金田大樹

記事の監修者

金田大樹

AXIA Marketing代表取締役

リサーチ会社を活用した経営判断を、日本企業の常識にしていくことがモットー。

鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅から大手調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。

世界4位の人口、日本の5倍の国土を持つインドネシア。中間層の増加はASEANの中でも著しく、今後も成長が予想されます。

世界でも有数の親日国でもあるインドネシアで、日系企業はどのようなビジネスを展開しているのでしょうか

この記事では以下の内容について記載しています。



  • インドネシアの基本情報


  • インドネシア進出に成功した日系企業


  • インドネシアから撤退した日系企業


  • 日系企業のインドネシア進出を成功に導くの3つの要素


 

貴社のインドネシア進出にお役立ていただけると幸いです。

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インドネシアの基本情報

インドネシアに関する基本情報を紹介します。

正式名称インドネシア共和国 Republic of Indonesia
面積189万2,410平方キロメートル(2023年、日本の約5倍)
人口2億7,870万人(2023年、出所:中央統計庁)
首都ジャカルタ 人口1,133万人(2023年、出所:ジャカルタ特別州住民登録局)
民族約300(ジャワ人、スンダ人、マドゥーラ人等マレー系、
パプア人等メラネシア系、中華系、アラブ系、インド系等)
言語インドネシア語
宗教イスラム教、ヒンドゥー教、キリスト教ほか
主要産業製造業(19.2%):輸送機器(二輪車など)
飲食品など農林水産業(13.2%):パーム油、ゴム、米、ココア、キャッサバなど
インドネシア概況・基本統計ーJETRO
インドネシア基本データー外務省

インドネシアへの進出が注目される理由

インドネシアは世界第4位の人口規模を誇り、経済成長も堅調に推移していることから、日系企業にとって有望な市場として注目されています。豊富な労働力や拡大する消費市場はもちろん、近年はデジタル化やEC市場の発展も加速し、新たなビジネスチャンスが生まれています。

まずは、国土や人口要因、経済成長、所得の上昇、そしてEC市場の拡大という4つの視点から、インドネシア進出が注目される理由を整理して解説します。

国土や人口要

インドネシアは約2億7,000万人の人口を抱える世界有数の国です。この人口規模は、膨大な労働力を提供する一方で、巨大な消費市場としての魅力も備えています。

国土は大小1万を超える島々から成り立ち、地域ごとに文化や商習慣が異なる点も特徴です。特にジャワ島には国民の半数以上が集中しており、ジャカルタやスラバヤといった大都市圏では中間層や富裕層が増加し、高品質な商品やサービスへの需要が高まっています。

対して地方部では、低価格かつ日常生活に密着した商品が求められる傾向が強く、ターゲット層に応じた戦略の使い分けが必要となります。人口ボーナス期にあるインドネシアでは、今後も継続的に新しい需要が創出されることが予想され、長期的に安定した成長市場として期待できるでしょう。

目覚ましい経済成長

インドネシアは近年、年間5%前後の経済成長率を維持しており、ASEAN諸国の中でも存在感を高めています。成長の背景には、堅調な内需拡大やインフラ投資の進展、外資誘致政策の強化があります。

特に首都ジャカルタを中心に道路や港湾、物流施設などが整備され、企業が事業を展開しやすい環境が整いつつあります。また、政府は製造業の現地生産を推進し、投資優遇制度を設けることで外資系企業の誘致を進めています。

自動車や電機といった分野では、現地生産拠点を通じてASEAN全体への輸出を行う動きも見られます。こうした状況は、安定性と成長性を同時に兼ね備えた市場を求める日系企業にとって大きな魅力です。経済基盤の拡大に伴い、今後も幅広い業種での進出が加速していくと考えられます。 

所得の上昇と購買力

経済成長とともに、インドネシアの中間層は急速に拡大しています。これにより、自動車や家電といった耐久消費財だけでなく、外食産業や娯楽、教育、医療など多様な分野で需要が増加しています。

特に都市部の若年層はブランド志向や利便性を重視する傾向が強く、日本製品に対する信頼感から日系企業にとって大きな市場機会が広がっています。従来は生活必需品が中心だった消費構造が、今では嗜好品やサービスへと拡大している点も見逃せません。

さらに、金融や保険分野への関心も高まっており、従来製造業が中心だった日系企業の進出領域は非製造業へと広がりを見せています。所得水準の上昇が消費市場を支え、今後も購買力は堅調に伸びると予想されます。 

EC市場の拡大

スマートフォンの普及を背景に、インドネシアではEC市場が急拡大しています。トコペディアやショッピーといった現地の大手プラットフォームが台頭し、EC利用は生活の一部となりつつあります。

当初はSNSを通じた個人間取引が中心でしたが、近年は信頼性や利便性を求める消費者が増加し、公式ECサイトやアプリの利用が急速に進んでいます。物流網や電子決済の整備も進み、よりスムーズな取引環境が整ってきたことも市場拡大の要因と言えるでしょう。

若年層を中心にオンラインショッピングが一般化していることから、今後も継続的な成長が期待されます。こうした変化は、デジタル化を前提としたビジネスモデルを展開する日系企業にとって新たな参入機会を意味しており、製造業以外の進出を後押しする要因ともなっています。

インドネシア進出はハードルが高いとされる理由

インドネシア市場は大きな魅力を持つ一方で、進出企業にとっては克服すべき課題も少なくありません。

国として行政手続きや規制が複雑であり、外資規制が業種ごとに異なる点は大きな参入障壁となりかねません。法律や制度も改正されやすく、透明性に欠ける部分があるため、進出時には不確実性がつきまといます。

インドネシアは島国であるため、物流コストが高く、安定したサプライチェーンを構築することが難しいのも現実です。地域によってインフラ整備の度合いが異なり、大都市圏と地方部の格差も大きいため、事業運営に影響を与えることもあるでしょう。

加えて、宗教や文化の多様性が消費者ニーズの違いに直結し、日本市場のように一律の戦略が通用しにくい側面もあります。消費者習慣や商習慣の違いに適応できなければ、せっかくの市場規模を十分に活かすことができません。つまり、インドネシア進出は大きなチャンスがあると同時に、高いハードルが存在する市場でもあるのです。

インドネシアに進出する日系企業の特徴

インドネシアはASEAN諸国の中でも、特に日系企業の進出が目立つ国です。その背景には、市場の大きさや経済成長の持続性、日本企業との経済的な結びつきの強さがあります。

製造業を中心に自動車や電子部品、化学製品など幅広い分野で進出が進んでおり、国内需要への対応に加えて、周辺国への輸出拠点としての役割を担う企業も少なくありません。

ここからは、進出企業が集まりやすい地域や、業種別の特徴を整理し、日系企業のインドネシア進出の実態をわかりやすく解説していきます。

インドネシアでの日系企業の進出が多い地域

日系企業がインドネシアに進出する際、特に集積が見られる地域はいくつかあります。最も多くの企業が集まるのは首都ジャカルタ周辺です。ジャカルタは政治・経済の中心地であり、港湾や空港、道路などのインフラが整っていることから、製造業やサービス業の拠点として適しています。

次に西ジャワ州も進出が目立つ地域です。特にブカシやチカランなどの工業団地には、自動車や電子部品、繊維関連の製造業が多く進出しています。これらの地域は、ジャカルタからのアクセスが良く、輸出や国内物流の効率も高いため、製造業の集積地として最適です。

バンドンやスラバヤなどの都市も進出地域として注目されています。バンドンは教育・IT産業との親和性が高く、比較的小規模ながら非製造業やスタートアップ的事業の進出が増えています。

これらの地域に共通するのは、交通インフラや物流ネットワークが整っていること、さらに現地労働力へのアクセスが良いことです。日系企業はこれらの利便性を重視し、現地での生産効率や流通効率を高める戦略を採用しています。

インドネシアの主要地域に進出が多い業種(製造業)

インドネシアに進出する日系企業の製造業は、自動車や電子部品、化学製品、繊維関連などが中心です。特に自動車産業は、ジャカルタ周辺や西ジャワ州の工業団地に多く集積しています。

電子部品や電機関連企業も、ジャカルタや西ジャワ、バンドン周辺に工場を構えています。これらの地域はインフラが整備されているだけでなく、労働力の確保が容易であり、製造効率や物流効率を高めやすい環境が整っています。

化学製品や繊維関連の製造業も同様に、西ジャワ州やジャカルタ近郊に進出しており、地元市場への供給に加えて輸出向けの生産拠点として機能しています。製造業が集まる工業団地では、税制優遇や輸出支援、インフラ整備など、進出企業に対するサポートも充実しており、安定した事業運営が可能です。

主要3地域での合計は750社以上に上っており、インフラ整備が進み、労働力や物流環境が整った地域に集中しています。これにより生産効率を高めつつ、国内市場と周辺諸国への供給の両面を確保ができているのです。

インドネシアの主要地域に進出が多い業種(非製造業)

近年、インドネシアでは非製造業の進出も増加しています。特に小売業、金融業、IT・サービス業が目立つ傾向です。小売業では、都市部を中心にスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ショッピングモール内の専門店などが進出しています。

ジャカルタやバンドン、スラバヤなどの大都市は、都市化と中間層の拡大により消費需要が高く、日系企業にとって魅力的な市場となっています。

金融業では、銀行や保険会社が進出し、都市部の中間層や富裕層向けサービスを提供しています。インドネシアは人口が多く、今後も金融サービスの需要が増加すると予想されるため、非製造業の成長余地が大きい市場です。

IT・サービス業では、ECプラットフォーム、物流、教育や人材サービスなどが中心です。特にEC市場の拡大により、オンライン販売やデジタル決済サービスを提供する企業の進出が目立っています。

こちらは主要3地域合計で600近い企業数に上り、製造業とは異なる地域戦略を採用することが多く、都市部の利便性や市場特性を活かして進出することで、現地の消費者ニーズに応えることが可能となっているのです。

インドネシア進出に成功した日系企業10選

インドネシアには数多くの日系企業が進出しています。今回はその中でもマーケット環境に柔軟に対応した日系企業10社を厳選しました。いずれの企業もインドネシア市場における自社の課題を明確にし、適切な施策を取ることでシェアを獲得しています。

それぞれの企業がどのように市場で成功を収めたのか、詳細を見ていきましょう。

【インドネシア進出に成功した日系企業10選】

  1. ヤクルト
  2. 大塚製薬
  3. ユニ・チャーム
  4. ピジョン
  5. 丸亀製麺
  6. ホンダ
  7. グリコ
  8. 吉野家
  9. ユニクロ
  10. 資生堂

1.インドネシアが日本に続く巨大市場に成長「ヤクルト」

ヤクルトは積極的なマーケティングと地域密着型の配達システムで、インドネシアを日本に次ぐ世界2位の市場に成長させることに成功しました。インドネシアでは現在、1日700万本以上のヤクルト製品が購入されています。

進出状況

  • 進出時期:1991年
  • 事業内容:乳酸菌飲料の製造・販売
  • 成果:インドネシア国内で広く認知され、飲料市場の大手ブランドとなる

課題と成功要因

ヤクルトの特徴である「ヤクルトレディ」による訪問販売はインドネシアでも行われており、大きな成果を上げました。インドネシアでは卸や問屋を通して販売するルートが一般的ですが「ヤクルトレディ」による訪問販売で、消費者との信頼関係を構築しています。

2.ポカリスエットを年間6億本販売「大塚製薬」

ポカリスエットは、インドネシアでも国民的スポーツドリンクとしての地位を確立しました。年間6億本もの販売実績を持ち、高温多湿なインドネシアでの水分補給の重要性を訴求することで、強固な市場基盤を築いています。

進出状況

  • 進出時期:1974年
  • 事業内容:スポーツドリンク「ポカリスエット」の製造・販売
  • 成果:年間6億本販売、インドネシアの主要スポーツドリンクブランドに成長

課題と成功要因

当初、日本と同じくスポーツ飲料としてのマーケティングを行っておりましたが、スポーツが盛んでないインドネシアではなかなか受け入れられませんでした。そこでインドネシアの気候や風習を徹底的に調査し、水分補給の必要性を教育することで他ブランドとの差別化を図ったのです。

3.インドネシアの紙おむつ・生理用品シェアNo.1「ユニ・チャーム」

ユニ・チャームは、現地のニーズに合わせた製品を開発し、インドネシアにおいて紙おむつや生理用品市場でNo.1シェアを誇る企業に成長しました。販売網や、低価格帯の商品ラインナップをそろえることでインドネシア市場に浸透しています。

進出状況

  • 進出時期:1997年
  • 事業内容:紙おむつ・生理用品の製造・販売
  • 成果:紙おむつ・生理用品で市場シェアNo.1

課題と成功要因

すでに先行していたP&Gなどの競合他社との差別化が課題でしたが、ユニ・チャームはインドネシアの市場を分析し、一枚入りのおむつや庶民が購入可能な低価格帯の製品を開発し、シェアを拡大しました。
また現地法人に役員クラスの人材を配置し、意思決定スピードを上げることに成功。市場の変化や他社に後れを取らない体制を作り上げたのです。

4.インドネシアの哺乳瓶シェアNo.1「ピジョン」

ピジョンは、インドネシアにおいて哺乳瓶のシェアNo.1を誇る企業です。日本の高品質な育児用品をインドネシア市場に提供し、インドネシア市場において約6割のシェアを獲得しました。

進出状況

  • 進出時期:1994年
  • 事業内容:育児用品の製造・販売
  • 成果:哺乳瓶シェアNo.1

課題と成功要因

インドネシア市場では価格競争が大きな課題でしたが、中間層に対して品質の高さを前面に押し出すことで課題を克服しました。また現地の病院との対話による製品開発の結果、ピジョン製品を使った子供が母親になった時に、再度ピジョン製品を購入する好循環を生み出すことに成功しています。

5.インドネシア進出10年で100店舗まで拡大「丸亀製麺」

丸亀製麺は現地の食文化に合わせたメニュー開発と、日本のオペレーションを活かした店舗運営によりインドネシアでも成功を収めています。2013年の出店からわずか10年で100店舗にまで拡大しました。

進出状況

  • 進出時期:2013年
  • 事業内容:うどん専門店の運営
  • 成果:進出10年で100店舗展開

課題と成功要因

外食産業の海外進出における大きな課題の一つは原材料の仕入れです。丸亀製麺は、現地大手製粉会社と提携することで、原材料の小麦を安定的に仕入れることができています。

イスラム教徒が多いことによる豚肉やアルコールが使用できないという条件のなか、独自メニューを開発し、ローカライズに成功しました。

6.インドネシアでバイク販売数No.1「ホンダ」

ホンダはインドネシアにおいてバイク市場で8割のシェアを誇り、バイクのことを「ホンダ」と呼ぶ人もいるほど浸透しています。信頼性の高い製品と優れたアフターサービスが消費者に支持されました。

進出状況

  • 進出時期:1971年
  • 事業内容:二輪車の製造・販売
  • 成果:バイク販売数No.1

課題と成功要因

2000年代に中国メーカーの参入による価格競争が激化しましたが、ホンダは安定した品質と耐久性を武器にシェアを維持。現地のディーラーによる充実したアフターサービス網によって、他社の新規参入を防ぐことに成功しました。

7.インドネシアに最大規模の工場を設立「グリコ」

グリコはインドネシアに最大規模の工場を設立し、現地生産を強化しました。日本でも普及している「ポッキー」は、インドネシアの高所得層を中心に人気を博しています。

進出状況

  • 進出時期:2014年
  • 事業内容:菓子・アイスクリームの製造・販売
  • 成果:最大規模の工場設立、菓子市場でのシェア拡大

課題と成功要因

収入格差が激しいインドネシアでは、グリコの製品を誰でも食べれるわけではありません。そのためグリコは高所得者層をターゲットにしたマーケティング施策を実行しました。
また暑い気候に合った製品改良や、健康志向の製品ラインナップを強化することで、現地市場に適応しています。

8.インドネシアの嗜好に合わせたメニューで成功「吉野家」

吉野家は現地の嗜好に合わせたメニュー開発に取り組み、牛丼チェーンとしての成功を収めました。特に、現地の辛味やスパイスを取り入れたメニューが人気を博し、日本食としての地位を確立しています。

進出状況

  • 進出時期:2010年
  • 事業内容:牛丼チェーンの運営
  • 成果:現地の嗜好に合わせたメニュー開発で120店舗以上の出店

課題と成功要因

吉野家は「日本でNo.1の牛丼」というキャッチコピーで進出しました。調理方法は日本と同様ですが、インドネシアに合わせて甘めの味になっています。

他にもインドネシアの調味料「サンバル」を乗せた牛丼など、インドネシア人の舌に合わせて日本の味をカスタマイズするメニューづくりによって受け入れられました。

9.インドネシアでは夏でもフリースが売れる?「ユニクロ」

ユニクロはインドネシアでも成功を収め、60店舗以上を展開しています。大型のショッピングモールには必ずといっていいほど店舗があり、ユニクロ製品の偽物が出回るほどの人気です。

進出状況

  • 進出時期:2013年
  • 事業内容:アパレルの製造・販売
  • 成果:60店舗以上の展開

課題と成功要因

インドネシアは高温多湿の気候ですが「室内の冷房がきつすぎる」などの理由で、冬物のヒートテックやダウンが真夏でも売れます。またイスラム教徒の女性が着用する「ヒジャブ」など、現地のニーズに合わせた品揃えが現地で愛されています。

10.現地企業との合弁会社を設立「資生堂」

資生堂はインドネシアの美容市場でも高いブランド力を武器に、高所得層の支持を得ています。1994年には現地法人との合弁会社を設立し、価格帯を抑えた製品群をリリースしました。

進出状況

  • 進出時期:1958年
  • 事業内容:スキンケア・コスメティック商品の製造・販売
  • 成果:現地企業との合弁会社設立、ブランド力向上

課題と成功要因

今後も成長が見込まれるインドネシア市場でシェアを獲得するには、増加している中間層の消費者を取り込む必要がありました。資生堂は現地の企業との合弁会社を設立し、よりリーズナブルなブランドの立ち上げを行いました。

インドネシアから撤退した日系企業3選

多くの企業がインドネシア進出に成功している一方で、市場環境に適応できず撤退を余儀なくされた企業も多く存在します。各社がどのような壁に突き当たったのかを知ることで、事前にリスクを把握しておきましょう。

今回はインドネシアから撤退した企業を3つご紹介します。

【インドネシアから撤退した日系企業3選】

  1. 楽天
  2. セブン-イレブン
  3. 昭和電工

1.インドネシアのEC市場を読み切れなかった「楽天」

楽天は2011年にインドネシア市場へ進出しました。当時、現地のEC市場は発展途上であり、トコペディアやラザダといった現地企業が強い影響力を持っていました。

楽天は自社のプラットフォームを使ったEC事業を展開しましたが、インドネシアではSNSを通じた個人間取引が主流であり、ウェブサイトを介した購入には馴染みが薄い消費者が多かったのです。

そのため、楽天のサービスは現地の消費者に十分浸透せず、現地競合の勢いに押される形となりました。そのほか、物流網や電子決済のインフラが当時は十分に整っておらず、商品の配送や支払いの利便性が課題となったことも、撤退を決断せざるを得なかった理由の一つです。
最終的に楽天は2016年にインドネシア市場から撤退しました。しかし、その後スマートフォンの普及や電子決済の整備により、現地のEC市場は急速に拡大しています。つまり参入には、タイミングも大変重要であることがうかがえます。

2.インドネシアの法規制に適応できなかった「セブン-イレブン」

セブン-イレブンは2009年にインドネシア市場に参入し、都市部を中心に店舗展開を行いました。インドネシア政府は小規模店舗の外資参入を禁止しており、セブン-イレブンは直営での経営ができませんでした。そのため現地のコンビニである「アルファマート」や「インドマレット」との競争に勝てなかったのです。またアルコール販売の規制が強化されたことも影響し、2017年に撤退を余儀なくされました。

3.現地人材の育成に苦戦「昭和電工」

昭和電工は2005年にインドネシアに進出し、現地での工場運営を開始しましたが、2019年に撤退しました。撤退理由は現地での優秀な人材の確保や育成に苦戦したこと、そして人件費の高騰によるコスト圧迫です。さらに労働環境の改善に必要な投資も重なり、最終的に撤退を決断しました。

日系企業がインドネシアに進出するために抑えるべき3つのポイント

インドネシアの人口は世界4位(2億7千万人)で、30歳未満が5割を占める非常に若い国です。2030年には3億人を突破すると予測され、人口増加は2065年ごろまで継続とみられています。人口減少を続ける日本と比べ、インドネシアは日系企業にとって非常に魅力的な進出先と言えるでしょう。

ここでは日系企業が進出する際に抑えておくべきポイントを3つ紹介します。

インドネシアは世界でも有数の親日国家

インドネシアは世界最大の親日国であることは、日系企業がビジネスを行う上で大きな利点です。

もともとオランダの植民地だったインドネシアですが、1942年に日本軍がインドネシアへ侵攻。オランダ軍を破ったことで1945年までの3年間は日本領となりました。その後日本が降伏しインドネシアは独立を宣言しましたが、オランダはそれを認めず再び侵攻しました。

オランダ軍からの侵略を受ける中、残留した日本軍がインドネシアに加勢した結果、無事独立を果たしたのです。この出来事から、多くの国民が親日派になったとされています。また1954年から現在まで続くODA(政府開発援助)による経済発展の支援も親日国家となった要因です。

インドネシアにおける日本の製品の人気は非常に高く、中間層の増加によって今後ますます需要が拡大すると予測されています。

インドネシアのASEANにおける経済的影響力

インドネシアはASEAN内でも最大規模の経済大国であり、その影響力は巨大です。

インドネシア経済を支えるのが人口増加による民間消費で、GDPに占める割合は6割に上ります。
総人口に対して生産年齢人口の割合が多い「人口ボーナス期」は2040年まで継続すると予測されており、民間消費の増加は今後も継続するでしょう。

インドネシアは地理的にも東南アジア全域における重要な位置にあり、貿易や物流のハブとしての機能を果たしています。マラッカ海峡やスンダ海峡を通じて日本や中国、ヨーロッパに向けた輸送路が確保され、ASEAN域内外の貿易活動に大きく寄与しています。

インドネシアの豊富な資源

インドネシアは豊富な自然資源でも知られ、国際市場における競争力の源泉となっています。

  • 鉱物資源:世界有数の鉱物資源を有する国で、特に銅、金、錫、天然ガス、石炭が豊富です。
  • 森林資源:世界で3番目に広い熱帯雨林を有しており、木材やパルプ、バイオ燃料の重要な供給源となっています。
  • 海洋資源:広大な海域に恵まれ、漁業が非常に盛んです。またインドネシアの海域には石油や天然ガスが埋蔵されています。
  • 農業資源:インドネシアはパーム油、コーヒー、カカオ、ゴム、スパイスなどの主要生産国です。中でもパーム油は世界最大の輸出国であり、国内外で広く利用されています。
  • 再生可能エネルギー資源:地熱エネルギー、水力、太陽光、風力といった再生可能エネルギーのポテンシャルも豊かであり、今後のエネルギー供給源として注目されています。

日系企業のインドネシア進出には事前準備が必須

インドネシアへの進出を検討する際は、新規事業の採算性やリスクを事前に把握しておかなければなりません

インドネシア進出における事前準備を大まかにまとめると以下の通りです。

【進出を成功に導くための3つの準備】

  1. 市場調査に基づいて進出計画を立てる
  2. 現地調査で市場を深く理解する
  3. 自社に合った現地パートナーを探す

それぞれについて詳しく解説します。

1.市場調査に基づいて進出計画を立てる

市場調査は大きく分けて2つの段階に分かれます。

  • デスクリサーチ
  • 具体的な調査・分析

それぞれ詳しくご紹介します。

デスクリサーチ

市場調査の初期段階では、外務省・JETROなどの公的機関や、書籍による公開情報を収集することからはじめましょう。

収集すべき情報は以下の通りです。

  • インドネシアの宗教と習慣
  • 商習慣や法律、ビジネスコスト
  • 他社の進出状況

進出プラン策定の際にメリット・デメリットが、具体的にイメージできる状態にしておくことが大切です。

具体的な調査・分析

デスクリサーチが完了したら、インドネシア市場をもう少し深く分析するフェーズに移ります。

この段階では公開されていない情報や、客観的な分析が必要になるため、信頼できるコンサルティング会社に委託することをおすすめします。

この段階では次のような観点で調査・分析をするとよいでしょう。

  • 市場分析:統計データを用いて市場規模や、経済・政策が市場に与える影響の把握
  • 顧客分析:自社のビジネスに対するニーズ調査
  • 競合分析:先行して進出している企業や、競合になり得る現地企業の動向の把握
  • 自社分析:市場・顧客分析による、自社のポジショニングの分析
  • 規制・優遇措置の分析:インドネシアにおける自社ビジネスに関わる規制や、外資優遇措置の有無の把握
  • 運用体制の分析:自社ビジネスを運用する上で必要なインフラや利害関係者の洗い出し
  • 財政面の分析:ビジネスを運用する上でのコストをもとに損益分岐点の予測

2.現地調査で市場を深く理解する

国内での調査・分析が完了したら現地調査に移ります。現地へ行かなければ分からない情報や、確認しておかないといけないことがありますので必ず現地に足を運びましょう

現地調査で行うことは以下の通りです。

  • デスクリサーチや事前調査で把握した情報とのすり合わせ
  • 現地の居住環境の確認
  • ビジネス現場の把握
  • インドネシアでビジネスを始める際のアライアンス先(弁護士・会計士・税理士)との面談
https://axiamark.com/column/about-indonesia-market

3.自社に合った現地パートナーを探す

インドネシアでビジネスを行う際のパートナー企業を探します。パートナー企業とは、飲食店であれば仕入先、製造業であれば売り先である小売業者や卸問屋のような企業を指します。

パートナーは以下のような基準で選定します。

  • 財務の安定性・信頼性
  • 外資企業との取引実績
  • コミュニケーションの円滑さ

自社の力だけでパートナー企業を選ぶのは非常に困難です。コンサルティング会社と二人三脚でしっかりと選定し、進出を成功に導きましょう。

インドネシアの市場調査ならAXIA Marketing

インドネシアに進出した日系企業はいずれも市場調査の結果をもとに、柔軟な戦略を立てて課題を解決しています。進出を成功に導くためにもしっかりと市場調査を行い、進出計画を立案しましょう。

AXIA Marketingでは、インドネシア進出の際の市場調査をお手伝いしております。

弊社がご提供する「ベンチマーク調査」は、インドネシア市場における業界標準や他社の成功・失敗事例をもとに、貴社を徹底的に分析します。

客観的な分析によって自社のポジショニングを正確に理解し、最適な戦略を立案することが可能です。

詳しいサービスの詳細については、こちらをご覧ください。

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参考文献
インドネシアビジネス情報とジェトロの支援サービスーJETRO
インドネシア進出のメリット・デメリット|日本企業の拠点数・最新進出動向 | 海外進出ノウハウ ーDigima〜出島〜
日本企業がインドネシアに進出して成功した事例 一覧|成功した理由と成果ーINDONESIA WORKS
インドネシアへの日本企業の進出数と主要地域の特徴ーカケモチ
なぜ売れる?常夏の国インドネシアで日本のユニクロ冬物商品が人気 本社が明かす「2つの理由」ーまいどなニュース
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インドネシア進出の流れ・手順とやるべき事を段階別に解説|インドネシアでのビジネスの始め方ーINDONESIA WORKS

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