インドネシア進出した日系企業の事例13選!成功のためのポイントを解説
世界4位の人口、日本の5倍の国土を持つインドネシア。中間層の増加はASEANの中でも著しく、今後も成長が予想されます。
世界でも有数の親日国でもあるインドネシアで、日系企業はどのようなビジネスを展開しているのでしょうか。
この記事では以下の内容について記載しています。
- インドネシアの基本情報
- インドネシア進出に成功した日系企業
- インドネシアから撤退した日系企業
- 日系企業のインドネシア進出を成功に導くの3つの要素
貴社のインドネシア進出にお役立ていただけると幸いです。
インドネシアの基本情報
インドネシアに関する基本情報を紹介します。
正式名称 | インドネシア共和国 Republic of Indonesia |
面積 | 189万2,410平方キロメートル(2023年、日本の約5倍) |
人口 | 2億7,870万人(2023年、出所:中央統計庁) |
首都 | ジャカルタ 人口1,133万人(2023年、出所:ジャカルタ特別州住民登録局) |
民族 | 約300(ジャワ人、スンダ人、マドゥーラ人等マレー系、 パプア人等メラネシア系、中華系、アラブ系、インド系等) |
言語 | インドネシア語 |
宗教 | イスラム教、ヒンドゥー教、キリスト教ほか |
主要産業 | 製造業(19.2%):輸送機器(二輪車など) 飲食品など農林水産業(13.2%):パーム油、ゴム、米、ココア、キャッサバなど |
インドネシア基本データー外務省
日系企業がインドネシアに進出するために抑えるべき3つのポイント
インドネシアの人口は世界4位(2億7千万人)で、30歳未満が5割を占める非常に若い国です。2030年には3億人を突破すると予測され、人口増加は2065年ごろまで継続とみられています。人口減少を続ける日本と比べ、インドネシアは日系企業にとって非常に魅力的な進出先と言えるでしょう。
ここでは日系企業が進出する際に抑えておくべきポイントを3つ紹介します。
インドネシアは世界でも有数の親日国家
インドネシアは世界最大の親日国であることは、日系企業がビジネスを行う上で大きな利点です。
もともとオランダの植民地だったインドネシアですが、1942年に日本軍がインドネシアへ侵攻。オランダ軍を破ったことで1945年までの3年間は日本領となりました。その後日本が降伏しインドネシアは独立を宣言しましたが、オランダはそれを認めず再び侵攻しました。
オランダ軍からの侵略を受ける中、残留した日本軍がインドネシアに加勢した結果、無事独立を果たしたのです。この出来事から、多くの国民が親日派になったとされています。また1954年から現在まで続くODA(政府開発援助)による経済発展の支援も親日国家となった要因です。
インドネシアにおける日本の製品の人気は非常に高く、中間層の増加によって今後ますます需要が拡大すると予測されています。
インドネシアのASEANにおける経済的影響力
インドネシアはASEAN内でも最大規模の経済大国であり、その影響力は巨大です。
インドネシア経済を支えるのが人口増加による民間消費で、GDPに占める割合は6割に上ります。
総人口に対して生産年齢人口の割合が多い「人口ボーナス期」は2040年まで継続すると予測されており、民間消費の増加は今後も継続するでしょう。
インドネシアは地理的にも東南アジア全域における重要な位置にあり、貿易や物流のハブとしての機能を果たしています。マラッカ海峡やスンダ海峡を通じて日本や中国、ヨーロッパに向けた輸送路が確保され、ASEAN域内外の貿易活動に大きく寄与しています。
インドネシアの豊富な資源
インドネシアは豊富な自然資源でも知られ、国際市場における競争力の源泉となっています。
- 鉱物資源:世界有数の鉱物資源を有する国で、特に銅、金、錫、天然ガス、石炭が豊富です。
- 森林資源:世界で3番目に広い熱帯雨林を有しており、木材やパルプ、バイオ燃料の重要な供給源となっています。
- 海洋資源:広大な海域に恵まれ、漁業が非常に盛んです。またインドネシアの海域には石油や天然ガスが埋蔵されています。
- 農業資源:インドネシアはパーム油、コーヒー、カカオ、ゴム、スパイスなどの主要生産国です。中でもパーム油は世界最大の輸出国であり、国内外で広く利用されています。
- 再生可能エネルギー資源:地熱エネルギー、水力、太陽光、風力といった再生可能エネルギーのポテンシャルも豊かであり、今後のエネルギー供給源として注目されています。
インドネシア進出に成功した日系企業10選
インドネシアには数多くの日系企業が進出しています。今回はその中でもマーケット環境に柔軟に対応した日系企業10社を厳選しました。いずれの企業もインドネシア市場における自社の課題を明確にし、適切な施策を取ることでシェアを獲得しています。
それぞれの企業がどのように市場で成功を収めたのか、詳細を見ていきましょう。
【インドネシア進出に成功した日系企業10選】
- ヤクルト
- 大塚製薬
- ユニ・チャーム
- ピジョン
- 丸亀製麺
- ホンダ
- グリコ
- 吉野家
- ユニクロ
- 資生堂
1.インドネシアが日本に続く巨大市場に成長「ヤクルト」
ヤクルトは積極的なマーケティングと地域密着型の配達システムで、インドネシアを日本に次ぐ世界2位の市場に成長させることに成功しました。インドネシアでは現在、1日700万本以上のヤクルト製品が購入されています。
進出状況
- 進出時期:1991年
- 事業内容:乳酸菌飲料の製造・販売
- 成果:インドネシア国内で広く認知され、飲料市場の大手ブランドとなる
課題と成功要因
ヤクルトの特徴である「ヤクルトレディ」による訪問販売はインドネシアでも行われており、大きな成果を上げました。インドネシアでは卸や問屋を通して販売するルートが一般的ですが「ヤクルトレディ」による訪問販売で、消費者との信頼関係を構築しています。
2.ポカリスエットを年間6億本販売「大塚製薬」
ポカリスエットは、インドネシアでも国民的スポーツドリンクとしての地位を確立しました。年間6億本もの販売実績を持ち、高温多湿なインドネシアでの水分補給の重要性を訴求することで、強固な市場基盤を築いています。
進出状況
- 進出時期:1974年
- 事業内容:スポーツドリンク「ポカリスエット」の製造・販売
- 成果:年間6億本販売、インドネシアの主要スポーツドリンクブランドに成長
課題と成功要因
当初、日本と同じくスポーツ飲料としてのマーケティングを行っておりましたが、スポーツが盛んでないインドネシアではなかなか受け入れられませんでした。そこでインドネシアの気候や風習を徹底的に調査し、水分補給の必要性を教育することで他ブランドとの差別化を図ったのです。
3.インドネシアの紙おむつ・生理用品シェアNo.1「ユニ・チャーム」
ユニ・チャームは、現地のニーズに合わせた製品を開発し、インドネシアにおいて紙おむつや生理用品市場でNo.1シェアを誇る企業に成長しました。販売網や、低価格帯の商品ラインナップをそろえることでインドネシア市場に浸透しています。
進出状況
- 進出時期:1997年
- 事業内容:紙おむつ・生理用品の製造・販売
- 成果:紙おむつ・生理用品で市場シェアNo.1
課題と成功要因
すでに先行していたP&Gなどの競合他社との差別化が課題でしたが、ユニ・チャームはインドネシアの市場を分析し、一枚入りのおむつや庶民が購入可能な低価格帯の製品を開発し、シェアを拡大しました。
また現地法人に役員クラスの人材を配置し、意思決定スピードを上げることに成功。市場の変化や他社に後れを取らない体制を作り上げたのです。
4.インドネシアの哺乳瓶シェアNo.1「ピジョン」
ピジョンは、インドネシアにおいて哺乳瓶のシェアNo.1を誇る企業です。日本の高品質な育児用品をインドネシア市場に提供し、インドネシア市場において約6割のシェアを獲得しました。
進出状況
- 進出時期:1994年
- 事業内容:育児用品の製造・販売
- 成果:哺乳瓶シェアNo.1
課題と成功要因
インドネシア市場では価格競争が大きな課題でしたが、中間層に対して品質の高さを前面に押し出すことで課題を克服しました。また現地の病院との対話による製品開発の結果、ピジョン製品を使った子供が母親になった時に、再度ピジョン製品を購入する好循環を生み出すことに成功しています。
5.インドネシア進出10年で100店舗まで拡大「丸亀製麺」
丸亀製麺は現地の食文化に合わせたメニュー開発と、日本のオペレーションを活かした店舗運営によりインドネシアでも成功を収めています。2013年の出店からわずか10年で100店舗にまで拡大しました。
進出状況
- 進出時期:2013年
- 事業内容:うどん専門店の運営
- 成果:進出10年で100店舗展開
課題と成功要因
外食産業の海外進出における大きな課題の一つは原材料の仕入れです。丸亀製麺は、現地大手製粉会社と提携することで、原材料の小麦を安定的に仕入れることができています。
イスラム教徒が多いことによる豚肉やアルコールが使用できないという条件のなか、独自メニューを開発し、ローカライズに成功しました。
6.インドネシアでバイク販売数No.1「ホンダ」
ホンダはインドネシアにおいてバイク市場で8割のシェアを誇り、バイクのことを「ホンダ」と呼ぶ人もいるほど浸透しています。信頼性の高い製品と優れたアフターサービスが消費者に支持されました。
進出状況
- 進出時期:1971年
- 事業内容:二輪車の製造・販売
- 成果:バイク販売数No.1
課題と成功要因
2000年代に中国メーカーの参入による価格競争が激化しましたが、ホンダは安定した品質と耐久性を武器にシェアを維持。現地のディーラーによる充実したアフターサービス網によって、他社の新規参入を防ぐことに成功しました。
7.インドネシアに最大規模の工場を設立「グリコ」
グリコはインドネシアに最大規模の工場を設立し、現地生産を強化しました。日本でも普及している「ポッキー」は、インドネシアの高所得層を中心に人気を博しています。
進出状況
- 進出時期:2014年
- 事業内容:菓子・アイスクリームの製造・販売
- 成果:最大規模の工場設立、菓子市場でのシェア拡大
課題と成功要因
収入格差が激しいインドネシアでは、グリコの製品を誰でも食べれるわけではありません。そのためグリコは高所得者層をターゲットにしたマーケティング施策を実行しました。
また暑い気候に合った製品改良や、健康志向の製品ラインナップを強化することで、現地市場に適応しています。
8.インドネシアの嗜好に合わせたメニューで成功「吉野家」
吉野家は現地の嗜好に合わせたメニュー開発に取り組み、牛丼チェーンとしての成功を収めました。特に、現地の辛味やスパイスを取り入れたメニューが人気を博し、日本食としての地位を確立しています。
進出状況
- 進出時期:2010年
- 事業内容:牛丼チェーンの運営
- 成果:現地の嗜好に合わせたメニュー開発で120店舗以上の出店
課題と成功要因
吉野家は「日本でNo.1の牛丼」というキャッチコピーで進出しました。調理方法は日本と同様ですが、インドネシアに合わせて甘めの味になっています。
他にもインドネシアの調味料「サンバル」を乗せた牛丼など、インドネシア人の舌に合わせて日本の味をカスタマイズするメニューづくりによって受け入れられました。
9.インドネシアでは夏でもフリースが売れる?「ユニクロ」
ユニクロはインドネシアでも成功を収め、60店舗以上を展開しています。大型のショッピングモールには必ずといっていいほど店舗があり、ユニクロ製品の偽物が出回るほどの人気です。
進出状況
- 進出時期:2013年
- 事業内容:アパレルの製造・販売
- 成果:60店舗以上の展開
課題と成功要因
インドネシアは高温多湿の気候ですが「室内の冷房がきつすぎる」などの理由で、冬物のヒートテックやダウンが真夏でも売れます。またイスラム教徒の女性が着用する「ヒジャブ」など、現地のニーズに合わせた品揃えが現地で愛されています。
10.現地企業との合弁会社を設立「資生堂」
資生堂はインドネシアの美容市場でも高いブランド力を武器に、高所得層の支持を得ています。1994年には現地法人との合弁会社を設立し、価格帯を抑えた製品群をリリースしました。
進出状況
- 進出時期:1958年
- 事業内容:スキンケア・コスメティック商品の製造・販売
- 成果:現地企業との合弁会社設立、ブランド力向上
課題と成功要因
今後も成長が見込まれるインドネシア市場でシェアを獲得するには、増加している中間層の消費者を取り込む必要がありました。資生堂は現地の企業との合弁会社を設立し、よりリーズナブルなブランドの立ち上げを行いました。
インドネシアから撤退した日系企業3選
多くの企業がインドネシア進出に成功している一方で、市場環境に適応できず撤退を余儀なくされた企業も多く存在します。各社がどのような壁に突き当たったのかを知ることで、事前にリスクを把握しておきましょう。
今回はインドネシアから撤退した企業を3つご紹介します。
【インドネシアから撤退した日系企業3選】
- 楽天
- セブン-イレブン
- 昭和電工
1.インドネシアのEC市場を読み切れなかった「楽天」
楽天は2011年にインドネシアのEC市場に進出しましたが、トコペディアなどの現地の強力な競合に押され、2016年に撤退しました。
インドネシアではもともとSNS上での直接取引が盛んです。楽天のようなホームページを介した取引をにはなじみがなく、広まりにくかったのが主な要因です。
2.インドネシアの法規制に適応できなかった「セブン-イレブン」
セブン-イレブンは2009年にインドネシア市場に参入し、都市部を中心に店舗展開を行いました。インドネシア政府は小規模店舗の外資参入を禁止しており、セブン-イレブンは直営での経営ができませんでした。そのため現地のコンビニである「アルファマート」や「インドマレット」との競争に勝てなかったのです。またアルコール販売の規制が強化されたことも影響し、2017年に撤退を余儀なくされました。
3.現地人材の育成に苦戦「昭和電工」
昭和電工は2005年にインドネシアに進出し、現地での工場運営を開始しましたが、2019年に撤退しました。撤退理由は現地での優秀な人材の確保や育成に苦戦したこと、そして人件費の高騰によるコスト圧迫です。さらに労働環境の改善に必要な投資も重なり、最終的に撤退を決断しました。
日系企業のインドネシア進出を成功に導くの3つの準備
インドネシアへの進出を検討する際は、新規事業の採算性やリスクを事前に把握しておかなければなりません。
インドネシア進出における事前準備を大まかにまとめると以下の通りです。
【進出を成功に導くための3つの準備】
- 市場調査に基づいて進出計画を立てる
- 現地調査で市場を深く理解する
- 自社に合った現地パートナーを探す
それぞれについて詳しく解説します。
1.市場調査に基づいて進出計画を立てる
市場調査は大きく分けて2つの段階に分かれます。
- デスクリサーチ
- 具体的な調査・分析
それぞれ詳しくご紹介します。
デスクリサーチ
市場調査の初期段階では、外務省・JETROなどの公的機関や、書籍による公開情報を収集することからはじめましょう。
収集すべき情報は以下の通りです。
- インドネシアの宗教と習慣
- 商習慣や法律、ビジネスコスト
- 他社の進出状況
進出プラン策定の際にメリット・デメリットが、具体的にイメージできる状態にしておくことが大切です。
具体的な調査・分析
デスクリサーチが完了したら、インドネシア市場をもう少し深く分析するフェーズに移ります。
この段階では公開されていない情報や、客観的な分析が必要になるため、信頼できるコンサルティング会社に委託することをおすすめします。
この段階では次のような観点で調査・分析をするとよいでしょう。
- 市場分析:統計データを用いて市場規模や、経済・政策が市場に与える影響の把握
- 顧客分析:自社のビジネスに対するニーズ調査
- 競合分析:先行して進出している企業や、競合になり得る現地企業の動向の把握
- 自社分析:市場・顧客分析による、自社のポジショニングの分析
- 規制・優遇措置の分析:インドネシアにおける自社ビジネスに関わる規制や、外資優遇措置の有無の把握
- 運用体制の分析:自社ビジネスを運用する上で必要なインフラや利害関係者の洗い出し
- 財政面の分析:ビジネスを運用する上でのコストをもとに損益分岐点の予測
2.現地調査で市場を深く理解する
国内での調査・分析が完了したら現地調査に移ります。現地へ行かなければ分からない情報や、確認しておかないといけないことがありますので必ず現地に足を運びましょう。
現地調査で行うことは以下の通りです。
- デスクリサーチや事前調査で把握した情報とのすり合わせ
- 現地の居住環境の確認
- ビジネス現場の把握
- インドネシアでビジネスを始める際のアライアンス先(弁護士・会計士・税理士)との面談
3.自社に合った現地パートナーを探す
インドネシアでビジネスを行う際のパートナー企業を探します。パートナー企業とは、飲食店であれば仕入先、製造業であれば売り先である小売業者や卸問屋のような企業を指します。
パートナーは以下のような基準で選定します。
- 財務の安定性・信頼性
- 外資企業との取引実績
- コミュニケーションの円滑さ
自社の力だけでパートナー企業を選ぶのは非常に困難です。コンサルティング会社と二人三脚でしっかりと選定し、進出を成功に導きましょう。
日系企業がインドネシア進出に成功する鍵は市場調査
インドネシアの進出した日系企業はいずれも市場調査の結果をもとに、柔軟な戦略を立てて課題を解決しています。進出を成功に導くためにもしっかりと市場調査を行い、進出計画を立案しましょう。
今回は以下の内容をご紹介しました。
- インドネシアの基本情報
- 日系企業がインドネシアに進出するために抑えるべき3つのポイント
- インドネシア進出に成功した日系企業10選
- インドネシアから撤退した日系企業3選
- 日系企業のインドネシア進出を成功に導くの3つの要素
インドネシアの市場調査ならAXIA Marketing
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参考文献
・インドネシアビジネス情報とジェトロの支援サービスーJETRO
・インドネシア進出のメリット・デメリット|日本企業の拠点数・最新進出動向 | 海外進出ノウハウ ーDigima〜出島〜
・日本企業がインドネシアに進出して成功した事例 一覧|成功した理由と成果ーINDONESIA WORKS
・インドネシアへの日本企業の進出数と主要地域の特徴ーカケモチ
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・インドネシア進出の流れ・手順とやるべき事を段階別に解説|インドネシアでのビジネスの始め方ーINDONESIA WORKS