フランス市場調査の方法は？進出成功に必要なフランスの経済や産業の情報を徹底解説

フランスへの進出を検討しているものの、「どのような市場調査が必要なのか」「フランスのビジネス環境の特徴は何か」といった悩みをお持ちの企業の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、フランス市場調査に必要不可欠な情報を、以下のポイントを中心に解説します。

• EU最大の消費市場であるフランスの経済状況と主要産業
• 失敗しないための3つの市場調査方法と活用すべき支援機関
• ユニクロやサントリーなど、実際の日系企業の進出成功事例

フランスの市場特性や規制を理解し、適切な調査方法を選択することで、御社のフランス進出を成功に導くことができます。市場調査について詳しく解説をし、皆様の海外展開を全力でサポートいたしますので、ぜひ最後までお読みください。​​​​​​​​​​​​

【フランス市場調査】フランスの基本情報

フランスは芸術や文化で知られる一方で、EUを代表する経済大国としても重要な位置を占めています。欧州連合（EU）の中核メンバーとして、政治的にも経済的にも大きな影響力を持つフランス市場について、その全体像を把握することは、ビジネス展開の第一歩となります。

以下では、人口動態から産業構造まで、フランス市場の特徴を理解する上で不可欠な基本情報を、最新のデータと共に詳しく見ていきましょう。特に、日本企業の視点から重要となるポイントを中心に解説していきます。​​​​​​​​​​​​​​​​

概要

フランスの基本情報について、重要なデータを表にまとめました。フランスは人口約6,837万人を抱えるEU有数の大国で、面積は日本の約1.7倍という規模を誇ります。日本企業の進出先として、高い潜在性を持つ市場といえます。

経済

フランス経済は、EUの中でも特に安定した成長を続けています。第二次世界大戦後は社会主義的な経済体制を採用していましたが、現在は国有企業の民営化が進み、より自由な市場経済へと移行しています。これは有名な自動車メーカーのルノーを例に見ることができ、1991年に民営化され、2019年時点では政府の出資比率は約15%まで低下しています。

2024年の実質経済成長率は0.7%のプラス成長が予想されており、一人当たりのGDPは47,359ドルとEU諸国の中でも高い水準を維持しています。また、失業率は7.4%と改善傾向にあり、経済の安定性が増しています。このような安定した経済基盤は、フランスが海外企業にとって魅力的な投資先として注目される理由の一つとなっています。

人口

フランスの人口動態には、二つの特徴的な傾向が見られます。一つは高齢化の進展です。65歳以上の人口は2020年には全人口の20.5%を占めるまでに増加しています。同時に、生産年齢人口（15-64歳）は減少傾向にあり、全人口の61.7%となっています。

もう一つは、移民の増加です。2018年時点で、全人口の12.5%がフランス以外の国で生まれた人々です。移民の出身地域はアフリカが約半数を占め、特にアルジェリアやモロッコからの移民が多いのが特徴です。

また、ポルトガルなどEU諸国からの移住者も多く見られます。この多様な人口構成は、フランスの消費市場に独特の特徴をもたらしています。

主要産業

フランスの産業は、最新の技術を持つ現代的な国でありながら、フランスならではの特色も大切にしています。伝統と革新のバランスを巧みに取りながら、独自の産業発展を遂げているのが特徴です。

フランスの産業構造と主要企業

第三次産業（約73%）	観光業が特に強く、年間8,932万人の外国人観光客を誇る
第二次産業（約25%）	自動車産業：プジョー、ルノーなどの世界的メーカー 航空・宇宙産業：先端技術分野で世界をリード 原子力産業：高い技術力を保持 化学・食品産業：ロレアル、ダノンなどのグローバル企業が活躍
第一次産業（約2%）	西欧最大規模の農業生産を誇る

貿易

2023年の貿易総額は、輸出が6,073億ユーロ、輸入が7,069億ユーロとなっています。主要な貿易相手国はドイツ、イタリア、米国、スペインなどのEU諸国を中心としています。

対日貿易も着実に拡大しており、2023年の実績では日本からフランスへの輸出が9,815億円、フランスから日本への輸入が14,898億円となっています。主な取引品目は、両国とも機械類、輸送用機器、化学製品が中心です。特にフランスからは医薬品の輸入も多く見られます。

2019年2月に発効した日EU経済連携協定（EPA）により、さらなる取引拡大が期待されています。このEPAにより、世界のGDPの約3割をカバーする経済圏が誕生し、特にフランスからのワインなどの輸入拡大が見込まれています。

​​​​​​​​​​​​​​​​フランス進出において市場調査が必要である理由

フランス市場への進出は、日本企業にとって大きなビジネスチャンスですが、その成功のためには綿密な市場調査が不可欠です。なぜなら、フランスには独自の消費者行動、ビジネス慣習、法規制があり、これらを深く理解することが事業成功の鍵となるからです。特に、品質や価値を重視するフランスの消費者の特徴を理解することは、マーケティング戦略を立てる上で重要な要素となります。

フランスは世界第7位の経済大国であり、2024年のGDP予測は3,130億ドルと高い経済力を持っています。また、一人当たりのGDPも47,359ドルと購買力の高い市場です。しかし、このような魅力的な市場であっても、十分な準備なく進出することはリスクが高いといえます。そのため、事前の市場調査と現地のビジネス環境の理解が成功への近道となります。

市場調査が必要な具体的な理由は以下のとおりです。

• 消費者ニーズの把握
  • フランスの消費者は品質や価値に対して高い目線を持っており、製品やサービスが市場のニーズと合致しているかを慎重に見極める必要があります。

• 競争環境の分析
  • 競合他社の戦略や市場内でのポジショニングを正確に把握することで、自社の強みを活かせる市場機会を特定できます。

• 法規制への対応
  • EUの一員としてのフランスには独自の規制や基準が存在し、適切な対応が不可欠です。

さらに、フランスは農業では西欧最大の規模を誇り、自動車、宇宙・航空、原子力などの先端産業も発達しています。このような多様な産業構造を持つ市場において、どの分野にどのように参入するかの戦略を立てるためにも、市場調査は重要な役割を果たします。

実際に、2023年の日仏貿易額を見ると、日本からフランスへの輸出が9,815億円、フランスから日本への輸入が14,898億円と、着実な取引関係が構築されています。しかし、両国の経済規模から見れば、まだまだ成長の余地があるといえます。

このように、フランス市場への効果的な進出には、市場の実情を踏まえた徹底した準備が求められます。市場調査を通じて、リスクを最小限に抑え、計画的なアプローチを実現することが、フランス市場での成功への近道となるのです。

フランス市場調査の方法

フランス市場調査を成功させるためには、企業の規模や目的に応じて最適な調査方法を選択することが重要です。主な調査方法として、自社での実地調査、公的支援機関の活用、民間調査会社の利用という3つの方法があります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

現地へ出向き自社で調査を行う

メリット

自社で現地調査を行うことの最大の利点は、コストを抑えながら直接的な情報収集ができる点です。特に、自社の強みや弱み、方向性を理解した上で調査を行うことで、現地の生の声を直接ビジネス戦略に反映させることができます。また、現地の商習慣や消費者の行動を肌で感じることができ、より実践的な市場理解が可能となります。

デメリット

一方で、調査項目や方法が明確でないと、時間とコストを無駄にしてしまうリスクがあります。また、フランス語でのコミュニケーションや現地特有の商習慣への対応など、言語や文化の壁に直面する可能性も高くなります。

公的な支援機関を利用する

メリット

ジェトロ（日本貿易振興機構）、中小企業基盤整備機構、商工会・商工会議所などの公的支援機関を利用することで、信頼性の高い情報を得ることができます。これらの機関は長年の経験と実績を持ち、市場調査や法制度・商習慣などの情報提供に加え、販売先・提携先の紹介やマーケティング支援なども行っています。また、費用面でも比較的負担が少なく、中小企業でも利用しやすい点が特徴です。さらに、定期的なセミナーや相談会も開催されており、他社の経験談や最新の市場動向も学ぶことができます。

デメリット

支援内容が標準化されている場合が多く、自社の特殊なニーズに対応できない可能性があります。また、支援プログラムによっては利用までに時間がかかることもあります。特に人気の高い支援プログラムは申し込みから実施までに数か月を要する場合もあるため、進出の時期を考慮した計画が必要です。

海外展開を支援する民間の調査会社を利用する

メリット

専門性の高い調査と詳細な分析が可能です。国・地域、業界、専門性、調査方法、実績など、調査会社によって異なる強みを持っているため、自社のニーズに最も適した調査会社を選ぶことができます。また、フランスの文化や歴史についての深い知識を持つ調査会社を選ぶことで、より精度の高い市場分析が可能となります。

デメリット

調査費用が比較的高額になる可能性があります。そのため、予算と期待する調査の質のバランスを考慮しながら、調査会社を選定する必要があります。国内外の調査会社、日本語・現地語での調査報告、調査手法、データ解析など、選定時に確認すべきポイントは多岐にわたります。

外部の協力や委託を検討する際はこちらの記事も参考にしてください。

海外進出を支援している行政機関・コンサルティング会社20選

このように、それぞれの方法に特徴があるため、自社の状況や目的に応じて最適な調査方法を選択することが重要です。また、これらの方法を組み合わせることで、より多角的な市場調査が可能となります。​​​​​​​​​​​​​​​​

フランスのビジネス環境

フランスでビジネスを展開する際に知っておくべき、市場環境の特徴や注意点があります。以下では、重要な要素について詳しく見ていきましょう。

地域特有の法規制

フランスでビジネスを展開する際は、EU加盟国特有の法規制への対応が必要不可欠です。特に商品の品質基準や安全規制は厳格で、CEマーキング（EU域内での製品安全基準適合マーク）の取得が求められます。また、消費者保護法も充実しており、製品の表示義務や返品規定なども日本とは異なります。最近では、環境保護に関する規制も強化されており、製品のライフサイクル全体での環境負荷への配慮が求められています。

進出形態に応じて必要な許認可も異なってきますので、事前に現地の法律事務所や専門家に相談することをお勧めします。特に雇用関連の規制は労働者保護の観点から厳しく、労働時間や休暇制度、解雇規制などについて詳細な理解が求められます。フランスの労働法は「労働者の権利を守る」という考えが強く、日本企業にとっては管理体制の見直しが必要になることも多いのが特徴です。

環境持続可能性に関する意識の高まり

フランスは環境保護に対する意識が非常に高く、企業活動においても環境への配慮が強く求められます。2016年にはプラスチック製レジ袋の使用が禁止され、環境に配慮した包装材の使用が義務付けられました。この規制は、小売店だけでなく、製造業やサービス業など、あらゆる業種に影響を与えています。

また、温室効果ガスの削減目標も高く設定されており、企業にはカーボンフットプリントの削減や再生可能エネルギーの活用が期待されています。このような環境規制は今後さらに厳格化される傾向にあり、ビジネス展開の際には環境負荷の低減を重視した戦略立案が必要です。特に、EUのグリーンディール政策に基づき、環境配慮型の事業モデルへの転換が求められており、これは新規参入企業にとっても重要な検討事項となっています。

地域特有のビジネス文化と慣習

フランスのビジネス文化には、長年かけて育まれてきた独特の特徴があります。フランスの企業や人々は、一時的な利益だけを追うのではなく、お互いを理解し、信頼関係を築くことを大切にしています。また、商品やサービスを選ぶときも、「安いから良い」という考えではなく、「本当に良いものか」「価値があるか」をしっかりと見極めます。さらに、フランスならではの文化や伝統も大事にしているため、これらを理解することが、フランスでビジネスを成功させる大切なポイントとなります。

• 長期的な関係構築重視
• 対面コミュニケーションの重要性
• 品質と価値の重視（価格のみの競争は避ける）
• 論理的な議論・意見交換の重視

これらの特徴を理解し、尊重することが、フランスでのビジネス成功の鍵となります。特に商談やミーティングでは、相手の意見を尊重しながらも、自社の立場をしっかりと主張することが求められます。フランスのビジネスパーソンは論理的な議論を好む傾向にあり、自社の提案に対する明確な根拠と説明を準備しておくことが重要です。

EU内では関税がかからず物量も安定

フランスはEU加盟国であることから、EU域内での取引には関税がかかりません。また、整備された鉄道網や陸路により、安定した物流体制が確立されています。これにより、EU全域をカバーする物流拠点としての優位性を持っています。

特にデザイン性の高いギフト製品、ファッション小物、雑貨、日用品、ホーム製品など、大量生産型ではない消費財の場合、フランスを物流拠点とすることで効率的なEU展開が可能です。ただし、日本からの直送に対応できる企業はまだ少なく、少量の取引を行う場合、書類作成や手続きが複雑で手間がかかることがあります。そのため、EU圏内に自社の支店やオフィスを設置して、商品の配送や返品、お客様からの問い合わせに直接対応できる体制を整えることも検討しましょう。

フランス進出に成功した日系企業の進出事例

フランスは欧州の中でも特に文化的な要素が重視される市場であり、そこでの成功には慎重な戦略と現地への深い理解が必要です。ここでは、それぞれ異なるアプローチで成功を収めている日本企業次の会社の事例を紹介します。

• ユニクロ
• サントリー
• エプソン

各社の成功事例から、フランス市場特有の課題への対処法や、効果的な市場参入のポイントを見ていきましょう。​​​​​​​​​​​​​​​​

ユニクロ

ユニクロは2007年のフランス進出以来、着実に事業を拡大し、2024年10月時点で28店舗を展開するまでに成長しています。同社の成功の鍵は、フランスの文化や価値観を深く理解し、それに合わせたマーケティング戦略を展開したことにあります。

特に、パリの中心地に構えるパリ オペラ店は、単なる店舗以上の存在として注目を集めています。グローバル旗艦店として位置づけられ、パリならではのユニクロ体験を提供することで、世界中の来訪者を魅了しています。さらに、パリ オペラ座とパートナーシップを結び、バレエダンサーを広告に起用するなど、パリの文化に寄り添った独自の取り組みを展開しています。

サントリー

サントリーは、フランスの名門ワイナリーと協力してワインビジネスを展開し、現地市場での確固たる地位を築いています。1983年には、ワインの名産地として知られるボルドー地方の「シャトー・ラグランジュ」の経営権を獲得。日本の商習慣を持ち込まず、現地の文化や伝統を徹底的に尊重しながら、品質にこだわったワイン作りを実践してきました。

この地域の伝統と文化を理解し、それを尊重する姿勢が、地元での高い評価につながっています。さらに、サントリーが独自に開発した「登美」というワインは、本場ボルドーのワインコンクールで金賞を受賞するなど、フランスのワイン業界でも高い評価を得ています。

エプソン

エプソンは、最新のデジタル技術とフランスのファッション文化を融合させた独自のアプローチで、現地市場での存在感を高めています。2022年にパリで開催されたパリオートクチュールコレクションでは、ファッションデザイナーのYUIMA NAKAZATOの制作サポーターとして参画し、革新的な取り組みを展開しました。

同社は、長期的な着用を前提としたサステイナブルな衣服作りという、デザイナーの理念に賛同し、自社のデジタル捺染技術を活用して、環境負荷を抑えた衣服制作を支援しました。この取り組みは、SDGsや環境保護への意識が高いヨーロッパ市場において、先進的な企業としての評価獲得につながっています。

これらの成功事例から、フランス市場での成功には、現地の文化や価値観を深く理解し、それに寄り添ったビジネス展開が重要であることが分かります。グローバル展開と現地適応のバランスを適切に取ることが、フランス市場での持続的な成長につながると言えるでしょう。​​​​​​​​​​​​​​​​

フランスへの進出を考えるなら市場調査は必須

フランス市場への進出は、EU最大の消費市場へのアクセスと豊富なビジネスチャンスを提供します。本記事で解説したように、フランスは先端産業から伝統産業まで幅広い分野で高い競争力を持ち、EU全域へのビジネス展開の基点としても理想的な立地にあります。

本記事の重要なポイントは以下のとおりです。

• 市場調査は進出の成否を左右する
• 調査方法は目的に応じて選択が必要
• 環境への配慮は必須要件
• EU市場全体を見据えた戦略が重要
• 現地の文化理解が成功の鍵

ユニクロ、サントリー、エプソンといった成功企業の事例からも分かるように、現地の文化や慣習を深く理解し、それに適応したビジネス展開が、フランス市場での成功には不可欠です。​​​​​​​​​​​​​​​​

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参考文献

フランス基礎データ｜外務省
フランス市場調査・マーケティングリサーチ
【フランスの調査】はじめての市場調査やビジネス環境調査を成功させるポイント
海外市場調査の基本は？費用相場など徹底解説
フランス進出を成功させる5つのカギ｜3つの魅力や進出事例も紹介
パリでの市場調査|フランス|SISインターナショナルリサーチ
ユニクロ欧州事業の躍進とさらなる拡大
エプソンHP
サントリーHP