建設機械の海外市場調査を行う方法を解説!市場の特徴や今後の動向・成功事例とは?

建設機械の世界市場規模は2035年までに約132兆円の巨大市場に成長すると予測されています。需要が拡大傾向にある建設機械で海外市場に新規参入するためには、海外市場調査は欠かせません。
建設機械市場は新型コロナウイルス感染症をきっかけに、多くのプロジェクト中断や市場の混乱により一時低迷しました。しかし、現在は道路建設や電力設備・水道設備など多くのプロジェクトが行われ、再び需要が拡大し、市場も成長しています。
本記事では、建設機械で海外進出する時の海外市場調査の重要性をはじめ、市場動向や成長要因などについて解説します。
- 建設機械の海外進出において市場調査が必要な理由
- 【建設機械の海外市場調査】市場の特徴と今後の動向
- 建設機械の成長要因と抑制要因
- 【建設機械の海外市場調査】市場の分析
- 建設機械の海外市場調査を行う3つの方法
- 建設機械の海外市場進出に成功した事例
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建設機械の海外進出において市場調査が必要な理由

コロナによる世界的な経済停滞が解消され、新興市場などにおけるインフラ設備への投資は増加傾向にあります。それに伴い、建設機械需要も拡大し、建設機械市場は大きく成長している市場の一つです。
日本は少子高齢化などにより人口が減少傾向にありますが、海外では若年層の人口増加と急速な経済発展により市場としての成長性が高い国が多く存在します。そのような市場環境を背景に世界での建設機械需要は拡大しています。しかし、世界市場において需要があっても、企業が海外進出する際の市場調査は欠かせません。
日本と海外では言葉が異なり文化や生活習慣、ビジネスにおいては商習慣が異なるため、海外進出成功のための海外市場調査は重要です。
【建設機械の海外市場調査】市場の特徴と今後の動向

インフラ設備が整っていない国や地域における需要が高く、世界の市場規模は今後も拡大する見込みです。ここでは建設機械市場を海外市場調査するにあたり、市場の特徴と今後の市場動向について説明します。
建設機械市場の特徴
建設機械はさまざまな工事・建設現場で利用されています。その中で、建設機械市場における最大のマーケットはアジア太平洋地域です。急速な経済成長が進む東南アジア諸国では、インフラへ投資や都市化が進んでいます。
また、今後、道路建設や電力設備、水道設備などの生活インフラ分野での投資拡大が見込まれるアフリカ地域も有力な市場です。経済が成熟している国においても、住宅や新たな商業施設建設のための建設機械需要は高く、建設機械市場は注目市場の一つと言えるでしょう。
建設機械市場の今後の動向
日本建設機械工業会の市場予測によると、2025年の国内市場における建設機械の需要は前年並みに底堅い需要があると推測しています。一方で、海外市場は前年同期比2.0%増加の2兆2,319億円に需要が拡大するとの推測です。
SDKIの市場予測では世界の市場において、2035年までに約132兆円規模に拡大し、CAGR(年平均成長率)は最大9%に達すると見込まれています。
また、技術面ではIoT技術などのデジタル技術や環境に配慮した建設機械の開発やその需要も高まっています。
建設機械の成長要因と抑制要因

日本の建設機械市場は、少子高齢化や労働人口の減少もあり、市場成長はほぼ横ばいの推移です。一方で、世界ではアジア諸国や新興市場において、インフラ投資の増加に伴う建設機械の需要が高まっています。
建設機械の世界市場規模はさまざまな成長要因を受け拡大傾向にあります。しかし、成長が著しい反面、建設機械市場が抱える課題は深刻であり、課題解決から目を背けてしまうと成長の抑制要因になります。
ここでは、成長要因と抑制要因について説明します。
成長要因
世界的にインフラ投資が増加傾向にある建設機械市場の今後の建設機械市場の成長要因は次の3つです。
- アジア諸国や新興市場におけるインフラ開発の需要増加
- 鉱山機械市場の急拡大
- デジタル技術の発展
アジア諸国や新興市場は若年層人口が多く労働人口も豊富です。豊富な労働人口は仕事を求めて都市に集中すると地域の消費市場は拡大し、その地域の都市化が進むでしょう。また、整備されていない道路、電力設備や水道設備などのインフラ投資の増加に伴い、建設機械の需要は拡大すると言えます。
次に鉱山機械市場の成長です。コロナ禍ではマイナス成長であったものの、コロナ禍以降は生活インフラや社会インフラ設備の投資が増えました。それにより、鉱山機械の需要も急速に回復し市場が拡大しています。
その他、デジタル技術の発展も建設機械市場の成長に大きく関係します。労働人口が少ない国やリソースが限られた現場ではリモートで操作できる建設機械の需要が高まりつつあります。特に日本のように労働人口の減少が懸念されている国などでの今後の需要は高いと言えるでしょう。
抑制要因
建設機械市場の伸びしろは大きいものですが、さまざまな影響を受けやすくもあります。建設機械の市場成長を抑制する要因は次の3つです。
- 市場の需要低下
- 金利の上昇
- 建設機械が環境に与える影響
コロナ禍での市場における需要低下はもちろんですが、各国や地域で起こったことが建設機械の需要低下につながる可能性もあります。例えば、中国不動産市場の不況状態は、建設機械の需要低下の一因です。また、コロナ禍以降、アメリカ経済を中心とした世界的な金利上昇とインフレ傾向により、欧州市場では住宅需要や設備投資が低調に推移しています。
そして、将来への影響が大きいのは建設機械が環境に与える影響です。建設機械に搭載されるエンジンは温室効果ガスを排出します。市場の需要に合わせて安易に量産しては、いずれ自然環境や身近な生活環境の破壊につながりかねません。
このような課題を解決するために、建設機械市場においては電気や水素、バイオマスなどで動く建設機械の開発から導入・普及が進められています。
【建設機械の海外市場調査】市場の分析

建設機械の海外市場調査を進めるにあたって、さまざまなアプローチ方法があります。
- 建設機械のタイプに基づいた分析
- アプリケーションに基づいた分析
- 地理的な分析
自社の強みや特長を活かせる海外進出を図るためにはこれらの観点は欠かせません。
建設機械のタイプに基づいた分析
この分析方法では製品タイプによって土木工学機械、マテリアルハンドリング機械、コンクリート・道路建設機械、その他と大きく3つのカテゴリーに分類されます。建設機械市場で最もシェアを占めるのが掘削機、ローダー、ブルドーザーなどを含む土木工学機械です。新興国における建設やインフラ開発などの工事ニーズ増加に伴い需要が高まっています。
また、マテリアルハンドリング機械はクレーンやフォークリフト、コンベアなど建設現場で資材運びや重量物の持ち上げをする機械が含まれるカテゴリーです。大規模インフラプロジェクトの増加や物流・倉庫部門の拡大により急速に需要が拡大し、市場の中でも急成長しています。
コンクリート・道路建設機械は、コンクリートミキサーや舗装機、コンパクターなどを含みます。発展途上地域では舗装されていない道路が多く交通の利便性も良くありません。
発展途上地域における都市化を進展させるためには道路インフラの改善や拡張は必要不可欠です。コンクリート・道路建設機械はこれらの継続的需要から緩やかに成長しています。
アプリケーションに基づいた分析
アプリケーションに基づいた分析とは、建設機械市場を建物の利用目的によって住宅、商業、産業の3つのカテゴリーに分類できます。
新興市場では人口増加や都市化、それらに伴う生活水準の上昇は住宅需要の拡大につながります。2023年は新興市場における住宅建設需要が市場シェアを最も占めました。新興市場や発展途上地域では生活インフラや社会インフラの整備が進み、都市化が進んでいます。住宅建設に関わる建設機械の需要は今後も伸びると言えるでしょう。
産業は2035年までに急速に成長すると予測されています。産業には工場や倉庫、製造工場などの建設が含まれます。これも工業化が急速に進む新興市場や発展途上地域へ多くの企業が進出することで工場や物流倉庫などの建設需要が高まっていると言えるでしょう。
地理的な分析
建設機械市場の主なマーケットは北米、ヨーロッパ、アジア太平洋、中東とアフリカ、ラテンアメリカに分類されます。
建設機械の最大マーケットはアジア太平洋地域です。特に人口の多い中国やインドでは政府が取り組む中国の一帯一路構想やインドのスマートシティプロジェクトなどによる都市化やインフラ開発の需要が今後も拡大していくでしょう。
北米やヨーロッパなどの先進国市場においては、インフラ開発や都市化の他に持続可能なスマートシティに関する取り組みが推進されています。また、開発段階においても環境になどに配慮した先進的な建設機の需要が高まっています。
建設機械の海外市場調査を行う3つの方法

今後の建設機械市場における需要の増加は、企業が海外進出するにあたって事業拡大のチャンスです。自社の持つ製品や建設可能な建築物が進出するマーケットで需要があるのかないのかを判断するためには、建設機械の海外市場調査は欠かせません。
建設機械の海外市場調査の方法として有効な方法は、自社で調査する、公的な支援機関を利用する、民間の調査会社を利用する、という3つの方法です。
①現地へ出向き自社で調査を行う
自社リソースが十分にある場合は、自社で調査することでコストを抑えやすくなります。また、自社の社員が直接現地に赴くことで、調査された情報に自社の強みをどこで活かせるか、弱みをどのようにカバーするかなど付加価値を付けられます。
自社で調査するにあたり重要なのが、調査に行く前の事前準備です。調査の専門家ではないため、調査方法や調査項目など十分に検討して詰め切れていない場合、現地に赴いてもリソースと時間、コストの無駄になってしまいかねません。
②海外進出を支援する公的な支援機関を利用する
海外進出を検討している時は、海外市場調査の公的な支援機関を活用するのも一つの方法です。公的機関にはジェトロ(日本貿易振興機構)や商工会、商工会議所、その他があります。
ジェトロは海外進出を支援する行政機関です。市場調査の他に展示会や海外視察のイベント情報も充実しています。また、商工会や商工会議所においては市場調査に加えて、現地パートナー候補企業の紹介やマーケティング支援もしています。
公的な支援機関は各国の主要なところに現地事務所を構えており、確かな情報ソースを持っていることが強みです。
③海外展開を支援する民間の調査会社を利用する
海外展開を支援する民間の調査会社を利用するのも良いでしょう。民間の調査会社を検討する際、はじめに確認すべきポイントは進出する国や地域が調査可能かということです。
その次に、その国や地域に関する調査実績の有無や自社が所属する業界の専門性を持っていることも重要な見極めポイントです。その他、現地の文化や商習慣についての知識があり、深い理解があるかを事前に把握できるとよいでしょう。
民間の調査会社を検討する際は、こちらの記事も参考にしてください。
海外進出をしている行政機関・コンサルティング会社は、
こちらをご覧ください。
建設機械の海外市場進出に成功した事例3選

海外進出し成功した日本の建設機械メーカーは世界シェアを獲得しています。また、日本の建設機械メーカーの性能や品質は高く評価され、ブランドとしての認知度も高くあります。ここでは建設機械の海外市場進出に成功した企業事例をご紹介します。
〈海外進出に成功した日本企業〉
- コマツ
- 日立建機
- クボタ
コマツ
コマツは米キャタピラーに続く売上高世界2位を誇り、世界の2大メーカーとして認知度が高くあります。また、アジア市場においては1位のシェアを保持しています。主力建設機械は油圧ショベルやブルドーザー、ダンプトラック、ホイールローダーなどです。
日本企業の海外進出は1990年代から活発にされるようになりましたが、同社では1955年にアルゼンチンへ建設機械を輸出していました。このように早い段階から世界を視野に入れた生産・営業体制を構築し、現在、同社の海外拠点数は151か国に販売・サービス代理店を設置、生産拠点数は58拠点あります。
そのように海外進出に対して積極的な動きをしていた同社における2023年度の海外売上高比率は9割を超えています。売上高を構成する主な地域は、北米や中南米です。
コマツの強みは研究開発からアフターサポートまでバリューチェーンを構成する協力企業や代理店なども一体となり「モノ作り」をする点です。このような考え方が協力企業や代理店との強固なパートナーシップを結んでいます。
現在、同社においては建設機械にICTを活かし、建設現場の省力化に貢献するものの開発に取り組んでいます。
日立建機
日立建機は世界シェアの上位に位置し、日本企業としてはコマツに続く2番目のシェアを誇ります。主力製品は油圧ショベルであり、大型ショベルからミニショベルまでを展開しています。
1970年代にオランダやカナダに現地法人を設立し、以降、各国に現地法人を設立しました。建設機械や鉱山機械の開発・製造で世界をリードする同社の海外売上高比率は8割を超えます。
日立建機の強みは、独自の研究開発と高い生産技術により製品の安全性や信頼性、耐久性が高いという点です。また、150か国以上に設置された代理店による膨大なネットワークや高度な知識をもったプロによるアフターサポートを受けられることも強みです。
世界にネットワークを広く持つ同社は2025年4月に日立建機ラテン・アメリカを設立する予定です。中南米地域に向けた製品販売から部品・サービス提供までの体制強化を図っています。
クボタ
クボタは国内外でトップクラスのシェア率と売上高を誇ります。ミニバックホーと呼ばれる建設機械の世界シェア率25%を占め、主力製品の一つです。また、2002年以降のミニバックホー販売台数で22年連続となる世界第1位を獲得しています。
1950年代から活発に海外での拠点をつくりはじめ、2020年代に入ってからは、欧米に研究開発拠点を新設したり、現地企業をグループ化したりと海外での活動が活発です。
クボタの強みは現場に根ざした製品開発です。同社では開発担当者が現地に入り込み、実際に現場を見たり、農業生産者から話を聞いたりして実際に利用者ニーズを把握することを重視しています。これは同社の海外展開を行う上での特徴の一つでしょう。
同社では現在、中長期的に需要拡大が見込まれる欧州市場向けミニバックホーの生産能力拡大に取り組んでいます。2028年までに生産能力を現状から約4割に引き上げるため、ドイツに新工場を建設し、2026年から順次稼働させる計画です。
建設機械の海外進出を考えるなら市場調査は必須

急成長する建設機械市場への海外進出を検討するなら、海外市場調査は必要不可欠です。現地における需要や需要が拡大しているマーケットへの輸出のしやすさなど、市場調査しなければ分からないことも多くあります。
そして、建設機械市場はアジア諸国や新興市場を中心に需要が拡大しています。一方で、さまざまな外的要因が市場を活性化したり、抑制したりしています。そのような中で市場調査なくして参入していくことは不可能です。
市場調査の進め方も製品タイプや建物、マーケット別とアプローチ方法があります。自社製品の強みを活かせる市場で海外展開していくためには、これらの方法に基づいて建設機械の海外市場調査を実施し、有効活用することがポイントです。
建設機械の海外市場調査ならAXIA Marketing

AXIA Marketingは建設機械市場への参入をサポートできます。課題整理から報告書作成まで一気通貫でサポートできる海外市場調査の専門家集団です。建設機械市場の最新動向や競合分析に基づいた海外進出に欠かせない情報を深い理解を持った上で提供します。
また、建設機械が環境に与える影響に対して、企業としてカーボンニュートラルへの戦略やSDGsの取り組みについても調査の他、戦略・施策立案のサポートが可能です。
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参考文献
・建設機械需要予測(2024年8月) - 一般社団法人 日本建設機械工業会
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