ヘルスケア産業の市場調査の方法は?2030年に向けた業界成長の動向も解説!
高齢化や人口減少の影響を受け、大きく成長が見込まれる日本のヘルスケア市場。
IoTやAIを活用するサービスが増えたことで、今までヘルスケアに無関心だった消費者層も取り込みつつあります。
今回はヘルスケア業界の現状や参入のポイントをはじめ、以下の内容を解説します。
- ヘルスケア業界の現状と将来展望
- ヘルスケア市場調査の主な内容
- PHR(パーソナルヘルスレコード)の概要と事例
- ヘルスケア業界へ参入する際のポイントと成功事例
貴社のヘルスケア業界に関する情報収集の一助となれば幸いです。
ヘルスケア業界の現状と将来展望
日本のヘルスケア業界は大きな変革期を迎えています。
高齢化による人手不足、医療費の高騰、新たなテクノロジーの登場など、業界の成長を加速させる要因が多く存在します。
またAIの登場によって意思決定スピードが早まり、業界の構造は劇的に変化するでしょう。
まずはヘルスケア業界の現状と、業界を取り巻く環境の変化についてご紹介します。
日本のヘルスケア業界の現状
日本におけるヘルスケアの定義とは「健康保持・増進に働きかけるもの」と「患者や要支援、要介護者を支援するもの」の2つです。
治療分野に比べて参入ハードルが高くない点、IoTやAIの発展により多様なサービスが生まれやすいという背景もあり、スタートアップや大学発ベンチャーの参入が増えています。
加えて、企業の健康経営(労働者の健康維持)の取り組みも業界の成長を後押ししています。
2030年の高齢化と市場成長予測
経済産業省の調べでは、ヘルスケア業界の市場規模は2030年に31兆円になると推計されています。
日本の2030年に人口の約3割が高齢者になると予測されており、この「2030年問題」はヘルスケア市場を成長させる大きな要因です。
高齢化により「健康寿命(健康に生きられる期間)」への意識が高まり、ヘルスケアの考え方である「予防」や「診察による病気の発見」を重視する人が増えています。
また高齢者層のネット・スマホ普及率が上昇したことで、IoTを活用したヘルスケアサービスが身近になった事も要因の一つです。
コロナで加速するヘルスケア業界のDX
新型コロナウイルスによるDXやデジタル化の流れは、ヘルスケア市場にも大きな影響をもたらしました。
診察のオンライン化や接触確認アプリなど、健康管理へのIoTデバイス活用が消費者の間で一般化したのです。
「健康管理にIoTデバイスを活用するのは当たり前」という認識は、ヘルスケア市場を成長させる追い風となりました。
ヘルスケア市場調査の主な種類
ヘルスケア事業を成功させるためには、市場を深く理解する必要があります。
検討している事業内容や目的に合わせて適切な市場調査を実施するのが良いでしょう。
今回は、ヘルスケア業界で実施されている市場調査を4つご紹介します。
- 健康意識調査
- ウェアラブルデバイスの利用状況調査
- 介護サービス利用状況調査
- 健康サプリ・ヘルスケアフーズ調査
健康意識調査
健康意識調査は消費者の健康意識や生活習慣、死生観を調べるアンケート形式の調査です。
厚生労働省をはじめ、多くの団体が実施しています。
世代・性別・地域ごとの健康意識における違いや、ヘルスケアに対するニーズの把握に役立ちます。
健康意識調査は調査主体によってアンケート項目が異なるため、複数の調査結果を参考にすると良いでしょう。
ウェアラブルデバイスの利用状況調査
スマートウォッチなど、身に着ける事だけで健康データを記録できるのが、ウェアラブルデバイスです。
ウェアラブルデバイスで記録できる主な健康データは以下の通りです。
- 脈拍
- 体温
- 歩数
- 睡眠時間
- 血中酸素濃度
ヘルスケア業界では、ウェアラブルデバイスで収集した健康データの利活用を前提としたサービスが増えています。
参入を検討するのであれば、ウェアラブルデバイスの利用状況には常に目を光らせる必要があるでしょう。
介護サービス利用状況調査
介護サービスの利用状況調査は厚生労働省が実施する統計調査です。
施設数や訪問介護の事業者数、1か所あたりの定員や職員数について調査しています。
日本の介護サービス利用者数が20年で3倍に増加している中、ヘルスケア市場の把握のために介護サービスの利用状況調査は欠かせません。
健食サプリ・ヘルスケアフーズ調査
食品に関連するヘルスケア市場を調査する際に確認しておきたいのが、株式会社インテージヘルスケアが実施した「健食サプリ・ヘルスケアフーズ調査」です。
2012年から毎年調査を実施しており、10万人以上の生活者に対するサンプリング調査で得た結果から、
- 健康食品・サプリメント市場
- ヘルスケアフーズ市場
- セルフヘルスケア市場
これら3つの市場に関するサマリーレポートを提供しています。
健康食品をはじめとするセルフヘルスケアの市場を把握する際に、非常に有効な調査です。
ヘルスケアにおけるPHR活用事例
ウェアラブルデバイスの活用や、医療・介護業界における業務効率の向上などに大きな影響を与えるのが、PHR(パーソナルヘルスレコード)の存在です。
ここではPHRに関する以下の情報をご紹介します。
- PHR(パーソナルヘルスレコード)の概要
- PHRの課題
- 母子手帳アプリの活用
- 電子処方箋の導入
- 健康診断結果を活用した健康管理アプリ
PHR(パーソナルヘルスレコード)の概要
PHR(パーソナルヘルスレコード)とは、個人の健康・医療に関するデータの事です。
【PHRの一例】
- 病歴
- 診察・処方箋の履歴
- 健康状態(血圧・体温・睡眠時間)
- 服薬情報
- 食生活
従来は病院や薬局で個別に管理されていた情報や、今まで収集されていなかった日々の健康情報を一元管理し、共有することで製品開発や医療現場の効率化に役立てることを目的としています。
PHRの課題
コロナ禍でデジタル化が進んだとはいえ、医療や介護の現場はいまだにアナログな運用が多く残っています。
患者データのデジタル化が進んでいない病院も多く、全ての病院間での情報共有にはかなりの時間がかかるでしょう。
またPHRは個人情報であるため、常にサイバー攻撃による流出リスクがついてまわります。
とはいえPHRの普及率が、医療技術の向上や新薬開発に大きく寄与する事は間違いありません。
母子手帳アプリの活用
PHR活用の取り組みの一環として、母子手帳アプリをご紹介します。
母子手帳アプリとは、今まで母子健康手帳に記入していた妊娠や子育てに関する記録を、スマホで入力・管理出来るようにしたアプリのことです。
予防接種や検診のスケジュール管理、子供の発育記録などを一括管理できるため、子育て家庭の負担軽減につながっています。
また医療機関や自治体との連携により、子育ての状況に合わせた情報を受け取れるなどのメリットがあります。
電子処方箋の導入
電子処方箋は病院がマイナンバーと紐づけた処方箋情報をクラウド上に登録し、薬局側はマイナンバーを元に患者の処方箋を取得するPHRの仕組みです。
電子処方箋の導入は、患者・医療機関・薬局のそれぞれにメリットがあります。
【電子処方箋導入のメリット】
- 患者:行きつけの医療機関・薬局以外でも服用している薬の情報が伝わる。過去に服用した薬が確認できる。(おくすり手帳アプリとの連携)
- 医療機関:処方箋の履歴から薬の飲み合わせを確認可能。薬局からの問い合わせ回数が減少する。
- 薬局:処方箋をデータとして受け取ることができ、紙の処方箋で発生していたシステムへの内容入力の手間が軽減する。
健康診断結果を活用した健康管理アプリ
健康診断の結果をPHRとして活用するために、結果表を撮影するだけで取り込むことができる健康管理アプリも増えてきています。
健康診断結果をアプリで管理することで、受診率の向上や再検査の受診勧奨に役立てる狙いがあります。
また、健康経営の実現においても検診結果の活用は健康経営のための有効な手段の一つです。
健康診断の受診は従業員の健康維持や医療費の削減につながるため、企業主導でアプリの活用が促進されるかもしれません。
ヘルスケア事業への参入を成功に導くための3つのポイント
高齢化が進む日本において、今後大きな成長が期待されるヘルスケア事業。
テクノロジーによる進化と市場のニーズを捉え、新たな価値を提供するにはどうすれば良いのでしょうか。
ここからは参入を成功に導くためのポイントを3つご紹介します。
- AIと医療機器の統合による医療技術の進化
- ウェアラブルデバイスの拡大
- ビジネスケアラーの増加による市場の拡大
AIと医療機器の統合による医療技術の進化
ChatGPTをはじめとする生成AIの業務活用が進む中、医療機器においてもAIによる進化が始まっています。
レントゲンやCT、MRIの画像分析、PHR(パーソナルヘルスレコード)の解析によって、今までよりも患者個人に合わせた対応が可能になるでしょう。
AIがもたらす医療技術の進化は、ヘルスケア業界においても新たなニーズを生む可能性があります。
ウェアラブルデバイスの拡大
ウェアラブルデバイスによって健康情報が簡単に管理できるようになったことは、ヘルスケア業界に大きな影響を与えました。
とくに人口減少が進む日本においては、ウェアラブルデバイスによる健康管理は人手不足を解消する有効な手段です。
企業においてもウェアラブルデバイスは、消費者のニーズを捉える貴重な情報源となりつつあります。
ヘルスケア事業への参入において、ウェアラブルデバイスの動向は常に目を光らせる必要があるでしょう。
ビジネスケアラーの増加による市場の拡大
ビジネスケアラーとは、介護と仕事を両立しなければならない人のことで、2030年には家族介護者の4割がビジネスケアラーになると予測されています。
経済産業省はビジネスケアラーの問題による生産性の低下や、代替人員の採用などによる経済的損失を約9兆円と予測しており、早急な対策が必要です。
一方で、ヘルスケア市場においてヤングケアラー向けの新たな事業の創出が見込まれています。
ヘルスケア市場調査を活用した事例
成長著しいヘルスケア市場への参入において、何よりも重要なのが市場調査。
今回は、市場調査の実施によってマーケティングに成功した事例を2つご紹介します。
- 健康意識調査を活用「カロリーメイトリキッド」
- オンライン家庭訪問調査での顧客の声を活用「セサミン」
それぞれの企業が行った調査の切り口を参考に、ヘルスケア市場の調査をぜひご検討ください。
健康意識調査を活用「カロリーメイトリキッド」
労働環境や食生活の多様化というニーズを捉えたのが「カロリーメイトリキッド」です。
カロリーメイトといえば固形の栄養食のイメージですが、液体にすることで今までのカロリーメイトよりも素早い栄養補給が可能になりました。
コロナ禍を経てビジネスパーソンの働き方が多様化した結果、食事時間が乱れているという調査結果を、うまくマーケティングに活かした事例です。
オンライン家庭訪問調査での顧客の声を活用「セサミン」
セサミンは、サントリーウエルネスが販売する健康食品です。
健康食品市場が抱える「広告競争による顧客獲得コストの上昇」という課題を解決するために、顧客の悩みを徹底的に深掘りする「オンライン家庭訪問調査」を実施しました。
顧客からヒアリングした意見をデータベースに蓄積し、商品やサービスの改善に活かすことでリピート顧客の確保に成功しています。
ヘルスケア業界の攻略に市場調査は必要不可欠
ヘルスケア業界は高齢化やウェアラブルデバイスの普及、AIの登場によって成長が期待されています。
しかし、変化が激しく常にプレイヤーが入れ替わるヘルスケア市場において、事業を成功させるには市場調査が欠かせません。
今回はヘルスケア業界の市場調査に役立つ情報をご紹介しました。
- ヘルスケア業界の現状と将来展望
- ヘルスケア市場調査の主な種類
- ヘルスケアにおけるPHR活用事例
- ヘルスケア事業への参入を成功に導くための3つのポイント
- ヘルスケア市場調査を活用した事例
この記事が貴社のヘルスケア事業の成功に役立つことを願っております。
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市場調査は参入市場の状況や競合の動向を調べるだけでなく、市場における自社のポジション理解が重要です。
AXIA Marketingの「ベンチマーク調査」は、自社の特定の要素をライバルや業界の常識と比べることで、自社の現在位置を客観的に理解することができます。
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参考文献
・ヘルスケア市場調査レポートと業界分析ーSDKI(渋谷データカウント)
・ヘルスケア市場規模の推移 日本の異業種による新規参入意向は7割も実際は2.5割、なぜ?ーWOMANS LABO
・日本のヘルスケア産業を調査! 医療費問題を解決に導くための健康維持や健康増進の市場規模はどのぐらい?ーMembers Medical Marketing
・総務省|平成27年版 情報通信白書|ウェアラブルデバイスの認知度・利用意向
・介護分野の最近の動向についてー総務省
・生活者データからコロナ禍前後のセルフヘルスケア市場の変化を読み解くーMarkeZine
・ヘルスケア市場の規模は? 将来性や課題・取り組みを解説!ーデジタルトランスフォーメーション チャンネル
・ヘルスケア業界の課題とは?市場規模や求められる人材のトレンドなどを解説ーM&Aベストパートナーズ
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