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海外調査の事例多数

オランダ進出を成功させる5つのカギ|魅力や進出事例も紹介

オランダ進出

ヨーロッパの中心に位置し、交通の要衝として機能するオランダは、国民の生活水準が高く、日系企業にとって魅力的な進出先の一つです。

現に、2023年時点で約700社の日本企業がオランダに拠点を有しています(外務省「海外進出日系企業拠点数調査」)。

そんな中、「自社でもオランダ進出を検討しているけど具体的な方法がわからない」「オランダ進出のメリットや注意点を押さえておきたい」という方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、オランダ進出を検討している方に向けて、オランダ進出の魅力や成功のポイント、市場調査の方法、日本企業の進出事例などをまとめてご紹介します。

本記事を読めば、オランダ進出を検討している方が押さえるべき情報を網羅的にキャッチアップできますので、ぜひ最後までお読みください。

オランダの基本情報

オランダの基本情報

オランダは、ヨーロッパ北西部にあり、美しい街並みと運河を中心とする整ったインフラ網が魅力的な交通の要衝です。

特に、首都のアムステルダムは都市全体が世界遺産に登録されており、ヨーロッパで最も人気のある観光地の一つとなっています。

また、オランダは農業先進国としての側面も持っており、国連の統計によると、アメリカに次ぐ世界第2位の農産物輸出量を誇っています。そのほか、教育や保健衛生などのサービス業、化学・医薬品などの製造業といった、様々な産業が活発に行われています。

概要

面積41,864平方キロメートル
人口1,776万人(2024年時点)
首都アムステルダム
言語オランダ語
宗教キリスト教(カトリック18%、プロテスタント13%)、イスラム教(6%)、無宗教(57%)、その他(6%)
主要産業サービス業、化学・医薬品・飲食品等の製造業
在留邦人数10,134人(2023年時点)
オランダ王国基礎データ|外務省

日本との関係

日本が鎖国していた時代にも交流があったオランダは、何世紀にもわたって日本と重要な関係にありました。現在でも両国の関係は良好で、日本からオランダへは電気機器や一般機械、オランダから日本へは化学薬品や食料品が輸出されています。

オランダに進出している企業も約700社に上るなど事業展開先としても注目されており、在留邦人数は10,000人に達しています

オランダ進出の5つの魅力

オランダ進出の5つの魅力

オランダ進出には様々な魅力がありますが、特に注目すべきポイントとして、以下の5つが挙げられます。

【オランダ進出の5つの魅力】

  • 地理的な優位性
  • 質の高い人材
  • 魅力的な法人税制
  • 充実したインフラ
  • 政治的安定性

地理的な優位性

オランダはヨーロッパの中心部に位置し、他のEU諸国にもアクセスしやすいため、ヨーロッパでの事業展開を検討している企業が最初に拠点を設ける国として最適です。そのため、多くの企業がオランダに工場などの生産拠点を建設し、そこからヨーロッパ全土へ製品の販売を行っています

例えば、花王はオランダに物流拠点を設置し、ロッテルダム港とスキポール空港を活用して、ヨーロッパ市場への効率的な製品供給を実現しています。地理的に近いドイツ、フランス、イギリスといった大規模市場にも容易にアクセスできる点も大きな魅力です。

質の高い人材

オランダは、世界トップクラスの教育システムを持ち、質の高い人材が集まる場所として有名です。教育機関も発達しており、工学・技術分野で世界トップ20に入るデルフト工科大学のほか、世界の大学ランキングトップ100に入るユトレヒト大学やフローニンゲン大学など名だたる大学が数多く存在します。

公用語はオランダ語ですが、国民の多くが英語を話すことができるため、国際的なビジネスに対応できる労働力も豊富です。特に、IT、物流、金融、ライフサイエンス分野では、高度なスキルを持つ専門家が多く、イノベーションを推進する上で理想的な環境が整っています。

日本企業の中にも、オランダ企業と提携しその技術力を活用した製品製造、オランダの大学や研究機関と連携しながらの研究開発など、オランダの質の高い人材がもたらすノウハウや技術を活用した取り組みを行っている企業が数多く存在します。

魅力的な法人税制

オランダは、外国企業を含む企業にとって有利な税制を定めています。例えば、一定の条件を満たすことによる駐在員等の所得税一部減免や、研究開発への投資に対する優遇措置、配当やキャピタルゲインに対する法人税免除などが挙げられます。

また、オランダの法人税率は最大25.8%とEU平均に比べて低く、特に「特許ボックス制度」を利用することで、知的財産に関連する収益に対して大幅な税率引き下げが可能となっています。

このように、オランダの法人税制や各種税制度は、外資企業にとっても魅力が高く、これらの制度をうまく活用することで、税制面での恩恵を受けながらの事業展開が可能となります。

充実したインフラ

ロッテルダム港
引用:ロッテルダム港公式サイト

オランダは、物流・交通・通信インフラが非常に整備されています。ロッテルダム港はヨーロッパ最大の貿易港であり、貨物取扱量の規模と効率は世界トップクラスです。さらに、アムステルダムのスキポール空港は欧州の主要航空ハブであり、航空貨物と旅客便の両面で高い接続性を誇ります。そのため、オランダを拠点にすることで、ヨーロッパ全土に事業を拡大しやすくなります。

通信インフラにおいても、5Gや高速ブロードバンドが普及しており、デジタルサービスの展開が容易です。最先端の高速ブロードバンドカバレッジ約98%、4Gのカバレッジ約99%を誇り、IMDの世界デジタル競争力ランキング2024では第8位にランクインしています。

このように、陸海空及び通信分野いずれにおいても充実したインフラを備えるオランダは、ビジネスを行うのに最適な環境といえるでしょう。

政治的安定性

オランダは、長期にわたり政治的安定を維持している国であり、法制度や規制が整備されているため、安定した事業環境といえます。

特に、オランダのハーグには、国際司法裁判所や国際刑事裁判所などの国連の重要機関が置かれており、このことからも、オランダが国際的に信頼されている証と考えられます。

また、オランダ政府は外国企業の誘致に積極的で、外国直接投資(FDI)を支援する政策を実施しています。たとえば、日系企業向けの窓口機関である「オランダ外国投資庁(NFIA)」は、進出計画の立案から実行まで包括的なサポートを提供しています。

オランダ進出で失敗しないための3つの注意点

オランダ進出で失敗しないための3つの注意点

オランダには多くのビジネスチャンスがあり、進出に成功すれば事業の大きな飛躍につながるでしょう。一方で、しっかりと準備をしておかないと、うまく事業が軌道に乗らず、失敗に終わってしまうリスクがあります。オランダ進出で失敗しないための注意点として、主に以下の3つが挙げられます。

【日本企業がオランダに進出する際の主な注意点】

  • しっかりと市場調査を行う
  • 信頼できる現地パートナーを見つける
  • 治安リスクの管理を行う

しっかりと市場調査を行う

オランダに進出するにあたっては、事前にしっかりと市場調査を行っておくことが重要です。主な調査項目としては、人口・市場規模・主要産業などの基本情報に加え、競合の存在、法規制・税制、現地の人々の生活・文化などが挙げられます。特に、オランダを起点に他のヨーロッパへ事業拡大することを検討している方は、周辺の交通網を注意深く確認する必要があります。

企業が海外進出に失敗するよくあるパターンとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 投入した製品がその国の人々の生活や文化に合わず、ほとんど売れなかった
  • 思わぬ法規制や制度の罠に直面して思い通りのビジネスを展開できなかった
  • 拠点を設ける場所の選択を誤り、サプライチェーンが非効率となってしまった

これらの失敗は、事前に入念な市場調査を行うことで回避することができ、その意味でも市場調査は非常に重要です。

市場調査の初期段階では、外務省やJETROなどの公的機関が発行する資料や、書籍・インターネット等などの公開情報の収集から開始することから始めましょう。

その後、本格的に進出検討を進める場合には、非公開情報も含めた調査や客観的な視点からの分析が必要となるため、専門の調査会社・コンサルティング会社に委託することをおすすめします

信頼できる現地パートナーを見つける

オランダに限らず、海外進出を成功させるためには、信頼できる適切な現地パートナーを見つけることが重要となります。オランダにおける現地パートナーとしては、民間企業だけでなく、オランダ外国投資庁(NFIA)、日本大使館、JICA、JETROなどの公的機関も有力なサポーターとなります。

現地パートナーは、現地で事業を展開するにあたり、適切な人につないでくれたり、必要な手続きの履行やコミュニケーションをサポートしてくれるなど、現地で事業をスムーズに展開するために欠かせない存在です。オランダ人の多くは英語を話せますが、公用語はオランダ語であるため、オランダ語でのコミュニケーションが必要となる場面も生じるでしょう。その意味でもネイティブのパートナーの存在は欠かせません。

また、いくら事前のリサーチをしっかりしていたとしても、現地に数十年住んでいる方には到底及びません。そういった現地人にしか分からない感覚をサポートしてくれるのが現地パートナーの存在です。

信頼できる現地パートナーと良好な信頼関係が築ければ、オランダ進出の成功率は格段に上がるでしょう。

治安リスクの管理を行う

オランダに進出するにあたり、治安リスクへの対策・管理も忘れてはいけません。オランダの政治情勢は安定しており、基本的には安全ですが、スリや置き引きなどの軽犯罪やトラブルに見舞われる可能性があります。

オランダの治安状況については、外務省の海外安全ホームページでもリアルタイムで情報提供がされているため、定期的にチェックするのをおすすめします。

また、現地で勤務する従業員や駐在員に対しては、しっかりと注意喚起し、治安への対策を呼びかけることが重要です。

日本企業によるオランダ進出事例5選

オランダに進出している日本企業は数多く存在しますが、その中でも特に参考になる事例として、以下の5つをご紹介します。

  • 【オムロン】最先端の工場を設立し高品質な生産体制を構築
  • 【キューピー】入念な市場調査を経てマヨネーズを販売
  • 【クボタ】多方面にわたる事業を展開しオランダ経済に貢献
  • 【花王】環境にやさしい固形シャンプーを販売
  • 【日立製作所】高度な技術により欧州の社会課題解決に貢献

【オムロン】最先端の工場を設立し高品質な生産体制を構築

【オムロン】最先端の工場を設立し高品質な生産体制を構築
引用:オムロン公式サイト

オムロンは、ヨーロッパにおける主要な開発/製造拠点として、オランダに工場を保有しています。物流センター、研究開発、修理サービス、先端サービスといった複数の機能を併せ持った工場で、産業用PCやロボットなどを生産しています。

AIやロボティクスを導入して効率的な生産体制を確立するとともに、緻密な設計のすり合わせを通じて高品質な生産体制を構築することに成功しています。

ヨーロッパの中心にあるオランダに生産/物流拠点を設けることで、オランダだけでなく、ヨーロッパ全土に自社製品を届ける狙いがあると考えられます。

【キューピー】入念な市場調査を経てマヨネーズを販売

キューピーは、2015年に、調味料などの販売会社として、オランダに現地法人を設立しました。2016年以降は、現地法人によるマヨネーズの製造販売を行っています。現地で調達した原料を使用し、主に外食市場や一般家庭を対象に、マヨネーズの拡大/普及を図っています。

キューピーは、現地製造をする前に、入念な市場調査を実施してきました。まずは輸出販売の形態で日本製のマヨネーズを販売し、売れ行きや現地の人々の反応を見つつ、現地製造に踏み切りました。

現地で製造販売することで、顧客のニーズに対してより迅速かつ柔軟に対応することが可能となります。

【クボタ】多方面にわたる事業を展開しオランダ経済に貢献

農業機械の製造販売で有名なクボタは、オランダでの事業展開に積極的な企業の一つです。

2019年には、オランダのワーヘニンゲン大学構内にサテライトオフィスを設立し、同大学と共同で農学研究を本格化しました。

オランダ及びヨーロッパの最先端の農業技術に関する情報を収集しつつ、農作業の自動化等に向けたスマート農業関連の研究開発を推進しています。そのほか、アルブラッセルダムにトラクタの物流拠点を立ち上げたり、地元のスタートアップ企業と提携関係を結ぶなど、さまざまな取り組みを実施しています。

2021年には、オランダでの多方面にわたるビジネス活動が評価され、オランダ経済・気候政策省からDeshima Netherlands Awardsという賞を受賞しました。オランダの経済や社会に貢献したオランダ所在の日本企業に授与されるものです。

【花王】環境にやさしい固形シャンプーを販売

【花王】環境にやさしい固形シャンプーを販売
引用:花王公式サイト

花王は、オランダを含むヨーロッパの複数の国において「グール」というヘアケアブランドを展開しています。

2020年には、環境にやさしい固形シャンプーを発売しました。プラスチックを一切使用せず、包装容器にはリサイクル可能な紙を使用しています。さらに、従来の液体シャンプーと比べて2倍も長く使用できるため、消費者にとっても経済的に負担の少ない製品となっています。

花王は、ESGやSDGsの視点を取り入れた事業展開を意識しており、このような姿勢が、環境保護を重視するヨーロッパに受け入れられている要因と考えられます。

【日立製作所】高度な技術により欧州の社会課題解決に貢献

日立製作所は、オランダのフードテックスタートアップであるOneThirdによる食品廃棄物防止の取り組みを支援しています。

日立製作所とOneThirdは、AIを活用したデータインサイトツールを用いて、スマートなフードサプライチェーンを構築するソリューションの開発を進めています。このソリューションにより、少なくとも25%の農作物の廃棄を防ぐことができるとのことです。

このように、日本企業が有する高度な技術力は、オランダやヨーロッパの企業が取り組む環境問題への解決に役立っています。

オランダ市場調査の3つの方法

オランダ市場調査の3つの方法

オランダで円滑にビジネスを展開するためには、事前の市場調査が欠かせません。市場調査の方法としては、以下の3つが挙げられます。

【市場調査の3つの方法】

  • 自社で調査する
  • 支援機関を活用する
  • 民間の調査会社を活用する

自社で調査する

自社で市場調査を行う場合、自社のリソースを活用するためコストの削減が可能です。調査を通じてノウハウが蓄積されるため、長期的なメリットもあります。しかし、専門的な知識やリサーチのノウハウが十分でない中、すべて自社で行うとなると多大な時間と労力がかかってしまいます。

自社で調査するメリット

自社で調査すれば、コストを安く抑えることができるうえに、自社のニーズに合わせた細かな調査が可能です。内部での情報共有がスムーズで、社内にノウハウが蓄積されるため、将来的な事業拡大に役立ちます。

自社で調査するデメリット

時間と労力がかかるため、スピード感を持った対応が難しいという問題点があります。また専門的な知識が不足していると、重要な事項を見落としたり、間違った情報をインプットしてしまったりなど、調査結果の精度が低くなるリスクがあります。

支援機関を活用する

日本には海外進出を支援する様々な公的機関があります。公的な支援機関を活用することで、信頼性の高いデータや情報を入手しやすくなります。手続きが煩雑な場合もありますが、専門的なサポートを受けられる点が魅力です。

【公的機関の一例】

  • ジェトロ(日本貿易振興機構)
  • オランダ外国投資庁(NFIA)
  • 中小企業基盤整備機構
  • 商工会議所
  • 政府系金融機関
  • 地方自治体

支援機関を活用するメリット

信頼性の高いデータ・情報が得られること、専門的なアドバイスが受けられることが主なメリットです。政府の補助金や助成金の活用により、コストを抑えることも可能です。

支援機関を活用するデメリット

手続きが煩雑な場合があり、結果が得られるまでに時間がかかることがあります。また公的機関の情報は一般的すぎる内容である場合があり、特定のビジネスに合わせた詳細な情報が入手しにくいこともあります。

民間の調査会社を活用する

民間の市場調査会社を利用することで、迅速かつ専門的な調査を実施することができます。コストがかかる一方で、高度なデータ分析が可能です。

民間の調査会社へ委託を検討する際はこちらの記事も参考にしてください。

民間の調査会社を活用するメリット

現地の専門知識を持つ調査会社がデータを提供するため、精度の高い情報が得られます。また、その会社独自のネットワークを活用することで、通常の調査方法では得られない深い情報を得られることも期待できます。

公的機関よりも迅速にデータを収集できるほか、収集したデータを踏まえた適切な助言を提供してくれるため、海外進出を検討する上で強力なサポーターになるでしょう。

民間の調査会社を活用するデメリット

コストが高額になることがあり、調査の内容に満足できない場合のリスクもあります。契約内容や調査前の取り決めでは、慎重な判断が必要です。

調査会社を選ぶ際には、顧客のニーズをしっかりとヒアリングしてくれるか、ニーズに合わせて柔軟に調査スコープや調査方法を変えてくれるか、成果物のイメージを事前に共有してくれるか、といった点に着目するとよいでしょう。

オランダの市場調査・進出支援ならAXIA Marketing

AXIA Marketingでは、オランダ進出を検討している企業様に向けて、オランダの市場調査・進出準備をお手伝いしております。

世界中に計50万名規模の有識者ネットワークを有しており、公開情報では知ることのできない現地の深い情報まで徹底的にリサーチ・分析し、オランダの市場調査から進出準備まで一気通貫でサポートします。

AXIA Marketingの海外進出支援サービスの詳細はこちらをご覧ください。

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参考文献

海外進出日系企業拠点数調査 2023年調査結果 – 外務省

オランダ王国基礎データ – 外務省

オランダの教育 – NFIA

オランダ 外資に関する奨励 – JETRO

オランダの税制とインセンティブ – NFIA

欧州と世界へのデジタルゲートウェイ – NFIA

World Digital Competitiveness Ranking 2024 – IMD

海外安全ホームページ – 外務省

オランダ工場 – オムロン

現地製造のマヨネーズをヨーロッパで販売開始 – キューピー

クボタ オランダ現地法人がDeshima Netherlands Awards 2021を受賞 – クボタ

花王、欧州で展開するヘアケアブランドで固形シャンプーを発売 – 花王

日立製作所ニュースリリース(2024年1月24日)

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