金田大樹

記事の監修者

金田大樹

AXIA Marketing代表取締役

リサーチ会社を活用した経営判断を、日本企業の常識にしていくことがモットー。

鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅から大手調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。

アジア市場、特に東南アジアに位置するインド・インドネシアは、日系製造業にとって有望な成長エリアである一方、複雑な制度や現地ニーズへの対応が求められる厳しい競争環境でもあります。特に、価格競争が激化する中で差別化を図るには、「技術」「素材」「制度対応」の3要素を軸とした“現地適合力”が不可欠です。EV化の進展や脱炭素への対応、制度認証への対応力など、各業界における課題とニーズは年々高度化しています。

そこで今回は、現地の最新動向とともに、成功企業が実践する具体的な対応事例や販路拡大のステップを紹介します。自社のアジア戦略を見直す際のヒントとして、参考にしてみてください。

インド・インドネシア市場で勝ち抜くには価格競争だけでは不十分

インド・インドネシア市場で勝ち抜くには価格競争だけでは不十分

インド・インドネシア市場では、地場メーカーや中国企業との激しい価格競争が続いており、単に価格を下げるだけでは、日系製造業が継続的な優位性を確立するのは難しくなっています。たとえばインドでは、56%の企業が「最大の競合は地場企業」と回答しています。

インド・インドネシア市場における競争環境を示すグラフ。

56%のインド企業が「最大の競合は地場企業」と回答しており、海外進出や東南アジアコンサルティングにおいて日本企業が直面する課題を示しています。

税制の複雑さや行政手続きの煩雑さ、現地人材のスキル不足といった複合的な要因が、海外進出を目指す中小企業にとって大きな障壁となっています。

一方インドネシアでは、中国からの製造業投資が増加する中、日系企業の撤退事例も目立ちます。そこでは、消費者ニーズとのずれや、従業員の習熟度不足が主な課題とされています。

競争優位を築くための「現地適合力」とは

競争優位を築くための「現地適合力」とは

日系製造業がインド・インドネシア市場で競争優位を確立するには、「技術」「素材」「制度対応」の3要素を軸とした現地適合力の強化がカギを握ります。EVや産業機械の高度化が進む中、耐熱性・耐腐食性・安全性を備えた高機能部材や制御技術への適応が求められており、日本仕様のままでは環境やニーズとの齟齬が生じやすいです。

加えて、インドではBIS認証や化学物質管理に関する法規制が、インドネシアではSNI認証やエコラベル制度が、それぞれ製品展開の障壁となっています。これらに対応するには、現地パートナーとの協働による素材のカスタマイズや、認証取得支援体制の整備が不可欠です。

業界別に見る最新ニーズと対応事例

業界別に見る最新ニーズと対応事例

インドやインドネシアをはじめとする東南アジア地域では、産業ごとに求められる技術や制度対応の内容が大きく異なります。ここでは、自動車部品・産業機械・鉄鋼・化学といった主要業界における最新ニーズと、実際の対応事例について紹介します。

自動車部品:EV化・環境対応に求められる素材革新

EVシフトの進展と環境規制の強化を背景に、自動車部品分野では素材技術の刷新が急務となっています。インドでは、EVバッテリーの熱暴走対策や安全性向上を目的に、BMS(バッテリーマネジメントシステム)と熱管理技術の高度化が進められているところです。

一方、インドネシアでは、豊富なニッケル資源を生かしたバッテリー部材の現地調達に加え、耐湿・耐腐食性能に優れた再生素材の導入が加速しています。さらに、セルロースナノファイバーを活用した軽量・耐湿設計により、車体の燃費向上や耐久性の強化にも貢献しており、海外でのEV競争における差別化にも貢献しています。

産業機械:高温多湿・塩害対策のためのローカライズ技術

東南アジア市場への海外進出支援を想定し、インドの産業機械・農業機械分野における高温多湿・塩害対策やオフグリッド技術などの現地適合事例を紹介する海外コンサルティング資料の図。

インドでは、高温や粉塵、酸性雨といった厳しい環境下での稼働が求められるため、産業機械には耐久性が求められます。実際、多層コーティングによって錆の発生を抑制し、メンテナンス頻度を低減させる事例が見られます。また、連続稼働による部品劣化を防ぐため、高性能フィルムによる冷却技術が導入され、機器の長寿命化が図られています。さらに、農村部のように電力インフラが未整備な地域では、蓄電池・太陽光・小型発電機を組み合わせたオフグリッド電源によって、安定稼働が実現されています。

一方、インドネシアでは、高温多湿に加えて塩害や結露への対策も不可欠です。こうした環境に対応するため、耐塩害性や耐腐食性に優れた素材の採用が進んでいます。加えて、DXと連携した予防保全の仕組みを取り入れることで、長期的な運用の信頼性向上が期待されています。

鉄鋼・化学:環境・脱炭素が変える製品設計の常識

脱炭素社会の進展に伴い、鉄鋼・化学業界では製品設計の前提が大きく見直されています。鉄鋼分野では、水素還元製鉄や再生可能エネルギーを活用した電炉の導入が進み、脱炭素型のグリーンスチール普及が加速しています。特にインドネシアでは、2030年までに12.7%に達する見込みです。

東南アジア市場への海外進出やESG対応を視野に、インド・インドネシアにおけるグリーンスチールとバイオ系プラスチック普及率の推移を示した海外コンサルティング資料の図。

さらに、精度制御やエンドレストリップ圧延といった新技術により、板厚や表面品質のばらつきが抑えられ、現地での信頼性確保にもつながっています

一方で化学分野では、軽量・高強度かつ耐湿性に優れたバイオプラスチックの導入が進み、環境対応型製品としての差別化につながっているのです。こうした動きは鉄鋼や化学だけでなく、他の産業領域にも広がり始めています。

なお、自動車部品・産業機械・鉄鋼・化学分野以外の最新動向や、現地特有の規制・制度対応、成功事例の詳細については、コンサルティング現場で得られた知見も交えながら、下記ホワイトペーパーにて詳しく解説しています。

ホワイトペーパー:『インド・インドネシアで日系製造業が勝ち残る現地適合力とは』

制度対応が進出・製品展開のボトルネックに

制度対応が進出・製品展開のボトルネックに

インドやインドネシアでは、BIS認証やSNI認証などの制度対応が、海外における製造拠点の展開や事業拡大において、大きな足かせとなる場面が少なくありません。現地代理人の設置が義務付けられており、申請には書類の整備、製品試験、工場監査など複雑な工程を要します。審査に長期間を要することも多く、追加試験の要求によって予定が遅延し、コストが膨らむケースも見受けられます。

さらに、3年ごとの認証更新や多言語でのマニュアル整備も求められ、継続的な対応力が不可欠です。こうしたリスクを回避するためには、専門機関や海外認証制度に精通したコンサルティング会社との連携が重要となります。

成功企業に学ぶ「勝ちパターン」|価格競争から脱却するには

成功企業に学ぶ「勝ちパターン」|価格競争から脱却するには

価格競争が激しいインドやインドネシア市場では、単に低価格を追求するだけでは継続的な優位性を築くことは困難です。成果を上げている日系企業の多くは、「技術」「素材」「制度対応」の三要素を掛け合わせた戦略で、現地ニーズに的確に対応しています。

たとえば、インドでは紫外線や高温による製品劣化への対応として、樹脂素材を現地環境に最適化されたものに切り替えた自動車部品メーカーが、故障率を約30%削減しました。一方、インドネシアの化学メーカーでは、環境規制に適合するバイオマス素材を導入し、地元企業との取引拡大や新規案件の獲得につなげています。

インド・インドネシア市場での販路拡大ステップ

東南アジア市場への海外進出を支援する海外コンサルティング資料の図で、インド・インドネシアにおける販路拡大ロードマップと地域別産業集積のステップを示している。

東南アジア全体で共通する課題ですが、インド・インドネシア市場で販路を拡大するには、地域特性や商流の構造を見極めた段階的な戦略が重要です。たとえば、グジャラート州は化学産業、タミルナドゥ州は自動車部品の集積地であり、業種ごとに適した進出先の選定が求められます。

次に、パートナーの発掘では、契約条件の明文化や短期更新制の導入によって、柔軟な対応が可能になります。販促においては、LinkedIn広告を英語とヒンディー語で併用することでリード獲得率が上がり、Facebook広告も製造業B2Bにおいて一定の成果を挙げています。

さらに、現地法人の設立や直販体制への移行を進めることで、入札参加の優位性を確保しつつ、部品販売の収益性を高めることができます。

アジアの市場調査ならAXIA Marketing

現地適合力は「総合戦略」で身につける時代へ

インド・インドネシア市場で競争優位を確立するには、「技術」「素材」「制度対応」の3点を組み合わせた総合戦略が不可欠です。業界によって重視すべき要素は異なり、自動車部品なら素材革新、産業機械なら環境耐性、化学分野なら脱炭素対応といったように、焦点も変わります。

これらを見極め、現地ニーズに即した戦略を描くには、第三者の視点を取り入れた客観的な分析が欠かせません。価格競争に依存しない価値提供を実現するためにも、現地制度や市場特性を的確に捉えたアプローチが求められます。

AXIA Marketing株式会社では、こうしたグローバル市場への新規進出を検討する企業を対象に、海外進出コンサルティングを提供しています。専門的な知識を持つスタッフが在籍し、製品やサービスのポテンシャル評価、リスク分析、市場調査などを多角的に実施。企業がインドやインドネシアをはじめとする新興国市場で確かな競争力を築けるよう、総合的にサポートいたします。

海外進出をご検討の際は、ぜひAXIA Marketingまでご相談ください。

詳しいデータ・成功事例・業界別アクションはホワイトペーパーで

インド・インドネシア市場における製造業の課題とその打開策を網羅的に整理したホワイトペーパーを、無料でご確認いただけます。本資料は、各国における競争環境の変化や業界ごとの素材・技術トレンドに加え、制度対応の障壁や販路拡大戦略、技術移転に関する具体策まで、海外製造業向けのコンサルティング現場で活用されている知見をもとに、実務に直結する形で解説している内容です。

さらに、現地ニーズに適合させることで故障率を約30%削減した企業事例や、素材ローカライズによる差別化の取り組みなど、明日から活かせる知見も多数紹介されています。インド・インドネシアでの持続的な成長を目指す製造業の方は、ぜひ本ホワイトペーパーをご活用ください。

ホワイトペーパー:『インド・インドネシアで日系製造業が勝ち残る現地適合力とは』

Copy Link

Share on

Share on X Share on X Share on Facebook > Share on Facebook >