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2025.11.27
記事の監修者
金田大樹
AXIA Marketing代表取締役
リサーチ会社を活用した経営判断を、日本企業の常識にしていくことがモットー。
鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅から大手調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。
ベンチマーク調査とは、変化の激しい市場の中で「いま自社がどの位置にいるのか」「どこに向かうべきか」を確認するための、欠かせない調査手法です。業界の基準や競合他社の成果を比較することで、自社の取り組みを客観的に見つめ直し、判断の精度を高めることができます。
この記事では、ベンチマーク調査の基本的な考え方から、実施する意味、調査の際に押さえておきたいポイントまで丁寧に解説します。具体的な評価軸や効果的な調査方法などもご紹介しますので、ぜひベンチマーク調査の“本当の価値”を理解し、日々の戦略づくりに活かしていただければ幸いです。

ベンチマーク調査とは、業界の基準や競合他社の成功・失敗事例と自社の成果を比べ、その結果から自社の運営や製品、サービス、プロセスを見直すための調査手法です。ベンチマーク調査は、業務プロセスや財務状況、顧客対応、製品の品質など幅広い領域で活用されています。
これらの項目を他社(特に業界をリードしている企業)と比較することで、「自社が業界の中でどの位置にいるのか」や「これから取り入れるべき戦略は何か」が分かります。また、新しく生まれているトレンドの発見に役立つ可能性もあります。
ベンチマーク調査は、主に次のような目的で行われます。
| 自社の強み・弱みの特定 | 他社との比較を通じて、自社の強みや弱みを客観的に把握し、戦略の見直しに活かす。 |
| 成功/失敗事例の活用 | 他社の成功・失敗事例を研究し、その要因を理解して、自社の施策に再現・応用する。 |
| 戦略策定のための現状把握 | 自社の今の立ち位置を明確にし、将来的な戦略や改善点を設計する基盤をつくる。 |
| 新施策導入の効率化 | 他社の事例を参考に、コストやリスクを抑えながら成功率を高める。 |
このように、ベンチマーク調査とは企業の立ち位置や戦略選定を客観的に把握するための調査となっています。正しく調査をすることで、事業の明確な「目標」を定めることができるのです。
ベンチマーク調査と混同されやすい調査に「競合調査」があります。しかし、両者は次のように目的や対象が明確に異なっています。
このように、ベンチマーク調査は「業界標準の達成やプロセス改善」を目指すのに対し、競合調査は「競争優位の確立や市場シェアの拡大」を目指すことに重きを置いています。もちろん、どちらも非常に重要な調査なため、目的に合わせた選択が求められます。下記にそのほかの両者の違いもまとめましたので、参考にしてみてください。
| ベンチマーク調査 | 競合調査 | |
| 比較対象 | 業界内のリーダー企業異業種の優良事例(ベストプラクティス)など | 自社と同じ市場で競合する企業(ライバル) |
| 必要データ | 売上・利益・店舗数などの詳細な定量データ業界/他業種の成功基準 | 競合の製品情報や価格戦略強み・弱み |
| 主な分析方法 | 数値比較ベストプラクティス分析異業種モデルの応用 | 3C分析5フォース分析4P/4Cバリューチェーン分析 |
| 活用シーン | 業界水準の確認プロセス改善異業種からの新しい発想の取り入れ | 差別化戦略の策定市場シェア拡大競争力強化 |
競合分析については「競合他社の調べ方を4ステップで紹介|5つの調査項目や注意点も」でも詳しく解説しています。参考にしてみてください。

ベンチマーク調査は一般的に、「調査設計」「データ収集」「データ分析」「戦略策定」「施策の実施とモニタリング」「結果の評価とフィードバック」という流れで行われていきます。各ステップでどのようなことをしていくのかや注意したいポイントを見ていきましょう。
まず、ベンチマーク調査の目的と分析対象を明確化します。何を達成したいのか、どの指標を測定するのかを決めておくことで、データ収集や分析がスムーズに進みます。
チームで行う場合は、目的や基準を共有し、認識をそろえておくことが不可欠です。 一般的な調査項目とは、財務指標・顧客満足度・売上高などですが、業界や企業の特性に合わせて必要な項目を追加してください。
次に、競合他社や業界のデータを収集していきます。財務報告、市場調査レポート、顧客フィードバックなど、多様な情報ソースを組み合わせることで、バランスの取れた信頼性の高いデータが得られます。一次情報と二次情報を適切に活用できるように心がけましょう。
データが集まったら、それを分析することで自社の強み・弱みや改善点を明らかにしていきます。定量分析で数値を客観的に評価し、定性分析で背景やパターンを読み取ることで、より深い洞察が得られます。両方の分析を組み合わせることで、精度の高い結論にたどり着けます。
定量分析や定性分析については「市場調査とは?調査手法や活用事例などを徹底解説」を参考にしてみてください。
分析結果を踏まえて、実行可能な改善策や新たな戦略を策定していきます。関係者が理解しやすい形で整理し、実行段階での指針となるよう明確に設計することが重要です。
策定した戦略は、実行にうつすだけでなく進捗や成果の定期的なチェックが欠かせません。結果をチーム全体で共有しながら、状況に応じて施策を柔軟に見直すことで、効果的な改善につなげることができます。
施策の結果を分析し、得られた気づきを次回以降の施策に反映します。短期的な成果にとらわれず、長期的視点で改善を続けることが必要です。定期的な評価とフィードバックの仕組みをつくることで、継続的な改善が進み、ベンチマーク調査の効果を最大化できます。

代表的なベンチマーク調査には、「NPS (Net Promoter Score)」、「ヒアリング調査」、「パネル調査」などがあり、それぞれ異なる視点から分析でき、組み合わせることでより包括的にデータを集めることができます。
NPSは、顧客が自社の製品やサービスを他人に推薦する可能性を数値化し、顧客ロイヤリティや満足度を測る指標です。顧客のフィードバックを基に、製品やサービスの改善点を把握していきます。
| 活用例 1. 「この商品を友人や同僚に薦める可能性は?」と0〜10で評価 2. 回答者を分類:推奨者(9〜10)、中立者(7〜8)、批判者(0〜6) 3. NPS = 推奨者割合 − 批判者割合 |
| 対象 | 自社製品やサービスを利用した顧客 |
| 期間 | 随時(キャンペーン後や定期的に実施) |
| 得られる結果 | NPSスコア、推奨者・中立者・批判者の割合、改善すべきポイント |
| メリット | 顧客の満足度や推奨意向を簡単に数値化できる。顧客ロイヤリティの把握や改善点の特定に役立つ。継続的測定で施策の効果も追跡可能。 |
| デメリット | 顧客属性や利用状況によってスコアに偏りが出ることがある。単独の指標では詳細な理由までは把握できない。 |
NPSは顧客との関係性を深め、長期的な売上やブランド力の向上を目指す企業には欠かせない指標です。特に、下記のような場合は有効な調査方法となるでしょう。
ヒアリング調査は、顧客や取引先、専門家などへのインタビューを通じて、深い洞察を得る調査手法です。直接的なコミュニケーションにより、消費者の考えや行動の理由を詳細に把握できます。
| 期間 | インタビュー1回あたり60〜90分程度(必要に応じて複数回実施) |
| 得られる結果 | 消費者行動や意思決定の背景、満足度、動機などの深い理解 |
| メリット | 定性的で詳細な情報を直接聞き出せる。人には聞きづらいデリケートなテーマにも対応可能。競合や市場動向の理解にも役立つ。 |
| デメリット | インタビュアーの力量によって結果が左右されやすい。実施に時間と手間がかかる。守秘義務の管理が必要。 |
ヒアリング調査は、特に定性的な情報を重視し、顧客や現場の生の声を戦略に反映させたい企業に適しています。特に、下記のような場合は有効な調査方法となるでしょう。
パネル調査は、同じ対象者に対して同じ質問を定期的に繰り返すことで、変化や傾向を追跡する調査手法です。詳しい特徴は次のとおりです。
| 対象 | 同じパネル登録者(同じ人々) |
| 期間 | 半年程度(必要に応じて延長可能) |
| 得られる結果 | 時系列での変化や傾向、現在の状況を中心とした精度の高いデータ |
| メリット | 対象者を毎回探す手間が省ける。単発調査より変化や傾向を把握しやすい。現状にフォーカスした信頼性の高い情報が得られる。 |
| デメリット | 継続的に調査を行う必要があるため、総コストが高くなりやすい。 |
パネル調査は、顧客や市場の変化を長期的に追い、精度の高い意思決定をしたい企業に特に適した手法です。特に、下記のような場合は有効な調査方法となるでしょう。

ベンチマーク調査は、調査をするだけでなく適切に解析を行い、戦略に活かしていく必要があります。
そこで、主に活用されている解析方法も簡単にご紹介していきます。
クロス集計法は、異なる設問や属性の回答結果を組み合わせて整理し、傾向や関連性を可視化する分析手法です。例えば、「年齢 × 製品満足度」や「地域 × サービス利用頻度」といった組み合わせでデータを集計することで、どの属性のグループが高評価をしているのか、あるいは改善が必要なポイントはどこかを把握できます。
ベンチマーク調査でクロス集計法を使うと、自社の状況を他社や業界の標準と比較しながら、属性別の違いやパターンを明確にできます。例えば、「20代女性の利用者はサービス満足度が高いが、30代男性では低い」といった具体的な傾向を捉えることが可能です。
このように、クロス集計法を活用すれば、単に全体の平均値を見るだけでは分からない細かい傾向を把握でき、改善施策やターゲット戦略の立案に役立てることができるのです。
クラスター分析は、複数の指標をもとに、似た特徴を持つ対象を自動でグループ化する統計手法です。ベンチマーク調査では、顧客や製品、サービスなどのデータをセグメント化し、各グループごとの傾向や強み・弱みを明確にできます。
例えば、顧客データを「購買頻度」「満足度」「購入単価」などの指標で分析すると、
といった複数のセグメントが自動的に分類されます。
この分類結果を活用すれば、各グループに合わせたマーケティング戦略やサービス改善策を設計することができるでしょう。また、クロス集計法と組み合わせると、属性別の詳細な傾向も確認でき、より精度の高い施策立案につなげられます。
ベンチマーク調査で収集したデータを戦略設計に活かすには、「SWOT分析」「クロスSWOT分析」「ポジショニングマップ」などのフレームワークがおすすめです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
SWOT分析は、自社の強み・弱みと外部の機会・脅威を整理する基本フレームです。内部・外部視点で自社の立ち位置を把握することができます。
| 使いどころ | 具体例 | ベンチマーク調査との連携 |
| 戦略全体の方向性を決める | 強み:ブランド力弱み:対応スピードの遅さ機会:新市場の拡大脅威:競合の価格競争など | ベンチマーク調査で収集した競合データや業界標準の数値と比較して、自社の強みや弱みを明確化する |
クロスSWOT分析は、SWOTの各要素を組み合わせ、戦略オプションを具体化するものです。強み×機会、弱み×脅威などの組み合わせで施策を検討していきます。
| 使いどころ | 具体例 | ベンチマーク調査との連携 |
| 戦略案を具体化し、実行可能な施策を設計する際に有効。 | 強み×機会:ブランド力を活かして新市場進出弱み×脅威:対応スピード改善で競合価格競争に対応 | ベンチマーク調査で得られた数値や傾向(売上、顧客満足度、製品評価)をもとに、どの施策が現実的か評価する |
ポジショニングマップは、自社と競合を軸で可視化し、相対的な立ち位置を把握するというフレームワークです。差別化ポイントや市場の隙間を見つけやすいのが特徴です。
| 使いどころ | 具体例 | ベンチマーク調査との連携 |
| 製品・サービスの差別化戦略や市場での競争優位を分析する | 縦軸:品質、横軸:価格でマップ化。自社:高品質中価格、競合A:低品質低価格、競合B:高品質高価格 | ベンチマーク調査で得た製品性能、価格、顧客満足度などのデータをマッピングして、自社のポジションを明確化する |
フレームワークについては「【完全版】マーケティングフレームワーク21選!活用シーンも徹底解説」で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

ここまで、ベンチマーク調査のステップに沿って詳しく解説しました。しかし、ベンチマーク調査について理解を深めたものの、まだ実際にうまくイメージができないという方もいらっしゃるでしょう。
そこで、「企業内部調査」「ステークホルダー調査」「生活者調査」に焦点を当て、具体的な活用方法をご紹介していきます。
企業の内部調査では、業務プロセスの効率性、財務状況、従業員の満足度など、社内の状況を多方面から把握します。
たとえば、ある製造業では自社と他社の生産データを比較し、品質管理の流れを見直しました。競合企業との不良品率の差を分析した結果、改善策を導入し、生産ラインのムダを削減。結果として業務プロセスが最適化され、生産性の向上につなげています。
ステークホルダーに対するベンチマーク調査は、顧客・取引先・従業員といった関係者の意見や満足度を把握するために行われます。
たとえば、あるIT企業ではアンケートやインタビューを実施し、顧客満足度に関するフィードバックを収集しました。 その結果、顧客が求める機能や改善点が明確になり、サービスのブラッシュアップに直結。顧客からの評価が向上し、売上アップにもつながりました。
生活者を対象とした調査は、消費者の行動パターンやニーズを正確に把握するために欠かせません。
たとえば、ある食品メーカーでは、消費者の嗜好の変化や健康志向の高まりについて調査を実施。その結果を基にマーケティング戦略を見直し、競争力の向上につなげました。 この調査は既存商品の改善だけでなく、新商品のコンセプトづくりにも大きく貢献しています。

ベンチマーク調査は一度行えば終わりではなく、継続的に実施することで、その時々の市場動向や競合状況に合わせて最適な戦略を策定することが可能になります。
最後に、ベンチマーク調査をする際に重要なポイントをまとめました。ぜひ確認してみてください。
ベンチマーク調査を実施する際は、まず「何を明らかにしたいのか」という目的をはっきりさせることが重要です。目的がぼんやりしていると、調査項目が増えすぎて焦点がぼやけたり、集めたデータを適切に活用できない原因になります。
たとえば、接客力を高めたい場合は、競合他社の接客対応を調べることで、自社と比べたときの強み・不足点が具体的に見えてきます。また、海外での新規事業の採算性を知りたい場合は、競合企業の売上データを分析することで改善すべきポイントを把握できるでしょう。
このように、目的が明確であれば、調査の方向性が定まり、必要なデータの種類も判断しやすくなります。その結果、分析の精度も高まり、効果的な戦略に結びつけることができます。
ベンチマーク調査では、どの企業を比較対象に選ぶかが重要です。同業他社だけでなく、顧客ニーズが重なる「潜在的な競合」も含めることで、より広い視点で自社の立ち位置を把握できます。たとえばファストフード店では、同業チェーンだけでなく、軽食や時間つぶしの需要を満たすカフェ・ネットカフェも実質的な競合となります。
競合選定を誤ると分析が偏り、強みや弱みの把握を誤る可能性があります。業界トップ企業で業界水準を確認し、自社と似た企業で直接競合の差を知り、異業種も視野に入れて顧客ニーズの取り合いを見極めることが大切です。幅広く比較するほど、得られる示唆が深まり、戦略立案の精度が高まるでしょう。
ベンチマーク調査を成功させるには、データの質と信頼性が不可欠です。不正確なデータを使用してしまうと、誤った調査結果や判断に繋がってしまうので、事前に十分なリサーチをして、信頼できる情報源を探すようにしましょう。
調査を行う時は、信頼できる公開情報や企業レポート、公式データベースなど、出所がはっきりしたデータを使用したいものです。また、データの収集方法や分析プロセスを社内で標準化することで、再現性を確保し、調査の信頼性を高めることができます。
ベンチマーク調査では、数値の比較だけでなく、その差が生まれた要因まで深掘りすることが重要です。自社と競合のギャップを整理することで、強化すべき点や改善点が明確になります。また、顧客の声や現場の意見などの定性情報も取り入れると、課題の背景がよりつかみやすく、実効性の高い改善策を導きやすくなります。
改善策は、すぐ取り組める短期施策と、中長期で見直すべき戦略に分けて設計すると効果的です。分析結果は社内で共有し、組織全体で改善に取り組む体制を整えましょう。実施後は再度調査を行い、継続的に改善サイクルを回すことで成長につながっていきます。
ベンチマーク調査では、プライバシー保護と関連法規の順守が不可欠です。特に競合他社のデータを扱う際は、個人情報保護法や営業秘密に関する法律を踏まえ、合法的かつ適切な方法で情報を取得・管理する必要があります。
また、海外企業を調査する場合は、国ごとに法律や規制が異なるため、事前に確認しておくことが必須です。 調査では、公的に入手可能な資料や許可されたデータのみを用い、透明性の高い手法を徹底しましょう。法的リスクを避けるため、必要に応じて専門家や弁護士に相談しながら進めることも効果的です。
競合の調査を行う際に注意したい法律については「競合調査は違法?必ず抑えておきたい不正競争防止法について詳しく解説!」で触れています。参考にしていただければ幸いです。

ベンチマーク調査は、業界内での自社の現在位置やパフォーマンスを的確に把握し、競争力を向上させるための効果的な手段です。代表的な手法にはNPSやアンケート調査などが存在しますが、最適な評価項目を、的確な流れにて実施することが何より重要です。
この記事が、ベンチマーク調査の本質的な意味の理解へと繋がり、戦略の立案に役立てば幸いです。
AXIA Marketing(アクシアマーケティング)では、競合調査や市場動向を行い、正確かつ信頼性の高いデータを基にビジネス戦略をサポートしています。特に海外の市場調査に強く、現地のネットワークを活用し、競合企業の動向や業界を徹底的に分析。公開情報や独自の市場調査を組み合わせ、具体的な改善点や成功のポイントを明確にします。
自社の強みを客観的に知りたいとお考えなら、AXIA Marketingにお任せください。
参考文献
・ベンチマーク調査とは?意味、項目、手法をわかりやすく解説-Freeasy
・ベンチマークとは-Macromill
・ベンチマーク調査とは?目的や代表的な方法、注意点を解説-GMO RESEARCH & AI
・NPS®(顧客推奨度)業界別ランキング-NTTコム オンライン
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