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2025.10.29
記事の監修者
金田大樹
AXIA Marketing代表取締役
リサーチ会社を活用した経営判断を、日本企業の常識にしていくことがモットー。
鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅から大手調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。
東南アジアの中でも経済成長が著しいベトナムは、製造拠点や新興市場として多くの日本企業が注目する国です。低コストの人件費や安定した政治環境、若く豊富な労働人口が魅力で日系企業の進出も年々増加しています。
本記事では、ベトナムで会社を設立するための手続きの流れ、必要な費用や書類、設立形態の違いをわかりやすく解説します。

ベトナムは経済成長率が高く、外資誘致にも積極的な国として日本企業から注目を集めています。製造拠点だけでなくITやサービス業など幅広い分野で進出が進み、多くの企業が新たなビジネスチャンスを見出しています。
ベトナムで会社を設立する最大の魅力は、高い経済成長率と豊富な労働力です。GDP成長率は毎年約5〜7%を維持しており、若年層人口が全体の約6割を占めるため、製造業やIT業における人材確保が容易。さらに、人件費や土地コストが比較的低く、他のASEAN諸国に比べてもコストパフォーマンスが高い点が特長です。
また、政治的に安定しており、外国企業への投資優遇政策が整備されていることも大きなメリットです。日越両国間では経済連携協定や自由貿易協定なども進んでおり、貿易環境が整っています。製造業・物流業では中国からのチャイナプラスワン戦略の一環として、ベトナムが重要な拠点に位置づけられているのです。
こうした制度的・地理的優位性により、今後も日本企業のベトナム進出は増加していくと見られます。
日本企業のベトナム進出は、過去10年で着実に増加しています。製造業を中心に、ハノイ・ホーチミン・ダナンといった主要都市での進出が中心です。JETROの調査によると、ベトナムに拠点を持つ日本企業は約2,000社以上に達しており、電子部品、自動車、建設、物流、IT、サービス業など多岐にわたります。
近年では、製造拠点としてだけでなく、中間所得層の拡大を背景にした内需市場を狙う企業も増えています。例えば、ユニクロや無印良品などの小売業、そしてIT開発やBPO(業務委託)企業もベトナム市場を積極的に開拓中です。
また、デジタル化が進む中でEC市場やフィンテック分野も成長しており、これらの分野への日系企業の参入も加速しています。今後もベトナムは、日本企業にとって次の成長市場としての地位を強めていくでしょう。

ベトナムで事業を行うには、主に「現地法人」「駐在員事務所」「支店」の3つの設立形態があります。それぞれに目的や活動範囲、設立手続きの難易度が異なるため、自社の進出目的や事業規模に応じた選択が重要です。以下では各形態の特徴と違いを詳しく解説します。
ベトナムで最も一般的な進出形態が、現地法人です。現地法人は外国資本100%による設立が認められており、製造業やIT、商社など幅広い分野で採用されています。
現地法人は独立した法人格を持ち、契約や雇用などを自社名義で行える点が最大の利点です。特に有限責任会社(LLC)は、少人数での運営が可能なため中小企業の進出に適しています。
一方で、株式会社(JSC)は資本調達力や株式譲渡の自由度が高く、大規模な投資や上場を目指す企業に向いています。以下でそれぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
一人社員有限責任会社(1 Member Limited Liability Company)は、1名の投資家(個人または法人)で設立できる法人形態です。中小規模の事業に適しており、ベトナムでの事業を完全に自社の意思でコントロールしたい場合に向いています。
設立手続きは比較的シンプルで、株式発行の必要がなく、出資者の責任範囲も出資額に限定されます。そのため、リスクを最小限に抑えつつ、スピーディーに現地拠点を立ち上げられるのが特徴です。
ただし、株式譲渡や増資を行う場合には二人以上LLCまたは株式会社(JSC)へ組織変更が必要となります。
二人以上社員有限責任会社(Multi-member LLC)は、2名以上50名以下の投資家で設立できる法人形態です。複数の企業や個人が共同で出資し、合弁事業を行いたい場合に適しています。
二人以上社員有限責任会社の特徴は、内部統制の自由度と柔軟性です。株式の発行は行わず、出資持分に基づく議決権や利益配分が行われます。議決には全員一致が求められるケースもあり、意思決定のスピードよりもパートナーシップを重視した運営に向いています。
中堅企業や合弁型の投資プロジェクトに、最適な形態です。
株式会社は、3名以上の株主で設立する法人形態です。株式発行による資金調達が可能で、将来的に上場を目指す企業や大規模事業を行う場合に選ばれます。
JSCの最大の利点は、株式譲渡や増資の自由度が高い点です。事業拡大や外部投資家の受け入れが柔軟に行えるため、グローバル展開を見据える企業に適しています。
ただし、設立・運営に関わる法的手続きや会計報告の義務が多く、管理コストがやや高い点には注意が必要です。
駐在員事務所は、市場調査や情報収集など非営利活動を目的とした拠点です。商取引や売上行為は認められませんが、現地企業との関係構築や将来的な法人設立のための準備拠点として多く利用されています。
設立手続きは比較的簡単で、法人登記は不要です。設立後はホーチミンやハノイなど主要都市にオフィスを構え、日本本社の代表者が常駐する形が一般的です。直接取引はできないものの、ベトナム市場への足掛かりとしての役割を果たします。
支店は外国企業の本社が直接管理する現地拠点であり、一定範囲内での営利活動が認められる形態です。製造やサービス提供、契約締結などが可能で、現地法人に近い運営が行えます。ただし、支店は本社と同一法人とみなされるため、税務や法的責任は本社側に帰属します。
そのため、独立性は低いものの短期間で現地事業を開始したい場合や、限定的なプロジェクト実施に適した形態です。設立には商工省の許可が必要で、事業内容によっては制限を受ける点にも注意が必要です。

ベトナムで会社を設立するには、法律や行政手続きを正確に理解し、段階的に進めることが重要です。特に外資系企業の場合、投資登録証明書や企業登録証明書の取得など、独自のプロセスが求められます。ここでは、会社設立までの流れを9つのステップに分けて詳しく解説します。
会社設立の第一歩は、ベトナム政府が定める外資規制や業種制限の確認です。外資系企業が参入できる分野は限定されており、投資法やWTOスケジュールで規定された条件を満たす必要があります。
例えば、教育・通信・小売など一部業種では外資比率に制限があり、現地企業との合弁が求められるケースもあります。また、業種ごとに必要なライセンスが異なるため、事前に関連法令を調査しておくことが大切です。
JETROや現地法律事務所の情報を活用し、自社のビジネスモデルが規制対象かどうかを明確化することがスムーズな設立への第一歩となります。
事業の目的や展開計画に応じて、最適な会社形態を決める必要があります。例えば、少人数で柔軟に経営したい場合は「有限責任会社(LLC)」、資金調達や上場を視野に入れるなら「株式会社(JSC)」が適していると言えるでしょう。
また、事業内容の選定も重要で、ベトナム政府は登記時に登録事業項目(Business Lines)を審査します。登録内容と実際の活動が異なると罰則の対象になるため、想定するビジネスモデルを正確に申請書に反映させることが求められます。
さらに、進出の段階に応じて駐在員事務所や支店としてスタートする方法も選択肢です。
会社名はベトナム語または英語で登録可能ですが、すでに登録済みの名称と類似していないかを事前に確認する必要があります。ベトナムでは商号の重複防止が厳格に運用されており、他社と同一または類似した名称は拒否されます。
名称は「ベトナム語の正式名」「外国語名」「略称」の3種類で構成され、すべて公式書類に記載されることを理解しておきましょう。申請前に商務省や企業登録ポータルサイトで類似商号を調査しておくとよいでしょう。
また、会社名には業種を表す言葉を含めることも多く、ブランディングや信用構築の観点から慎重に検討することが大切です。商標登録も並行して進めることで、将来的な知的財産トラブルを防げます。
会社登記には、ベトナム国内に実在するオフィス住所が必須です。自宅や仮住所では認められないため、商業ビルやコワーキングスペースなど、登記可能な物件を選定する必要があります。
契約時には、貸主が所有権を証明する土地使用権証明書や建物の使用許可証を提示してもらうことが重要です。これらの書類が不備だと、登記申請が却下されることもあります。
また、工場を設立する場合は工業団地や経済特区など、外資企業が利用可能なエリアであるかどうかの確認も欠かせません。オフィスの所在地は企業登録証明書にも記載されるため、長期的な事業展開を見据えた立地選びが成功の鍵となります。
ベトナムで会社を設立する際には、日本側とベトナム側の双方で多数の書類を準備する必要があります。主な書類としては、投資家の登記簿謄本、定款、代表者の身分証明書、事業計画書、オフィス賃貸契約書などです。
外国企業が投資する場合、これらの日本語書類をベトナム語に翻訳して公証および領事認証を受けることが求められます。特に定款や登記簿はベトナム商工省による厳格な審査対象となるため、誤訳や形式不備があると申請が差し戻されるケースも少なくありません。
現地の行政手続きに精通したコンサルティング会社や法律事務所を活用し、正確でスムーズな書類準備を行うことが大切です。
投資登録証明書(IRC)は、外資系企業がベトナムで事業を行うための最初の公式許可書です。投資登録証明書を取得することで、外国投資家としての事業活動が正式に認められるのです。
申請先は現地の計画投資局(DPI)または工業団地管理委員会で、提出書類には投資家情報、事業計画書、投資資本額、収益予測などが含まれます。
審査期間は通常15営業日前後ですが、業種や案件内容によっては1か月以上かかることもあります。IRCは今後の企業登録や税務手続きの基礎となるため、事業目的・出資比率・事業期間などを正確に記載することが不可欠です。
不備があると再提出が求められるため、専門家による事前チェックを推奨します。
企業登録証明書(ERC)は、IRC取得後に行う法人としての登記手続きです。企業登録証明書を取得することで、会社は正式に法人格を持って営業活動を開始できます。
申請は計画投資局(DPI)で行い、IRCや定款、役員リスト、登記住所証明などを提出してください。審査期間は通常3〜5営業日程度ですが、書類の不備があると延長される場合があります。ERCには会社名・所在地・代表者・資本金・事業内容が明記されます。
これにより税務登録、印鑑登録、銀行口座開設などが可能になります。IRCとERCの内容が一致しているかを確認することが大切で、両証明書の整合性が取れていないと後の手続きに支障をきたすため注意が必要です。
ERCを取得した後は、会社の正式な印鑑を作成し、商工省へ届出を行います。ベトナムでは印鑑が法的に強い効力を持ち、契約書や申請書に押印することで正式な承認とみなされます。印鑑のデザインは企業ごとに自由ですが、一般的には社名と登録番号が入った円形のものが主流です。
届出はオンラインで行うことも可能で、承認後に印鑑証明書が発行されます。印鑑は企業運営における法的な署名として扱われるため、管理体制を明確化し、不正使用を防止するルール整備が求められます。
外資系企業の場合、日本本社と現地法人間での管理権限を明確にしておくことが大切です。
最後のステップは、ベトナム国内での法人銀行口座開設と資本金の送金です。ERC取得後、現地銀行に必要書類を提出して口座を開設します。
口座は投資資本口座と運営口座の2種類があり、最初に資本金を送金するのは前者です。資本金は通常、ERC発行日から90日以内に全額送金する必要があります。期日を過ぎると罰金や事業停止処分の対象となることもあるため注意が必要です。
送金後は銀行が資本金受領証明書を発行し、これが税務登録や営業開始の条件となります。また、外国送金には日本側の銀行手続きや為替管理法の制約があるため、日越両国の銀行ルールを理解したうえで進めましょう。以上の手続きがすべて完了すれば、正式にベトナム法人として事業運営を開始できます。

ベトナムで会社を設立する際の費用は、会社形態・業種・事業規模・サポート内容によって異なりますが、一般的には総額で30万〜80万円前後が目安です。
主な内訳としては、登記申請にかかる行政手数料、書類の翻訳・公証費用、印鑑作成費、銀行口座開設費、現地専門家への代行依頼費などが含まれます。外資系企業の場合、投資登録証明書や企業登録証明書の申請時に必要な書類の翻訳・公証費用が高くなりやすく、日本語→ベトナム語翻訳と領事認証手続きで10万円前後を要することもあります。
また、現地でオフィスを借りる場合はデポジット2〜3か月分+家賃1か月分の初期費用が必要です。さらに、コンサルティング会社へ代行を依頼する場合、サポート内容によって30万円〜50万円程度が一般的です。
つまり、事業の準備段階から予算を明確に立て、設立後の維持費も見据えた総合的な資金計画を立てることが成功の鍵となります。

ベトナムで会社を設立する際には、日本側とベトナム側の双方で多くの書類を準備する必要があります。外資系企業の場合、まず日本で発行される「登記簿謄本」「定款」「代表者のパスポート」「決算書」などを用意し、これらをベトナム語に翻訳・公証・領事認証することが求められます。
これらの手続きには通常2〜3週間を要し、形式や記載内容に不備があると申請が差し戻されることも多いです。現地での申請時には、これらの書類に加えて「オフィス賃貸契約書」「事業計画書」「資本金計画」「投資家情報」などを提出します。
投資登録証明書や企業登録証明書の申請では、投資金額・出資比率・事業内容・代表者の任命証明書などが厳密に審査されます。また、法人印鑑作成や税務登録、銀行口座開設の際にも企業情報を記載した書類一式が必要です。
そのため、設立準備はJETROや現地専門コンサルタントのサポートを受けながら、日本語・英語・ベトナム語の3言語で正確に書類を整備することが成功の鍵となります。
会社設立に必要な主な書類をまとめました。

ベトナムでの会社設立を円滑に進め、事業を軌道に乗せるためには、単に設立手続きを完了させるだけでなく、市場の理解・法規制の遵守・人材戦略の最適化が欠かせません。以下では、ベトナム進出を成功に導く3つの重要なポイントと実務上の注意点を解説します。
ベトナム市場は急成長を遂げていますが、地域や業種によって需要の特性が大きく異なります。そのため、進出前に綿密な市場調査を行い、現地の購買力・消費傾向・競合状況を把握することが不可欠です。
JETROや商工会議所、現地リサーチ企業などのデータを活用し、ターゲット市場の明確化と競合優位性の分析を行いましょう。単に日本の成功モデルを持ち込むだけでは成功せず、現地文化や商習慣に合わせた商品・サービスのローカライズが求められます。
また、進出戦略を策定する際には「どの地域で」「どの顧客層に」「どんな販売モデルで」展開するかを定義し、短期・中期・長期の成長シナリオを具体化することが成功への近道です。
ベトナムで会社を設立する際に特に注意すべきなのが、外資規制とネガティブリスト(外国投資禁止・制限業種の一覧)です。外資規制とは、外国企業が現地企業へ投資する際の出資比率や参入分野を制限するルールのことを指します。
これは、国内の重要資源や産業を保護し、経済主権を守るために世界各国で導入されている制度であり、ベトナムでも例外ではありません。ベトナムでは2007年のWTO加盟以降、外資受け入れを拡大しながらも、国家安全保障や経済安定を目的として外資規制を整備してきました。特に2021年1月に施行された「改正投資法(61/2020/QH14)」および同年3月公布の「政令第31号/2021/ND-CP」により、初めてネガティブリスト制度が導入されました。
このリストでは、報道・水産・司法行政など25業種が外資禁止とされ、また保険・金融・映画配給など59業種は条件付きで投資可能と定められています。ネガティブリストの導入により、外資が参入できる分野とできない分野が明確化され、企業にとっては事前調査が容易になりました。つまり、「リストに記載されていない業種=外資参入が可能」と捉えられるのです。この仕組みを正しく理解すれば、ベトナム進出のチャンスを見極める有力な判断材料になります。
ただし、ベトナムでは外資規制や関連法令が頻繁に改正されるため、最新の法制度を常に確認することが不可欠です。JETROや計画投資省(MPI)、現地の商工局、または専門コンサルティング企業を通じて最新情報を収集し、コンプライアンス体制を整備することが、安定した事業運営につながります。特にライセンス取得や合弁設立の可否は事業内容により異なるため、法務・会計の専門家と連携した設立戦略の構築が重要です。
ベトナム進出を成功させるには、優秀な現地人材の採用と育成が鍵を握ります。現地スタッフは文化・言語・商習慣に精通しており、営業・管理・サポートなど多方面で日本企業の事業展開を支えます。特にベトナムでは若年層の労働力が豊富で、英語力やITスキルに優れた人材も多いのが特徴です。
一方で、日本的なマネジメントスタイルがそのまま通用しない場合もあるため、権限委譲やインセンティブ制度の設計など、柔軟な人事戦略が求められます。また、幹部候補となるローカルマネージャーを早期に登用し、日本人駐在員とのハイブリッド体制を築くことで現地に根ざした持続可能な組織運営が可能になります。
信頼関係を築きながら、共に成長する体制づくりが成功の鍵です。

ベトナムでの会社設立は、法制度・手続き・文化の違いを理解しながら慎重に進めることが成功の鍵です。市場の成長性は高い一方で、外資規制や申請手続きの複雑さなど事前準備を怠ると設立後の運営に支障をきたすこともあります。
AXIA Marketingでは、市場調査・会社設立サポート・現地法人の立ち上げ支援まで一貫して対応。ベトナムでの豊富な支援実績をもとに、業種や事業規模に応じた最適な進出プランを提案します。初めての海外進出でも安心して取り組めるよう、現地専門家との連携体制と継続的なアフターサポートを提供しています。
参考文献
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