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2024.06.17
記事の監修者
金田大樹
AXIA Marketing代表取締役
リサーチ会社を活用した経営判断を、日本企業の常識にしていくことがモットー。
鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅から大手調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。
マーケットの拡大や外貨獲得のために、海外進出を計画している日本企業が現在増えています。
以前までは、越境ビジネスを行う国として、中国を始めとするアジア圏が人気でしたが、昨今ではアメリカもおすすめの進出国の候補として挙げられています。
本記事では、アメリカ進出の前の市場調査について、押さえておくべきポイントや注意すべきポイントの詳細を説明しています。
アメリカの基本的な国データを一覧表にまとめました。
人口 | 約3億3千万人 |
GDP | 約23兆ドル |
面積 | 約983万㎢ |
主な産業 | IT、金融、医療、エネルギー、製造業、農業 |
文化 | ハリウッド映画、ジャズ、ロック、ヒップホップ、スポーツ(アメリカンフットボール、バスケットボール、野球など) |
人種 | 白人: 約60% ヒスパニック/ラテン系: 約18% アフリカ系アメリカ人: 約13% アジア系: 約6% ネイティブアメリカンおよびアラスカ先住民: 約1% その他の人種や混血: 約2% |
宗教 | キリスト教 約65% 無宗教 約26% その他、ユダヤ教やイスラム教など約9% |
アメリカを支える主な産業基盤はITや製造業、産業を支える国民は多くの人種で構成されています。
文化や宗教も多彩です。
アメリカにおける市場調査は、20世紀初頭のマスメディア発展とともに形を整え始めました。当時はアンケートやインタビューといった定性的な方法が中心であり、消費者の声を直接拾うスタイルが主流でした。
その後、戦後の経済成長に伴い統計学を活用した定量的調査が普及し、テレビや新聞といった広告媒体を通じた影響測定が盛んに行われるようになります。
さらに21世紀に入ると、インターネットとスマートフォンの普及によりオンライン調査やSNS分析が急速に広がり、リアルタイムで消費者行動を把握できるようになりました。
アメリカの経済はリーマンショック後の2010年以降、GDPが右肩上がりで成長し続けています。GDPの7割を占める個人消費部門では、非耐久財、サービス分野ともども好調を維持し続けています。
2020年はコロナウイルス蔓延の影響もあって、やや停滞しましたが、2021年には即座に回復する底堅さはアメリカならではのものです。
耐久・非耐久財では自動車、家具など、サービス分野では住居費・公共料金、医療費、投資・保険部門などの消費額が大きく成長しています。重要な経済指標の一つとされる失業率はリーマンショック後の2009年をピークとして下がり続け、おおよそ3%〜4%台を維持し続けています。
アメリカの経済を支えているのは、税制改革による企業の設備投資顎の増加、シェールガスの増産などです。
一方で、米中貿易摩擦や原油価格の下落、中間層の所得の伸び悩みなどが懸念材料としてあげられています。
人口の成長率は2010年代までは0.7%台で推移していましたが、2020年台に入ってからは約0.3%台に下がりました。
今後のアメリカの人口成長率は高齢化社会の進行によって下降を辿るものの、移民政策の変化によって状況が一変する可能性もあります。
GDPの割合で見るアメリカの産業構造は、一次産業が約1%、二次産業が約20%、三次産業が約80%です。長い間、基本的な産業構造に変化はありません。
産業別の就労人口に大きな変化はみられないものの、過去10年間で医療や福祉分野、教育分野では年間2%程度増加しています。
医療や福祉分野の成長は、高齢化社会の進行を裏付けるものでもあります。ベビーブーム世代と呼ばれる50代前半から70代前半の多くの人が医療支援を必要とすることを考えると、今後は看護師の不足も顕在化してくるでしょう。
また、アメリカは世界各国から多くの投資を受け入れているFDI(外国直接投資)受容国でもあります。地域別でみるとヨーロッパからの投資が最も多く、全体の7割弱です。それに次いで、アジアパシフィック、カナダ、その他地域からも積極的に受け入れています。アメリカへのFDIは年々増加傾向にあり、過去10年間の平均では年間7%程度です。
産業別では、4割程度が製造業へ向けられているものの、昨今ではコンピューター・電子機器関連、不動産業、小売業も増加傾向です。
アメリカ市場調査には多様なアプローチが存在し、目的や対象に応じて手法を選び分ける必要があります。大きく分けると「定量調査」と「定性調査」が基本です。
定量調査はアンケートや統計データを用いて数値的な裏付けを得る方法で、市場規模やシェア予測を行う際に有効です。一方、定性調査はインタビューやグループディスカッションを通じて消費者心理や行動背景を深掘りし、商品開発やブランド戦略に役立ちます。
また、オンライン調査はコスト効率の良さから特に中小企業にも活用されており、短期間で多くの回答を収集できます。SNS分析や口コミサイトのレビュー解析も、消費者の本音を探る手段として重宝されているのです。
加えて、政府統計や民間のリサーチ会社が提供する二次データ調査も、基礎情報を把握するうえで重要なリソースです。さらに近年はAIを用いた行動予測や、IoTデータを利用した生活動線分析といった先進的手法も登場しており、従来の調査と組み合わせることで精度を高める取り組みが進んでいます。
こうした多様な調査手段を適切に選択し活用することが、アメリカ市場での成功に直結します。
アメリカ市場の特徴を理解するには、その広大さと多様性に注目する必要があります。地域差や文化的背景が購買行動に直結するため、単一のモデルで全土をカバーすることは難しいのが現実です。
ここでは「広大な市場規模と地域差による購買行動」「文化的背景による多様性」という2つの視点から詳しく見ていきます。
アメリカは50州で構成され、人口規模や所得水準、生活習慣が地域ごとに大きく異なります。例えばニューヨークやロサンゼルスのような都市圏ではトレンド志向が強く、新しいテクノロジーやブランドへの受容が早い傾向にあります。
一方、中西部や南部の地方都市では価格重視や生活必需品に関するニーズが高く、購買行動も堅実です。また、気候や宗教、州ごとの規制も購買選択に影響を及ぼします。
このため、市場調査においては全国平均のデータだけでなく、州や都市ごとの細分化された情報を収集することが不可欠です。小売やEC分野では配送コストや物流網の影響も考慮しなければならず、地理的要素は戦略立案に直結します。
加えて、地域によって広告の効果やメディアの利用状況も異なるため、ターゲットごとに調査設計を工夫することが求められます。つまり「アメリカ市場」と一括りにするのではなく、多様な地域市場の集合体として捉える姿勢が成功への鍵といえるでしょう。
アメリカは移民国家であり、多様な文化や価値観が共存する市場です。ヒスパニック系、アジア系、アフリカ系など、民族ごとに購買習慣やブランドへのこだわりが異なります。
例えば食品分野では宗教的制約や食文化の違いが商品選択に強く影響し、広告においても文化的背景を考慮しないと消費者に共感を得にくくなります。
さらに、世代ごとの価値観の違いも無視できません。若年層はSNSを通じた情報収集や環境意識の高いブランド選びに積極的ですが、中高年世代は価格や信頼性を重視する傾向が強いです。
このような多様性を把握するためには、単なる数値データではなく、定性調査による深掘りが欠かせません。文化や言語の違いを考慮した調査設計を行うことで、より的確なマーケティング戦略が立てられるのです。アメリカ市場に挑む際には、この多文化的背景を尊重したアプローチが不可欠となります。
アメリカ市場を理解するには、産業ごとの特性を把握することが欠かせません。国全体として巨大な規模を誇りますが、実際のビジネス環境や競争の激しさは業種によって大きく異なります。
業界全体の数字だけを追うのではなく、各産業に特化した市場調査を行うことが成功への近道です。ここでは主要産業ごとの特徴を解説し、それぞれの調査ポイントを整理していきます。
アメリカのIT市場は、世界的な技術革新の発信源として絶えず成長を続けています。特にシリコンバレーを中心にスタートアップと大手企業が混在し、クラウド、AI、フィンテック、モビリティといった分野で競争が激化しています。
市場調査の際には、単に技術トレンドを追うだけでなく、投資動向や政策の変化も見逃せません。例えば、プライバシー規制やデータ保護に関する法律はサービス展開に直結するため、調査段階からしっかり把握する必要があります。
アメリカの消費者は新しい技術に対する適応が早く、いわゆる「アーリーアダプター」の存在が大きな影響を持ちます。SNS上の口コミやユーザー体験の共有が市場拡大に直結することから、調査ではオンラインレビューやソーシャルリスニングの分析が有効です。
IT業界においては製品ライフサイクルが短く、競合も次々と新サービスを投入してくるため、最新データを常に収集し続ける姿勢が不可欠です。つまり、アメリカのIT市場調査では「スピード」「規制」「消費者反応」の3点を同時に押さえることが成功の条件となります。
アメリカの製造業は従来の大量生産型から、デジタル化と自動化を導入したスマートファクトリーへと進化しています。市場調査では、ロボティクスやIoTの普及度、AIによる生産管理の導入状況など、テクノロジーの活用レベルを把握することが重要です。
製造業では環境対応も重要な調査テーマです。温室効果ガス排出規制や再生可能エネルギーの導入状況が競争力に影響を与えるため、エコ対応の度合いを測ることは欠かせません。労働市場の変化も見逃せず、製造現場における人材不足や技能労働者の確保は大きな課題となっています。
これらを考慮した調査を行うことで、どの分野に投資するか、どの地域に拠点を置くかといった戦略判断が可能になります。つまり、アメリカの製造業市場を理解するには「技術革新」「国際関係」「環境対応」「労働力」という複数の視点から調査を行うことが求められるのです。
アメリカは世界有数のエネルギー生産国であり、石油や天然ガスを中心とした伝統的エネルギーと、急速に成長する再生可能エネルギーの双方が大きな存在感を持っています。市場調査においては、まずシェールガス革命以降の供給構造の変化を理解することが不可欠です。
シェールガスの開発拡大によってエネルギーの自給率が高まり、輸出国としての影響力を強めてきました。その一方で価格変動は激しく、世界情勢や国際紛争によって供給が揺らぐ可能性が常にあるため、価格推移と需給バランスの調査が重視されます。
さらに、再生可能エネルギーの分野は連邦政府と州政府の政策によって成長を続けています。特に太陽光発電や風力発電は、州ごとに導入率に大きな差があり、調査では各州の規制や補助金制度を細かく確認することが重要です。
近年はクリーンエネルギー投資を推進する動きが加速し、大手企業も脱炭素の取り組みを積極的に進めています。そのため、市場調査では「どの州が再エネ導入に積極的か」「どの企業がサステナビリティを戦略に組み込んでいるか」を把握することが欠かせません。
アメリカの小売市場は世界最大級の規模を誇り、特にEC(電子商取引)の急成長が大きな特徴です。Amazonを中心にした大手企業が市場をリードする一方、ウォルマートやターゲットといった伝統的な小売企業もオンラインシフトを進めています。
消費者の購買行動も変化しており、レビューやSNSの口コミが購買決定に与える影響は非常に大きくなっています。調査では購買履歴データの分析や、SNS上での消費者発言を収集・解析する「ソーシャルリスニング」が有効です。
近年はサブスクリプションサービスや即日配送サービスなど、利便性を重視したビジネスモデルが拡大しています。そのため、配送インフラやラストワンマイルの状況を調査対象に加えることも重要です。
さらに注目すべきは、消費者の価値観の変化です。特に若年層ではサステナブル商品やエシカル消費への関心が高まっており、環境に配慮したブランドや社会的責任を果たす企業が支持を集めています。市場調査の際には、単なる価格競争ではなく「企業姿勢」が購買行動に影響している点を見逃さないようにする必要があります。
アメリカの医療・ヘルスケア市場はGDPの大部分を占める巨大産業であり、常に高い成長が見込まれています。市場調査においては、まず医療制度の仕組みを理解することが不可です。アメリカは国民皆保険制度を持たず、民間保険が主流であるため、保険加入率や医療費負担の調査は極めて重要な指標となります。
近年では高齢化や生活習慣病の増加により、ヘルスケアサービスへの需要が急増傾向です。特に遠隔医療やデジタルヘルス、ウェアラブル端末を活用した健康管理は注目の分野です。市場調査では、利用者の年齢層や生活習慣に基づいた需要分析を行うことで、より的確な戦略を立案できます。
医療費の高さが社会問題となっているため、低コストで高品質なサービスを提供する企業は強い競争力を持ちます。市場調査では競合の価格設定や患者満足度を定性的・定量的に測定し、どの層をターゲットとするかを明確にすることが重要です。
アメリカは農業大国として世界に食料を供給しており、輸出産業としても大きな役割を担っています。市場調査を行う際には、まず農作物の生産量や価格動向を把握することが基本です。特に気候変動による収穫量の変動や国際的な需要の変化は、農業市場に直接影響します。
消費者市場に目を向けると、オーガニック食品や代替肉といった新しい食のトレンドが急成長を遂げました。健康志向や環境意識の高まりを背景に、こうした商品への需要は拡大を続けており、市場調査では購買層の属性や動機を分析することが必要です。
農業分野では労働力不足が深刻な課題となっています。移民労働者に依存する構造が強いため、移民政策の変化が市場環境を大きく左右します。そのため、政策動向の調査や人材確保の仕組みを分析することも必須です。
テクノロジー導入によるスマートアグリの進展も無視できません。ドローンやIoTを活用した農業効率化は今後の競争力強化に直結するため、技術導入の現状や導入コストを調査することが重要です。
アメリカ市場の調査は、単に情報を収集するだけではなく、企業の意思決定を後押しし、戦略を成功に導くための重要な手段となります。世界最大級の経済規模を持つアメリカでは、消費者の嗜好や購買行動に大きな地域差や文化的多様性が存在するため、的確な調査が成功の鍵を握ります。
この章では、アメリカにおける市場調査を実施することで得られる主なメリットを解説していきましょう。
アメリカ市場調査のメリットの一つに、政府の外資誘致政策による情報公開や支援制度の存在があります。
アメリカは長年、外国企業の進出を歓迎する姿勢を示しており、各州政府も税制優遇や補助金制度を整備して投資を呼び込んでいます。企業の視点としては、進出前の段階から多様な調査資料や経済データを得やすく、事業計画を立てやすい環境が形成されているというわけです。
トランプ氏は「アメリカ・ファースト」を掲げ、自国産業を守る貿易政策を進めてきました。2024年11月に再選されたトランプ氏は、これからも同じような政策を続けると予想されています。
その特徴は「アメリカの産業と労働者を守る」ことを最優先にする点です。前回の任期中には、中国からの輸入品に最大25%の高い関税をかける「対中国関税」や、国の安全を理由に鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を導入しました。
また、北米自由貿易協定(NAFTA)を見直して、新しくUSMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定)を結ぶなど、既存の貿易協定も作り直しました。この政策は短期的には物価上昇を招く一方、長期的には国内産業の復活を目指しています。
関税政策は日本企業のアメリカ進出に大きく影響します。高い関税がかかると輸入コストが増え、販売価格を上げざるを得なくなり、消費者の購買意欲低下につながるのです。
また市場での競争力も変化し、アメリカ国内で製造している日本企業は恩恵を受ける可能性がある一方、日本から輸出している企業は不利になることもあります。
こうした影響に対応するには、正確なHSコードの確認や自由貿易協定(FTA)の活用、保税倉庫の利用など、コスト削減の工夫が必要です。最新の関税情報を常に把握し、専門家に相談することでリスクを抑えられます。
アメリカの市場調査は有益な情報を数多く得られる一方で、いくつかのデメリットも存在します。
第一に、調査コストの高さです。特に全国規模での調査は対象範囲が広大であり、州ごとの文化や所得格差もあるため、データ収集には時間と費用がかかります。オンライン調査であっても、信頼性を確保するには十分なサンプル数が必要となり、中小企業にとっては大きな負担となり得るでしょう。
第二に、多様性の豊富さです。アメリカは多民族国家であり、言語や文化的背景が購買行動に直結します。セグメントごとの分析が欠かせませんが、細分化すればするほどサンプル数を確保する難しさが増し、調査精度とコストのバランスが課題となります。
第三に、情報の過多による分析の複雑さもデメリットです。アメリカはデータが豊富である一方、それを正しく取捨選択できなければ意味を持ちません。公的統計や調査会社のデータ、SNS上の口コミなど、情報源が多岐にわたるため、分析には高度な専門知識と経験が求められます。
政策リスクも無視できません。政権交代による規制強化や税制変更、国際関係の悪化などは市場環境を一変させます。そのため、過去の調査結果がすぐに陳腐化する場合もあり、継続的な調査と更新が必要となります。
アメリカ市場は規模が大きく魅力的ですが、文化や消費者行動の違い、競争の激しさから、多くの日本企業にとって参入は容易ではありません。それでも、戦略的な市場調査や現地ニーズへの適応を徹底した企業は、確実に成果を上げています。
本章では、特に成功を収めた日本企業の事例を3つ紹介し、それぞれの企業がどのような戦略でアメリカ市場に適応し、現地の消費者や競合に対してどのような工夫を行ったのかを詳しく解説します。
アメリカに拠点を置く日系企業の数は、中国についで2番目の多さです。
日系企業の数が特に多いのはカリフォルニア、イリノイ、テキサスの3州となっています。
進出している日系企業の業種は、製造業の割合がもっとも多く40%程度、次いで卸売業、サービス業の順です。昨今は中国企業の台頭が著しいですが、アメリカは日本にとって重要なビジネスパートナーであることに変わりはありません。
中国との貿易摩擦や、人口構造の緩やかな変化、社会情勢などを考慮すると、アメリカで事業を展開するには、現地の制度、消費文化、ビジネス習慣などの特徴の他に、各分野の最新情報を緊密に把握する必要があります。
築野食品工業は、昭和22年に精麦業として創業した老舗企業です。昭和35年には精米過程で発生する「米ぬか」を原料とした、「こめ油」の製造を開始しました。時代の流れとともに米油の需要は下がり続けていましたが、健康意識の高まりによって昨今では新たな需要を獲得しつつあります。築野食品の輸出への取り組みは、BtoBの原料メーカーとして、米ぬかから精製した有効成分を医薬品や化粧品の原料として輸出するところから始まりました。
築野食品の海外戦略の特徴は、日本の商社との良好な友好関係にあります。バイヤーからは直接取引を望む声が多いものの、あえて商社を通しているのは築野食品の特徴です。輸出に関する専門性の高さと商品への深い理解は、日本の商社ならではのものと言っても差し支えありません。
現在では、北米のみならずモンゴルやベトナム、中国、台湾、マレーシアなどのアジアを中心に、欧州、オーストラリアやニュージーランド等、世界中に輸出されるようになりました。
また、米ぬかの有効成分を活用した化粧品も国内では売れ行き好調です。抗酸化作用や保湿成分が多く含まれ肌にもやさしい化粧品を、今後は海外向けにも広めていく方針を打ち出しています。
葵製茶は、愛知県西尾市にある100年以上の歴史を持つ抹茶製造会社です。海外進出を始めた当初は、小売店や小規模レストランへの販売が主な販路でした。
2000年頃から、本格的な海外輸出の拡大を見据えて、有機JAS認証やISO9001/2000認証を取得し、HACCP対応の工場を設立に着手します。2007年には、米国に子会社を設立するに至り、現地の展示会への出典や地道な営業活動を通じて、北米の販路を拡大しました。
成功の鍵は、健康をキーワードにしたプロモーションの徹底です。全米で増え続けているヘルシー志向の人々をターゲットに「食物繊維」「ビタミン」などの成分が豊富とプロモーションを徹底したところ、設立から10年ほどで北米での売り上げは不動のものとなりました。
現在では、Kosher登録認定やHALAL認証も取得し、北米のみならずヨーロッパやアジア、中東にも販路を拡大しています。
設立から60年を超えるトヨタ自動車は、日本を代表する企業としてアメリカ市場で顕著な成功を収めています。トヨタの優位性は、世界各地に生産拠点を戦略的に展開することで、高品質な自動車を効率的かつ低コストで消費者に提供できる点です。
アメリカ国内に製造施設を確立したことにより、現地市場に適応した製品開発や生産体制が構築され、同時に地域雇用の創出にも寄与しています。このように企業収益と現地社会の発展を両立させる経営方針が、トヨタがアメリカ市場で成功を遂げた大きな要因です。
現在、アメリカではRAV4・カムリ・タコマといった車種が高い評価を得ています。洗練された外観デザインと高い品質を融合させた製品戦略が、アメリカ消費者から支持を集めているのです。
入念な事前調査でアメリカ進出を成功させましょう
アメリカは世界最大の経済大国として、多くの日本企業が事業展開を目指す魅力的な市場です。アメリカ経済の発展を支えているのは、技術革新、消費者の購買力、そして経済の安定性です。
競争の激しいアメリカ市場で成功を収めるには、十分な市場調査と戦略が欠かせません。アメリカの文化やビジネス環境の理解と、柔軟な対応が求められます。
日本企業がアメリカに進出する方法には主に「現地法人の設立」「支店の開設」「駐在員事務所の設置」の3つがあります。それぞれに特徴や手続きの流れが異なるため、目的や事業内容に応じて適切な形態を選ぶことが重要です。
以下で代表的な進出手段の種類と、そのプロセスを解説します。
現地法人はアメリカ内に独立した法人組織を設立し、現地の法律に基づいて運営されます。現地法人の設立は、責任が法人に局限される「有限責任」のメリットがあるほか、現地での取引や契約がスムーズになるため、長期的な事業展開に向いています。
税務面でも、複数の州でビジネスを行う場合に有利な制度がある一方、法人税の申告義務があります。
1.設立州の選定と会社形態の決定
2.定款作成と政府機関への申請提出(州務長官など)
3.設立許可の取得
4.IRSへのEIN(雇用者識別番号)申請
5.銀行口座開設や事業許認可の取得
6.実務的な事業開始準備(オフィス確保、人員採用など)
支店は日本の本社がそのままアメリカで事業を行う形態であり、法人格は本社のままです。設立コストや手続きが比較的簡便で、初期の市場調査や営業活動に適していますが、法律的には本社と一体であるため、本社が事業上の責任を負います。
1.支店の設立登録(州政府などへ)
2.支店運営に必要な許認可の取得
3.税務登録と納税者番号の取得
4.現地活動開始(営業拠点やスタッフ配置)
駐在員事務所は現地法人や支店と異なり、営業活動を行わず、調査、情報収集、関係構築などの限定的な業務を行う拠点です。
営業や契約行為ができないためリスクが低く、簡易な手続きで設置可能なため、まず現地の市場調査を実施したい場合に向いています。
1.駐在員事務所設置の届け出や登録(州によって必要な場合あり)
2.駐在員の派遣
3.限定的な業務の開始(調査、連絡窓口など)
4.会計・税務上の最低限の対応
ここまでご説明してきたとおり、アメリカ市場は規模が大きく、多様性に富んでいるため、単純な情報収集では正確な分析が難しい市場です。
効率的かつ効果的に調査を行うために、本章では、アメリカ市場で実践されている代表的な4つの調査方法を紹介します。一次調査や二次調査、定量調査や定性調査など、それぞれの特徴や活用のポイントを押さえることで、現地の消費者動向や競合状況を的確に把握できるようになるでしょう。
オンラインリサーチによるアメリカ市場調査は、迅速かつ効率的な方法です。
オンラインリサーチを活用すると、場所や時間を問わずに、大量のデータを短期間で収集できます。
アメリカは広大な国なので、地域ごとの市場の動向や消費者の嗜好を一括して調査するには、オンラインリサーチは欠かせません。SNSやオンラインフォーラムを活用すると、リアルタイムでの消費者の声をダイレクトにキャッチすることも可能です。
オンラインリサーチで注意すべきポイントは、信頼性の担保です。情報の信頼性を確保するには、データの出典や収集方法を厳密にチェックしなければいけません。
その他、アメリカのプライバシー法規制にのっとった方法での情報収集も必要です。
オンラインリサーチを適切に活用できれば、アメリカ市場での競争力を高めることも夢ではありません。
日本には、ジェトロ(日本貿易振興機構)や中小企業基盤整備機構など、企業の海外進出をサポートする公的な支援機関が存在します。
ジェトロは国内外の数多くの拠点を結んだネットワークをフル活用して、企業活動や海外進出の支援をしてくれる団体です。中小企業基盤整備機構は、中小企業の海外進出に関するノウハウを多く持っていて、実態やアンケート調査の結果を提供してくれます。
オンラインや対面での相談受付やセミナー、研修などを積極的に行っており、民間のリサーチ会社に比べて低価格で信用力が高い点が特徴的です。
現地のリサーチ会社との連携はより正確でかつ有益な情報を得るための重要なポイントです。
現地のリサーチ会社は、広大なアメリカの地域ごとのユーザーの嗜好やビジネス環境を把握しています。日本の企業が独自に調査するよりもはるかに効率的な情報収集が可能です。
また、現地のリサーチ会社はアメリカ文化の言語やニュアンスを正しく理解しているため、調査結果の解釈や分析においても高い精度が期待できます。
リサーチ会社との連携は、アメリカのビジネスにおいて欠かせない要素ですが、自社のビジネスの目的や調査の目的は正しく伝えなければいけません。
調査の進行状況や結果を共有して必要に応じて方針を定め直す柔軟性も求められます。
弊社は協業企業と提携を行う、アライアンス支援も行っております。貴社に最適なパートナーをアサインできるよう、尽力いたします。
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現地に住んでいる人へ向けて、情報提供を依頼する方法もあります。実際の店舗や商品の画像提供、顧客アンケートの実施など現地の人に依頼できることは案外多いです。
自社スタッフが現地を訪問したり、調査会社へ依頼したりするよりもコストを抑えられるのはメリットですが、企業のように大勢を対象としたアンケートや他地域での大規模なリサーチには向いていません。
アメリカ市場調査のプロセスは、大きく分けて5つのステップに整理できます。第一に「調査目的の明確化」です。進出検討なのか、既存商品の販売拡大なのかによって調査内容は大きく変わるため、最初に目的を具体的に定める必要があります。
第二に「調査設計」では、対象地域や消費者層をどのように設定するかを決定するん段階です。ここでは、全米を対象とするのか、州や都市に絞るのかを見極めることが重要です。
第三は「データ収集」です。政府統計や調査会社のレポートなど二次データを活用しつつ、必要に応じてアンケートやインタビューといった一次調査を行います。特にアメリカではオンライン調査の活用が盛んで、コスト効率良く多様なサンプルを集めることが可能です。
第四は「分析と解釈」で、集めたデータをもとにターゲット市場の傾向や消費者行動の特徴を読み解きます。地域差や文化的背景を踏まえて分析することで、実際の戦略に落とし込みやすくなります。
最後のステップは「活用と改善」です。分析結果をマーケティング施策や事業計画に反映させ、実行後の効果を測定し、必要に応じて調査を継続的にアップデートしていきます。アメリカ市場は変化のスピードが速いため、一度の調査で終わらせず、定期的な検証を繰り返すことが成功のポイントとなります。
AXIA Marketingは、アメリカ市場進出を目指す日本企業向けの専門調査サービスを提供しています。現地ネットワークを活かしたトレンドの分析や競合調査など、ビジネス戦略構築に必要な情報を幅広くカバーしています。文化の違いを丁寧に解説しながら、市場参入を細やかにサポートし、アメリカ市場進出を成功へと導きます。
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参考文献
アメリカの市場調査の方法とは?変遷、種類、地域差と多様性を解説
【業種・産業別】アメリカ市場調査レポート | 調査方法や成功のポイントも解説!
海外進出に成功した企業の紹介と進出時のポイントを解説【アメリカ編】|セカイノビジネス
築野食品工業株式会社:商社との関係を大切に、海外販路を拡大中 | ジェトロ活用事例 – ジェトロ
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