価格調査のやり方完全解説!代表的な手法や質問例、活用事例を紹介
価格設定の適正さは、商品やサービスの利益を出すために重要な項目です。
競合他社よりも安くすれば良いというわけでもないので、価格調査の重要性を理解したうえで効果的な調査方法を取り入れるようにしてください。
本記事では、価格調査の重要性をお伝えしたうえで、代表的な手法と成功するためのポイントを解説します。
価格調査の重要性と適切な手法
価格調査は「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(広告)」の4Pと呼ばれるマーケティング戦略のうちの1種です。
プライシングとも呼ばれる価格設定は、マーケティングを成功させるために欠かせません。
価格調査とは
価格調査とは、商品やサービスの適正料金を把握する作業です。
自分たちの参入したい産業やターゲット層の属する市場から「消費者はいくらだと買うか」「売り上げを伸ばしている競合他社はいくらに設定しているのか」を探ります。
産業や市場をみると、製品やサービスのおおよその価値が把握できます。
もしも、これから販売しようとしている商品やサービスの価格設定が市場と大きくかけ離れている場合は、要注意です。
他社との競争に負けて利益が低下するだけでなく、イメージ低下や在庫過多による倒産に追い込まれる可能性も懸念されます。
定期的に価格調査して、最適な価格設定と持続可能な収益計画を立てましょう。
プライシングの基本的な考え方
プライシングとは、消費者の行動心理や感覚を分析して商品やサービスの価値を定義するプロセスを意味します。
価格調査が重要視されている理由を理解するためには、プライシングの基本的な考え方を理解する必要があります。
商品やサービスを販売するときに、ターゲットになる消費者と感覚や価値観に大きな差異が生じると購入してもらえず、利益を生み出せません。
企業は消費者の視点にたって価値を定義したうえで、コストと競合他社とのバランスを考慮して、最終的な価格を決定します。
主な手法として、はじめは高めに価格を設定して普及と同時に値下げするスキミングプライス、商品を低価格で流通させて高いシェア率を狙うペネトレーションプライス、原価に利益を加えて価格を決めるコストプライスの3種類が用いられます。
従来の価格調査の問題点
住宅の価格調査では、企業が利益を伸ばすために有益な情報を得るのがむずかしいという問題を抱えていました。
「1,000円なら買いたいですか?」「このサービスの妥当な価格はいくらほどですか?」などシンプルな質問をしても、消費者は「安い方が良い」と答えるのが当然だからです。
予算オーバーだとしても性能や耐久性が良さそうなら購入する消費者もいるため、妥当性を基準に判断される傾向にあります。
つまり「いくらなら買うか」のように価格を特定するような質問では、消費者の妥当性を考慮した価格帯を把握するのがむずかしいとされています。
その問題点を改善するために、最近では消費者が許容する価格帯を把握できる調査方法が注目されるようになりました。
価格調査に適切な方法
結論からお伝えすると、最も効果的な価格調査の方法はアンケート調査です。
従来の価格調査の問題点としてアンケート調査では、消費者が許容する価格帯を正確に把握するのがむずかしいとお伝えしました。
価格を特定するような質問形式では、安い方が良いと答える消費者が多くなるのは容易に予測できます。
そこで、アンケート調査の対象となるターゲット層を絞ったり、回答を数値化して分析したりすると、プライシング戦略がうまくいく可能性があります。
最近注目されている調査方法は、専門的な知識やノウハウが求められるケースが多いため、必要に応じて専門家に外注する選択もおすすめです。
まずは、それぞれの価格調査のやり方を把握して、自分たちに適した方法がどれになるのかを考えてみてください。
価格調査の代表的な手法3選を徹底解説
価格調査の代表的な手法として、PSM分析・CVM分析・コンジョイント分析が注目されています。
それぞれの基本概要とやり方を解説します。
PSM分析
PSM分析(Price Sensitivity Meter)は、消費者にとっての適正価格を4つの項目から測定して分析する価格調査です。
昔から用いられているアンケート調査は、消費者の回答で得られた価格帯と実際の消費者の価格帯に差異が生まれていることが問題視されていました。
そこで、PSM分析をする前提でアンケート調査をすれば、従来の方法よりも正確に消費者行動を把握できるようになっています。
PSM分析のやり方
PSM分析は、アンケート調査とグラフ分析の2つのステップでおこなわれます。
まず、消費者が商品やサービスに対してどれほどの購買意欲を持っているのかを把握するため、4つの価格項目に分けてアンケート調査をします。
- 上限価格:高すぎて買えないと感じる価格
- 妥協価格:この品質ならこのくらいだろうと感じる価格
- 理想価格:金銭的な負担と品質の心配が生まれない価格
- 下限価格:これ以上安いと品質が心配になる価格
アンケート調査が終わったら、X軸を価格・Y軸をそれぞれに当てはまる割合として、折れ線グラフを作成します。
作成したグラフの交点を価格設定の目安にすると、消費者にも納得してもらいやすいです。
ただし、交点が必ずしも利益の最大化につながるとは限らないため、実際の売上状況や市場調査も踏まえて総合的な判断が求められます。
アンケート質問例
PSM分析のアンケート調査では、4つの価格項目に分けて質問事項を作成します。
- あなたはこの商品・サービスの価格をいくらから高すぎて買えないと感じますか
- あなたはこの商品・サービスの価格をいくらからから高いと感じますか
- あなたはこの商品・サービスの価格をいくらから安くてお得と感じますか
- あなたはこの商品・サービスの価格をいくらから安すぎて品質に心配が生まれますか
回答者には、それぞれの質問に対して具体的な金額を数字で記入してもらいます。
4つの質問は、それぞれ上限価格・妥協価格・理想価格・下限価格を調査しており、価格項目別に数値をグラフ化すれば許容価格帯がわかります。
CVM分析
CVN分析(Contingent Valuation Method)は、消費者やターゲット層の購入意向率を価格別に計算する価格調査です。
既存の商品やサービスの売り上げが低迷しているとき、一因に価格設定が関係していると予測できる場合は、CVM分析が有効です。
また、新しい商品やサービスを販売しようと企画しているとき、企業の価値観だけでは適正価格を設定できないことがあります。
CVM分析を用いて価格設定をすれば、消費者も手に取りやすくなります。
CVM分析のやり方
CVM分析は、アンケート調査とグラフ分析の2つのステップでおこなわれます。
あらかじめ特定の商品やサービスの価格帯を複数用意して、アンケートの協力者はランダムで質問に回答します。
サンプル数は多いほど効果的な分析が得られるため、目安は「ランダムで提示する質問の数×100」です。
たとえば、6種類の価格帯の質問を用意しているのであれば、6×100で600サンプル用意できれば十分です。
アンケート調査が完了したら、それぞれの価格帯に対する消費者の購入意向率を計算して折れ線グラフを作成します。
基本的に「はい」か「いいえ」で回答していく形式のため、購入意向率が高い価格帯が適正の可能性が高いです。
アンケート質問例
CVM分析のアンケート調査では、基準となる価格を提示して、その回答に応じて異なる質問を繰り返し聞いていきます。
たとえば、基準となる価格の質問が「この商品が10,000円の場合、あなたは購入しますか」とします。
- 「はい」と回答した人→「同じ商品が11,000円の場合、あなたは購入しますか」
- 「いいえ」と回答した人→「同じ商品が9,900円の場合、あなたは購入しますか」
実際の調査では、基準となる価格を10,000円だけではなく、5,000円・8,000円・12,000円など複数のパターンを用意します。
回答に応じてさらに追加の質問を繰り返すと、より消費者心理を理解しやすいです。
コンジョイント分析とは
コンジョイント分析とは、消費者が商品やサービスを選択するときに最も重視するポイントを把握する調査です。
消費者は、機能性・価格・デザイン・ブランド力などさまざまな要素を総合的にみて、購入に至ります。
コンジョイント分析自体、価格に特化した分析ではないものの「価格に見合っている仕様」「価格の違いによる購買意欲の変化」を探れます。
また、B2Cマーケティング(個人消費者向けビジネス)で用いられるケースが多いです。
コンジョイント分析のやり方
コンジョイント分析は、アンケート調査と統計解析の2つのステップでおこなわれます。
商品やサービスの属性と水準に関する項目を複数用意して、ランダムで混ぜ合わせながら複雑な条件カードを作成します。
続いて、アンケートの協力者にはカードを用いて回答してもらってください。
評価方法は、順位をつけて評価する順位評価・1〜7段階で評価する得点評価・2つのカードのどちらが優れているか評価する一対比較評価の3種類です。
正確な分析をするためには、ターゲットを絞って調査をおこなわなければなりません。
年齢や性別などでセグメントをしてアンケート調査をすれば、分析結果の信頼度も高まります。
アンケート質問例
コンジョイント分析のアンケート調査では、商品の試供品やサービスのお試し期間を設けて、実際の商品・サービスを利用してもらってから質問するのがおすすめです。
たとえば、商品の試供品を用意する場合は、以下のような質問ができます。
- この商品の機能とデザインをどちらも改良した(A)
- この商品のデザインはそのままで機能を改良した(B)
- この商品の機能はそのままでデザインを改良した(C)
- この商品の機能とデザインをそのまま(D)
A〜Dの試供品に対して「いくらで買いますか?」と質問します。
PSM分析やCVM分析は「はい」「いいえ」で回答するものが多いですが、コンジョイント分析は具体的な金額を数字で把握できる点が強みです。
消費者は「機能を重視するのか」「デザインを重視するのか」など価値観を理解すると同時に、理想的な価格帯を把握できるため、商品改良の必要性を判断してみてください。
価格調査で成功するためのポイント
価格調査は、実施するだけで効果が得られるわけではありません。
成功するためのポイントを解説します。
明確な目標を設定して計画を立てる
価格調査で成功するためには、明確な目標設定を立てることが何より重要です。
オンラインサイトの運営をする場合、競合他社の価格情報を洗い出して、自分たちの立ち位置がどこにあるのかを適切に把握して施策を考えていきましょう。
なんとなく売り上げを伸ばそうとしても目標がなければ、調査対象をどこに設定するべきか、分析結果に対する改善の方向性もわかりません。
途中で適切な分析ができていなかったと発覚しても、軌道修正をするまでに時間がかかり、利益が出ないどころか損失につながります。
明確な目標や計画を立てると、その後の販売までの過程を進めやすくなります。
自社の課題に適した質問と分析方法を選ぶ
アンケート調査では、明確な目標や計画に効果的な質問と分析方法を選びましょう。
ただ該当アンケートをして不特定多数の人たちに質問をしたところで、自社の商品やサービスの訂正価格を判断する材料になるとは限りません。
既存の商品・サービスに関する価格の見直しを検討しているのであれば、リピーターや過去は買っていたけど買うのをやめてしまった消費者をターゲットにします。
会員登録やメルマガ受診をしている消費者に向けて、アンケート調査の協力を仰ぐほか、景品や試供品のプレゼント・割引クーポンの配布などをするとサンプルを集めやすいです。
十分なサンプルを集められたら、どのようなグラフや分析ツールを用いるかも重要です。
最近ではアンケート調査の作成・集計・分析までおこなってくれる専用ツールも増えているため、必要に応じて活用してみてください。
競合他社の価格情報を効率的に収集する
アンケート調査のほかにも共同他社の価格帯をリサーチする作業も重要です。
自分たちの属している産業の相場や、商品やサービスの強みや魅力の部分が似ている競合他社との相違点を的確に把握できれば、自ずと改善ポイントが見つかるからです。
ただし、デスクトップリサーチのように手動で既存の統計やデータを収集する非効率な方法では、サンプル数が足りず分析に活用できません。
本格的に競合他社の価格情報を得るためには、専門ツールや外注依頼などを検討してみてください。
Webやデータベースに保存されている特定の情報だけを自動で抽出する専門ツールがあるほか、専門業者に依頼すればマーケティングの提案までしてもらえます。
効果的な調査ツールを選ぶ
従来のアンケート調査や市場調査には、多くの問題が指摘されてきました。
アンケート調査の場合、ターゲット層を絞りきれていないと最終的なデータ集計で、分析に役立たない数値が算出される可能性があります。
市場調査の場合、手動でデータ収集したりサンプル数の少ないデータベースの情報を分析に使ってしまうと、間違った価格設定をしてしまう可能性があります。
今まで価格調査やデータ分析をした経験がない場合は、時間と労力の無駄になるどころか、損害につながりかねないため注意が必要です。
自分たちで調査をすると決めたら、効果的な調査ツールを活用するようにしてください。
また、専門的な知識やノウハウを持っているマーケティング会社に調査依頼をすれば、より確実な改善点を見つけられる可能性があります。
価格調査を活用した事例
価格調査を活用して成功した企業の実例を紹介します。
モスバーガーの差別化戦略
日本発のハンバーガーチェーン店のモスバーガーは、世界的にも知名度の高いマクドナルドとの競合との競合に負けないため、差別化戦略を打ち出しました。
モスバーガーといえば、マクドナルドと比べて少し高いイメージを抱く方も多いです。
その「少し高いな」と感じる価格設定こそがモスバーガーの戦略です。
価格を上げる代わりに、ライスバーガーのようなオリジナル商品の開発、国産食材を使った健康イメージの押し出し、ご当地バーガーの発案で地域と密着などの企画があります。
さらに、動物性タンパク質を使わないソイパティや、パンの代わりにレタスを使ったグルテンフリーのモスの菜摘など多様なニーズにも向き合いました。
こういった価格とブランド力を活かした差別化戦略で、モスバーガーはハンバーガーチェーン業界で国内2位を維持し続けています。
サイゼリヤの低価格戦略
ファミリーレストランのサイゼリヤは、徹底的な効率化とシステム化を実現して圧倒的な低価格での食事提供を実現しました。
物価高騰に伴い手軽にいけてたファミレスすら高く感じる人が増える中、ほとんど値上げをせずに営業し続けているサイゼリヤは、若い世代や家族連れから高く支持されています。
安さを維持するポイントは、自社農場の取得と効率重視のシステム導入です。
外部から仕入れる必要がなければ物価上昇の波に巻き込まれて、仕入れ値が高くなったらメニュー料金も値上げしなければならない事態を避けられます。
また、生産性向上に特化した業務をするだけの専門部署が設置されており、常に効率化を最優先にしたシステムが経営を支えます。
このように独自のシステム戦略を導入したことで、低価格の売り出しに成功しました。
東京ディズニーランドの価格戦略
東京ディズニーランドは、過去10回以上の値上げを繰り返していますが、来場者数が減ることはありません。
ディズニーファンから人気のあった年間パスポートも廃止しており、これからは来園するたびにチケット料金が発生します。
それでも客足が遠のかない理由は、値上げした料金でも行きたいと思えるアトラクションやエンターテインメントを常にアップデートしているからです。
新エリアがオープンしたり、季節ごとに今しか見られないパレードやデコレーションがされていることで、来場者の購買意欲を高めています。
さらに、以前まではどの時期でもチケット料金は同額でしたが、現在は平日や休日などでチケット料金が異なる需要価格を採用しています。
来場者のニーズや購買行動を分析して、柔軟に価格設定をすることで、より高い利益を得られるようになりました。
価格調査競合他社と差をつけるために効果的
価格調査は、既存の商品・サービスの売り上げが低迷しているときや新規の商品・サービスの販売を検討しているときに効果的なマーケティング戦略です。
ただ安くすれば良いのではなく、アンケート調査で自分たちが競合他社とどの部分で差別化できる可能性があるのかを分析することが重要です。
専門ツールを使ったりマーケティング会社に外注したりして、適正価格を決めましょう。
価格調査ならAXIA Marketing
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参考文献
・価格調査とは| 適正なプライシングに役立つ調査手法3つ
・価格調査とは?調査方法とPSM分析・CVM分析について解説
・価格調査のやり方| PSM分析やCVM分析で価格受容性を調べよう
・価格調査のやり方。安すぎても買えない?ちょうどいい価格を知るためのPSM調査について
・価格受容性調査とは? PSM分析とCVM分析を理解して価格戦略策定につなげる方法
・【市場調査】PSM分析とは|メリット・注意点や調査方法・分析方法を解説
・価格調査とは?概要から重要性、代表的な調査方法まで解説!