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中東への進出を考えるなら市場調査は必須!ビジネス環境やフィージビリティスタディが重要である理由を解説

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中東地域は、世界経済の重要なハブとして急速に発展しており、多様な経済成長を背景にビジネスチャンスが拡大しています。石油産業だけでなく、多様な産業分野での成長が見込まれ、新興市場として国内外から注目を集めています。

本記事では、中東の基本的情報や最新のビジネス環境、進出するにあたっての注意点をわかりやすく解説します。また、実際に中東市場で成功を収めた日系企業の事例も紹介し、具体的な進出戦略を学べる内容となっています。

中東ビジネスへの理解を深める第一歩としてぜひお役立てください。

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【中東の市場調査】基本情報

中東市場調査を始める前に、まずは地域全体の基本情報を把握しておきましょう。

ここでは以下5点について、詳しく解説していきます。

  • 概要
  • 地理
  • 歴史
  • 文化
  • 政治

概要

中東市場は人口増加や経済の多角化を背景に成長が期待される地域です。UAEやサウジアラビアでは外国企業の誘致が進み、日系企業の進出も拡大しています。

ただし文化や宗教、制度が日本と大きく異なるため、市場調査による消費者ニーズや法規制、文化理解が不可欠です。

地理

中東は、西アジアと北アフリカにまたがる広域な地域で、ペルシア湾、紅海、地中海など重要な海域に囲まれています。構成国には、イラン、トルコ、エジプト、イラク、シリア、サウジアラビア、UAEなどが含まれ、それぞれが異なる地政学的背景と経済資源を有しています。

地形的には、広大な砂漠と高地・山脈により構成され、気候は主に乾燥帯です。また、同地域は世界有数の石油・天然ガス埋蔵地を持ち、エネルギー供給拠点として地政学的にも極めて重要な役割を果たしています。

歴史

中東はメソポタミアや古代エジプト文明の発祥地であり、イスラム帝国の拡大やオスマン帝国の支配を経て、世界史に大きな影響を与えてきました。20世紀の列強支配や人工的な国境線の設定が、現在の政治情勢や民族対立に影響を与えています。

文化

中東はイスラム教が主要な宗教であり、アラビア語が広く使われていますが、キリスト教やユダヤ教、ゾロアスター教なども信仰されており、多様な宗教文化が共存していることが特徴です。

地域ごとに異なる文化圏が広がっており、アラビア語圏のほかにトルコ語圏やペルシャ語圏などがあります。料理や音楽、建築、伝統衣装などの文化的要素も地域ごとに大きく異なり、歴史的な交流や民族の多様性を反映しています。

政治

中東地域の政治体制は非常に多様で、君主制のサウジアラビアや湾岸諸国、共和制のトルコ、独裁政権のシリアやエジプトなどさまざまです。特にイランでは宗教指導者が政治権力を掌握する神権政治が特徴で、宗教と政治が強く結びついています。

多くの国でイスラム法(シャリーア)が法律の基盤となっており、政治決定や司法にも大きな影響を及ぼしています。これに加え、中東は地政学的に重要な地域であり、石油資源をめぐる国際的な利害関係や地域紛争も絶えません。

資源をめぐる対立や内戦などのリスクは高い一方、UAEやカタールでは安定した政治と外資誘致政策が進んでおり、ビジネス環境も整っています。

【中東の市場調査】ビジネス環境

中東地域は、豊富な資源、高水準の購買力、若年層の多さといった経済的ポテンシャルを有し、世界中の企業から注目を集めています。ここでは、以下の3つの観点から、市場の特徴について解説します。

  • 地域全体がひとつの巨大な市場
  • GDPの値が高い
  • 若年層人口の増加で労働力が豊富

地域全体がひとつの巨大な市場

中東は北アフリカを含むMENA(Middle East and North Africa)地域として、一つの大きな市場と捉えられます。文化的・言語的に同一性を持つため、UAEやサウジアラビアなどで成功したビジネスモデルを他国に展開しやすいのが特徴です。

さらに、GCC(湾岸協力会議)加盟国間の統一経済協定やGAFTA(大アラブ自由貿易地域)の設立により、域内貿易が促進され、経済連携が強化されています。人口約2億8,000万人、総市場規模は約6,000億ドルに達し、ASEANやEUに匹敵する巨大市場となっています。

GDPの値が高い

中東は国によって経済格差があるものの、特に湾岸協力会議(GCC)加盟国は1人当たりGDPが非常に高いことが特徴となっています。

UAEやカタール、クウェートの1人当たりGDPは、日本の約4万6,700ドル(2013年)に匹敵するかそれを超える水準です。中でもサウジアラビアは名目GDP約6,460億ドルで、世界の経済規模で20位に位置しています。

こうした豊富な資源収入による高い購買力は、中東市場の魅力の一つです。また、UAEには可処分所得が7万5,000ドルの世帯が約90万世帯存在すると言われ、富裕層が消費を牽引しています。

若年層人口の増加で労働力が豊富

中東地域は人口増加率が高く、特に若年層人口が多いことが市場拡大の原動力となっています。2010年時点で24歳以下の若年層は約1億4,300万人に達し、日本の若年層人口約3,000万人と比べて圧倒的に多い状況です。

サウジアラビア、トルコ、エジプトなどのMENA諸国では、若年層が消費の主役になる一方、UAEでは外国人労働者の増加により働き盛り人口も拡大しています。これにより、消費意欲の高い若年層が増加することで、中東の消費財市場は急速に成長すると予想されます。

さらに、外国製品への抵抗感が比較的低いことも、日本企業にとっては追い風です。

中東進出においてフィージビリティスタディが重要である理由

中東進出においては、フィージビリティスタディが重要です。フィージビリティスタディとは新規事業やプロジェクト前の「実現可能調査」のことで、実行可能性調査や投資調査とも呼ばれます。

調査にかかる期間はビジネスの内容やプロジェクトによっても異なり、数週間や数ヶ月の短期で終了する場合もあれば、年単位でかかる場合もあるなど期間はさまざまです。

調査の内容は広く、政治や経済に法律、業界の動向やマーケット調査など多岐に渡ります。海外進出を考えている企業にとって、フィージビリティスタディは欠かすことのできない大事な調査です。

中東進出におけるM&A

中東市場への進出を目指す企業にとって、M&A(企業買収・合併)は有力な手段の一つです。特にサウジアラビアやUAEなど経済成長が著しい国々では、現地企業のネットワークやブランド力を活用することで、短期間で市場に根付くことが可能です。

中東では石油・ガス、建設、金融、ITなどを中心にM&Aの動きが活発化しており、特にサウジアラビアでは「ビジョン2030」政策のもとで外国企業の参入が進んでいます。

一方で、宗教や文化の違い、外国からの投資に関する規制などの壁もあるため、事前にしっかりと調査を行い、現地の法律やルールを確認することがとても重要です。

成功には、綿密な市場調査と信頼できる現地パートナーとの連携が鍵を握ります。

中東地域各国の特徴

中東は、アジア・アフリカ・ヨーロッパの交差点に位置し、地理的・宗教的・文化的に多様な国家が集まる地域です。

ここでは、サウジアラビアやUAEをはじめとする中東の主要国について、その地理や文化、経済の基礎的な特徴を国別に紹介します。

  • サウジアラビア
  • アラブ首長国連邦(UAE)
  • トルコ
  • エジプト
  • イスラエル
  • イラン
  • イラク
  • カタール
  • オマーン
  • クウェート

サウジアラビア

サウジアラビアはアラビア半島最大の国で、世界有数の石油産出国です。イスラム教の聖地メッカとメディナを擁し、宗教的にも重要な位置を占めています。

首都リヤドは政治・経済の中心地で、石油収入に依存する経済から多角化を目指す「ビジョン2030」政策を推進中です。

アラブ首長国連邦(UAE)

UAEはペルシャ湾に面し、アブダビやドバイが経済の中心地です。石油に加え観光や金融業が経済を支え、世界的に有名な超高層ビルや観光施設が集まっています。

多様な経済活動を推進し、外国投資も活発で中東のビジネス拠点として注目されています。

トルコ

トルコはアジアとヨーロッパにまたがる独特の地理を持ち、イスラム教を主としつつも世俗主義を掲げています。首都アンカラのほかイスタンブールは歴史と文化の中心地です。

観光業と製造業が経済の柱であり、地域の経済ハブとして成長を続けています。

エジプト

エジプトは北東アフリカに位置し、ナイル川流域が肥沃な農業地帯を形成しています。アラビア語が公用語で、首都カイロは中東最大の都市の一つです。

観光資源が豊富で、経済は農業と観光業に大きく依存しています。古代エジプト文明の発展に寄与したことでも知られています。

イスラエル

イスラエルは地中海沿岸に位置し、首都はエルサレム、経済の中心地はテルアビブです。スタートアップ企業が多く、サイバーセキュリティや農業、医療技術など高度なイノベーションで注目されています。

1948年の建国以来、周辺国との複雑な政治・地政学的状況が続きますが、技術分野での成長は著しく、中東市場調査において欠かせない存在です。

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イラン

イランは西アジアに位置し、首都はテヘラン、ペルシャ語を公用語とするイスラム共和国です。古代ペルシャ帝国に由来する豊かな歴史と文化を持ち、イスラム教シーア派が主流です。

石油・天然ガスなどのエネルギー資源が豊富で、経済は鉱工業や農業など多様な分野に広がっています。

イラク

イラクはメソポタミア地域に位置し、ティグリス川とユーフラテス川に挟まれています。首都はバグダッドで、多民族国家としてアラブ人、クルド人、トルクメン人などが共存しています。

豊かな歴史と文化を持つ一方、近年は政治的な不安定さや紛争の影響を受け、国内の状況は依然として厳しい状態が続いています。

カタール

カタールはペルシャ湾に突き出た半島に位置し、首都はドーハです。天然ガスと石油による高い経済力を持ち、1人あたりGDPは世界有数の水準です。

近年は教育・文化分野への投資にも注力しており、国際大学や美術館が集積しています。コンパクトながらも先進的な国家として、中東の中でも独自の市場特性を有しています。

オマーン

オマーンはアラビア半島の東端にあり、首都はマスカットです。イスラム教イバード派が主流で、他の湾岸諸国と比べて独自の宗教的文化を保持しています。

石油収入に加え、観光業や漁業など多様な分野に注力し、経済の多角化を進めています。自然景観や歴史的建造物も豊富で、観光開発が活発に行われています。

クウェート

クウェートはペルシャ湾沿いの小国で、首都はクウェート市です。石油による富を背景に国民の生活水準は高く、教育や医療は無料で提供されています。小規模ながらも高い購買力を有し、安定したインフラが整備されています。

経済は石油依存が強いものの、国内市場の成熟度と安定性は中東の中でも特筆に値します。

中東の市場に進出する際の3つの注意点

中東市場に進出する際には、多くのビジネスチャンスがある一方で、特有のリスクや制度への理解も不可欠です。

ここでは、中東市場調査で浮かび上がる主要な注意点として、実務に直結する以下3つの側面について詳しく解説します。

  • 「シャリーア」の理解が必要
  • 国ごとにイスラム教による生活の制約条件が異なる
  • 現地国籍を持つスタッフの雇用義務の制度がある

①「シャリーア」の理解が必要

中東の多くの国では、イスラム法「シャリーア」に基づく法体系が存在し、ビジネス慣習や契約にも強く影響を与えます。

シャリーアには、不確実性や利子の禁止、経済的権利の平等といった原則が含まれており、たとえば延滞利息の請求やオプション契約の適用が制限されるケースもあります。特に種類株式の発行や遺言による資産継承が認められないなど、日本企業にとって想定外のリスクも存在します。

仮に契約内容を精査せず代理店契約などを締結すると、解除が困難になる恐れもあります。さらに、契約書の優先言語がアラビア語である点にも注意が必要です。

中東市場における契約の有効性やリスクを最小化するためには、信頼できる現地弁護士と連携し、アラビア語の契約書も正確に作成するなどの対策が求められます。

②国ごとにイスラム教による生活の制約条件が異なる

中東地域はすべてイスラム教圏であり、戒律に基づいた生活文化が日常に深く根付いています。しかし、その厳しさや実施状況は国によって大きく異なります

例えばサウジアラビアでは最も戒律が厳格で、外国人であっても飲酒は禁止され、女性は公的な場でアバヤの着用が義務付けられています。一方、UAEでは比較的自由度が高く、ホテル内での飲酒や女性の服装もある程度自由です。

また、礼拝の頻度や業務の中断時間も異なり、サウジアラビアでは1日5回、30分程度の礼拝時間に合わせて店舗や業務を一時停止する必要があります。ラマダン期間の断食やハラール認証の取り扱いなども考慮すべきです。

同じイスラム圏でも、国ごとに生活の制約条件が異なるため、細かな市場調査と理解が不可欠です。

③現地国籍を持つスタッフの雇用義務の制度がある

サウジアラビアやUAEなど一部の中東諸国では、自国民の雇用促進政策が進められており、企業は一定数の現地国籍人を雇用する義務があります。

これらの制度は特に若年層の雇用対策として強化されており、企業によっては採用可能な職種や人員構成が制限される場合があります。

また、外国人労働者と比較して現地国籍人の人件費が3〜5倍に達することもあり、コスト計画への影響は無視できません。場合によっては特定の職種が外国人には開放されていないこともあるため、事前の確認が不可欠です。

日本企業の中東への進出動向

近年、日本企業の中東市場への進出が着実に拡大しています。

外務省の「海外進出日系企業拠点数調査」によると、2023年10月時点で中東地域には994拠点の日本企業が存在し、前年から約3.3%増加しました。中東は今後も高い経済成長が見込まれており、日本企業にとって有望な市場と位置づけられています。

■中東 国別 日本企業の進出拠点数

国名拠点数
アラブ首長国連邦358
イエメン0
イスラエル及びガザ地区等90
イラン21
オマーン(注3)23
カタール30
クウェート19
サウジアラビア114
トルコ296
バーレーン17
ヨルダン19
レバノン7
合計994

拠点数のランキングは以下の通りです。

1位:アラブ首長国連邦(UAE)…358拠点

2位:トルコ…296拠点

3位:サウジアラビア…114拠点

中東進出をした日本企業の成功事例3選

中東市場は独特の文化や商習慣があるため、日本企業の進出には慎重な戦略が必要です。ここでは、以下の3つの企業について紹介します。

  • トヨタ自動車
  • 紀伊國屋書店
  • 無印良品

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、サウジアラビアを中心に中東で高い信頼を得ており、長年にわたり安定した市場シェアを維持しています。

耐久性のある車を提供し、現地ディーラーとの強固なパートナーシップを構築しているほか、アフターサービスや技術者育成にも注力し、信頼性を高めています。たとえば、販売代理店のALJ社は「SJAHI」の設立を主導し、地元人材の育成に貢献しています。

さらに中東の調査では、トヨタは最も人気のある日本車ブランドとされ、回答者の約35%が「お気に入りのブランド」として名前を挙げています。

紀伊國屋書店

紀伊國屋書店は、日本の書籍や文化を中東に紹介し、文化交流を促進しています。

教育水準の高い都市部では、日本の文学や漫画への関心が高く、知識層や学生にとって貴重な情報源となっています。現地のニーズに応じた品揃えやイベントも実施し、地域社会とのつながりを深め、日本と中東を結ぶ文化の架け橋となっています。

無印良品

無印良品は、サウジアラビアやUAEの大型モールに出店し、シンプルで高品質な商品が現地の女性を中心に人気を集めています。

アバヤと合わせやすいデザインや肌に優しい素材の衣料品は、現地の文化やライフスタイルに適応できます。目立たないが洗練された製品が評価され、日常生活に自然に溶け込むことで、中東市場での成功につながっています。

中東への進出を考えるなら市場調査は必須

中東市場での成功には、現地理解を深める市場調査が不可欠です。以下の3点が特に重要になります。

  • 文化・宗教への配慮:中東ではイスラム教の価値観が強く、商品展開やマーケティングにも宗教的配慮が必要です。
  • 国ごとのニーズ把握:中東は一枚岩ではなく、サウジアラビア、UAE、カタールなど国ごとに経済構造や嗜好が異なります。国別の市場調査が成功に直結します。
  • 信頼構築と現地連携:現地パートナーとの連携や人材育成、長期的な信頼関係づくりがブランド定着に不可欠です。

これらのポイントを押さえて市場調査を行い、チャンスの多い中東市場での成功に一歩近づきましょう!

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参考文献

PwC – Saudi Arabia’s Vision 2030 reforms fuel M&A market

第1項 市場の成長・広がりへの対応ートヨタ自動車75年史

アラブ人に人気の日本車ブランドが集合したリストー日本語で読むアラビアのニュース

海外進出日系企業拠点数調査ー外務省

中東進出のメリット・デメリット|日本企業の拠点数・最新進出動向ーDigima〜出島〜

UAEに進出した日本ビジネスとは? 成功企業の事例とポイントーnote

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