東欧における市場調査の重要性とは?ビジネス環境や進出に成功した日系企業について徹底解説

「東欧に進出したいけど成功できるのだろうか?」「東欧への進出を考えているので情報を知りたい!」と悩んでいる企業の方は、多くいるのではないでしょうか。
本記事では、東欧への進出を考えている企業の方に向けて、東欧における市場調査の重要性やビジネス環境、成功した日系企業などについて紹介します。
この記事で分かること
- 東欧の基本情報
- 主要国のビジネス環境
- 東欧市場調査の方法とメリット・デメリット
- 東欧進出に成功した日系企業の進出事例
東欧への進出を考えている企業の方や、東欧の調査を行っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
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【東欧市場調査】東欧の基本情報

まずは、東欧の基本情報を紹介します。ひとつずつ、詳しく解説していきます。
概要
まずは、東欧の概要を紹介します。
東欧とは、ヨーロッパの東部のことです。東欧や西欧、北欧といった区分は、国際連合の規定によって定められたものと、歴史や文化に基づいて定められたものの2種類が存在します。今回は、国際連合の規定によって定められた国を紹介します。
- ロシア
- ベラルーシ
- ウクライナ
- モルドバ
- ルーマニア
- ブルガリア
- ハンガリー
- スロバキア
- チェコ
- ポーランド
東欧に当たる国は、上記の10カ国です。
気候
続いて、東欧の気候について紹介します。
東欧は内陸に位置しているため、大陸性気候を持つ国が多く、四季があることが特徴です。年間を通して気温差が激しく、夏は暑く冬は寒いという特徴もあります。
6〜9月頃は30度近くまで気温が上がる日がありますが、日本と比較すると湿気が少なく、空気がカラッとしています。黒海沿岸の降水量は多いですが、黒海沿岸以外の地域では、雨が降ることは少ないです。
言語
次に、東欧の言語について紹介します。
東欧の言語は多様で、ロシア語やウクライナ語、スロバキア語、スロベニア語、ブルガリア語、チェコ語、ベラルーシ語、ポーランド語などさまざまです。他にも、ルーマニア語やモルドバ語も使用されています。
宗教
続いて、東欧の宗教について紹介します。
ヨーロッパに住む方は、キリスト教を信仰している方が多いです。東欧の一部ではカトリックを信仰されており、東欧諸国などのスラブ系の国では東方正教会が信仰されています。東方正教会はキリスト教の教派のひとつで、カトリックと比較すると権威主義的要素がないと言われています。
物価
次に、東欧の物価について紹介します。
ヨーロッパの中でも、東欧は物価が安いことが特徴です。たとえば、ホテルは1泊5,000円程度で泊まることができますし、家賃3万円程度で2部屋付きのアパートを借りることもできます。他にも、タクシーに乗車する場合は150円前後、地下鉄は一律20円ととても安価です。
ただし、東欧に訪れる際の治安や経済状況によって、物価は変動する場合があるため注意が必要です。
治安
続いて、東欧の治安について紹介します。
東欧では、犯罪が多発しているほど治安が悪いというわけではありません。夕方から夜にかけて街中を歩いていても、そこまで危険ではないです。
しかし、街の中心部や観光地などではスリや置き引きが発生しています。鞄のポケットから財布を盗まれてしまったり、すれ違った際に上着やズボンのポケットからスマートフォンを抜かれてしまったりなどといった例があります。そのため、治安が良さそうな場所でも安心することなく、注意が必要です。
礼儀作法
次に、東欧の礼儀作法について紹介します。
お仕事をする際、日本ではお辞儀をするイメージがあると思いますが、東欧では握手から始める人が多いです。また、会話をするときのアイコンタクトも重要で、アイコンタクトをしていないと失礼にあたるため注意しましょう。
食事をする際は、音を立てることがタブーとされています。また、食事を始めるタイミングも重要視されているため、全員が席に着いてから食事を食べ始めるようにしましょう。
経済
最後に、東欧の経済について紹介します。
東欧諸国は、EUへの加盟以降、着実な経済成長を遂げてきています。特にポーランドやチェコは、製造業の集積地として発展し、西欧企業の重要な生産拠点となっています。しかし、ロシアのウクライナ侵攻以降、エネルギー価格の高騰やサプライチェーンの混乱により、経済的な課題に直面しています。
一方で、この危機を契機に、再生可能エネルギーへの転換や産業構造の多様化が加速しており、新たな成長の可能性も見えてきています。
【東欧市場調査】主要国のビジネス環境

ここからは、主要国のビジネス環境を深掘りしていきます。今回紹介する主要国は、こちらの5カ国です。
- 働き盛りの若い世代が多い「ロシア」
- 経済成長の期待が続く「ウクライナ」
- 開放的経済で観光産業が盛んな「ブルガリア」
- 輸出に依存している傾向の「チェコ」
- ソフトウェアのアウトソーシング先として注目される「ベラルーシ」
それぞれ、詳しく解説します。
働き盛りの若い世代が多い「ロシア」
まずは、働き盛りの若い世代が多い「ロシア」について紹介します。
ロシアは、発展途上国として急速に発展を続けており、インフラの状況が課題です。2014年には、マニラ首都圏の交通インフラの整備に150億ドル以上の投資を行うことが決定しました。今後もインフラの整備は需要は増加していくことが予想されるため、インフラ関連の企業が進出することが求められています。
また、ロシアは消費市場が拡大していることが魅力のひとつです。ロシアの経済は、増加する人口と消費によって支えられています。ロシアの人口は2014年に1億人を突破し、2024年現在は約1億4000万人で、生産年齢(15〜64歳)人口が総人口に占める割合が高い状態です。つまり、ロシア市場は労働力が豊富で税収や消費も増えており、医療や教育、年金などの社会福祉の負担が軽い状態であるということです。
経済成長の期待が続く「ウクライナ」
次に、経済成長の期待が続く「ウクライナ」について紹介します。
ウクライナは、作物がよくできる平野と高い生産性を誇る農地で知られています。製造業やIT、再生可能エネルギーなどの分野において、多くのビジネスチャンスを秘めている国のひとつです。特に、近年ではIT産業において急成長をしており、ソフトウェアの開発やアウトソーシングの拠点となっています。
しかし、ウクライナでは2022年からロシアとの戦争が続いており、経済状況に悪影響を与え続けています。その一方で、終戦後の復興は企業にとってビジネスチャンスの可能性があると言えるでしょう。戦争が収束したあとは、農業やインフラ、テクノロジー、エネルギーなどの分野が復興の中核となるため、ウクライナ以外の海外企業も貢献できる余地があります。
開放的経済で観光産業が盛んな「ブルガリア」
続いて、開放的経済で観光産業が盛んな「ブルガリア」について紹介します。
ブルガリアは1989年の革命により共産主義体制が終了し、1990年に最初の他党選挙が行われました。2004年にNATO、2007年にEUへ加盟し、民主主義と市場経済への転換を進めた国です。現在は開放的な経済状況であり、急速な経済成長を遂げていますが、ひとり当たりの収入はEUの中でも最低レベルです。
ブルガリアの主な産業は、金属・鉱石採掘や化学製品の製造、バイオテクノロジー、食品加工などさまざまあります。また、黒海沿いにリゾート地が広がっているため、観光産業も盛んです。
輸出に依存している傾向の「チェコ」
次に、輸出に依存している傾向の「チェコ」について紹介します。
中央ヨーロッパに位置しているチェコ共和国は、中規模のEU加盟国です。1989年に「ビロード革命」が起こったあと、社会主義から民主主義体制へと転換を遂げました。1999年にNATO、2004年にEUへ加盟し、順調な市場経済体制を持っています。東欧地域の中でも経済的に発展を続けており、ひとり当たりのGDPは92%に達しています。
しかし、かなり輸出に依存した経済となっているため、外需の減少の影響を受けやすいです。経済の原動力は自動車産業で、世界的に高い人気を獲得しています。また、高速道路や鉄道などのインフラは整備されており、チェコの通貨である「コルナ」の為替レートは安定しています。
ソフトウェアのアウトソーシング先として注目される「ベラルーシ」
最後に、ソフトウェアのアウトソーシング先として注目される「ベラルーシ」について紹介します。
ベラルーシでは、旧ソ連時代の産業基盤が多く残されており、工場製品の生産や石油製品やカリウム製品の輸出などによって経済が成長してきました。2005年以降にはハイテクパークが開設したことに伴って、IT産業が大きく発達しています。
また、近年ではソフトウェアのアウトソーシング先として各国から注目され、高評価を受けていることが特徴です。ヨーロッパやロシアなどの巨大市場へのアクセス拠点として、大きな可能性を持っています。優秀かつ安価な労働力や外資を誘致するためのさまざまな優遇措置など、多くのメリットがあるベラルーシへの進出は、さらに注目を集めています。
東欧市場調査の方法とメリット・デメリット

ここからは、東欧市場調査の方法とメリット・デメリットについて紹介します。今回紹介する東欧市場調査の方法は、以下の3つです。
- 自社で調査する
- 支援機関を活用する
- 民間の調査会社を活用する
それぞれ、詳しくメリット・デメリットを解説します。
自社で調査する
東欧の市場調査をする1つ目の方法は、「自社で調査する」方法です。
自社で現地へ出向いて、周りに頼らずに調査を行います。インターネット調査やアンケート調査、モニター調査、インタビュー調査など、さまざまな方法で調査を行う必要があります。メリット・デメリットは、以下のとおりです。
メリット
東欧の市場調査を自社で調査するメリットは、コストを安くおさえられることです。
支援機関や民間の調査会社を活用すると、時間も費用もかかってしまいます。自社の強みや弱み、進出する方向性などを理解した上で調査することで、現地の声を直接的にビジネス戦略へと繋げられます。
デメリット
東欧の市場調査を自社で調査するデメリットは、コストを無駄にする可能性があることです。
東欧の市場調査を行う調査項目や、調査方法を明確にしていないと、時間やコストを無駄にする可能性があります。ただ現地に赴くのではなく、市場調査を行う前に自社の分析をしっかりと行い、どのようなことを調査するのか考えることが重要です。
支援機関を活用する
東欧の市場調査をする2つ目の方法は、「支援機関を活用する」方法です。
海外進出を支援している公的な支援機関を利用して、市場調査を行うことができます。支援機関としては、ジェトロ(日本貿易振興機構)、中小企業基盤整備機構、商工会・商工会議所、政府系金融機関、地方自治体などがあります。メリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット
東欧の市場調査を支援機関を活用して行うメリットは、専門家によるアドバイスがもらえることです。
公的な支援機関を利用することで、分野ごとの専門家や機関との橋渡しをしてくれます。そのため、海外進出における基礎段階から専門分野まで、幅広い支援を受けることが可能です。海外へ進出する際のリスクを最小限に抑えて、効率的な戦略を立てることができるでしょう。
デメリット
東欧の市場調査を支援機関を活用して行うデメリットは、個々に合ったサポートを受けられないことです。
支援機関の多くは、標準化されたプログラムや支援方法を提供しています。海外進出を考えている企業の最初の段階に対するサポートとしては効果が期待できますが、深いサポートを受けることは難しいでしょう。企業の強みを活かすためには、支援機関とのサポートとは別で戦略を立てる場合もあります。
民間の調査会社を活用する
東欧の市場調査をする3つ目の方法は、「民間の調査会社を活用する」方法です。
海外展開を支援している民間の調査会社を利用して、市場調査を行うこともできます。調査会社によって強みが異なるため、自社に合った調査会社を選んで依頼することが重要です。メリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット
東欧の市場調査を民間の調査会社を活用して行うメリットは、実行支援まで包括的にサポートをしてもらえることです。
民間の調査会社では、市場調査から戦略の立案、海外進出への実行支援まで、包括的なサポートを行っています。また、調査会社によって得意な国や業種がある場合が多く、専門性も期待できるでしょう。企業のニーズに合わせて支援を行うため、より精度の高い戦略を立てることが可能です。
デメリット
東欧の市場調査を民間の調査会社を活用して行うデメリットは、費用が高額なことです。
自社で市場調査を行う場合や支援機関を利用する場合と比較すると、費用が高額となる場合があります。ただし、調査会社によって費用は異なるため、依頼する場合は事前に費用を確認しておくと良いでしょう。
東欧進出に成功した日系企業の進出事例

続いて、東欧進出に成功した日系企業の進出事例を紹介します。本記事で紹介する日系企業は、以下の3つです。
- パナソニック
- 矢崎総業
- 住友電工
それぞれ、詳しく解説します。
パナソニック
東欧進出に成功した1つ目の日系企業は、パナソニックです。
パナソニックでは、ヒートポンプ式温水暖房機の生産体制を強化するために、チェコにある工場に対して2025年度までに約200億円の投資を行います。パナソニックのヒートポンプ式温水暖房機は、二酸化炭素の排出量を抑えられる環境に配慮した暖房システムとして、ヨーロッパで需要が拡大しています。
パナソニックは2018年からチェコ共和国の工場で生産を開始し、ヨーロッパ市場に対して迅速な対応を行い、地産地消を進めていきました。今回の投資によって、現在生産している室内機だけでなく室外機の生産も開始し、2025年度には年間50万台規模の生産体制へ引き上げることを目指しています。
矢崎総業
東欧進出に成功した2つ目の日系企業は、矢崎総業です。
矢崎総業では、2018年にブルガリア政府から「Employer of the Year(ベスト・エンプロイヤー)」を受賞しました。ブルガリアで新工場を設立したことにより、現地の労働市場へ大きく貢献したとされています。
矢崎総業はブルガリアのディミトロフグラードに新工場を設立しました。ハスコヴォ州にいる何百人もの失業者を雇用することで、労働市場の活性化へ導くことに成功しました。その功績により、「ブルガリアの労働雇用市場に最も大きな貢献をしている雇用主」として認められ、「Employer of the Year(ベスト・エンプロイヤー)」の受賞に繋がったとされています。
住友電工
東欧進出に成功した3つ目の日系企業は、住友電工です。
1990年代の初頭以降、住友電工では生産コストが低い地域での事業運営体制を強化し、ウクライナでワイヤーハーネスなどの自動車部品を生産を行いました。ウクライナで生産を行ったことにより、自動車部品の需要を、より効率的に獲得することに成功しました。その結果、住友電工の自動車産業は、売上高と営業利益の50%以上を占めるほど成長を遂げました。
住友電工が自動車産業において成長を遂げた理由は、世界経済の変化です。グローバル化によって各国の国境が低下し、国境を跨いだヒト・モノ・カネの流れが活発化しました。その中で、ウクライナなどの社会主義体制をとった国は、安価な労働力や豊富なエネルギー、鉱山資源、小麦などの供給地としての役割を担うようになりました。特に、ウクライナはハンガリーやポーランド、チェコなどの東欧諸国とともに、ドイツやフランスなどへの自動車部品の供給地として役割を発揮したのです。
東欧への進出を考えるなら市場調査は必須

今回は、東欧の基本情報や主要国のビジネス環境、東欧市場調査のメリット・デメリット、東欧進出に成功した日系企業の進出事例について紹介しました。
東欧への進出を考えている場合は、東欧の市場調査を行うことはとても重要です。自社だけで市場調査を行うことも可能ですが、支援機関を活用したり民間の調査会社に依頼したりすることもおすすめです。自分の会社に適した方法で市場調査を行うことで、東欧への進出を成功させることができるでしょう。
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参考文献
・東欧はどのような国で構成されているのか?治安や物価についても解説
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