金田大樹

記事の監修者

金田大樹

AXIA Marketing代表取締役

リサーチ会社を活用した経営判断を、日本企業の常識にしていくことがモットー。

鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅から大手調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。



新規事業の立ち上げは企業の成長や競争優位の源泉といえるものです。しかし、アイデアの発掘から市場検証、計画立案、そして実際のリリース・改善までを体系的に進めなければ、成功の道のりは険しいものとなります。

多くの企業やスタートアップが陥りやすい失敗を防ぐためにも、新規事業プロセスのポイントやフレームワークを理解して計画的に実行することが不可欠です。

この記事では、新規事業の立ち上げに必要な全体のプロセスをフェーズごとに紹介するとともに、成功確率を高めるための具体的な手順や実践的なフレームワークまで丁寧に解説しています。新規事業の成功に向けて一歩先を行くための実践的なガイドとしてご活用ください。

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新規事業を立ち上げる際のプロセスを解説!

新規事業を成功に導くためには、一連のステップを順序立てて計画的に実行することが求められます。プロセスはアイデアの発想から始まり、クライアントの課題特定、解決策の明確化、事業検証、計画作成、撤退基準の設定、テストマーケティング、そして最終的なリリースと改善へと進みます。

まずは、新規事業を立ち上げる際のプロセスについて、具体的に見ていきましょう。

①目的を明確にする

新規事業を成功させるためには、まず「この事業をなぜ行うのか」という目的をはっきりさせることがとても大切です。目的が曖昧だとチームの目標がバラバラになり、計画が迷走することもよくあります。だからこそ、自社の経営戦略や社会的使命に照らして、事業の方向性やビジョンを言葉にして明確にすることが必要です。

例えば、「売上を増やす」「新しい市場を開拓する」「既存事業と相乗効果を狙う」など、達成したいゴールを複数の角度から考えましょう。そして、その目的はチーム全員で共有し理解してもらうことが重要です。こうすることで、事業のどの段階でも何を優先すべきか判断しやすくなり、軸がぶれにくい運営ができるでしょう。

また、目的はきちんと文章に残し、定期的に見直すことで、進み具合に応じた軌道修正もスムーズに行えます。この明確な「目的」があるからこそ、壁にぶつかってもチーム全体で協力し、乗り越える力が生まれるのです。

②クライアント課題の特定

新規事業の本質は、顧客やクライアントの「困りごと」や「ニーズ」をどれだけ深く理解し、それをしっかり解決できるかにかかっています。そのため、ただ表面的な要望を追うのではなく、潜在的に隠れている課題まで見つけ出すために、多角的な方法で情報を集めることが欠かせません。例えば、インタビューや観察、アンケート、競合調査などを活用することで、さまざまな側面から顧客の本当のニーズを掴めます。

顧客が商品やサービスを使うときの体験を一連の流れでまとめたカスタマージャーニーマップを作成すると、どのタイミングでどんな問題が起きているかが見えてきます。これを使うことで、課題の本質を深く掘り下げ、解決策の精度を高められます。その結果、事業化に向けた方向性がより明確になり、社内外の関係者とも合意を得やすくなるのが大きなメリットです。

③課題解決策を明確にする

クライアントのニーズがわかったら、次は具体的にどんな解決策を提供するかをはっきりさせましょう。これは新規事業の「顔」とも言える部分で、技術やサービス内容、付加価値、ビジネスモデルをあわせて考える段階です。

ここで大事なのは、単に良い製品を作ることではなく、お客様にとって価値のある体験をデザインすることです。プロトタイプやMVP(最小限の機能を持つ製品)を作り、お客様に試してもらいながら、フィードバックを積極的に取り入れることが成功のカギとなります。市場の声を反映する柔軟さが、事業の成長につながります。

さらに、この時点でその解決策の優位性や収益性、実現可能性についてもきちんと評価しておくことが重要です。これにより、より確かな事業計画を立てられるようになります。

④事業して成り立つか検証

解決策が決まったら、それが事業として採算が取れるかどうかを慎重に検証します。

新しい事業が市場でどれくらいの需要があるか、どのくらいの規模が見込まれるのかをしっかり調べると同時に、価格設定が適切かどうかや、顧客が本当に商品やサービスを購入したいと思っているかどうかも確認しましょう。また、競合がどのような製品やサービスを提供しているかを分析し、自社がどのように勝ち抜いていけるかを考えます。収益モデルの妥当性も重要なポイントです。

これらの要素をもとに、売上や費用の予測を計算するためにシミュレーションやモデリングを行い、具体的な収支計画を作成します。この計画をつくることで、事業の見通しを明確にしやすくなります。さらに、顧客の行動や競合の動きが変化する可能性も考慮し、それに応じてリスクを洗い出し、対策を検討します。こうした修正を何度も繰り返すことで、より現実的で信頼できる計画が出来上がります。

⑤事業計画書の作成

事業の実現可能性の確認が終わったら、具体的かつ説得力のある事業計画書を作成します。この事業計画書は、経営陣や投資家に対して事業の価値やリスク、将来のビジョンをしっかり伝えるための重要な道具です。

事業計画書には、まず事業の背景となる市場の動向や解決したい課題、ビジネスの目的を明確に記載します。次に、狙うターゲット市場の詳細や、提供する製品やサービスの内容・特徴について具体的に説明します。これにより、読み手が事業の全体像をすぐに理解できるようにします。

さらに、収益予測や財務計画も重要な要素です。売上や利益の見込みを数字で示し、費用や資金調達計画を具体的に立てることで、事業の現実性を高められます。マーケティングや営業の戦略、実際に事業を動かすためのオペレーション体制も漏れなく盛り込むのがポイントです。

加えて、どんなリスクが考えられるかを洗い出し、それにどう対応するかのリスクマネジメントを示すことで、計画の信頼性をさらに高められます。特に財務計画やKPI(重要業績評価指標)は、経営判断に大きく影響するため、具体的なデータに基づいて作成することが成功に繋がる決め手です。

わかりやすく整えられた事業計画書は、関係者の理解と共感を得やすく、事業の推進や資金調達の成功にもつながります。はじめて作成する場合は、いきなり完璧を目指さず、書きながら内容をブラッシュアップしていくことも大切です。

⑥撤退時の基準を決める

新規事業を立ち上げる際の重要なポイントの一つに「撤退時の基準を決める」ことがあります。新規事業は大きなチャレンジであり、その成否が企業の未来を左右するため、当然ながら慎重な姿勢が求められます。一方で、事業が目標や期待に届かない場合には、撤退を速やかに判断し、経営資源を無駄にしないことも非常に重要です。

撤退の基準を曖昧なままにしておくと、いつまでも事業の失敗を引きずってしまい、資金や人材、時間が無駄に消費されてしまいます。そこで、財務面では売上や利益の動向、投資の回収状況、事業計画に対するKPI(重要業績評価指標)の達成度を具体的な数値で設定し、これらが一定期間内に達成されなければ撤退を検討するという段階的かつ客観的な判断基準を持つことが必要です。

また、市場からの反応や顧客のフィードバック、競合との優位性など、定性的な面も重視し、総合的に事業の継続可能性を評価することが望まれます。これにより、ただ数字だけに惑わされることなく、現場の実態や将来性を踏まえた最適な判断ができます。

経営層が迅速かつ冷静に撤退判断を下せるよう、事前に社内でルールや合意形成をしっかり行っておくことも欠かせません。これにより、感情的な決断や意思決定の遅れを防ぎ、組織として早期に次の挑戦へとリソースをシフトできるのです。

⑦テストマーケティング

新規事業の立ち上げで大切なステップの一つに「テストマーケティング」があります。テストマーケティングでは、まだ全国や全市場に本格展開する前に、限定した範囲や小規模で製品やサービスを販売・提供します。そして、顧客の反応をじっくり観察することで、実際の市場で自社のアイデアや製品がどう受け入れられるかを検証していきます。

ここで得られる顧客からのフィードバックはとても貴重で、商品の改善ポイントやサービスの質の向上に直結します。また、マーケティング戦略を磨く上でも欠かせません。特に、新しい事業はリスクが高いため、失敗を恐れず積極的に情報を集め、それに基づいて柔軟に対応していく姿勢が成功の鍵となります。

テストマーケティングを効果的に活用すると、正式なリリース後に起こりうる問題やリスクを大きく減らすことができ、資金と時間の無駄を防ぎます。その結果、事業の成功確率を飛躍的に高めることができるでしょう。

⑧リリース・改善

製品やサービスを正式にリリースすることは、ゴールではなくむしろ新たなスタートです。市場に提供した後も、お客様の声を丁寧に聴き取り、製品の性能やサービスの品質を絶え間なく向上させていく姿勢が、長期的な成功につながります。

リリース後は、KPI(重要業績評価指標)の継続的なモニタリングを行い、顧客満足度調査や競合との比較分析を活用して、現状の課題や改善点を把握します。こうしたデータをもとに、必要に応じて戦略の見直しや新機能の追加開発を進めることで、顧客ニーズに的確に応え続けられるでしょう。

また、改善を組織の習慣として根付かせることも重要です。市場環境が変化しやすい中で柔軟に対応できる仕組みを持つことで、安定した持続的成長を実現し、事業の生命線を守ることにつながります。

このように、リリースと改善を繰り返しながら、新規事業は進化し続けるものと考え、粘り強い取り組みを続けることが事業の成功には欠かせないのです。

新規事業戦略の成功のポイントとは?

新規事業の立ち上げを成功へ導くには、確かな戦略と効果的な実行が欠かせません。市場ニーズの的確な把握に加え、自社の強みを活かしつつ新しい価値を提供できるかが鍵となります。さらに、変化の激しい市場環境に柔軟に対応しながら、着実に事業を成長させるための仕組みづくりも非常に重要です。

ここでは、新規事業戦略で押さえておきたい4つの成功ポイントを分かりやすく解説します。

新しい市場の開拓

新規事業戦略の最初のポイントは、市場の選定です。新しい市場を開拓するときは、これまでの自社の領域にとらわれず、成長性や競争環境の相対的に有利な分野を見つけることが大切です。新規市場は既存規模が小さくても将来的な成長が見込める分野もあるため、長期的な視点で投資判断を行うと良いでしょう。

ここで注目したいのが、顧客の潜在ニーズに応えることです。市場の表面的な需要だけでなく、今後顕在化しうる課題やニーズに先回りして対応することで、競合優位性を築きやすくなります。すでに激しい競争が繰り広げられている市場への参入は慎重に判断し、代わりにニッチ市場や新興市場での地歩を固める戦略も効果的と言えます。

新しいプロダクトの開発

新規事業では、顧客ニーズに合致した新しい製品やサービスの企画・開発が欠かせません。単なる機能追加ではなく、顧客体験や利便性の向上を追求した革新的なプロダクトを設計することが求められます。

製品開発の成功には、開発プロセス全体で顧客フィードバックを取り入れながら、迅速に改善を重ねるアジャイル手法の採用が有効です。市場投入前にプロトタイプやMVPを用いて検証を繰り返すことで、顧客受容性や機能の最適化につながります。技術的な独自性やシンプルなユーザーインターフェースも製品の競争力を高めるポイントです。

事業領域を広げる

新しい事業を成功させるには、事業の範囲を広げることもとても大切な戦略です。一つの分野にとらわれず、関連する分野や異なる業界との連携も利用して、成長のチャンスを増やすことが求められます。

例えば、今扱っている製品やサービスにもっと便利な追加商品を提案することや、新しい使い方や顧客の層を増やす方法が挙げられます。また、これまで取り組んでいなかった分野や市場へ積極的にチャレンジすることも有用です。こうした多彩な取り組みを行うことで、事業の収益の柱を増やし、収入の安定化と同時にリスクを減らすことができるでしょう。

マーケティング戦略の刷新

新しい事業を成功させるためには、今までのやり方に頼らず、マーケティングの戦い方を新しくすることも大切です。具体的には、新しい顧客層を見つけたり、新しい販売の方法や場所を開拓したりして、より多くの顧客とつながることがポイントです。

最近では、インターネットやSNSを活用して情報を発信したり、顧客と直接コミュニケーションを取ったりする方法が一般的になってきています。特に若い世代やスタートアップ企業をターゲットにする場合は、お客さまの感情に訴えかけるような価値や、使って楽しい体験を提供することが重要になります。

顧客の動きや反応を常に分析し、それをもとに計画を何度も見直す「PDCAサイクル」をしっかり回していくことが、マーケティング成功の秘訣です。

新規事業でフレームワークを使ったプロセスを踏む方法を解説!

新規事業をスムーズかつ確実に成功に導くためには、体系的なプロセスをフレームワークを活用して進めることが非常に効果的です。フレームワークがあれば、複雑な事業開発の過程をステップごとに整理でき、課題に応じて最適な手法を選択することができるでしょう。

ここでは、アイディア創出から市場調査、ビジネスモデル構築、マーケティング戦略、KPI設定まで、新規事業のあらゆるフェーズで活用できる代表的なフレームワークを解説します。

アイディア創出フレームワーク

新規事業の第一歩は優れたアイディアの発掘です。ここで注目したいのが「バックキャスティング」と「フォアキャスティング」という二種類のアイディア創出フレームワークです。

バックキャスティングは、まず将来のあるべき姿を思い描き、そこから逆算して現在の課題や行動計画を立てる方法です。ゴールから逆に考えるため、斬新で長期的なビジョンを描きたい場合に適しています。一方、フォアキャスティングは現状分析やトレンドデータに基づき現実的な未来を予測し、その上で実行可能なアイディアを作る手法です。こちらは短期的な市場ニーズや実現可能性に重点を置く場面で効果的です。

これら二つを状況に応じて使い分け、または組み合わせることで、柔軟かつ多角的なアイディア創出が実現します。それぞれ詳しく見ていきましょう。

バックキャスティング

バックキャスティングは、「未来から逆算する考え方」とも言われ、実現したい未来像から現在のアクションを考えていきます。

バックキャスティングは、まず「どんな未来にしたいか」という目標の姿をはっきりとイメージするところから始まります。例えば、「10年後に環境に優しい製品で業界トップになる」「2030年までに地域社会に貢献する事業をつくる」といった具体的で大きな目標です。

その後、今の現状と目標の間にある「ギャップ」をしっかりと洗い出し、そのギャップを埋めるために「どんなことをすればよいか」という具体的な行動やアイデアを考えます。ここでは制約を一旦忘れて自由にたくさん出すことが大切です。ビジネスの仕組みや必要な設備、チームのあり方など、さまざまな視点から検討します。

最後に、出てきた行動案を「いつまでに」「どの順番で」行うのか、具体的な計画に落とし込みます。そして、大きな目標を達成するために、段階的なステップやスケジュールを決めていきます。この計画をもとに、全員が同じゴールに向かって進めるよう、関係者の理解と合意をつくることも非常に重要です。

バックキャスティングは、ゴールからスモールステップで考えるため、長期的で社会的な価値創造を目指す新規事業や大きな変革を伴うプロジェクトでとても役立ちます。また、計画の途中でも状況に応じて見直しや調整をしやすい柔軟性も持っています。

フォアキャスティング

フォアキャスティングとは、今ある市場のデータや最近の技術の動きをもとに、これから起こりそうな未来を予測して計画を立てる考え方です。簡単に言うと、今の状況が続くとどうなるか、という「現実的な未来」を見通す方法です。

方法としては、まず現在の市場の売れ行きや顧客の行動、最新の技術トレンドなど、数値やデータをしっかり集めて分析します。次にそのデータを使って、近い将来にどんな商品やサービスが求められるか、どのくらいの売上が期待できるかなどを具体的に予測します。こうした予測をもとに、実際に無理のない計画や戦略を作り、スピーディにビジネスを進めていくのが特徴です。

この方法は、すでにある市場で競争力を高めたい場合や、市場の変化に迅速に対応する必要があるときに特に役立ちます。データや顧客の声をしっかり反映させた計画を立てることで、無駄の少ない堅実な事業展開ができるため、安心して進めたいときに向いていると言えるでしょう。

市場調査フレームワーク

新規事業の成功には、正確で効率的な市場調査が不可欠です。ここで役立つのがPEST分析、SWOT分析、ファイブフォース分析などの代表的なフレームワークです。

PEST分析は、政治的(Political)、経済的(Economic)、社会的(Social)、技術的(Technological)な外部環境を評価し、事業に影響するマクロ環境を把握します。一方、SWOT分析は、自社の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を整理し、内外環境をバランス良く評価していきます。ファイブフォース分析は業界内の競争要因を明確化し、新規参入の障壁や競争の激しさを評価します。

これらのフレームワークを組み合わせて活用することで、市場調査の精度を飛躍的に高めることができるでしょう。

PEST分析

PEST分析は、企業の外側にある環境を「政治」「経済」「社会」「技術」の4つの視点から調べる方法です。これにより、自社に影響を与える変化やトレンドを幅広く理解し、新しい事業の可能性やリスクを見つけやすくすることができます。

まず、政治的な面では、国の法律や規制、税制の変更、政府の政策や補助金がどのように影響するかを調べます。例えば、環境規制が厳しくなると、新しい環境対応技術が求められることがあります。次に経済では、景気の動向や物価、為替の変化、消費者の購買力が注目されます。経済が好調なら需要が増え、逆に不況だと消費が冷え込む可能性もあるため、事業に与える影響を把握します。

社会的な要素では、人口の増減、年齢構成、生活様式や価値観の変化を確認します。消費者の考え方や行動が変わることで、製品やサービスのニーズにも大きな違いが出てきます。最後に技術面では、新技術の進歩や普及状況を調査し、自社の技術と市場の動きを合わせて考えることが重要です。

PEST分析を行うときは、まず調査する目的をはっきりさせて、関連する情報を新聞、政府統計、業界レポートなど信頼できる資料から集めます。それらを4つのカテゴリーに分けて整理し、どの情報が事実でどの情報が解釈なのか分けて考えます。さらに、その情報が自社にとって「チャンス」なのか「注意すべきリスク」なのかも考えます。

このように収集・分類・分析を丁寧に行うことで、外部の変化に強い事業戦略を作るための土台ができます。分析結果は定期的に見直し、変化に応じて柔軟に対応していくことも成功のポイントです。

SWOT分析

SWOT分析は、自社の内側(社内の状態)と外側(市場や競合の状況)を一緒に見て考えるための大切な方法です。

まず、自社の「強み」と「弱み」がどのようなところかを考えます。優れた技術や知名度の高さ、豊富な資金力など、他社に負けないポイントが「強み」にあたります。反対に「弱み」は、自分たちが苦手な部分や足りていない資源、改善が必要な課題を指します。

次に、外の環境を見て「機会」や「脅威」となる要素は何かを探します。「機会」は新しく生まれている市場や伸びている顧客のニーズ、法改正や技術進歩など、自社にとって活かせるチャンスです。一方で「脅威」は、競合の新規参入や市場縮小、規制強化など、自社の成長を妨げる危険要素です。

分析が終わったら、これらの4つの要素を組み合わせて戦略を考えます。例えば、自社の強みを使って新しいチャンスをしっかりつかむことが効果的です。また、弱みを補うために提携や投資をするといった対策も考えられます。脅威に対しては、強みを活かして回避策を打つか、弱ければ撤退も検討することもあります。

このように、SWOT分析は事業やプロジェクトの現在の状態を客観的に理解し、どこに力を注げば良いかを明確にするためのツールです。これによってより効果的な戦略作りが可能となり、成功に繋がります。

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析は、ビジネスがどれだけ競争の激しい環境にあるかを知るための方法です。この分析では、5つのポイントから業界の強さや収益の見込みを調べます。

まず1つ目は、「新しく市場に入ってくる企業の脅威」です。新規参入者が多ければ競争が激しくなり、利益が減る可能性があります。2つ目は「既に市場にいる競合企業同士の争い」です。激しい競争は価格の下落や利益率の低下を招きます。

3つ目の「代替品の脅威」は、同じ目的を果たす他の製品やサービスがどれだけ怖い存在かを示します。例えば、新しい技術が既存商品に取って代わる可能性です。4つ目の「買い手の交渉力」は、顧客が価格や条件を厳しく要求できる力を指します。買い手の力が強いと、企業は利益を上げにくくなります。5つ目の「売り手の交渉力」は、原材料やサービスを提供する側が価格を左右する力のことです。供給元が限られていると、調達コストが高くなり事業に影響します。

この5つの力をしっかり分析することで、市場の性格や競争の厳しさ、どこにリスクがあるかをつかめます。うまく利用することで、どの部分に力を入れれば他社に勝てるか、どんな対策が必要かが見えてきて、戦略を立てやすくなるでしょう。

ビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスは、事業の構成要素を9つの要素に分解して可視化するフレームワークで、顧客セグメント、提供価値、チャネル、収益の流れ、コスト構造などを一枚の図に整理することで、事業の全体像を一目で把握できるようにしていきます。

この手法はチームでのアイデア共有や関係者とのコミュニケーションツールとしても有効です。課題の洗い出しやビジネスモデルの検証を迅速に進められるため、新規事業の企画段階で非常に重宝されています。

4P分析

4P分析は、マーケティング戦略を考えるための基本的な枠組みで「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」の4つの要素をバランスよく組み合わせることが重要です。

まず「製品」では、どんな商品やサービスを提供するのか、その特徴や価値、他社との違いをはっきりさせます。次に「価格」は、顧客が納得する料金設定を考え、市場の状況や競合の価格を踏まえながら調整します。

「流通」は、商品をどこで、どうやって顧客に届けるかを決める部分です。店舗やオンライン、直販や代理店など、多様な販売チャネルの使い方を検討します。そして「販売促進」では、広告やSNS、イベントなどを使ってどのように商品やサービスの魅力を伝えるかをプランします。

これら4つのポイントはそれぞれ独立しているのではなく、お互いに影響し合っているため、一貫性を持った戦略を作ることが成功の鍵です。例えば、高級な商品を低価格の店で売ってもお客さまの期待を裏切ってしまうことがあります。反対に、ターゲット層に合った価格設定や販売チャネル、効果的なプロモーションを組み合わせることで、大きな成果を生むことが可能です。4P分析はマーケティング施策の方向性を整理し、ターゲットに最適な価値提供を実現するための強力なツールです。

KPI

KPI(Key Performance Indicator)は、新規事業の成果を数字でわかりやすく示す大切な指標です。新しい事業を成功させるには、進み具合を見える化し、問題があれば早く気付き対処することが必要になるため、KPIの設定は欠かせません。

具体的にどのKPIを選ぶかは、事業の内容や段階によって変わります。例えば、顧客をどれだけ獲得したか、売上がどれだけあるか、リピーターの割合や投資からどれくらいの利益が返ってくるか(ROI)などが代表的な指標となります。

KPIを設けることで、チーム全員が目指す方向を共有でき、結果に責任を持つ文化が生まれます。また、KPIは一度決めたら終わりではなく、定期的に振り返りと見直しを重ねることが重要です。市場の変化や事業の成長度合いに合わせて柔軟に更新し、より適切な指標へとブラッシュアップしていくことが求められるのです。こうしたサイクルをしっかり回すことで、新規事業が成功する確率を高めることができるでしょう。

バランス・スコアカード

バランス・スコアカードは、会社や組織の成果を多角的に評価し、戦略を現場までしっかり落とし込むための仕組みです。単に売上や利益といった数字だけを見るのではなく、「お客様の満足度」「社内の仕事の流れ」「社員の成長や組織の力」といった4つの視点からバランス良く目標を設定し、全体のパフォーマンスを確認します。

このフレームワークでは、まず企業や新規事業が目指す大きなビジョンを決めます。その上で、「財務的な結果」「顧客のこと」「社内の業務プロセス」「学びや成長」と順番に4つの視点に分けて、具体的な目標を立て、どのように行動するか計画します。例えば、顧客満足度を上げるには何を改善すべきか、社員のスキルアップにはどんな研修が必要かを明確にします。それぞれの視点の目標は関連しあっているため、つながりを意識した運用が大事です。

バランス・スコアカードは、ただ評価するだけでなく、戦略の実行を支えるツールとしても機します。KPIと連動させることで、組織全体が共通のゴールに向かって動きやすくなり、継続的な改善が可能になるのです。これにより、新規事業でも偏りのない健全な成長を目指すことができるでしょう。

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新規事業の立ち上げは、多くの挑戦と綿密な戦略が求められる重要な経営活動です。この記事でご紹介したようなポイントやフレームワークを活用することで、複雑なプロセスを体系的に整理し、効率的かつ確度高く事業を進めてみてください。

しかし、海外進出や多国籍展開を目指す企業にとっては、現地の市場調査自体が非常に難しいこともあります。そんなときに強い味方となるのが、AXIA Marketingです。

AXIA Marketingは、アジア、欧米、北中南米など多地域にわたる豊富な調査実績を持ち、多様な国ごとのニーズや競合環境を緻密に分析します。現地のリアルな声を反映した信頼できるデータを提供し、それをもとにクライアントの戦略に即した、実行可能な提案を行っています。グローバル市場での成功を本気で目指すなら、ぜひAXIA Marketingのサービスや事例を公式サイトでご確認ください。

参考文献

新規事業の立ち上げを成功させる8つのプロセスとは?事例と合わせて紹介

新規事業の立ち上げで必要なこととは?進め方のプロセス7つ

新規事業立ち上げを成功させる8つのプロセス!進め方や事例についても紹介

新規事業の立ち上げプロセス7ステップとは?成功のポイントも解説

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