マーケティングリサーチの重要性とは?実施方法から注意点まで解説
「ビジネス用語で使われているマーケティングリサーチとはなに?」と疑問を持つ方は多いです。
市場動向を見たり消費者のリアルな声をキャッチしたりして客観的な評価をする作業は、ビジネスの成功率と拡大スピードの向上に期待できます。
本記事では、マーケティングリサーチの基本とその重要性をお伝えしたうえで、メリット・手法・活用方法・成功事例・注意点を解説します。
マーケティングリサーチの基本とその重要性
「マーケティングリサーチ」とはなにか基本概要をお伝えしたうえで、市場調査との違いとマーケティングリサーチの重要性について解説します。
マーケティングリサーチとは?
マーケティングリサーチとは、マーケティング活動で発生した課題に対して、消費者の動きや傾向を収集・分析して解決に導くための一連の取り組みを意味します。
マーケティングとは、広告(プロモーション)やセールス(営業・売り込み)をしなくても、消費者の購買意欲を自然に向上させる仕組みです。
リサーチとは、分析を意味しており、マーケティングを円滑に進めるためのツールです。
具体的には、市場調査・広告調査・製品調査・価格調査の4つをおこなったうえで、今のマーケティングやセールスで効果が出ていない部分を浮き彫りにします。
問題点がわかれば、再度違った角度から消費者にアプローチするための手段を考えて行動に移して、効果を見る流れを繰り返します。
市場調査とマーケティングリサーチの違い
「マーケティングリサーチは市場調査のことではないの?」と疑問を持つ方も多いです。
マーケティングリサーチ協会は、マーケティングリサーチについて「企業・団体・政府の意思決定を支援する目的で、統計学・社会科学・行動科学・データサイエンスの理論または手法を用いて体系的に収集・分析・解釈すること。
すべての形態の市場調査・世論調査・社会調査及びデータ解析を含む」と定義づけしています。
つまり、マーケティング協会の定義づけを基準とするのであれば、市場調査はマーケティングリサーチに含まれる種類のひとつです。
具体的に市場調査では「市場規模を把握するために商品の販売量の確認」「競合他社の強みと弱みと自社の状況を比較」「顧客のニーズと将来のトレンドの把握」などをおこないます。
なぜマーケティングリサーチが重要なのか?
マーケティングリサーチが重要視されている理由は、商品・サービスを売るために必要な顧客の悩みやニーズを的確に把握できる手段だからです。
現代は大量生産・大量消費の時代に突入しており、競合他社で溢れている中、自社の商品・サービスを購入してもらうためには顧客理解が出発点となります。
「家事の負担を減らしたい」「利便性と同時に良い見た目のものを置きたい」「美味しくて太らないものが食べたい」など細かく分析して明確にターゲット層を絞ります。
不特定多数に向けた商品・サービスよりも確実に買ってくれてリピートしてくれるコア層を発掘できるかどうかがマーケティングの成功を左右するからです。
マーケティングリサーチがビジネスにもたらすメリット
自社商品・サービスの売り上げを伸ばすためにマーケティングリサーチが有効といわれている3つの理由(メリット)について解説します。
市場の理解を深める
市場規模や市場トレンドの流れが変化するスピードは非常に速く、常に最新情報をアップデートしておかなければ、自社のイメージが古くなって売り上げに影響します。
とはいえ業界によって販売規模・製造・流通・小売はさまざまで、ターゲットにする顧客層の嗜好によっては、過度な変化は好まれない可能性も考えられます。
市場全体の規模が縮小している業界もあれば、目まぐるしいほどに拡大している業界もあるため、「変化はないか」「何が変化しているか」の確認が必要です。
同時に競合他社と比較すると、自社の強みと弱みを正確に把握できて改善点が見出せたりトレンドに乗り遅れる心配を減らせたりします。
効果的な戦略の策定
商品やサービスを消費者に届けるまでには、提供するもののアイデア・パッケージ・キャンペーン・広告・アプローチ先などを企画する必要があります。
すべてに根拠や理由がなければ方向性がぶれてしまい、本当に届けたい消費者に届かなかったり、想定していた売り上げに達しなかったりします。
そこでマーケティングリサーチをおこなうと、複数ある選択肢から根拠を持って取捨選択できるようになるため、販売したあとの効果も高くなりやすいです。
また、明確な根拠や理由がない状態で企画を進めていても、自社の他部門の人やクライアントとの合意形成がうまくいかないケースがあります。
ついつい上の立場にいる人たちの声に合わせてしまいがちですが、マーケティングリサーチをすれば説得できるチャンスも出てくるでしょう。
リスクの軽減
新規ビジネスをはじめたり、現在のビジネス規模を拡大させたりしようと考えているのであれば、必ず出資が多くなる分リスクが伴います。
ビジネスをするうえでリスクは避けられませんが、マーケティングリサーチは成功率を高めたりビジネスの早期撤退の決断を早めたりするために有効です。
つまり、失敗する可能性があるとわかれば早めに撤退する決断をできるため、ビジネスにおけるリスクを軽減できます。
また海外進出を考えているのであれば、基本的なマーケティングリサーチの中でも現地の文化やタブー・独自のビジネスルールを把握する作業が必要です。
リスク軽減として有効な方法が、PEST分析です。
PEST分析とは、外的要因の変化に伴い柔軟に商品・サービスを変えていくことで競合他社に負けないビジネスモデルを生み出せるといわれています。
政治・経済・社会・技術の外的要因に分けて分析して、自社の現状を把握するとともに市場全体の置かれている位置を正確に把握できます。
マーケティングリサーチの手法
実際にマーケティングリサーチをはじめるうえで、有効な手法を4つ解説します。
アンケート調査
アンケート調査は、複数の項目について消費者からのリアルな声を収集する方法です。
数あるマーケティングリサーチの手法の中で、最も多く用いられています。
最近では、SNSの普及とともにマーケティングリサーチする側の労力や費用を最小限に抑えて消費者のリアルな声を集められるようになりました。
マーケティングリサーチ初心者であれば、アンケート調査をして分析することからはじめてみるのがおすすめです。
ただし、無料アンケート調査は真剣に回答してもらえないケースも多く、有意義な回答が得られない可能性があります。
アンケートを回答した人に対してプレゼント企画するなどして、協力してもらえる環境づくりを工夫してみてください。
電話調査
電話調査は、消費者に電話をかけてリアルな声を収集する方法です。
会員登録などで記入してもらった電話番号に対して電話をかけるため、消費者と直接対話ができてアンケート調査よりも良質な回答を得られる可能性があります。
また、マーケティングリサーチ費用も電話料金のみになるため、かけ放題プランなどに加入すれば最小限に費用でデータ収集・分析が可能です。
ただし、電話でのアンケート調査は迷惑電話と捉える消費者も多くいます。
忙しいタイミングで電話をかけてしまうと、悪い印象を与えてしまうリスクがあるため、注意が必要です。
また、あまりにも時間をとらせてしまうアンケートも印象が悪いため、質問事項を絞って手短に済ませなければなりません。
郵送調査
郵送調査は、消費者の自宅にアンケート用紙を郵送してリアルな声を収集する方法です。
SNSなどを使った手軽なアンケートよりも手間がかかる分、協力してくれる消費者からは有意義な回答を得られる可能性が高いです。
また、普段インターネットを使っていないターゲット層にも質問できるため、幅広い角度から消費者の声を集められます。
ただし、インターネットのアンケート調査や電話調査と比べると、印刷費や郵送費などのマーケティングリサーチ費用がかかります。
また、消費者のタイミングによってアンケート結果の回答が得られるタイミングがズレるため回答養子の管理や分析に時間がかかる可能性が高いです。
グループインタビュー
グループインタビューとは、複数の消費者を集めてリアルな声を聞く方法です。
対面の状態で消費者同士がコミュニケーションをとるため、意見を言ったり聞いたりしながら商品・サービスの強みと弱みを深掘りしてもらえます。
一回の開催で複数人の消費者から直接アドバイスや指摘をしてもらえるため、有意義な回答を得られる可能性が高いです。
また、対面でのイベントがあれば、より商品・サービスに対する思い入れが高まり自社のイメージ向上につながりやすいです。
ただし、ネガティブな発言をしたくない人や悩みを抱えている人のリアルな声は拾えない可能性があります。
マーケティングリサーチの活用方法
マーケティングリサーチをしたら、実際に商品・サービスの売り上げ向上や事業拡大などのステップに移行します。
具体的にどのような活用方法があるかについて解説します。
リサーチ結果の正確な分析と解釈
マーケティングリサーチは、アンケート調査や電話調査などをして終わりではありません。
調査結果を収集して比率を出したり、具体的な消費者からの声をまとめたら、複数の項目に分けて相互関係を見たり新しい視点を発見したりします。
自社でおこなった市場調査の結果と消費者を対象におこなったアンケート調査の結果を比較して、認識の違いがあれば随時修正をしていきましょう。
ここで重要なのはひとつの情報をすべて鵜呑みにしないことです。
消費者の声を重視するのであれば、できるだけ多くのサンプル数を増やす工夫をして、消費者動向を分析してください。
不安があれば一般公開されている顧客データや過去の取引情報などと照らし合わせて判断すると安心です。
マーケティング戦略への反映
マーケティングリサーチの情報収集と分析が完了したら、結果をもとに最終的にマーケティング戦略へと反映させます。
既存商品・サービスに対する修正やリニューアルが必要であれば、マーケティングリサーチの結果を踏まえて提案書を作成して自社に相談してみてください。
また、評判が良いのであれば修正やリニューアルの必要はないとしても、広告の売り出し方や具体的なセールスポイントでアンケート結果を数字として提示すると効果的です。
新規事業・海外進出・事業拡大など新しい挑戦を控えているのであれば、マーケティングリサーチの結果を踏まえて効率よく成功できるような筋書きをします。
マーケティングリサーチの結果を問わず、必ず何らかの形で反映させるようにしてください。
マーケティングリサーチを実施する際の注意点
マーケティングリサーチは自社でおこなったり外部に委託したりできます。
より効果的なマーケティングリサーチを実現するために、注意するべきポイントを解説します。
調査目的を明確にする
マーケティングリサーチで市場調査やアンケート調査するときは、段階別に調査目的を明確にする意識が必要です。
「問題や弱みを把握したい初期段階」「初期段階から仮説や基本戦略策定を立てたとき」「改善したあとのリアクション」など細かく段階を踏んで調査をおこなうべきです。
つまり、1回おこなった市場調査やアンケート調査に対して分析や修正するのではなく、段階的に市場調査やアンケート調査を繰り返し実施する必要があります。
アンケート調査においては、実施する段階に応じて消費者・自社の社員など対象者を変えてより多くのサンプル数を集めるとより効果的な回答を得られます。
依頼する会社を選定する
資金に余裕があればマーケティングリサーチを外部の調査業者に依頼する選択も有効です。
外部の専門業者に依頼する場合、市場調査・アンケート調査・分析のどこまでを外注に頼るのかを決めます。
調査業者によって実績やノウハウはさまざまであり、依頼する内容や調査規模によって費用は変動するため比較が必要です。
競合他社や市場全体に対して自社の特定要素を調査して、業務プロセス・財務・顧客パフォーマンス・品質向上を提案するベンチマーク調査も注目されています。
独自のマーケティングリサーチで解決策まで提案して事業拡大や海外進出をサポートする業者もあるのでチェックしてみてください。
調査会社と定期的に連絡を取る
マーケティングリサーチを外部の調査会社に依頼すると決めたのであれば、依頼して任せっぱなしにするのではなく、定期的にコミュニケーションをとりましょう。
本来であれば調査会社の方からマーケティングリサーチの進捗具合や業務連絡を定期的におこなうべきです。
中には「調査依頼の契約数を伸ばすために営業はがんばるけれど契約したあとは連絡頻度が落ちる」などの悪質な調査会社も混ざっています。
担当者と定期的に連絡を取る習慣をつけるだけで調査会社も気を引き締めるきっかけになるだけでなく、常に情報をアップデートして把握できるため安心です。
マーケティングリサーチを活用した事例とは
実際にマーケティングリサーチを活用して事業拡大や売り上げを伸ばした会社やブランドは数多くあります。
身近な事例として3つ解説します。
スターバックス
アメリカの喫茶店チェーンのスターバックスは、徹底した市場調査によるマーケティングリサーチで独自のブランド力を確立しました。
従来の喫茶店チェーンといえば味と品質こそが何よりも重要だと考えられていたものの、スターバックスは店舗を禁煙・洗練された内装・Wi-Fi環境に整えました。
店舗で快適に過ごせるとの理由からコーヒーを飲みに来るだけではなく、勉強や仕事のついでにコーヒーを飲みにくる新規顧客の囲い込みに成功します。
今ではWi-Fiが使えたり洗練された内装にしている喫茶店チェーンは増えていますが、もともとはスターバックがマーケティングリサーチで挑戦した試みでした。
Netflix
世界で2億人以上の登録者数を誇る動画ストリーミング配信サービスのNetflixは、データ活用によるマーケティングリサーチで顧客満足度を高めることに成功しました。
Netflixは常に自社に登録しているユーザーたちの趣味嗜好を分析し続けており、これから流行りそうなテーマやジャンルに合わせたオリジナルコンテンツを制作します。
マーケティングリサーチではアンケート調査が必要だと考えられていますが、実際には自社の商品・サービスの売り上げや注目度を分析するだけでも多くのことがわかります。
Netflixは自社の登録者の利用状況を常に分析し続けて、大衆向けとニッチ層向けに分けてできる限り多くのユーザーの満足度を高められるラインナップを更新し続けています。
キリンホールディングス
日本国内の大手飲料メーカーのキリンホールディングスは、市場調査によるマーケティングリサーチで長期的に愛される商品作りに成功しました。
一般的に清涼飲料水市場はトレンドの変化が速いため、短期的なシェアに力を注ぐべきだと考えられていた部分に疑問を投げかけマーケティングリサーチを開始します。
短期的シェアの売り上げは減少傾向にあると気づき、中長期的シェアの売り上げを伸ばしていけるのではとの視点を持つようになりました。
従来のマーケティング手法を根本的に見直して、長期的に愛されるブランド作りに力を注いだ結果、自社のブランド力そのものが向上して利益につながったと話します。
利益を伸ばすために重要性の高いマーケティングリサーチを取り入れよう
マーケティングリサーチは、売上拡大、新規事業・海外進出・事業拡大などビジネスにおける利益を伸ばすために有効とされています。
ただ市場調査やアンケート調査するのではなく、まずは問題点や弱みを知るために調査をし、仮説を立てて再び調査をして、改善後に再調査をおこないます。
段階ごとに目的を明確にして的確にマーケティングリサーチすると、求めている答えを見出せる可能性が高いです。
専門の調査会社に依頼もできるので、ぜひ検討してみてください。
マーケティングリサーチならAXIA Marketing
AXIA Marketingでは、目まぐるしく変化するビジネス市場で、自社の立場を見失わずに売り上げを伸ばすために必要な分析をサポートしています。
具体的にはベンチマーク調査と呼ばれる、業界の基準や競合他社と自社を徹底的に比較する調査で、置かれている状況を正確に把握してビジネスの改善を図ります。
相談や見積もりを無料で受け付けているので、気になる方はAXIA Marketingにお問い合わせください。
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参考文献
・マーケティングリサーチは重要! その目的と流れを解説-Cross Marketing
・マーケティングリサーチの活用方法-DENTSU MACROMILL INSIGHT
・リサーチ目的や内容の「段階」に注意するーLISKUL
・市場調査とマーケティングリサーチの違い-Cross Marketing
・スターバックスのマーケティングはなぜ成功したのか?売り続ける理由-Infinity Agent
・改めて、顧客分析とは何か。Netflixなど世界のテック企業の事例から基本となる考え方を解説-MarkeZine
・組織能力の強化 マーケティング力の強化-キリンホールディングス株式会社