フィリピンの市場調査の方法とは?産業構造や進出前に知っておくべき特徴や注意点を解説
日本企業の海外進出先として、フィリピン市場には大いに魅力があります。
この記事では、フィリピン現地の市場環境や経済成長の安定性、高い英語能力を持つ労働力、そして外資企業への優遇制度など、フィリピン市場が持つ多くのメリットについて解説いたします。
また、進出する際の注意点も具体的にご紹介いたします。
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フィリピン市場の特徴
フィリピン市場は、その独特な特徴により、多くの外資企業にとって魅力的な投資先となっています。
以下は、フィリピンに関する基本情報と市場の主要な特徴です。
・若年層が多く、安定した経済成長が見込める
・先端技術産業への積極的な投資を行っている
・高いレベルの英語能力を持つ労働者が多い
・経済特区における外資企業の優遇制度
・海外企業の進出に抵抗がなく、親日国である
以下からは、これらの特徴を詳しく紹介していきます。
若年層が多く、安定した経済成長が見込める
フィリピンの経済は、若年層が支えています。こうした若年層の存在は、フィリピン経済の持続可能な成長を支える要因です。
若年層が多いことは、消費力の増大や労働市場への積極的な参加を意味し、これにより国の経済活動が活発になることを示します。
また、安定した経済成長には、こうした若い労働力だけでなく、政府の政策や国際的な投資の流れも大きく関係しています。
具体的な数値や詳細は、以下から詳しく解説します。
2050年頃まで続くと予想される人口ボーナス
フィリピンの若年層が多い状態は2050年まで続くと言われています。
フィリピンの人口推移や人口ピラミッドのデータによると、若い労働力が豊富であるため、今後も労働市場は拡大し続け、個人消費も増加する見込みです。
こういった理由から、消費メインの経済成長が加速し、フィリピン市場は今後大きく拡大していくでしょう。また、同時にこの期間は、新しいビジネスチャンスの創出にも最適な時期といえます。
国内総生産(GDP)は安定的な成長
フィリピン経済は、国内総生産(GDP)、消費者物価指数(CPI)、および実質経済成長率の観点から見ても、安定的な成長をしています。
フィリピン統計庁(PSA)による2024年1月31日の報告では、2023年のGDP成長率は前年比で5.6%と報告されています。
さらに、2024年3月5日にフィリピン統計局から発表された消費者物価指数は前年比3.4%であり、継続的な物価の上昇傾向と経済活動の活発化が見て取れるのです。
こうした数字は、フィリピンが持続可能な経済成長を遂げており、投資家やビジネスリーダーにとって魅力的な市場であることを示しています。
フィリピンへの海外直接投資は減少傾向だが高水準
フィリピンへの海外からの直接投資は、減少傾向にあるものの、依然として高い水準を保っています。
この背景には、国内外からの投資家がフィリピンの持続可能な成長を高く評価していることがあります。
特に注目されているのは、先端技術産業への投資です。
フィリピンの主要産業がどのように変化しているのか、各産業の成長率や就業者比率はどのように進化しているのか、詳しく掘り下げていきます。
先端技術産業への積極的な投資を行っている
フィリピンはグローバル市場における競争力が向上しています。
それは、国や海外企業などが積極的に先端技術産業とイノベーションに投資をしているためです。
特にバイオテクノロジーや製薬業界など、新しい技術領域には多くのチャンスがもたらされるようになりました。
また、フィリピン政府は外資に対しても多くの優遇策を用意しており、日本企業が市場に参入しやすい環境を整えています。
このような状況は、日本の技術企業にとって、新しい事業拡大のチャンスであり、両国間の技術・経済協力を強化するきっかけとなっています。
フィリピンの主要産業
フィリピンの経済活動は多岐にわたりますが、主要産業は以下の通りです。
サービス業:フィリピン経済の約60%を占め、特にビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業が急成長しています。国内外からの大量の投資を引きつけており、雇用の拡大に大きく貢献しています。
鉱工業:GDPの約30%を構成する鉱工業も、フィリピンの経済を支える重要な産業の一つです。この産業は、特に製造業、建設業、そして鉱業が中心となっています。
こうした産業は、フィリピンの経済発展と国際市場での競争力を高めるための基盤を形成しています。経済の多様化と技術革新により、サービス業、鉄工業などは今後もさらなる成長が期待されます。
各産業の成長率
フィリピンの経済は近年、複数の産業セクターにわたって成長を見せています。特に、サービス業と鉱工業の成長率は目覚ましく伸びている状況です。
サービス業:サービス業の中でも、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業は、フィリピン経済の中で非常に重要な位置を占めています。GDPの約60%を占めるサービス業の中でも、BPO産業は世界的に競争力があり、年平均成長率は過去数年間で約15%以上。
鉱工業:GDPの約30%を占める鉄工業は、製造業と鉱業を中心に安定した成長を続けています。特に製造業は、内需と外需双方からの需要拡大を背景に、年平均成長率約3%〜5%で推移しています。
こうした産業の成長は、国内外の投資拡大と技術革新に支えられています。
サービス業の拡大においては、特に国内の若年労働力の技能向上と国際的なビジネス環境への適応が見られ、鉱工業においては持続可能な採掘技術と製造プロセスの改善が進んでいます。
各産業の就業者比率
フィリピンの労働市場における各産業の就業者比率は、国の経済構造の変化と労働力の動向を反映しています。
特に、主要産業であるサービス業と鉱工業における就業者比率は、以下の通り大きな割合を占めています。
サービス業:サービス業は、特にBPOの分野で著しい成長があり、この背景もあり全就業者数の中で最も大きな約60%という就業者比率です。労働市場においても中心的な役割を果たしています。
鉱工業:鉱工業では製造業や鉱業がその大部分を占め、就業者比率は約20%となっています。国内外からの投資が継続的に行われています。
こうしたデータは、投資や政策決定において重要な指標となります。
高いレベルの英語能力を持つ労働者が多い
フィリピンは、国際的にも認知されている高いレベルの英語能力を持つ労働者が多い国です。
国別の英語話者数ランキングでは、フィリピンは世界でもトップクラスに位置しており、これはアメリカやインドなどに次いで多い数値です。
英語はフィリピンでの公用語の一つであり、教育制度でも英語が広く使われています。そのため、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)産業をはじめとする多くの分野で、国際的なコミュニケーションの需要に応えることができる英語話者が豊富に存在します。
こうした英語力は、フィリピンがグローバル市場で競争力を持つ要因の一つであり、外国企業にとっての魅力的な投資先である理由となっています。
就業率・失業率
近年、フィリピンの就業率は安定しており、産業部門ごとの雇用拡大がこれを支えています。特にサービス業と産業部門は、就業率を押し上げる主要な力となっています。
また、フィリピンの失業率は比較的低い水準を維持しており、これは国内経済の活性化および政府による雇用創出策が効果を発揮していることを示しています。
しかしながら、地域によっては失業率にばらつきが見られ、特定の地域では高い失業率が依然として課題となっています。
フィリピン政府は、こうした課題に対処するためにさまざまな経済政策を展開しており、特に若年層のスキル向上と就労機会の拡大に注力しています。
これにより、長期的にはより多くの産業での就業機会が生まれ、失業率のさらなる低下が期待されます。
労働者の平均月収/年収
2023年のデータに基づくと具体的には、平均年収は約535,800PHP(約138万円)とされています。これは、日本の平均年収と比較するとおよそ1/3ほどの額です。
フィリピンの労働市場は、サービス業を中心に成長しており、その他の産業に比べて相対的に低賃金の傾向にあります。このような賃金の状況は、国内外の労働力市場との競争、および経済全体の成長率に大きく影響を受けるものです。
フィリピンでは、特にマニラなどの大都市では平均月収がやや高く、地方に行くと下がる傾向にあります。経済の発展と共に、平均月収の改善が期待されていますが、生活費とのバランスを考えると、まだ課題は多いといえます。
経済特区における外資企業の優遇制度がある
フィリピンでは、経済特区内に進出する外資企業に対してさまざまな優遇制度があります。主な優遇措置は以下です。
税制優遇:外資企業は、特定の経済特区内での活動に対して、法人所得税の免除や軽減が受けられます。また、関税の免除や減税措置も適用される場合があります。
輸出入の手続きの簡素化:特定の経済特区では、輸出入に関する手続きが簡略化されており、通関手続きが迅速に行えます。
賃料支払い猶予:特定の工業団地では、賃料の支払い猶予措置を利用することができ、初期投資の負担を軽減することが可能です。
こうした優遇措置により、フィリピンは多くの外資企業にとって魅力的な投資先となっており、特に日本企業を含む多国籍企業が経済特区に積極的に進出しています。こうした動きはフィリピンの経済成長につながり、雇用創出にも影響します。
海外企業の進出に抵抗がなく、親日国である
フィリピンは、長い歴史を通じてさまざまな国との交流を経験してきたため、海外企業や文化を受け入れやすい国柄です。
現在も国内には多くの外国企業が進出していますが、フィリピンの現地人はそれを普通のこととして受け入れています。
また、特に日本企業の進出も増えているのです。
これは、フィリピンがアジアでも有数の親日国であることが大きく影響しています。
歴史的に見ても、フィリピンと日本は、第二次世界大戦後の復興期から友好的な環境を築いてきました。
また、現地人の日本文化に対する好意も根強く、日本食レストランの人気や日本のポップカルチャーへの関心が高いことからも、親日的な姿勢がうかがえます。
フィリピンに進出している日本企業の数・推移
2022年のデータに基づくと、フィリピンには1,434社の日本企業が進出しており、前年比で4.0%の減少を見せています。このデータは、日本企業がアジア各国にどのように分布しているかを示す重要な指標となっているのです。
フィリピンは長年にわたり、日本企業にとって魅力的な投資先の一つであり続けています。その理由の一つとして、フィリピンの経済政策や親日的な文化が挙げられます。また、フィリピンの経済特区には多くの日本企業が集まり、地域経済を活性させているのです。
実際に進出している日本企業の事例
フィリピンで成功を収めている中小企業の1つが、三重県の四日市市にある金型と精密プレス加工メーカーである、伊藤製作所です。
1996年にフィリピンに進出。現在は現地で120人の従業員を抱え、全利益のうち30%以上をフィリピンであげるほどの優良企業となっています。
フィリピンは転職が当たり前の文化なため、従業員が1年程度で辞めてしまうことは現地では普通にあります。
しかし、この伊藤製作所は勤続21年の社員が10人いたり、大企業も視察に来るほどの離職率の低さを誇っています。
フィリピンに進出を成功させるには法規制や事業のトレンドなどを押さえることが重要です。それを押さえることができたとしても、現地の人を雇用して事業を行なっている以上は、「従業員が辞めない職場づくり」をフィリピンでは特に考える必要があります。
伊藤製作所は、日本の従業員と同じように1人ひとりを大切にし、根気強く育てていくという家族主義経営を行っており、これが現地の従業員が辞めない理由となっています。
フィリピンは人件費が日本より安いため、日本の従業員と同じように教育させ成長させるという意識が薄くなりがちです。
こういった意識を改め、現地の人を日本人と対等に扱い、一人前の技術者に育て上げるという家族主義経営こそが、転職国家のフィリピンで人が辞めない会社を作る1つの方法なのかもしれません。
フィリピン市場進出における注意点
フィリピン市場進出を考慮する際には、以下のように複数の重要な注意点を理解しておく必要があります。
・ネガティブリストの存在(外貨規制)
・インフラの整備遅れ
・フィリピンならではの就労意識
・ASEAN唯一のキリスト教比率の多い国
こうした要素を総合的に考慮し、フィリピン市場進出の際に留意しなければなりません。ここからは、こうした注意点についてそれぞれ詳しく解説していきます。
ネガティブリストの存在(外貨規制)
フィリピン市場に進出する際、外国企業は「ネガティブリスト」として知られる重要な規制に注意する必要があります。このリストには、外国資本の出資比率に制限を設けたり、特定の業種への投資を完全に禁止したりする規定があります。
ネガティブリストには、主に国家安全保障、環境保護、公衆衛生、道徳に関わる規制が掲載されており、外国企業が100%出資できない業種や、特定の許可が必要な業種が明確に指定されているのです。
このリストは、フィリピン経済の重要部門を保護し、国内産業を外国の競争から守ることを目的としており、外国企業がフィリピンでビジネスを行う際の法的な枠組みとして機能します。フィリピンへの進出を計画するのであれば、こうした規制を事前に理解し、適切な戦略を立てることが成功への鍵となります。
インフラの整備遅れ
フィリピンのインフラ整備の遅れは、経済発展と外国企業の進出を考える上で大きな障壁となっています。
経済成長の速度に比べて、特に交通と水道インフラの整備は著しく遅れており、これが多くの経済活動に影響を及ぼしているのです。
フィリピン政府はこの問題を解決するために多額の投資を計画していますが、過去の独裁政権による政治的な混乱や、資源の不足が原因となり、長期にわたって整備が遅れる結果となっています。
具体的には、都市部での交通渋滞や田舎で各種サービスへアクセスしづらいことが深刻な問題です。こうした問題はフィリピンが解決すべき重要な課題です。
フィリピンならではの就労意識
フィリピンの労働者は柔軟性があるものの締め切り意識に欠ける傾向があるとされ、これは管理側がしっかりと生産管理を行わなければならない理由となっています。
また、フィリピン人労働者は単純作業には強いですが、詳細な指示に基づいた作業の遂行や厳密な期限の遵守が課題です。
このような背景から、フィリピンに進出する日本企業は、文化的な違いに注意を払い、適切な研修と指導を行うことが成功の鍵といえます。フィリピン人労働者の柔軟性と高い適応力を活かしながら、組織内での明確なガイドラインを設定することが必要です。
ASEAN唯一のキリスト教比率の多い国
フィリピンはASEAN諸国の中で唯一、キリスト教が主要宗教となっており、特にカトリックが国民の大多数を占めています。この宗教的背景は、国の文化や社会構造に大きな影響をもたらすものです。フィリピン人は他のアジア諸国と比較しても特に宗教心が強く、その信仰は日常生活のあらゆる面に溶け込んでいます。
宗教的な価値観は、ビジネス環境にも影響を及ぼすことがあります。たとえば宗教行事が多いために、そうした期間中はビジネスのペースが鈍化することがあります。
また、フィリピン人の間には強いコミュニティ意識があり、教会が地域社会の中心となっていることが多いです。
フィリピンのこのような宗教的背景を理解することは、日本人とフィリピン人の間における効果的なコミュニケーションや地域社会との良好な関係構築に不可欠です。キリスト教国であることが国民の価値観や行動にどのように影響を与えるかを把握しておけば、文化的な誤解を避け、より円滑なビジネス展開が可能となります。
今フィリピン市場進出が特におすすめな業種とは?
フィリピン市場への進出を考える上で、現在特におすすめな業種は以下の通りです。
IT関連事業:フィリピンは若い労働力が豊富で、技術スキルを持つ人材が多く存在します。このため、ソフトウェア開発やデジタルマーケティングなどの分野は、成長ポテンシャルが高いとされるのです。また、国内でのインターネット普及率の向上もこの業種の成長を後押ししています。
日本語教育事業:フィリピンでは日本語を学ぶ需要が高まっています。これは、日本企業の進出増加と共に、「日本語ができるフィリピン人」の需要が高まっているためです。日本語学校の設立やオンライン日本語教育プラットフォームの展開などが望まれるでしょう。
不動産事業:フィリピンの都市部では中産階級の拡大と共に、住宅やオフィススペースの需要が増加しています。高級住宅開発や商業施設開発は、特にマニラやセブなどの主要都市で潜在的な成長が見込まれる分野です。
こうした業種は、フィリピンの市場特性と経済成長により、今後も拡大が期待される領域です。進出を検討する際には、これらの業種に注目してみましょう。
もちろん、上記以外の業種・業界についても成功の可能性は大いにあります。一例として、参考ください。
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この記事では、フィリピン市場の特徴や、進出を検討する場合の注意点などを深掘りして解説しました。
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