました。一方、北部(特にハノイ周辺)はより計画経済的な体制が長く続き、経済発展において南部に後れを取ることがありました。
統一後の改革(ドイモイ)
1986年に開始されたドイモイ政策は、ベトナムを計画経済から市場経済へと移行させました。この改革はベトナムの経済成長と国際化を促進し、現代の市場環境を形成しています。
ASEAN加盟と国際関係の拡大
ベトナムは1995年にASEANに加盟し、その後も積極的に国際社会に参加しています。これはベトナムの外交政策と経済的な開放を象徴しており、国際ビジネスにおけるベトナムの役割を理解する上で重要です。
競争が激化している市場環境
多くの外国企業がベトナム市場に参入しているため、競争が非常に激しいです。市場の動向、競合他社の動き、トレンドの変化を把握するためには、正確な市場調査が不可欠です。加えて、南北の産業構造の違いも調査を行う上でのポイントになります。北部(特に首都ハノイ周辺)は政治的、文化的な中心地であり、より伝統的な産業が栄えています。一方、南部(特にホーチミン市周辺)は経済的に活発で、国際貿易や近代的な産業が発展しています。自社がどのような事業を行うかによって、調べるべき対象やエリアが変わります。
ベトナムの市場調査で用いる調査手法
公開情報調査(デスクトップリサーチ)
インターネット上で公開されている情報を収集することを意味します。日本ではGoogleやヤフーといった検索エンジンが一般的ですが、ベトナムで利用されている検索エンジンも同様にGoogleです。インターネット利用者の95%がGoogleを使用しています。
アンケート調査
消費者の嗜好、購買習慣、製品フィードバック、人口統計学的情報などのデータ収集に利用することができます。特にベトナムではインターネットの普及率が高いことから、オンラインでのアンケート調査は幅広い層に迅速にリーチできます。
メリットとしては、費用対効果が高く、大量のデータを効率的に収集が可能なことです。
インタビュー調査
消費者の態度、動機、商品やサービスに関する経験について深く洞察を得るために、個人を対象に実施されます。ベトナムでは、異なる地域や様々な民族間の消費者行動のニュアンスを理解するために、インタビュー調査が特に有用です。
メリットとしては、アンケート調査(定量調査)では得られないような、深く質的な洞察を得ることができます。複雑なトピックを深堀し、新たなインサイトを発見することができます。
グループインタビュー調査
消費者の認識や意見に関する詳細な情報を収集するために使用します。ベトナムでは、特定のターゲット・セグメントにおける製品コンセプト、パッケージングなどのテストに役立つと考えています。
豊富な定性データと双方向のフィードバックが得られることが最大のメリットです。1対1のインタビューでは見えてこない消費者のニーズや嗜好を明らかにすることができます。
エスノグラフィー調査(行動観察調査)
消費者の生活環境に身を置き、彼らの日常生活を観察し、交流する調査を指します。農村部や特定の民族など、消費者行動に影響を与える文化的・社会的背景を捉える上で、直接身を持って考察を得られることから貴重な調査となっています。
まとめ
今回はベトナムの市場調査に関して説明をしてまいりました。
ベトナムはその若い労働力、高い経済成長、戦略的地理的位置、政治的安定性、外資誘致政策で注目される市場で、日系企業は製造業を中心に進出を加速しております。
また、ベトナムにおける市場調査は、市場適合性、消費者嗜好や購買力の変化、文化的背景、競争環境といった複合的な要素が多いため、進出前に包括的に市場調査をすることが不可欠といえます。
その調査方法には公開情報収集、アンケート、インタビュー、グループインタビュー、エスノグラフィーリサーチが挙げられます。
アクシアマーケティングの市場調査
アクシアマーケティングでは、多岐にわたる業界での豊富な経験と専門知識を活かした市場調査サービスを提供しています。データ収集から分析、戦略提案に至るまで、貴社のニーズ・状況に寄り添った対応を心がけています。詳しいサービス内容はこちらを参考ください。
1時間の無料オンライン相談も承っております
お見積りなどもお気軽にお問い合わせください
同じカテゴリーの記事
【アジア市場調査の決定版】調査の意義や成功事例など総解説
市場調査
グローバル化の進展に伴い、多くの日本企業が海外に進出してビジネスを展開しています。 この記事では、特にアジア地域に進出する際に必要となる海外市場調査の意義とポイント、進出事例やターゲット諸国などについて詳しく解説します。 […]
韓国進出に欠かせない市場調査とは?成功事例や注意事項も徹底解説
市場調査
現在の日韓関係では、両国の企業が技術協力の関係を深めており、観光業と文化交流も盛んになりつつあります。今も昔も韓国は日本にとって重要なビジネスパートナーであることに変わりはありません。今後も密接な関係が続く韓国での市場調 […]
中国市場調査に強いリサーチ会社7選!!特徴と優位性などを徹底解説
市場調査
グローバル化が進展する一方、日本では少子高齢化による人口減少に伴う市場縮退という深刻な課題を抱えています。 こうした状況下、多くの日本企業にとっては国内市場だけでのビジネス展開には限界があるため、海外諸国に進出し、また今 […]
【アジア市場調査の決定版】調査の意義や成功事例など総解説
市場調査グローバル化の進展に伴い、多くの日本企業が海外に進出してビジネスを展開しています。 この記事では、特にアジア地域に進出する際に必要となる海外市場調査の意義とポイント、進出事例やターゲット諸国などについて詳しく解説します。 […]
韓国進出に欠かせない市場調査とは?成功事例や注意事項も徹底解説
市場調査現在の日韓関係では、両国の企業が技術協力の関係を深めており、観光業と文化交流も盛んになりつつあります。今も昔も韓国は日本にとって重要なビジネスパートナーであることに変わりはありません。今後も密接な関係が続く韓国での市場調 […]
中国市場調査に強いリサーチ会社7選!!特徴と優位性などを徹底解説
市場調査グローバル化が進展する一方、日本では少子高齢化による人口減少に伴う市場縮退という深刻な課題を抱えています。 こうした状況下、多くの日本企業にとっては国内市場だけでのビジネス展開には限界があるため、海外諸国に進出し、また今 […]