アフリカ進出の5大メリットと課題|成功のカギや進出事例も紹介
世界で2番目に大きい大陸であり、14億人もの人口を抱えるアフリカは、大きな経済成長が期待されており、海外企業が進出する最後のフロンティアとしても注目されています。
他の国や地域と比べて、アフリカに進出している日本企業は少ないという印象を持っている方も多いと思います。しかし、外務省のデータによると、2023年時点で約950社の日本企業がアフリカに拠点を有するなど、近年アフリカに進出する日本企業は増えているのです(外務省「海外進出日系企業拠点数調査」)。
そんな中、「アフリカ進出を検討しているが、リスクも大きそうで、進出するかどうか迷っている」「アフリカ進出のメリットとリスクをしっかりと押さえておきたい」という方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、アフリカ進出を検討している方に向けて、日本企業によるアフリカ進出の動向、アフリカ進出のメリット・リスクや注意点、日本企業の進出事例などをまとめてご紹介します。
本記事を読めば、アフリカ進出を検討する上で必要な情報を網羅的にキャッチアップできますので、ぜひ最後までお読みください。
日本企業のアフリカ進出動向
外務省のデータによると、2023年時点で約950社の日本企業がアフリカに拠点を有しています(外務省「海外進出日系企業拠点数調査」)。
アフリカの中でも、特に日本企業の拠点数が多い国は以下の通りです。
- 南アフリカ:255拠点
- ケニア:118拠点
- モロッコ:70拠点
- エジプト:65拠点
- ナイジェリア:51拠点
- ガーナ:47拠点
南アフリカやケニアは、アフリカの中でも特に産業が発展している国であり、進出先としても人気が高くなっています。
また、JETROが2023年に、アフリカに進出している日本企業に対して実施した実態調査(JETRO「2023年度 海外進出日系企業実態調査|アフリカ編」)によると、2023年におけるアフリカでの営業利益について、58%の企業が黒字と回答しました。特に、南アフリカやエジプトでの事業が好調だったとのことです。ナイジェリアやガーナでも黒字の割合が増加しているとのことです。
一方で、為替変動などの金融リスクを懸念している企業が多く、2024年の営業利益の見通しについて、為替変動を理由に悪化見通しであると回答した企業も一定数ありました。
雇用環境については、4割以上の企業が、人材不足について課題があると回答しています。これは世界平均と比べると低く、特にケニアにおいては、雇用環境が改善している傾向にあることが分かっています。
また、人口が増加していることを背景に、一般消費者市場の拡大を有望視している企業が半数近くに達しています。そのほか、資源・エネルギーやインフラ、農業なども注目されています。注目の国としては、ケニア、ナイジェリア、エジプト、ガーナ、エチオピアなどが挙がりました。
アフリカに進出する5つのメリット
日本企業がアフリカに進出することには、大きなメリットがあります。その中でも特に注目すべきメリットとして、以下の5つが挙げられます。
【日本企業がアフリカに進出する主なメリット】
- 大きな市場規模と経済成長の余地がある
- 広大な国土と豊富な資源を有する
- 大企業や競合の参入が比較的少ない
- 技術力を活かせる大きなチャンスがある
- 企業イメージの向上につながる
大きな市場規模と経済成長の余地がある
アフリカは、人口約14億人を抱える市場規模と、大きな経済成長の可能性を有しています。特に、エジプトの名目GDPは、2023年時点で約4,000億ドル近くに達しており、アフリカでは最大、世界全体で見ても第38位にランクインしています。次いで、南アフリカの名目GDPは約3,800億ドル、ナイジェリアの名目GDPは約3,600億ドルとなっています。
経済成長率も高く、2023年には、アフリカ諸国のうち15か国において実質GDP成長率5%を超えました。2024年においては、世界で最も成長著しい20か国のうち10か国は、アフリカ諸国が占めるとも予想されています。
このように、大きな市場規模と経済成長の余地を抱えるアフリカは、海外企業にとって、大きな収益を獲得するチャンスが眠っている魅力的な市場と言えるでしょう。
広大な国土と豊富な資源を有する
アフリカには、石油、天然ガス、金、ダイヤモンド、リチウム、コバルトなど、多様で貴重な天然資源が豊富に存在します。例えば、コンゴ民主共和国はリチウムイオン電池に必要不可欠なコバルトの産出量で世界トップレベルを誇り、2030年におけるコバルト産出量世界シェアで66%を占めると予想されています。南アフリカはレアメタルと呼ばれる希少金属の宝庫で、特にプラチナ、クロム、チタンなどで世界第一位の生産量を誇っています。また、モザンビークは巨大な天然ガス埋蔵量を持っています。
さらに、世界第2位の面積を誇る大陸であるアフリカは、大量の農地が未利用のままとなっており、極めて大きな農業生産の拡大余地があります。外国企業が農業技術や機械を導入することで、農作物の生産を拡大し、食糧問題の解決に貢献することができるでしょう。
このように、アフリカは豊富な資源や広大な国土の宝庫であり、大きなビジネスチャンスが眠っています。すでに日本の大手企業はアフリカに進出し、豊富な資源を活用した事業を展開しています。例えば三菱商事は、コンゴ民主共和国でコバルトの鉱山事業を展開し、日本の電池産業への安定供給を実現しています。
大企業や競合の参入が比較的少ない
アフリカにもすでに一定数の企業が参入しているとはいえ、他の国・地域に比べるとまだまだ参入企業が少なく、いわゆるブルーオーシャンの領域・分野が数多く残っています。情報通信技術、製造業、サービス業など多くの分野で未開拓の部分が多く、中小企業でも十分に市場シェアを獲得できる可能性があります。
ただし、近年では、日本だけでなく海外の多くの企業が次の事業展開の場としてアフリカに注目しています。特に、大企業は、豊富なリソースと他の国で海外展開してきた知見・ネットワークを活かして、早期にアフリカ進出に乗り出す可能性があります。
したがって、アフリカ進出を少しでも検討している企業は、競合に後れを取らないように、いち早く市場調査を開始し、進出に向けて動き出す必要があります。
技術力を活かせる大きなチャンスがある
アフリカでは、電力供給の不足、インフラの未整備、教育機関・医療機関の不足など、多くの社会課題が存在します。これらの課題の解決には、日本の高度な技術力が大いに役立つでしょう。高温多湿なアフリカの厳しい環境では、高品質で耐久性のある製品が求められることが多く、モノづくりに長けた日本の製品が受け入れられる素地が整っています。
そのため、高い技術力やノウハウを有する企業は、アフリカの社会課題解決につながる製品・サービスを供給することで、大きな市場シェアと知名度・評判を獲得できる可能性があります。
現に、日本のいくつかの大企業は、その優れた技術力を活かして、アフリカの社会課題解決につながるビジネスを展開しています。例えば、三菱重工業は、ケニアの地熱発電事業に参入し、アフリカの電力不足解消に貢献しています。また、2024年9月には、日立製作所が、エジプトの地下鉄改修工事を受注したと発表しました。日立の高度な技術に裏打ちされた信号システムや通信インフラを納入する予定です。
企業イメージの向上につながる
様々な社会課題を抱えるアフリカにおいて展開するビジネスは、必然的に現地の人々の生活向上や課題解決に貢献するという側面を持つことになります。そのため、アフリカで事業を展開して収益を拡大しつつ、アフリカの人々の貧困削減やインフラ構築などに寄与することで、企業の国際的な評価やイメージのアップにつながると考えられます。
例えば、豊田通商は、ケニアなどアフリカ各地に人材育成トレーニングセンターを設立し、自動車整備のスキルを現地の若者に提供するというCSR活動を行っています。これにより地域社会への貢献と人材育成を両立し、企業イメージを向上させています。
また、医薬品・医療機器の製造販売を手掛けるテルモは、低コストで高品質な医療機器をアフリカ市場に提供し、現地の医療水準引き上げに貢献しています。
日本企業がアフリカ進出時に直面し得る5つの課題
日本企業がアフリカ進出の際に直面し得る課題には様々なものがあります。その中でも、ほとんどの企業が直面するであろう大きな課題として、以下の5つが挙げられます。
【アフリカに進出する日本企業が直面する主な課題】
- 情報やノウハウが不十分
- 日本との関係性が希薄
- 地理的に遠く時差も大きい
- インフラが整っていない
- 治安・政変等のリスクがある
情報やノウハウが不十分
アフリカ進出を検討する日本企業が最初に直面する大きな課題として、市場に関する情報や進出ノウハウが不足しているという点が挙げられます。
近年、アフリカに進出している企業は増えつつあるとはいえ、その歴史は浅く、長年にわたりアフリカで事業を展開して成功を収めている企業は極めて少ないです。そのため、アフリカで事業を成功させるためのノウハウは十分に蓄積されておらず、手探りの状態で行わなければならない側面も少なくありません。これにより、余計なコストや時間がかかり、進出のハードルを上げる要因となっています。
また、日本国内ではアフリカ市場に関するデータや詳細な事例が限られており、戦略立案の基礎となる情報が不足しがちです。例えば、現地で求められる製品仕様や流通ルートに関するデータが揃っていないため、事前の需要予測やターゲット層の分析が難しい場合があります。
このように、アフリカ進出に当たって必要となる情報やノウハウは、他の国や地域と比較しても不十分な状況にあります。有効な解決策として、JETROなどアフリカ進出を支援している公的機関から情報を提供してもらったり、アフリカ進出を支援するコンサルティング会社に依頼することが挙げられます。
特に、アフリカの市場調査を手掛けるリサーチ会社は、現地パートナーとのネットワークを活かして、日本国内では手に入らない貴重な情報にアクセスすることができ、精度の高い調査結果を提供してくれるでしょう。
日本との関係性が希薄
アフリカ諸国と日本は、歴史的にも経済的にも深い関係を築いてきたわけではなく、アフリカ市場での日本の存在感は相対的に低い状況にあります。特にフランス、イギリス、中国のように長期的な歴史的関係や積極的な投資実績を持つ国々と比較すると、現地政府や企業とのネットワークが不足しています。
そのため、日本企業がアフリカに進出する際には、他の国や地域と比べて、信頼を築くために時間と労力が必要になる可能性があります。日本製品が高品質であるという認識はあっても、その価値を十分に理解して、利用してもらうためには、地道なアピール・普及活動が必要になるでしょう。
日本企業がアフリカで知名度を高めて信頼関係を築くためには、現地企業やNPO団体などとの協力関係もカギとなります。
地理的に遠く時差も大きい
日本とアフリカは地理的に大きく離れており、6〜8時間の時差があります。この距離と時差は、事業運営や意思決定のスピードに直接的な影響を及ぼします。
例えば、アフリカ現地で緊急の課題が発生した場合、日本本社と連携して解決するまでに時間がかかり、ヨーロッパやアメリカなどの競合他社に先を越される可能性があります。また、現地を視察したり、ビジネスパートナーと直接交渉するための出張も、移動時間とコストの負担が大きく、頻繁には実施できません。
さらに、製品や原材料を輸送する際にリードタイムが長くなるため、効率的なサプライチェーンを構築することが難しくなります。この物理的な距離の問題は、アフリカ市場の特性を正確に把握する上での妨げともなり、現地のトレンドや消費者動向のリアルタイムでの把握が困難となります。
現地に駐在員事務所を設立するなど、拠点を設けることで、このような問題を一定程度解消することができるでしょう。
インフラが整っていない
アフリカにおいても、インフラの整備・拡充が進みつつありますが、いまだに基本的なインフラが整ってない地域も少なくありません。道路、鉄道、港湾などの輸送インフラが不十分である地域では、物流が遅延しやすく、製品の輸送コストが高騰する傾向にあります。特に、地方都市や農村部では、未舗装道路が多いため、輸送効率が悪くなりがちです。
電力供給の不安定さも大きな問題です。地域によっては、停電が頻繁に発生するため、事業の遂行に大きな支障が生じます。例えば、南アフリカは、電力不足が深刻化している国の一つであり、2022年から計画停電が頻発しています。
また、インターネットなどの通信インフラも十分に整っていない地域が多いです。このような地域では、デジタル技術を活用したビジネスモデルの展開が困難となる場合があります。もっとも、アフリカの携帯電話普及率は90%以上と非常に高く、ブロードバンドが整備されれば、今後ICT関連のサービスが急速に伸びていく可能性があります。
治安・政変等のリスクがある
治安や政治の不安定さも、アフリカにおける代表的なリスクの一つです。一部の国ではテロや内戦、暴動が頻繁に発生しており、企業活動が一時的に停止せざるを得ない状況が生じることがあります。例えば、西アフリカでは武装勢力による攻撃が頻発しており、外国企業のスタッフが標的になるケースもあります。
治安については、外務省も公式サイトでリアルタイムの情報を提供しています。アフリカ進出を検討する際には、このような信頼できる公的機関の情報もチェックしながら、できるだけ安全な地域に拠点を設けるなどの対策を採ることが重要です。警備システムの導入などのリスク管理体制の構築も怠らないようにしましょう。
また、政情が不安定な国では、新しい政権が急な法改正や規制変更を行い、外国企業に対する税制や規制が大幅に変更されるリスクがあります。そのため、アフリカ進出に当たっては、政権が安定している国を拠点とすることがおすすめです。
アフリカと聞くだけで、危険なイメージを持つ方も多いかもしれませんが、アフリカの治安は国や地域によって異なり、一概に危険と決めつけるのは間違いです。事前にしっかりと調査して対策を立てることで、危険を最小限に抑えながら事業を展開することが可能となります。
注目すべきアフリカの国一覧
アフリカには54の国があり、それぞれの国ごとに、経済規模や産業構造も様々です。アフリカに進出するにあたっては、どの国をターゲットとするかが非常に重要な検討項目となります。
アフリカの中でも近年経済成長が著しく、海外企業から注目されている国として、以下が挙げられます。
【注目すべきアフリカの国一覧】
- エジプト
- 南アフリカ
- ナイジェリア
- ケニア
- エチオピア
これらの国は、アフリカの中でも経済的に発展しており、アフリカ進出の足がかりとして有力な候補となります。
エジプト
エジプトは、アフリカ大陸の北東に位置する地理的優位性を持ち、スエズ運河を通じてアジア、ヨーロッパ、中東を結ぶ国際物流の要所として機能しています。この地理的特徴により、貿易や製造業のハブとしての重要性が非常に高いです。エネルギー分野では天然ガスの生産が急成長しており、欧州向けエネルギー供給の拠点としても注目されています。
エジプトの人口は1億人を超え、北アフリカ最大の消費市場として成長しています。特に、若年層の割合が高いため、今後も急速に市場規模が拡大していく可能性を秘めています。
また、エジプト政府は外資に関する種々の奨励策を設けています。スエズ運河地域など主要な産業地域に経済特区を設け、課税免除を提供したり、再生可能エネルギープロジェクトなど特定の事業分野について税制優遇措置を設けています。
南アフリカ
南アフリカは、アフリカ大陸で最も経済が発展している国の一つで、鉱業、製造業、サービス業などがバランスよく発展しています。特に、プラチナ、金、ダイヤモンドなどの鉱物資源に恵まれ、これらの産業はGDPの重要な部分を占めています。
また、金融、保険、法律といったサービス分野も発展しており、アフリカ全域にサービスを提供する企業のハブとしても機能しています。特にヨハネスブルグは「アフリカのウォール街」と呼ばれ、多国籍企業が進出する玄関口となっています。
インフラ整備も進んでおり、道路や港湾、空港が他のアフリカ諸国と比べて非常に発展しています。例えば、ダーバン港はアフリカ最大級の港湾で、貿易活動が活発です。また、英語が公用語であることも外国企業にとっての利点といえるでしょう。
日本では、トヨタや富士フィルムが現地法人や工場を設立し、南アフリカを拠点に周辺国への輸出を拡大しています。また、近年では三菱重工業が太陽光発電プロジェクトに参画するなど、再生可能エネルギー分野でも進出機会が広がっています。
ナイジェリア
ナイジェリアは、2億人以上の人口を持つアフリカ最大規模の市場であり、消費財やサービス業を展開するのに最適な国です。経済規模も大きく、2023年のGDPは約3,600億ドル、経済成長率は2.9%となっています。
ナイジェリアはアフリカ有数の石油輸出国であり、エネルギー関連産業における投資先として非常に魅力的です。しかし、経済は多角化しつつあり、急速に成長する中産階級が、新たな消費市場を形成しています。特に、ICT分野とフィンテック分野は急速に拡大しており、電子商取引やキャッシュレス決済を基盤とした経済活動が盛んです。モバイル決済を中心としたスタートアップ企業の多くがナイジェリアを拠点として活動しており、海外投資家からの注目も集まっています。
また、ナイジェリアは西アフリカ経済共同体(ECOWAS)の中心的存在であり、周辺国への進出を図る企業にとって重要な拠点と位置付けられています。日本企業にとっては、食品加工や建設、ICT技術の提供など、多くの分野で進出のチャンスがあるでしょう。日清食品やサンヨー食品が即席麺市場で成功を収め、現地の消費者に広く受け入れられる商品を展開しています。
ケニア
ケニアは、東アフリカの経済大国であり、地域の金融および物流ハブとしての役割を担っています。首都ナイロビは、国際的な企業やNGO、国連機関が集まる都市であり、地域全体の経済活動を支える重要な拠点です。
特に、ICT分野の成長が著しく、その代表例がモバイル決済システム「M-PESA(エムペサ)」の普及です。これにより、ケニアの成人人口の9割以上がモバイルバンキングを利用できるようになり、ケニアにおける金融インフラの拡充が進み、今ではモバイルマネーの先進国と位置付けられています。
また、農業も重要な産業であり、コーヒーや紅茶などの輸出品目が大きなシェアを占めています。日本企業にとっては、農業技術やインフラ整備の提供が進出のカギとなるでしょう。
さらに、ケニア政府はインフラ投資を積極的に進めており、新たな道路や鉄道、港湾施設の建設が進んでいます。建設機械や交通インフラ関連事業においても、事業拡大のチャンスがあります。
エチオピア
エチオピアは、1億人を超える人口を抱える潜在的な巨大市場です。主要産業は農業や繊維産業です。エチオピア産のコーヒーは、日本人にとってもなじみが深いでしょう。
エチオピアでは、安価で豊富な労働力を活用できることから、製造業の拠点として特に注目されています。特に、繊維工場を建設する外国企業が多く、海外への輸出も活発に行われています。
また、エチオピア政府は積極的に外資を奨励する制度を設けています。製造業や農業など一定の分野における関税免除措置などの税制優遇措置や土地使用権の優遇措置など、外国企業に有利な制度が用意されています。
さらに、首都アディスアベバはアフリカ連合(AU)の本部が置かれている国際都市であり、外交や国際会議の場としての重要性も高いです。
エチオピアに進出している日本企業として、豊田通商が挙げられます。2020年に、エチオピア電力公社から小型地熱発電所の建設工事を受注しました。
アフリカ進出の成功に向けて注意すべき7つのポイント
アフリカ進出を成功させるためには、いくつかのポイントに注意する必要があります。その中でも、特に以下の7つを意識することで、現地での事業の成功確率を格段に高めることができるでしょう。
【アフリカ進出を成功させるために注意すべき重要なポイント】
- しっかりと市場調査を行う
- 自社にあった現地パートナーを見つける
- 進出する国ごとの違いを意識する
- 為替変動などの金融リスクに注意する
- 法規制が十分に整っていない場合がある
- 国民の生活水準を把握する
- デジタル市場の急成長を活かす
しっかりと市場調査を行う
アフリカに進出するにあたっては、事前にしっかりと市場調査を行っておくことが重要です。主な調査項目としては、人口・市場規模・主要産業などの基本情報に加え、競合の存在、法規制・税制、治安リスク、衛生環境、現地の人々の生活・文化などが挙げられます。
企業が海外進出に失敗するよくあるパターンとして、以下のようなものが挙げられます。
- 投入した製品がその国の人々の生活や文化に合わず、ほとんど売れなかった
- 思わぬ法規制や制度の罠に直面して思い通りのビジネスを展開できなかった
- 現地の人々の生活水準に合わない価格設定をしていまった
これらの失敗は、事前に入念な市場調査を行うことで回避することができ、その意味でも市場調査は非常に重要です。
市場調査の初期段階では、外務省やJETROなどの公的機関が発行する資料や、書籍・インターネット等などの公開情報の収集から開始することから始めましょう。
アフリカの市場調査の注意点として、ほかの国や地域に比べて公開情報が不十分であるという点が挙げられます。そのため、本格的に進出検討を進める場合には、専門の調査会社・コンサルティング会社に調査を依頼して、現地でしか手に入らないより詳細な情報を収集することが重要となります。
自社にあった現地パートナーを見つける
アフリカに限らず、海外進出を成功させるためには、信頼できる適切な現地パートナーを見つけることが重要となります。現地の民間企業やJETROなどの公的機関だけでなく、現地で活動するNPO団体や国連の機関なども、アフリカに進出する上で強力なパートナーとなるでしょう。
現地パートナーは、現地で事業を展開するにあたり、適切な人につないでくれたり、必要な手続きの履行やコミュニケーションをサポートしてくれるなど、現地で事業をスムーズに展開するために欠かせない存在です。
いくら事前のリサーチをしっかりしていたとしても、現地に数十年住んでいる方には到底及びません。そういった現地人にしか分からない感覚をサポートしてくれるのが現地パートナーの存在です。
信頼できる現地パートナーと良好な信頼関係が築ければ、アフリカ進出の成功率は格段に上がるでしょう。
進出する国ごとの違いを意識する
アフリカ大陸は54の国々で構成され、それぞれの国で経済状況、文化・慣習、法制度は異なります。これらの違いを理解せずに一括りに「アフリカ市場」として捉えてしまうと、事業展開において大きな失敗を犯すことになりかねません。
例えば、南アフリカでは中間所得層向けに高品質な製品やサービスが受け入れられる一方で、ケニアでは低コストで利便性の高いモバイル決済サービスが求められるなど、国ごとにニーズが大きく異なります。また、ナイジェリアのような一部の国では、都市部と農村部で消費行動が大きく異なるため、同じ国でも地域ごとに戦略を変える必要があります。
成功の鍵は、進出先の国や地域の特性を徹底的に分析し、その市場ニーズに合った事業モデルを設計することです。例えば、エジプトでは物流ハブとしての地理的優位性を活かして輸出拠点を設置する、エチオピアでは安価な労働力を利用した製造業を展開する、といったように、それぞれの国の特徴に応じたアプローチを検討することが必要不可欠です。
為替変動などの金融リスクに注意する
アフリカ諸国の多くは通貨価値が不安定であり、為替変動が事業収益に直接的な影響を与えるリスクがあります。例えば、ナイジェリアのナイラや南アフリカのランドは、石油価格や国際的な金融情勢の変化により急激な価値変動を経験してきました。ジンバブエのように短期間で物価が急激に上昇するハイパーインフレが発生することもあります。これらのリスクは、進出初期の企業にとって予想外のコスト増を引き起こす原因となります。
このようなリスクに対応するには、現地通貨リスクをヘッジするための金融ツール(先物取引、通貨オプションなど)を活用することが重要です。また、収益を複数の通貨で分散することでリスクを低減させる戦略も有効でしょう。
さらに、現地での資金調達を増やし、為替リスクの影響を最小化することも検討するべきです。たとえば、ケニアのような金融市場が安定している国では、現地金融機関を活用することで資金調達の柔軟性を高めることが可能です。
法規制が十分に整っていない場合がある
アフリカの多くの国では、法制度が十分に整備されていない場合があり、外国企業にとって予測困難なリスクが生じます。例えば、知的財産権の保護が不十分な国では、製品や技術が模倣されるリスクが高まります。また、輸出入規制や税制が不透明である場合、予期せぬコストや遅延が発生する可能性があります。
法制度の未整備は、ビジネス上の契約においても大きな影響をもたらします。しっかりと書面で取り決めておかないと、知らないうちに不利な条件を呑まされたり、法解釈をめぐって争いとなる可能性もあるでしょう。
このような課題に対処するには、現地の法制度や規制に精通したローカルパートナーやコンサルタントと連携することが重要です。事前に国際機関や現地の商工会議所を通じて法規制の最新情報を入手することも有効でしょう。
国民の生活水準を把握する
アフリカでは、国や地域によって生活水準が大きく異なります。例えば、南アフリカの都市部では中間所得層が増加しており、高品質な製品・サービスや嗜好品への需要が高まっています。一方、エチオピアやマラウイの農村部など、貧困層が多い地域では、低価格の商品や基本的な生活必需品が求められることが一般的です。
したがって、アフリカ進出を検討する際には、進出する国や地域の消費者ニーズを詳細に分析し、ターゲット層に合った商品や価格戦略を設計する必要があります。特に、国や地域ごとの生活水準の違いを意識して、適切な内容・価格帯の製品を提供することが不可欠です。
デジタル市場の急成長を活かす
アフリカでは、インフラが整備されていない地域が多い一方で、モバイル技術を活用したデジタル市場が急成長しています。特にケニアでは、「M-PESA」の成功に象徴されるように、モバイル決済が経済活動の中心的な役割を果たしています。さらに、EC市場も急拡大しており、ナイジェリアや南アフリカではオンラインショッピングやデジタルサービスが広く普及しています。
日本企業は、このようなデジタル市場の成長を活かして新たな事業機会を創出することができるでしょう。たとえば、フィンテック技術やECプラットフォームを現地ニーズに合わせて展開することで、市場シェアを獲得できる可能性があります。
また、現地のデジタルスタートアップ企業と提携し、ローカル市場に適応した製品やサービスを共同開発することも効果的です。さらに、教育や医療などの分野において、モバイルアプリやデジタルプラットフォームを活用して社会課題を解決するサービスを提供することで、現地政府や国際機関との協力体制を構築できる可能性があります。
日本企業のアフリカ進出事例3選
近年、アフリカに進出している日本企業が増えつつあります。その中でも特に参考になる事例として、以下の3つをご紹介します。
- 【ユニ・チャーム】アフリカ諸国で生理用品を販売
- 【双日】現地パートナーの販路を活用して即席麵を販売
- 【ダイキン】成長余地の大きいアフリカで空調生産を開始
【ユニ・チャーム】アフリカ諸国で生理用品を販売
ユニ・チャームは、アフリカの各国において生理用品を販売しています。2010年にエジプトに子会社を設立したことを足がかりにアフリカ進出を果たしました。その後、同国に工場を設立し、アフリカの人々に向けてオムツや生理用ナプキンを製造販売しています。
また、主にアフリカの女性に向けて、出産や育児に関する情報、ヘルスケアに関する情報などを届ける啓発活動を行うなど、開発途上国支援の取り組みも行なっています。
2024年には、ガーナ、コートジボワール、ケニアでも販売を開始し、2026年までに合計20億円の売上高を目指すとのことです。このように、アフリカに進出する企業は、単にビジネスを拡大するという目的のみならず、途上国を支援するという側面もあわせもった取り組みとなることが多いです。
【双日】現地パートナーの販路を活用して即席麵を販売
大手商社の双日は、ケニアの消費財製造企業と共同で、東アフリカ地域における即席麵の製造販売事業に参入しています。最初の商品は、東アフリカで人気の高いチキン味の即席麺でした。
アフリカにおける即席麵市場が、毎年平均20~30%も成長していることを踏まえた戦略であり、参入企業の少ないアフリカにおいていち早く存在感を高める狙いがあると考えられます。
現地企業が構築した販路を活用して売上を拡大し、2026年には東アフリカの即席麺市場で2割のシェアを獲得することを目指しています。
【ダイキン】成長余地の大きいアフリカで空調生産を開始
空調の製造事業を手掛けるダイキンは、アフリカで住宅用の空調を生産する準備を進めています。
住宅用空調の世界全体の普及率は60%であるのに対し、アフリカではわずか3%程度であり、大きな成長余地・参入余地があるとみられています。
一年を通して気温の高い地域が多いアフリカは、空調の需要もかなり大きいとみられ、アフリカという新たな市場で大きなシェアを獲得できると期待されています。
アフリカ市場調査の3つの方法
アフリカでの事業展開を成功させるためには、事前の市場調査が欠かせません。市場調査の方法としては、以下の3つが挙げられます。
【市場調査の3つの方法】
- 自社で調査する
- 支援機関を活用する
- 民間の調査会社を活用する
自社で調査する
自社で市場調査を行う場合、自社のリソースを活用するためコストの削減が可能です。調査を通じてノウハウが蓄積されるため、長期的なメリットもあります。しかし、専門的な知識やリサーチのノウハウが十分でない中、すべて自社で行うとなると多大な時間と労力がかかってしまいます。
特に、アフリカの場合は、日本の公開情報だけでは十分な情報を収集できない場合が多く、自社で全て行うには限界があるでしょう。
自社で調査するメリット
自社で調査すれば、コストを安く抑えることができるうえに、自社のニーズに合わせた細かな調査が可能です。内部での情報共有がスムーズで、社内にノウハウが蓄積されるため、将来的な事業拡大に役立ちます。
自社で調査するデメリット
時間と労力がかかるため、スピード感を持った対応が難しいという問題点があります。また専門的な知識が不足していると、重要な事項を見落としたり、間違った情報をインプットしてしまったりなど、調査結果の精度が低くなるリスクがあります。
また、市場調査においては、実際に現地を視察して現地の人々の生活を直接観察したり、現地の人々にインタビューすることも重要です。しかし、地理的にも離れているアフリカの場合、現地調査も困難であり、自社ですべてまかなうのには限界があります。
支援機関を活用する
日本には海外進出を支援する様々な公的機関があります。公的な支援機関を活用することで、信頼性の高いデータや情報を入手しやすくなります。手続きが煩雑な場合もありますが、専門的なサポートを受けられる点が魅力です。
【公的機関の一例】
- ジェトロ(日本貿易振興機構)
- 中小企業基盤整備機構
- 商工会議所
- 政府系金融機関
- 地方自治体
- NPOや国連の支援機関
支援機関を活用するメリット
信頼性の高いデータ・情報が得られること、専門的なアドバイスが受けられることが主なメリットです。政府の補助金や助成金の活用により、コストを抑えることも可能です。
支援機関を活用するデメリット
手続きが煩雑な場合があり、結果が得られるまでに時間がかかることがあります。また公的機関の情報は一般的すぎる内容である場合があり、特定のビジネスに合わせた詳細な情報が入手しにくいこともあります。
民間の調査会社を活用する
民間の市場調査会社を利用することで、迅速かつ専門的な調査を実施することができます。コストがかかる一方で、高度なデータ分析が可能です。
民間の調査会社へ委託を検討する際はこちらの記事も参考にしてください。
民間の調査会社を活用するメリット
現地の専門知識を持つ調査会社がデータを提供するため、精度の高い情報が得られます。また、その会社独自のネットワークを活用することで、通常の調査方法では得られない深い情報を得られることも期待できます。
公的機関よりも迅速にデータを収集できるほか、収集したデータを踏まえた適切な助言を提供してくれるため、海外進出を検討する上で強力なサポーターになるでしょう。アフリカ特有のリスクに対しても的確なアドバイスを提供してくれます。
民間の調査会社を活用するデメリット
コストが高額になることがあり、調査の内容に満足できない場合のリスクもあります。契約内容や調査前の取り決めでは、慎重な判断が必要です。
調査会社を選ぶ際には、顧客のニーズをしっかりとヒアリングしてくれるか、ニーズに合わせて柔軟に調査スコープや調査方法を変えてくれるか、成果物のイメージを事前に共有してくれるか、といった点に着目するとよいでしょう。
アフリカの市場調査・進出支援ならAXIA Marketing
AXIA Marketingでは、アフリカ進出を検討している企業様に向けて、アフリカの市場調査・進出準備をお手伝いしております。
治安や感染症、政権の不安定など様々なリスクがあるアフリカですが、まだまだ参入企業が少ない領域でもあり、リスクに適切に対処することで、大きな成功を収めることができるチャンスが眠っています。
AXIA Marketingは、世界中に計50万名規模の有識者ネットワークを有しており、公開情報では知ることのできない現地の深い情報まで徹底的にリサーチ・分析し、アフリカの市場調査から進出準備まで一気通貫でサポートします。アフリカ進出に当たってのリスクについても詳細に調査し、適切なリスク対策について、お客様に寄り添ったアドバイスを提供します。
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参考文献
・海外進出日系企業拠点数調査 2023年調査結果 – 外務省
・アフリカの名目GDP(USドル)ランキング – 世界経済のネタ帳
・アフリカ経済見通し(AEO)2024 年版 – アフリカ開発銀行
・2030年のコバルト需要は34万トン、産出シェアはコンゴ民主共和国が66%、IEA予測 – JETRO
・日立など、エジプトの地下鉄改修受注 約1290億円 – 日本経済新聞
・~アフリカ 人材育成トレーニングセンター「トヨタケニアアカデミー」を設立~ – 豊田通商
・電力不足が深刻化、計画停電は今後も続く見通し – JETRO
・サンヨー食品、ナイジェリアで即席麺 合弁で市場開拓 – 日本経済新聞
・シリーズ「ケニア」 知ればおもしろいモバイルマネー先進国 – JETRO
・豊田通商、エチオピア電力公社向け小型地熱発電所の建設工事を受注 – 日本経済新聞
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