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2026.02.21
記事の監修者
金田大樹
AXIA Marketing代表取締役
リサーチ会社を活用した経営判断を、日本企業の常識にしていくことがモットー。
鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅から大手調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。
日本食は、寿司やラーメンをはじめとした外食分野だけでなく、調味料や加工食品などの分野でも世界的な評価を高めています。近年は健康志向の高まりや訪日観光客の増加を背景に、日本食への関心が一過性のブームを超え、各国で市場として定着しつつあります。一方で、海外進出を検討する企業の中には、現地嗜好への対応や食品規制、安定した供給体制の構築などに課題を感じているケースも少なくありません。
日本食の海外進出を成功させるためには、単なる出店や輸出にとどまらず、戦略的な市場理解と段階的な展開が重要です。本記事では、日本食海外進出の基本から、メリット・課題、具体的な成功事例までを体系的に解説します。

日本食の海外進出とは、和食文化や日本由来の食関連ビジネスを海外市場で展開する取り組みを指します。飲食店の出店だけでなく、食品・食材の輸出や加工品販売など形態は多様です。ここでは、日本食海外進出の定義や対象範囲、注目される背景、進出形態ごとの違いを解説します。
日本食の海外進出とは、日本発の食文化や食関連商品を海外市場で提供し、事業として継続的な収益を生み出す取り組みです。対象は寿司やラーメンなどの外食産業に限らず、調味料、冷凍食品、菓子、飲料、発酵食品など幅広い分野に及びます。
また、直営店舗による進出だけでなく、フランチャイズ展開、現地企業との業務提携、食品輸出や海外ECを活用した販売なども含まれます。近年は中小企業や地方メーカーが、自社の強みを生かして海外市場に挑戦するケースも増えており、日本食の海外進出は大企業だけの取り組みではなくなっているのです。
日本食が海外で注目されている背景には、世界的な健康志向の高まりがあります。和食は低脂肪で栄養バランスに優れている点が評価され、健康的な食事として認知が広がっています。
また、訪日観光客の増加により、日本国内で日本食を体験した外国人が帰国後も日本食を求める動きが強まってるのも日本食が海外で注目されている理由の一つです。さらに、SNSや動画配信サービスを通じて日本の食文化が視覚的に拡散され、ラーメンや和菓子などがトレンドとして定着していることも要因の一つです。こうした複合的な背景が、日本食市場の拡大を後押ししています。
日本食の海外進出には、飲食店進出と食品・食材輸出という大きく異なる二つの形態があります。飲食店進出は、ブランド体験を直接提供できる反面、人材確保や店舗運営、品質管理などオペレーション負荷が高くなりがちです。
一方、食品や食材の輸出は、現地に店舗を構えずに市場参入できるため、比較的リスクを抑えやすい特徴があります。ただし、各国の食品規制や表示義務、物流管理への対応が求められます。自社の経営資源や目的に応じて、どちらの形態が適しているかを見極めることが重要です。

日本食の海外進出が加速している背景には、一過性の流行ではない構造的な変化があります。健康志向の高まりや観光を通じた認知拡大、市場規模そのものの成長など、複数の要因が重なり、日本食は海外市場で持続的なビジネス機会として注目されています。
世界的に健康を意識した食生活への関心が高まる中で、和食は栄養バランスに優れた食文化として評価されています。野菜や魚を中心とした構成、発酵食品の活用、過度な油脂を使わない調理法は、欧米やアジア各国の消費者ニーズと合致しています。
また、2023年12月、「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを契機に、日本食は伝統と品質を兼ね備えた食文化として国際的な信頼を獲得しました。こうした背景により、日本食は健康志向層を中心に安定した需要を形成しています。
訪日観光客の増加は、日本食の海外展開を後押しする大きな要因です。日本国内で寿司、ラーメン、定食などを実際に体験した外国人観光客が帰国後も同様の味や体験を求めるケースが増えています。
特に観光体験としての日本食は記憶に残りやすく、口コミやSNSを通じて現地での需要拡大につながります。こうした実体験を起点とした認知拡大は、広告に頼らず市場を広げられる点で、日本食海外進出における強力な追い風となっているのです。
近年、多くの国や地域で日本食専門店や日本食材の取り扱いが増加し、日本食市場そのものが拡大しています。ラーメン店や和食レストランの出店が進むだけでなく、スーパーマーケットやECで日本食材が手に入る環境が整いつつあります。これにより、日本食は一部の富裕層向け商品から、日常的に選ばれる選択肢へと変化しているのが現状です。
市場基盤が整備されることで、新規参入企業にとっても海外進出のハードルが下がり、ビジネスとして成立しやすい環境が生まれています。

日本食の海外展開は、売上拡大だけを目的とした施策ではありません。ブランド力の強化や事業構造の安定化、将来に向けた成長基盤づくりなど、経営全体に中長期的な価値をもたらします。
ここでは、日本食を海外展開する3つのメリットを紹介します。
海外市場で日本食を展開することは、企業やブランドの価値を高める有効な手段です。日本食は品質や安全性、職人性への評価が高く、海外ではプレミアムなイメージをもたれやすい特徴があります。
そのため、海外での展開実績はブランドの信頼性やストーリー性を強化し、他国料理との差別化にもつながるでしょう。さらに、海外で評価された実績は国内市場においてもブランド力向上に寄与し、価格競争に巻き込まれにくいポジション構築を後押しします。
少子高齢化や人口減少が進む日本国内では、飲食業界や食品業界の市場成長が限定的になりつつあります。海外展開を進めることで、国内需要の変動に左右されにくい事業構造を構築できます。
特定の地域や市場に依存しない収益源をもつことで、経営リスクを分散できる点は大きなメリットです。国内市場が停滞する局面でも、海外事業が成長していれば全体の売上や利益を補完でき、安定した経営判断が可能になります。
海外市場は人口増加や中間層の拡大を背景に、今後も成長が見込まれる地域が多く存在します。日本食はすでに一定の認知を獲得しており、適切な市場選定と展開方法を取ることで、持続的な成長機会を確保できます。
短期的な利益だけでなく、現地でのブランド浸透やファンづくりを進めると、長期的な収益基盤の構築につながるでしょう。中長期視点で事業を拡大したい企業にとって、日本食の海外展開は戦略的な選択肢となります。

日本食は海外で高い関心を集めている一方、実際に事業として定着させるには多くの壁があります。国内と同じ感覚で展開すると、想定外のコスト増や運営トラブルに直面するケースも少なくありません。
ここでは、日本食の海外進出において特に課題となりやすい4つのポイントを紹介します。
日本で支持されている味付けや価格設定が、そのまま海外市場で受け入れられるとは限りません。国や地域によって、好まれる味の濃さや食材、提供量は大きく異なります。現地嗜好を無視すると、日本らしさを打ち出していてもリピートにつながらない可能性があります。
また、為替や原価構造の違いから、日本と同等の価格設定が難しい場合も少なくありません。日本食の本質を維持しつつ、現地ニーズに合わせた味や価格の調整が求められます。
日本食の品質を支える食材の安定調達は、海外進出における大きな課題です。現地調達が難しい食材を日本から輸入する場合、輸送コストや通関手続き、供給の安定性が問題となります。
一方、現地調達に切り替えると、品質や味の再現性を維持する工夫が必要です。安定した仕入れ先の確保や、物流網を含めたサプライチェーンの設計が不十分だと、運営コストの増加や品質低下につながります。
食品を扱う事業では、国ごとに異なる食品規制や衛生基準への対応が不可欠です。成分表示や原材料の制限、添加物の使用可否など、日本とは異なるルールが多数存在します。これらを軽視すると、販売停止や罰則のリスクが高まります。
さらに、飲食店の場合は店舗設備や衛生管理に関する基準も厳しく、事前の調査と準備が欠かせません。現地法規制を正確に把握し、適切に対応する体制づくりが重要です。
海外拠点の運営では、人材確保と日々のオペレーション管理が大きな課題となります。日本式の接客や調理技術を現地スタッフにどのように教育するかは、品質維持に直結します。
また、言語や文化の違いから、意思疎通やマネジメントが難航するケースも少なくありません。人材の定着率が低い地域では、継続的な教育体制の構築も欠かせません。安定した運営のためには、現地に適したオペレーション設計と管理体制が求められます。
日本食の海外進出では、人気や話題性だけに頼った展開では継続的な成果につながりません。市場環境や事業目的を整理し、現地に根付く仕組みを構築することが重要です。
ここでは、日本食海外進出を成功させるための5つのポイントを解説します。
海外進出を検討する際は、まず何を目的に進出するのかを明確にする必要があります。ブランド認知の向上を狙うのか、収益の柱として事業拡大を図るのかによって、取るべき戦略は大きく異なります。
また、直営店舗、フランチャイズ、現地企業との提携、食品輸出など、ビジネスモデルによって必要な投資額やリスクも変わるでしょう。目的とモデルが曖昧なまま進出すると、判断基準がぶれ、撤退や方向転換を迫られる可能性が高まります。
海外市場と一口にいっても、国や地域によって消費者の嗜好や購買行動、競合環境は大きく異なります。日本食が人気とされる国でも、価格帯や利用シーンはさまざまです。事前に市場規模、競合店舗、消費者層、価格水準などを調査することで、現実的な戦略設計が可能です。
感覚的な判断ではなく、データや現地情報に基づいた市場調査が、成功確率を高める土台となります。
日本で評価されている商品やメニューを、そのまま海外で展開しても支持されるとは限りません。味の濃さや食材、提供方法、価格帯は、現地の食文化や生活習慣に合わせて調整が必要です。
一方で、日本食らしさを失いすぎると差別化が難しくなります。現地ニーズを取り入れながら、日本食の強みやストーリーを活かした商品・メニュー設計が重要です。
海外進出では、現地事情に精通したパートナーの存在が成功を左右します。現地企業との提携やフランチャイズ展開を活用することで、法規制対応や人材確保、店舗運営の負担を軽減できます。
また、現地ネットワークを活かした集客や出店スピードの向上が期待できるのもメリットです。自社だけで全てを担おうとせず、信頼できるパートナーと役割を分担することが、安定した事業運営につながります。
海外進出は、初期段階から大規模展開を目指すよりも段階的に進める方がリスクを抑えられます。テスト出店や期間限定店舗、少量輸出などから始め、現地の反応や課題を検証することが重要です。
検証結果をもとに改善を重ねることで、成功モデルを確立できます。段階的な進出と検証を前提とした計画を立てることが、長期的な成長につながります。
日本食を海外に展開する方法は一つではなく、事業規模や目的、リスク許容度によって最適な手法は異なります。ここでは、日本食の海外進出で代表的な4つの方法を紹介します。
直営店舗による進出は、自社が主体となって海外に飲食店を出店する方法です。ブランドコンセプトやサービス品質を細部まで統一できるため、日本食の世界観やこだわりを正確に伝えやすい点が特徴です。
一方で、出店コストや人材確保、現地法規制への対応など、初期負担は大きくなります。長期的に海外でブランドを確立したい企業や、経営ノウハウを自社で蓄積したい場合に向いている進出方法です。
フランチャイズ展開は、現地の事業者に店舗運営を任せてブランドやノウハウを提供する形で進出する方法です。自社の投資負担を抑えながら、スピーディーに店舗数を拡大できる点がメリットです。
現地パートナーの経営力が成果に直結するため、加盟条件や運営ルールの設計が重要になります。現地市場への適応力を高めつつ、規模拡大を狙いたい場合に有効な手法です。
現地企業との合弁や業務提携は、海外市場に精通したパートナーと共同で事業を進める方法です。法規制や商習慣への対応、販路開拓などを現地企業の知見に頼れるため、リスクを抑えた進出が可能になります。
一方で、意思決定や役割分担を明確にしないと、経営方針の違いが課題になることもあります。現地ネットワークを重視したい企業に適した進出方法です。
食品や加工品の輸出販売は、飲食店出店に比べて初期投資を抑えやすく、日本食の海外展開を始めやすい方法です。
店舗運営を行わないため、人材やオペレーションの負担も軽減できます。保存性や輸送コスト、現地の食品規制への対応が必要になるため、事前準備が重要です。まずは商品単位で海外需要を検証したい場合に向いています。
現地の小売店や外食チェーン向けに商品を卸す方法は、安定した販売先を確保しやすい点が特徴です。業務用需要を取り込めれば、一定量の販売が見込めます。ただし、価格競争が起こりやすく、継続的な取引には品質管理や供給体制の整備が欠かせません。
現地バイヤーとの信頼関係構築こそが、成功の鍵です。
海外ECを活用した販売は、近年注目されている進出方法です。現地に店舗を構えずに消費者へ直接販売できるため、低リスクで市場反応を確認できます。
一方、物流や返品対応、為替変動などの管理も必要です。データを活用した需要を把握し、将来的な実店舗展開へつながる戦略としても有効な手段です。
日本食が海外市場で高評価を得る背景には、現地の多様な嗜好やライフスタイルに合わせた柔軟な戦略があります。
ここでは、代表的な日本初の外食チェーン3社の海外進出成功事例を紹介します。

吉野家は、1899年創業の牛丼チェーンで、日本国内だけでなく海外にも精力的に展開しています。店舗数も多く、2025年9月時点でアメリカには102店舗、台湾には39店舗、上海には27店舗出店しています。
その他、北京やモンゴル、シンガポール、フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナム、モンゴルなどにも出店しており、合計1,013店舗が海外で営業中です。
海外での成功要因として、牛丼というシンプルな商品でも現地色文化に合わせたメニューアレンジやサービス提供を行い、「早い・安い・おいしい」というコンセプトを維持した点が上げられます。また、フランチャイズパートナーに裁量を持たせ、現地事情に応じた経営判断を可能にしている戦略が支持されています。

一風堂は、福岡発のラーメンブランドで2008年のニューヨーク出店をきっかけに、海外展開を本格化しました。アメリカを皮切りに、台湾、オーストラリア、イギリスなどの多くの国で店舗を展開し、現地でもラーメン文化の浸透に成功しています。
海外進出成功の背景には、単に日本の味をそのまま輸出するのではなく、店舗デザインやサービス体験を含めたブランド体験を重視したことが上げられます。現地消費者にとって、「スタイリッシュで本格的な日本のラーメン」という価値を提供し、口コミや評判サイトで高い評価を受けることで、ブランド認知を強化しているのです。
また、世界的なラーメン人気を捉え、日本発ブランドしての魅力を前面に打ち出すマーケティング戦略にも奏功しています。

丸亀製麺は、うどん専門チェーンとして海外展開にも力を入れており、アメリカ、カナダ、イギリス、フィリピン、ベトナム、台湾など複数の国で店舗を運営しています。2025年9月末時点では、海外13の国と地域で327店舗を展開し、丸亀製麺の味、ぬくもりがどんどん広がっています。
丸亀製麺の強みは、うどんという日本独自の麺文化を手ごろな価格で提供できることです。現地の嗜好に応じたメニュー改良を行いつつ、日本の味を維持し、麺のコシやだしの風味を活かすことでローカルな消費者にも受け入れられています。また、セルフ形式のオペレーションは、他の外食形態よりも効率的であることから、海外での店舗展開をスムーズに進められています。
日本食は世界的な注目を集めていますが、海外進出を成功させるには勢いやブームだけに頼らない慎重な判断が欠かせません。市場環境や文化、制度の違いを十分に理解せずに進めると、想定外のコスト増やブランド価値の低下につながる可能性があります。
ここでは、日本食の海外進出を進める際に特に意識しておきたい3つの注意点を解説します。
海外市場では、日本食ブームやSNSをきっかけに一時的に需要が高まるケースがあります。しかし、流行だけを根拠に進出を決めてしまうと、ブームが落ち着いた後に売上が急減するリスクがあります。
重要なのは、その国・地域で中長期的に支持される食文化や価格帯、利用シーンに合っているかを見極めることです。定番メニューとして定着する可能性や、リピート需要を生み出せるかを検証し、持続的な事業モデルを前提に進出計画を立てる必要があります。
日本では一般的な食材や調理方法でも、海外では文化や宗教上の理由で受け入れられない場合があります。例えば、宗教上の戒律による食材制限や、辛さ・油分・量に対する嗜好の違いは代表的なポイントです。こうした背景を理解せずに商品やメニューを提供すると、敬遠されたり批判を受けたりする可能性があります。
現地の食習慣や価値観を事前に調査し、必要に応じてメニュー構成や表現方法を調整する姿勢が、信頼獲得につながります。
食品を海外で提供・販売する際には、各国ごとに異なる食品安全基準や表示義務、輸入規制が存在します。原材料表示、アレルゲン表記、添加物の使用可否などを正しく理解していないと、販売停止や罰則の対象となる恐れがあるのです。
また、飲食店の場合は営業許可や衛生管理基準も厳しくチェックされます。現地の法規制を軽視せず、専門家や現地パートナーの知見を活用しながら、事前に十分な確認と準備を行うことが、安全かつ継続的な海外展開の前提条件となります。

日本食の海外進出は、世界的な和食ブームや健康志向の高まりを追い風に、大きな成長の機会を秘めています。一方で、現地嗜好への対応、食品規制や人材確保など、乗り越えるべき課題も少なくありません。成功の鍵は、進出目的を明確にしたうえで市場調査を徹底し、段階的に検証しながら展開することです。
AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社では、日本食ビジネスにおける海外進出を、調査・戦略設計から現地パートナー連携、実行支援まで一貫してサポートします。短期的なブームに左右されない、持続可能な海外展開を目指す企業にとって、信頼できる伴走型の支援が強みです。
参考文献
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