海外進出に必要な5つのこと|市場調査~現地パートナー探しまで
国内市場が縮小している中、新たな顧客獲得、売上拡大のために海外進出を検討している企業が近年ますます増加しています。
海外進出で成功するためには、事前の入念な市場調査や現地パートナーとの提携など、様々な準備がカギを握ります。
そんな中、「海外進出を検討しているけど、どのような準備をすればよいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、海外進出を検討している方に向けて、海外進出に必要なことをまとめて一気にご紹介します。
海外進出の際の注意点もわかりやすく解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
”今”日本企業に海外進出が求められる3つの理由
今、日本企業に海外進出が求められている理由として、主に以下の3つが挙げられます。
【日本企業に海外進出が求められている理由】
- 日本の市場規模が縮小しているから
- 新たな販路拡大や知見獲得に繋がるから
- 円安により日本製品の価格競争力が高まっているから
日本の市場規模が縮小しているから
日本は少子高齢化が進み、国内市場の縮小が続いています。特に消費者市場は人口減少に伴って縮小しており、企業が国内で成長を維持するのが難しくなっています。このような縮小の一途をたどる日本においては、ビジネスの規模を拡大するのにも限界があります。
一方で、海外、特に東南アジアなどの新興国市場は、経済成長が著しく、消費者の購買力やインフラ投資が急速に拡大しています。例えば、世界一の人口を抱えるインドでは、急速な経済成長に伴い自動車や家電などの需要が増加しており、自動車メーカーや家電メーカーにとって一大市場となっています。
このように、日本においてビジネスの拡大が見込めなくなっている一方、ひとたび海外に目を向けると広大な市場が広がっており、自社の事業規模を拡大する絶好のチャンスとなっています。
新たな販路拡大や知見獲得に繋がるから
海外に進出することで新たな販路を開拓したり、現地ならではの知見や技術を獲得できるチャンスがあります。現地企業と提携することで、その企業が持っている販路をそのまま活用して自社製品を広めることも可能です。
特に、アメリカやドイツなどの先進国では、AIやIoT、バイオテクノロジー、再生可能エネルギーなどの最先端技術の研究が進んでいます。これら新技術の進化に乗り遅れないためにも、海外に進出し、現地の最新技術をいち早くキャッチアップすることの重要性が高まっているのです。
円安により日本製品の価格競争力が高まっているから
日本ではここ数年の間、円安傾向が続いています。ドルとの関係で見ると、2022年ころから徐々に円安の動きが見られ始め、2024年6月頃には1ドルが160円にまで達しました。この傾向は今後も続くとみられています。
円安時には、日本円の価値が他の通貨に比べて低下します。これにより、同じ製品でも、輸出価格が押さえられ、海外では割安な価格で提供できるようになります。
同等の製品をより安く提供できるため、市場における価格競争力が向上し、消費者から選ばれやすくなるというメリットがあります。円安が続いている今こそ、日本製品の価格優位性を武器に海外市場への拡大を狙う絶好のチャンスといえるでしょう。
海外進出に必要な5つのこと
海外進出に当たっては、様々な準備が必要となります。進出先の国や展開する事業の内容によって必要な準備は多少異なりますが、特に重要なことを以下の5つにまとめました。
【海外進出に必要な5つのこと】
- 現地市場調査
- 進出計画・戦略の検討
- リスク対策
- 人員の確保
- 現地パートナーとの関係構築
現地市場調査
海外進出する前段階として何よりも大事なのが現地市場調査です。現地について何も知らずに、行いたい事業ありきで検討を進めても、海外進出で成功することはできないでしょう。
現地市場調査にあたり、調査すべき項目としては以下のようなものが挙げられます。
- 市場の規模・成長率:その国における対象事業の可能性や売上見込みを把握する
- 現地の文化・慣習:注意すべき文化・慣習を把握しておく
- 現地の業界トレンド:現地特有のトレンドを押さえた売れる製品/サービスを開発する
- 現地人のニーズ:現地人の属性やニーズを的確に把握し、適切にローカライズを行う
- 競合の存在:同じ国にすでに参入している競合他社、現地で同じ事業を行う地場企業など、主要なプレイヤーを把握しておく
- サプライチェーン:現地で生産・販売を行うためのサプライヤー、流通業者、卸業者等を把握する
- 法規制・税制:現地特有の法規制や税制を確認する
これらの項目について、しっかりと調査しておくことで、現地の人に受け入れられる製品やサービスを展開でき、事業拡大に成功することができるでしょう。
なお、海外の市場調査は、国内の市場調査と比べて情報リソースが限られており、現地のネットワークの活用も必要になるなど、高度な情報収集力が必要となります。そのため、精度の高い調査を実施するためにも、専門の調査会社やコンサルタントに依頼することがおすすめです。
進出計画・戦略の検討
海外進出に当たっては、当然ながら進出計画や戦略の策定が必要となります。どのような狙いのもとで、どのような形態/方法で進出していくかを具体的に固めておかなければ、海外の事業で成功を収めることはできません。
計画や戦略を検討する際には、日本との違いも意識することが重要です。日本人に人気があっても海外の人の好みには合わなかったり、現地の文化や慣習にそぐわなかったりする場合もあります。そのため、自社のブランドイメージを現地の文化に合わせて柔軟に変えていくような戦略の立て方が必要となるでしょう。
このように、進出計画や戦略の検討は、進出先の国についての豊富な知識も必要となるため、自社の人員だけでは適切な検討ができない場合も多々あります。そのため、現地の事業に詳しい専門家やコンサルタントに戦略立案をサポートしてもらうことを検討しても良いかもしれません。
リスク対策
海外での事業展開に失敗しないために、現地特有の様々なリスクに対処することが必要となります。
海外進出に当たって想定されるリスクとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 現地特有の法律や政策の変更等により事業が制限されるリスク
- 現地人との文化・慣習面で摩擦が生じるリスク
- 自然災害や感染症等のリスク
- 犯罪や暴動など治安に関するリスク
- 為替変動などの経済的なリスク
海外進出を検討する際には、想定されるリスクを幅出ししたうえで、それぞれに対する対処法や解決策を検討しておくようにしましょう。例えば、法規制のリスクや現地人との摩擦が生じるリスクについては、事前に法令調査や市場調査を入念に行っておくことで、リスクが現実化することを避けることができると考えられます。
人員の確保
海外事業の展開に必要な人材を確保することも重要な準備の一つです。現地の言葉に堪能な人、現地の法規制や税制に精通している人、別の会社で海外事業を行った経験がある人など、様々な人員を確保しておく必要があります。
必要な人材を社内で確保することができない場合には、現地スタッフを採用したり、専門のコンサルティング会社に支援を求めることも有効な手段となるでしょう。
現地パートナーとの関係構築
信頼できる現地パートナーとの関係構築も、海外進出の成功に欠かせない要素です。海外に進出している多くの日本企業は、現地の企業と合弁で会社を設立したり、現地企業と提携関係を結んで事業を行っています。
現地パートナーと関係を構築できれば、そのパートナーが持っている販路を活用したり、顧客を紹介してもらったり、現地の人しか知らないような貴重な情報を共有してもらったりと、様々なメリットを得られるでしょう。
また、現地パートナーと関係を結ぶためには、自分たちも現地パートナーに対してどのようなメリットを提供できるかを考えておく必要があります。現地では定着していない独自の技術力やノウハウ、日本企業としてのブランド価値など、自社が現地パートナーに対してどのような価値を与えられるかを考えておくようにしましょう。
日本企業が海外に進出するための7つのステップ
日本企業が海外に進出するために必要な事項を押さえた上で、これらを時系列に従ってまとめました。海外での事業展開を進める際には、以下のステップに従って準備を進めていくとよいでしょう。
【日本企業が海外に進出するための7つのステップ】
- Step 1:市場調査と進出計画の立案
- Step 2:進出形態の選択と現地の法規制確認
- Step 3:現地パートナーやサプライチェーンの構築
- Step 4:商品やサービスのローカライズ
- Step 5:試験運営と市場適応の調整
- Step 6:本格展開とブランド定着
- Step 7:継続的なモニタリングと戦略改善
Step 1:市場調査と進出計画の立案
海外進出の第一歩は、進出予定の現地市場を徹底的に調査し、十分な情報・データに基づいた進出計画を立案することです。このステップは進出後の成功を大きく左右する最も重要なフェーズです。
具体的な取り組みとしては以下のようなものが挙げられます。
- 市場調査の深掘り
- 実際に進出することを前提としたより解像度の高い調査
- 調査会社を依頼して本格的に現地情報の取得を進める
- 競合分析
- 現地における競合企業の把握と徹底したベンチマーク
- 具体的な進出計画の策定
- 明確なKPI(市場シェア、売上目標、初期投資回収期間)の設定
- 必要なリソース(人材、資金、設備等)の見積り
ここでは、市場調査を単なる情報収集で終わらせず、「現地市場においてどのようにして競争優位性を築いていくか」という具体的な戦略に落とし込むことが重要となります。
Step 2:進出形態の選択と現地の法規制確認
次に、海外進出の形態と、進出先の国の法規制を確認します。進出形態を選択する際には、現地の法規制や税制、ビジネス環境に適応した形式を選ぶことが重要です。法規制の理解が不十分だと、進出後に深刻なトラブルに発展するリスクがあります。
具体的な取り組みとしては以下のようなものが挙げられます。
- 進出形態の精査
- ジョイントベンチャーの場合:提携先企業候補の信用調査の実施
- 現地法人設立の場合:法人設立のプロセスや規制を詳細に把握
- フランチャイズの場合:現地パートナーとの契約条件や支援体制を確認
- 法規制の詳細確認
- 弁護士などの専門家に相談し、現地法規制の細かいところまで詳細に確認
- 注意すべき法規制のリストアップと法令順守のための対策の検討
海外進出の形態を選択するにあたっては、弁護士や会計士、税理士等の専門家に各種規制や手続きを確認するとともに、自社が進出する目的と照らし合わせて適切な形態といえるかという視点も忘れてはいけません。
Step 3:現地パートナーやサプライチェーンの構築
海外進出の成功には、現地のビジネスネットワークを構築し、円滑な事業運営を支える基盤を作ることが不可欠です。そのためにも信頼できるビジネスパートナーを見つけること、安定したサプライチェーンを確保することが重要となります。
具体的な取り組みとしては以下のようなものが挙げられます。
- 現地パートナーとの関係構築
- 契約だけでなく、定期的な会議やトレーニングを通じて信頼関係を構築
- パートナー企業の業績や経営状況の継続的なモニタリング
- サプライチェーンの確保・最適化
- 複数の調達先を確保し、供給リスクの分散を図る
- 現地物流業者との契約交渉を行い、コストと効率のバランスを最適化する
現地の文化や商慣習に深く根ざしたパートナーシップを築くことで、事業失敗のリスクを極限まで減らすことができます。
Step 4:商品やサービスのローカライズ
進出先の国の文化やニーズに合わせた商品やサービスの調整(ローカライズ)は、海外での顧客獲得のカギとなります。ローカライズが不十分だと、どんなに質の高い製品であったとしても、現地の人から受け入れられません。
具体的な取り組みとしては以下のようなものが挙げられます。
- 商品・サービスのローカライズ
- 現地の消費習慣に基づいた新商品の投入(宗教に配慮した食材など)
- パッケージやラベルを現地言語に対応させる
- マーケティングのローカライズ
- 現地の人気インフルエンサーを活用したSNSマーケティング
- 現地文化に合わせた広告やキャンペーンの企画
商品やサービスを適切にローカライズするためには、Step 1で行った市場調査の結果がカギとなります。このステップにおいて十分なローカライズができない場合には、市場調査が不十分であった可能性が高いため、必要に応じて補足の調査を行うことも検討しましょう。
また、ローカライズに当たっては、現地の人々の文化や慣習、宗教に対する尊重・理解の気持ちを持つことを忘れてはいけません。現地の人々に寄り添った商品やサービスを提供することができれば、現地の人々もその気持ちに応じて、自社の商品やサービスを受け入れてくれるでしょう。
Step 5:試験運営と市場適応の調整
ローカライズを追えたら、試験的に商品やサービスを導入します。進出初期に試験的な運営を行うことで、リスクを最小限に抑えつつ、現地での課題を把握します。初期段階でのフィードバックをうまく取り入れて改善することで、本格的な市場への投入に備えましょう。
具体的な取り組みとしては以下のようなものが挙げられます。
- データの収集と分析
- 試験店舗での売上データ、顧客層、人気商品の分析
- 現地スタッフからのオペレーション改善提案の収集
- フィードバックを受けた改善
- 試験結果に基づいて、商品設計や提供形態を見直し・調整
試験運営は改善点を見つけるために行うものであるため、失敗を恐れず、フィードバックを真摯に受け止めて改善していく姿勢が重要となります。
Step 6:本格展開とブランド定着
試験運営を経て、事業を本格展開し、現地市場でのブランド認知度を高めていきます。また、CSR活動など現地の人々に貢献するような活動も行うことで、現地の人々から広く受け入れてもらえるようになるでしょう。
具体的な取り組みとしては以下のようなものが挙げられます。
- スケールアップ
- 販売チャネルの拡大(店舗数増加、オンライン販売の強化)
- マーケティング予算の増額とキャンペーン強化
- CSR活動
- 雇用創出・教育支援等による地元社会への貢献(雇用創出、教育支援)
- 環境保護の取り組みなど、社会的意義のある活動の実施
単なる「事業展開」ではなく、「地域社会に溶け込む企業」としての信頼を築くことが、現地で事業を継続的に行っていくためのカギとなります。
Step 7:継続的なモニタリングと戦略改善
進出後も継続的に市場動向をモニタリングし、事業戦略を適宜見直していきます。特に、開発途上地域は、市場の変化や経済成長のスピードが速いため、絶えず市場環境を観察し、変化に柔軟に対応していくことが重要となります。
具体的な取り組みとしては以下のようなものが挙げられます。
- データ・フィードバックの収集・活用
- 売上データ、競合動向、顧客ニーズの変化などの各種情報を分析
- 現地スタッフや顧客からのフィードバックの収集
- 戦略の見直し・改善
- 新製品やサービスの投入
- デジタル技術を活用したオペレーション効率化
もちろん、海外進出のステップは進出先の国の事情や、各社の目的・業態等に応じて変わってきます。しかし、多くの場合、上記のようなステップを経ることで、海外進出をスムーズに進めるとともに、進出を果たした後も、中長期的に事業を安定化させることができるようになるでしょう。
海外進出で失敗しないための3つの注意点
海外進出で失敗しないためには、いくつかのポイントに注意する必要があります。その中でも特に重要なポイントとして、以下の3つが挙げられます。
【海外進出で失敗しないための注意点】
- 入念な市場調査を行う
- 現地特有の法規制や税制を把握しておく
- 現地の文化・マナーに配慮する
入念な市場調査を行う
海外進出するにあたっては、事前にしっかりと市場調査を行っておくことが重要です。主な調査項目は、上述した通りですが、これらを漏らさずに調べておくことが、海外事業の失敗を避けるために不可欠です。
企業が海外進出に失敗するよくあるパターンとして、以下のようなものが挙げられます。
- 投入した製品がその国の人々の生活や文化に合わず、ほとんど売れなかった
- 思わぬ法規制や制度の罠に直面して思い通りのビジネスを展開できなかった
- 販売チャネル選びに失敗し、広告費用を無駄に投下することとなってしまった
これらの失敗は、事前に入念な市場調査を行うことで回避することができ、その意味でも市場調査は非常に重要です。
市場調査の初期段階では、外務省やJETROなどの公的機関が発行する資料や、書籍・インターネットなどの公開情報の収集から開始することから始めましょう。
その後、本格的に進出検討を進める場合には、非公開情報も含めた調査や客観的な視点からの分析が必要となるため、専門の調査会社・コンサルティング会社に委託することをおすすめします。
現地特有の法規制や税制を把握しておく
進出先の法規制や税制を正確に理解しないと、事業運営に重大な支障が生じる可能性があります。特に、輸入規制、労働法、環境規制、税制などの項目は注意が必要です。
現地の法規制や税制については、弁護士や税理士などの専門家にも相談しながら一つ一つ丁寧に対応していく必要があります。
特に、自社の事業に影響をもたらす法規制については、市場調査の初期段階で確認しておくべきです。国によっては、そもそも自分たちが行おうとしている事業が制限されていることがあり、そのような場合には、最悪の場合、検討を断念しなければならなくなります。
現地の文化・マナーに配慮する
進出先の文化や商慣習を無視すると、現地の顧客やビジネスパートナーの信頼を失い、事業の成功が難しくなります。現地の文化やマナーへの理解と配慮は、安定して事業を営むための必須条件です。
具体的には、以下のような点に注意する必要があります。
【宗教や伝統への配慮】
例えば、ヒンドゥー教の国インドでは牛肉を使用した商品は避ける必要があり、イスラム教国では豚肉やアルコールの取り扱いが禁じられている場合があります。
【ビジネスマナー】
国によっては、ビジネスの場で「時間厳守」に対する意識が柔軟な場合があり、会議などが遅れることも想定してスケジュールを組む必要があります。
【広告やブランド戦略】
日本では何ら問題のない表現でも、現地の人にとっては、不快に感じたり、タブーに触れてしまう可能性があります。
文化やマナーについては、現地のスタッフやパートナーにも確認し、しっかりと理解しておくように心がけましょう。
海外進出支援ならAXIA Marketing
AXIA Marketingでは、海外進出を検討している企業様に向けて、海外調査・進出準備をお手伝いしております。
世界中に計50万名規模の有識者ネットワークを有しており、公開情報では知ることのできない現地の深い情報まで徹底的にリサーチ・分析し、海外進出の検討をサポートします。
AXIA Marketingの海外進出支援サービスの詳細はこちらをご覧ください。
1時間の無料オンライン相談も承っております
お見積りなどもお気軽にお問い合わせください
参考文献
・人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在) – 総務省統計局