飲食店開業のための市場調査の進め方|7つの調査項目や注意点も紹介
新たに飲食店を開業する場合、どの場所にオープンするか、どのようなメニューを提供するか、価格帯をどうするかなど、検討すべきポイントがたくさんあります。
これらを適切に検討し、意思決定するためには、事前の市場調査が欠かせません。どれだけ質の高い市場調査を実施したかが、飲食店の成功を左右するといっても過言ではないでしょう。
一方で、「市場調査のやり方がわからない」「市場調査が重要なのは分かっているけど具体的に何を調査すればよいかわからない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、飲食店の開業を検討している方に向けて、開業に当たっての市場調査の進め方や主要な調査項目などを分かりやすく解説していきます。
本記事を読めば、飲食店開業前の市場調査を実施する上で絶対に押さえておきたいポイントをキャッチアップできますので、ぜひ最後までお読みください。
飲食店開業前の市場調査で確認すべき7つの項目
飲食店開業前に行う市場調査において確認すべき項目は、ジャンルや業態によっても多少異なります。今回は、どのような飲食店の市場調査においても重要となる7つの項目について、その概要や調査手法をご紹介します。
【飲食店開業前の市場調査で確認すべき7つの重要項目】
- 市場規模
- トレンド
- 顧客の属性・ニーズ
- 競合の飲食店
- 立地条件
- サプライチェーン
- 規制環境
市場規模
ここでいう市場規模は、飲食業界全体の市場規模だけでなく、特定の業態(カフェ、居酒屋、ファミレスなど)の市場規模や、特定のジャンル(和食、中華、イタリアンなど)の市場規模なども含まれます。
市場規模は、その市場/業界での潜在的な来店者の数や売上の見込みを検討する上で重要な要素となります。
市場規模については、主に以下のような調査手法が挙げられます。
- デスクトップ調査:公開されている市場調査レポートや政府統計、業界団体の資料
- インタビュー調査:飲食業界関係者、レストラン経営者等へのインタビュー
- トレンド分析:過去数年の飲食業界の市場データをもとに、成長率を算出し将来の市場規模や成長率を予測
トレンド
飲食店の市場調査におけるトレンドには、消費者の嗜好や飲食業界の流行(例:健康志向、SDGs対応、テイクアウト需要等)などが含まれます。
トレンドを無視したメニューや業態を選んでしまうと、集客を見込めなくなり、売上を上げることは難しくなるでしょう。トレンドをリアルタイムで観察し、それに応じたメニューの提供や業態の選択が成功のカギとなります。
トレンドについては、主に以下のような調査手法が挙げられます。
- オンライン調査:日々のニュースのチェックやソーシャルメディアでの投稿分析
- アンケート調査:インターネット上で、一般消費者に対する食の好みや食習慣に関するアンケートを実施
- 現地調査:人気店に客として入り、メニューや客層を直接観察
顧客の属性・ニーズ
開業を検討している飲食店のターゲットとなる顧客の属性(年齢、性別、ライフスタイル、収入等)と、ターゲット顧客が飲食店に求めるニーズ(味、低価格、高級感、利便性等)を調査します。
顧客の属性やニーズを的確に理解しておかないと、意味のない検討・準備に時間を使ってしまうことにもなりかねません。ターゲットとなる顧客のニーズを的確に把握することで、料理の味にこだわるべきなのか、メニュー数を増やすべきなのか、店の内装にこだわるべきなのかなど、力を入れるべき部分が見えてくるでしょう。
顧客の属性・ニーズについては、主に以下のような調査手法が挙げられます。
- アンケート調査:飲食店をよく利用する一般人に直接意見を聞くオンライン調査の実施
- フォーカスグループ:少人数の一般人を対象にディスカッションを行い、生の声を把握
- オンライン調査:同業の飲食店における口コミのチェック
競合の飲食店
競合の飲食店の業態、メニュー、価格帯、集客方法、顧客層などを分析することで、自分たちの競争優位性・ポジショニングを明確化することができます。
競合他社の調査に当たっては、競合の定義からしっかりと検討しなければ、重要な競合の検討を見落とすおそれがあるため注意が必要です。
競合の飲食店については、主に以下のような調査手法が挙げられます。
- オンライン調査:公式サイトなどで競合飲食店の情報を取得
- SWOT分析:競合の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を体系的に分析
- ミステリーショッピング:競合他社の飲食店に客として入り、実際にサービスを体験
立地条件
飲食店を開業する上で、立地は非常に重要です。どの場所に店を構えるかで来店客数が大きく変わるといっても過言ではありません。
立地条件の検討に当たっては、人口、交通アクセス、駐車場の有無、近隣の施設、人通りの多さなど様々な要素を考慮する必要があります。
立地条件については、主に以下のような調査手法が挙げられます。
- デスクトップ調査:その地域の人口等の統計情報、不動産会社からの情報
- 現地調査:飲食店を開業する候補場所に実際に赴き、人通りや交通状況などを確認
- ツール活用:GISなどの商圏分析ツールの活用
サプライチェーン
料理に必要な食材の調達から顧客に料理を届けるまでのプロセスと、それに関与する関係者(供給業者、製造メーカー、流通業者など)を調査します。
効率的なサプライチェーンの確保は長期的なコストや売上に直結するため、初期段階から入念に検討しておく必要があります。
サプライチェーンについては、主に以下のような調査手法が挙げられます。
- サプライチェーンマッピング:サプライチェーン全体のフローを可視化
- インタビュー調査:サプライチェーンの各段階にいる関係者から情報収集
- 競合分析:競合企業がどのようなサプライチェーンを構築しているかを調査
規制環境
飲食店を開業するにあたっては、食品衛生法や消防法、建築基準法など様々な法律や規則、業界基準を遵守する必要があります。
飲食業は、顧客の健康にも関わるため、複数の法律や規則でルールが設けられているため、必要に応じて弁護士などの専門家を活用することも検討しましょう。
規制環境については、主に以下のような調査手法が挙げられます。
- 法令調査:政府の公式ウェブサイトや規制文書
- 専門家への依頼:弁護士など法規制に精通した専門家に依頼
飲食店の市場調査の進め方~6つのステップで紹介~
飲食店開業前の市場調査は、事前にしっかりと調査方針・計画を策定し、それに基づいて実行されることによって、価値のある洞察を得ることが可能となります。
市場調査の目的や内容に応じて進め方は多少異なりますが、基本的には、以下のような手順に従って調査を進めることで、市場調査の成功確率を高めることができるでしょう。
【飲食店の市場調査を進めるための6つのステップ】
- Step 1:調査目的と対象エリアを明確化する
- Step 2:調査方針・計画を策定する
- Step 3:必要な情報を収集する
- Step 4:情報を分析する
- Step 5:調査結果をまとめる
- Step 6:意思決定を行う
Step 1:調査目的と対象エリアを明確化する
まず、市場調査を行う目的と対象となるエリアを明確にします。飲食店開業前の市場調査の目的としては、候補地における来店客の見込み数の予測、遵守すべき法規制の把握などが考えられます。できるだけ具体的な目的を設定することで、その後の調査方針の検討や調査の実施もスムーズに行えるようになります。
また、対象エリアについては、開業したいエリアの候補を複数ピックアップして、調査すべきエリアを確定させます。
また、設定した目的や対象エリアを、部署や関係者などメンバー全員に共有・確認をすることも重要です。この段階で認識のズレをなくすことで効率的にリサーチを進めることができるようになります。
Step 2:調査方針・計画を策定する
次に、設定した目的に沿って対象エリアに対する調査方針・計画を策定します。これには、調査事項についての情報収集の方法の検討や調査の枠組みの設計も含まれます。
調査枠組みの設計には、サンプルサイズ、調査期間、必要なリソースの確認などが含まれます。市場調査のノウハウや経験に乏しく、自分で行う自信がない場合には、専門の調査会社やコンサルティング会社に相談することも検討しましょう。
Step 3:必要な情報を収集する
調査方針・計画で定めた進め方に従って、必要な情報を収集していきます。具体的なアウトプットイメージを持っておくことで、効率的に必要な情報を手に入れることが可能となります。
また、飲食店開業前の調査に当たっては、開業予定の場所に実際に赴き、現地の周辺環境や人通りをその目で確認しておくことが不可欠です。現場に行くことで新たな発見や気づきを得られることも多いからです。競合の飲食店に実際に足を運び利用してみるのも有効です。
Step 4:情報を分析する
収集した情報やデータを分析して、有用な洞察を引き出します。ここでは、人口や交通量等のデータを基にした来店客数の予測なども行われます。
来店客数や売上を精度高く調査するためには、高度なデータ分析や統計分析が必要となるため、社内に知見がない場合には、専門のコンサルティング会社やデータ分析会社等に依頼することも一つの手でしょう。
Step 5:調査結果をまとめる
分析した結果を報告書としてまとめるフェーズです。上司や役員などの意思決定者や関連するステークホルダーに提示するための重要な資料となるため、時には何週間もかけて準備することもあるでしょう。
調査結果をまとめる際には、幅広い視点を考慮できているか、各情報が矛盾なく整合しているか、リスクやデメリットの検討やフォローができているかといった点が重要となります。
Step 6:意思決定を行う
市場調査の結果に基づき、最終的な意思決定を行います。この意思決定には、そもそも飲食店を開業すべきか否か、開業するとしてどの場所にするか、どのような業態を選択するかなど、様々な検討が含まれます。
意思決定の段階で、不足している情報が判明した場合には、追加の調査が必要となることもあります。その際には、再度調査計画を立て直し、調査手法を検討するところから始めるのが安全です。
以上のステップに従うことで、飲食店開業前の市場調査を効率的かつ正確に進めることが可能となります。
飲食店開業前の市場調査で失敗しないための5つのポイント
飲食店開業前の市場調査は、成功を左右する重要な作業となり、入念に行う必要があるため、多くの時間やコスト、労力を要します。
それらを無駄にしないためにも、上述した調査項目や調査手順を意識しつつ、効果的な市場調査を進める必要があります。そのために意識すべき重要なポイントは以下の通りです。
【飲食店開業前の市場調査で重要なポイント】
- 調査の目的と対象エリアを明確にする
- 仮説を立てて検証する
- 適切な調査手法を選択する
- 調査の費用と時間を事前に見積もる
- 飲食店の調査実績が豊富な会社に依頼する
調査の目的と対象エリアを明確にする
調査の目的と対象エリアを明確にしておくことで、適切な調査手法を選択して有益な分析結果を効率的に得られる可能性が高まります。
ひとことで市場調査と言っても、その範囲は極めて広く、調査目的を明確にしないまま漠然と調査を実施しても有益な情報は得られません。目的の明確化は、市場調査の成果を左右する最も重要なステップといっても過言ではありません。
また、飲食店が市場調査を行う場合には、調査対象とするエリアを決めておくことも重要です。開業するエリアの候補が複数ある場合には、それらすべてのエリアを調査し、比較検討することが必要となります。
調査エリアを選定する際には、ターゲットとなる顧客像をイメージした上で、イメージした顧客に当たる人たちが多くいるであろう場所を選定することが重要です。学生向けの低価格メニューが豊富な飲食店であれば学校の近くを選択するのが良いかもしれませんし、高級飲食店の場合は閑静な住宅街に近い方が良いかもしれません。
仮説を立てて検証する
仮説を立てて検証することで、調査する項目や調査方法が適正かどうかを判断する目安になります。仮説を立てておくと、目標とする結果に対してどのようにアプローチをかけたらいいのかの指標にもなるでしょう。
例えば、「この地域では夕方以降に開く居酒屋が多いが、ランチの時間に空いている店が少なく、ランチ需要を十分に満たせていない」という仮説を立てた場合には、昼の時間帯に当該地域を視察し、人通りを確認したり、その時間帯に空いている飲食店を観察するなどして、仮説を検証することが考えられます。
また、仮説の検証結果が、予測していた調査・分析結果と違っていた場合でも、なぜ違っていたのかを確認し、調査方法をスムーズに改善することが可能となります。
適切な調査手法を選択する
適切な調査手法を選択しなければ、有益な調査結果を得ることはできません。それぞれの調査手法によって目的とする調査結果が得られるか、どれくらいの手間や準備が必要となるかなどをしっかりと検討することが重要です。
各調査手法のメリット・デメリットを比較検討し、目的に合った最適な手法を選択するよう心がけましょう。
特に、飲食店における市場調査の場合には、実際に現場に赴いて周辺環境や人通りを把握する現場調査や、競合の飲食店に実際に訪れる競合調査が重要なカギを握ります。
また、現地調査で判明した結果をアンケート調査で裏付けるなど、複数の調査を組み合わせることで、より具体的で信頼性の高いデータを得ることができます。
調査の費用と時間を事前に見積もる
調査の費用と時間を事前に見積もることも大切です。
調査には手法によってかかる費用や時間は異なりますが、少なからずどちらも要するため、見積もりを出して得られる結果に見合っているかどうかを検討しましょう。特に、現地調査をする場合には、現地に行くまでの時間や交通費等も考慮する必要があります。
また、調査にかかる時間をあらかじめ見積もっておくことで、調査を進めるスケジュール管理にも役立ちます。
見積の段階で、費用や時間が予想よりも大きくかかることが判明した場合には、対象エリアを絞る、調査方法を見直すなど、前のステップに戻って検討をやり直す必要があります。
飲食店の調査実績が豊富な会社に依頼する
調査会社に市場調査を依頼する場合には、その会社が飲食店における市場調査において十分な実績を有しているかが成功のカギとなります。
また、調査会社によって、対応できる業界・得意分野や調査手法、サービスの内容は様々です。調査会社の選択に当たっては、自社の目的に立ち返り、目的を達成する上で最適なサービスを提供してくれる会社を選ぶことが重要です。
実際に依頼する際には、複数の調査会社から見積りを取得して、比較検討することも重要となります。その際には、単に価格の高い安いだけでなく、実績や対応できる支援内容なども確認することを忘れてはいけません。
飲食店開業のための市場調査ならAXIA Marketing
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参考文献
・市場調査のやり方を徹底紹介!押さえておきたい8つのステップ – FINCH