金田大樹

記事の監修者

金田大樹

AXIA Marketing代表取締役

リサーチ会社を活用した経営判断を、日本企業の常識にしていくことがモットー。

鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅から大手調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。


インドの人口(14億2860万人)は、2023年に中国(14億2570万人)を抜いて世界一になりました。
今後は日本を抜き世界3位の経済大国になるといわれており、中国からインドへと拠点を移す企業も多く、国内市場の縮小に悩む日本企業も乗り出しています。
日本貿易振興機構「海外進出日系企業実態調査」によると、2023年度は在インド日系企業の約7割が黒字を確保し、約76%の企業が今後1~2年間で事業を拡大する計画をしています。

この記事では、インド市場進出を検討している企業が把握しておくべき情報や注意点を網羅的に解説しています。
記事を通じて、インド市場の基礎情報の理解と具体的な進出戦略に役立てることで、現地でのビジネス成功につなげてください。

インドの市場調査における最新動向

インド市場進出準備には、包括的な調査・綿密な分析が欠かせません。

インド市場を分析するうえで重要なのは、急速に変化している社会基盤と消費者のライフスタイルです。特にデジタル化の進展やスマートフォンの普及は、購買行動や生活習慣に大きな影響を与えています。

また、多様な宗教や文化的背景により、同じ国であっても消費者ニーズは大きく異なるため、進出前にこうした特徴を理解しておくことが不可欠です。以下では、DX化やスマートフォン市場の拡大、文化的多様性といった最新動向について詳しく見ていきます。

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2060年まで続く人口ボーナス

これまで人口世界一位だった中国が減少に転じる一方で、インドは2060年中頃まで人口増加が続く見込みです。

内務省の標本登録制度統計(SRS)報告によると、日本の平均年齢が48.4歳(2023年時点)に対し、インドは28.2歳で日本とインドの平均年齢差は20歳です。

人口ボーナス期は個人消費が活発になることに加え、高齢者が少なく社会保障費が抑えられるため、経済成長も上向きになります。

中国に対する地政学・経済安定保障リスクがある中、代替国としてインドが注目されており、新興国の新リーダーとしての存在感を増しています。

GDP世界第5位の経済規模

インドの経済には独特なものがあります。輸出入の最高値を更新していますが、貿易赤字は拡大中です。

2023年国際協力銀行が行った調査|投資有望国ランキングで2年連続第1位のインドに対し、有望国に挙げた企業のうち45.8%が実際の事業計画があると考えています。

世界のGDPシェアでは、2026年にはG7を抜き40%超になる見込みです。

インド国内の平均年齢28歳という若さと、賃金水準・豊富なIT人材、生産連動補助金による製造支援、増加する中間所得層の消費拡大などから、インドが注目されています。

DX化によるライフスタイルの変化

インドではデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進展しています。オンライン決済の普及やECサイトの利用増加はもちろんのこと、行政サービスのデジタル化や教育分野におけるオンライン授業の広がりも顕著です。

これに伴い、消費者はデジタル上での利便性やスピードを重視する傾向が強くなっています。商品やサービスの比較検討もオンラインで行われるケースが増え、SNSや口コミサイトが購入判断に大きな影響を与えています

企業がインド市場に参入する際には、こうしたDXの進展を前提に戦略を組み立てることが重要です。デジタル広告やオンライン販売チャネルの整備は必須であり、同時に現地の利用者がどのような価値観でサービスを選んでいるかを理解することが成功のカギとなります。

モバイルファーストによるスマホ市場の拡大

インドは「モバイルファースト」の社会として知られ、インターネット利用者の多くがスマートフォン経由で情報にアクセスしています。安価な端末や通信料金の低下により、都市部だけでなく地方でもスマホの普及率が急速に高まっているのです。

この背景には、政府による「デジタル・インディア」政策や通信インフラの拡充が大きく影響しています。格安データプランの普及は利用障壁を下げ、オンラインサービスを身近なものとしました。

その一方、消費者のニーズは一様ではなく、所得層や地域によって利用サービスは大きく異なります。都市部の富裕層は高機能アプリやプレミアムサービスを求める一方、地方のユーザーは低価格でシンプルな機能を重視する傾向です。

企業が市場調査を行う際は、こうした多様性を踏まえてターゲットを明確化することが求められるでしょう。

様々な宗教や言語、気候による多様性

インドは人口が多いだけでなく、その内部に多様性が存在する点が特徴的です。宗教ではヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教、シーク教などが共存し、それぞれの慣習や文化が消費行動に強く影響を与えています

また、言語も地域ごとに大きく異なり、ヒンディー語や英語以外にも数十種類の言語が使用されています。こうした背景から、広告や商品パッケージを展開する際には、言語選択が購買意欲に直結するケースも少なくありません。

企業が市場調査を行う際には、単一の「インド市場」という捉え方ではなく、地域ごとの特性を把握しなければなりません。文化的・宗教的背景や生活環境を理解し、それぞれに適したアプローチを行うことが成功のポイントとなるのです。

インド市場進出における5つの注意点と難しさ

インドの一番の産業は農業ですが、工業とITも急成長を続けています。

インド市場に進出する際には、以下の注意点を意識する必要があります。

  • 人手不足深刻化により高騰する人件費
  • 多民族・宗教の障壁
  • 煩雑な税制・政務手続き
  • 高い離職率
  • 金利の連続引き上げ・インフレ

以上の点を踏まえ、インド市場への理解を深めなければ、インド市場への進出は難しいです。
この5つの注意点それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

1)人手不足深刻化により高騰する人件費

インドは14億人超の人口大国で、中間層の拡大に伴う巨大な国内市場を持ちますが、人口増加に対する雇用の確保および人口増大に伴う旺盛な内需拡大に製造業が追いついていない現状があります。

インド政府は新規雇用の創出等を目的として、GDPのうち製造業が占める割合を現在の15%から将来的に25%にまで引き上げる目標を掲げ、国内製造業の振興を進めています。

また、優秀な人材ほど勤続年数が短く、短期間での転職を繰り返すジョブホッピングがインドでは一般的です。
そのため、離職率が高く人件費が高騰する原因となっています。

2)多民族・宗教の障壁

インドには、ヒンドゥー・ムスリム・キリスト・仏教など多様な教徒・宗教が共存してるため、ヒンディー語・ベンガル語・テルグ語、マラヤーラム語など複数の言語が話されています。

多数の州で構成されているインドは、「民族」「宗教」「言語」が異なるため、ビジネスの管轄も障壁があるでしょう。

具体的には、宗教的慣習が異なり、消費者の購買行動が変化したり、ビジネスの営業時間が短縮されるなど、ビジネス活動に影響を与えます。

3)煩雑な税制・政務手続き

インドにおける投資環境上のリスクとして税務面での問題点が約70%を占めるほど、税制・政務手続きに課題があります。

インドでは税関職員の権限が強く、通関を巡るトラブルが絶えません。

たとえば、日本・インド包括的経済連携協定を活用した輸入において、申告する関税分類が適切でないとして、関税率がより高い関税分類の適用を主張されたりといった事例があります。

昨今は製品輸入に際し、インド標準規格局(BIS)が定めるインド標準規格認証取得を義務付ける動きが加速し、認証取得には半年以上の期間を要するケースが多く、日系企業のサプライチェーンに影響をもたらす課題となっています。

4)高い離職率

インドでは、日系企業の多くが今後1~2年間にかけて、積極的に事業拡大を図る一方、十分な実務経験や専門性を持った人材が不足してきているため人材確保に苦慮しています。

さらに、キャリアアップが望めるため転職を重ねる働き方が一般的に浸透しており、在インド日系企業にとってのビジネス環境上のリスクになっています。

2023年の基本給のベースアップ率は9.7%で、消費者物価上昇率5.5%を上回る水準にもかかわらず転職を望む社内人材の引き留めのため、従業員からの賃金引き上げ要求に応じざるを得ない状況です。

そのため、成果主義の導入・強化やインセンティブ制度の構築などの「人事評価制度の見直し」、在宅勤務制度やフレックスタイム制の導入などの「福利厚生の充実化」などの施策により日系企業も離職率を引き下げる取り組みに着手しています。

5)金利の連続引き上げ・インフレ

2022年1月以降、消費者物価上昇率が急上昇し上限値6%を超えて推移したことを受けて、2022年5月からインド準備銀行は段階的に政策金利を引き上げ、物価の安定化を図っています。

在インド日系企業は、原材料費や燃料でのインフレ影響を受けているものの、従来インドのインフレ率は相対的に高く給与も毎年10%程度上がっているため、消費動向への影響は少ないです。

一方で今後金利が上昇する場合、原材料・製品に在庫の積み増しをしているため、キャッシュフローに悪影響が出ると懸念されています。

原材料費などの高騰による価格転嫁については、地場企業との取引において寛容で、物流コストはコロナ禍前の水準より高いことからインフレの影響は限定的であると見られています。

インドの市場調査方法:定性調査

インドで定性調査を実施する場合、まず消費者の価値観や生活習慣を深掘りすることが重視されます。特に多様性のある社会では、数字だけでは捉えきれない背景を理解することが不可欠です。

都市部と地方では購買力や意識が異なるため、対象者の選定も慎重に行う必要がありますし、言語や文化の違いを考慮した調査設計を行うことで、より精度の高い情報を収集することが可能です。

宗教や慣習に基づく行動パターンの把握も欠かせません。ヒンドゥー教徒とイスラム教徒では食文化が異なり、商品の受け入れやすさにも影響を与えます。

祭礼やイベントに関連する消費行動も時期や地域ごとに変化していくため、マーケティングの重要な手掛かりとなります。定性調査を通じてこうした文化的要素を理解することで、誤解や不適切なメッセージ発信を避けることができるのです。

企業が進出前に現地の生活者に直接触れ、日常の中にどのような不満や潜在的ニーズがあるのかを見極めることは、商品開発や広告戦略の成功に直結します。定性調査は手間や時間がかかるものの、インド市場の多様性を正しく捉えるための「生の声」を集める貴重な手法といえるでしょう。

インドの市場調査方法:定量調査

定量調査は、消費者の動向を数値で把握するために欠かせない手法です。

特にインドのように人口規模が大きく多様な市場では、サンプル数を確保した調査が求められます。オンライン調査や電話調査に加え、現地での街頭調査も有効であり、ターゲット層の生活実態を反映したデータを収集できます。

インドでは都市部と地方、所得層によって購買行動が大きく異なるため、地域別や層別に分けた調査設計が重要であることに加え、スマートフォン普及率が高いことを活かし、モバイル調査の導入も効率的な手段となります。

企業がインドで成功するためには、定性調査で消費者の深層心理を理解し、定量調査でその傾向を数値化する二つの手法を組み合わせることが不可欠です。多様な市場の実態をバランスよく把握しておけば、リスクを抑えた進出が可能となるでしょう。

インド市場調査における日本企業の実態

日本企業にとってインドは大きな成長ポテンシャルを秘めた市場ですが、同時に攻略が難しい地域でもあります。人口規模の拡大やデジタル化の進展により、消費市場は急速に拡大しているものの、宗教・文化・言語の多様性や複雑な商習慣が障壁となることも少なくありません。

実際、多くの日本企業は現地調査を通じて市場規模や消費者動向を把握しながら、地域別に異なる戦略を構築しています。インド市場で成功を収めている日本企業の事例として製造業を取り上げます。

インドに進出している日本企業の数・推移

日本貿易振興機構「海外進出日系企業実態調査」によると、2023年度は在インド日系企業の約7割が黒字を確保し、約76%の企業が今後1~2年間で事業を拡大する計画をしています。

インドに進出している日本企業の数は年々増加傾向にあり2022年時点で1,400社に達し、インドは日本企業にとって重要な進出国となっていることがわかります。

国際協力銀行の2023年調査「日本企業が進出したい国」第1位に選ばれたインドには、投票した企業の45.8%が実際の事業計画があると回答している事実から、今後も有望な進出先とされていることが伺えます。

実際に進出している日本企業の事例

輸送用機器事業を行うスズキは、日本では旧式設計となった安価な小型車を販売することで、インド自動車市場にて実績を残してきました。

パナソニックは、自社買収した「サンヨー(三洋)」を復活させ、液晶テレビやスマートフォンを販売し、堅調な売上を記録しています。

一方、中小企業に対してインド政府が日系企業の進出支援に乗り出し、インド大使館内に「中小企業促進室」を設置しました。

従業員数262名の株式会社MORESCOは、自動車に使われる特殊潤滑油を主要製品とし、潜在需要が大きいインドで市場開拓を開始しています。

こうした企業事例から、インドへの進出成功の鍵は、市場のニーズと嗜好を理解し現地文化・経済状況に適応すべきということがわかります。

インドにおける日系企業数と拠点数

2022年の全インドにおいての日系企業数は1,400社で、前年の1,439社と比較して39社の微減しています。

一方全インドの日系企業拠点数は4,901拠点で、前年の4,709拠点と比較して111拠点増加しています。

コロナ禍の影響で事務所の閉鎖、合併・日系資本撤退などの企業の再編、拠点統廃合があったことで企業数が減少する一方、既存企業の新規拠点設立により拠点数が増加しました。

インド内地域別の傾向としては、ラジャスタン州、カルナータカ州で日系企業数が増加し、ハリヤナ州、マハーラーシュトラ州などでは減少しています。

今インド市場進出が特におすすめな業種とは?

現在インド市場への進出が特におすすめな業種は、自動車産業・自動車部品メーカーです。

インド国内の自動車市場も拡大傾向にあり、2023年度の自動車販売台数の中でも乗用車販売は多目的自動車(UV)が好調で、過去最高値を記録しました。

さらに乗用車のシェアトップはマルチ・スズキで、総販売台数が過去最高の200万台超を記録し、2030年までに年間400万台まで増産する目標を掲げ、インド国内での日系メーカーシェア拡大が期待されています。

国民の所得向上・政府による電気自動車(EV)支援策などにより、自動車市場の成長が今後も続くことは間違いないでしょう。

もちろん、上記以外の業種・業界についても成功の可能性は大いにあります。一例として、参考ください。

インドへの進出手段とそれぞれのプロセスとは?

インドに進出する日本企業は、主に「現地法人の設立」「支店の開設」「駐在員事務所の設置」の3つの形態を活用しています。インドの広大な市場特性や地域ごとの文化・法規制の違いを踏まえ、事業目的や規模に合わせて最適な進出形態を選択することが重要です。

ここでは各形態の特徴と基本的なプロセスを解説します。

現地法人

現地法人はインドにおいて独立した法人格を持ち、インドの会社法に基づき運営される形態です。現地法人は営業権や契約締結権を持ち、インドでの事業拡大や資金調達に適しています。

法人税の課税対象となりますが、インド政府による各種支援や税優遇措置もあり、長期的な事業展開に向いています。

プロセス

1.会社形態の決定(Private Limited Companyが一般的)
2.デジタル署名証明書(DSC)と役員識別番号(DIN)の取得
3.会社名の予約申請
4.定款の作成と提出
5.登記申請と法人設立許可の取得(インド企業登録局ROC)
6.PAN(納税者番号)やGST登録など税関連の申請
7.銀行口座開設および事務所設置、人材採用

支店

支店は日本本社の一部として、インドで業務を行う形態です。法人格を持たず、本社が責任を負います。現地での迅速な市場開拓や営業活動に向いていますが、法人税の扱いは複雑であり、本社と連動した税務処理が必要です。

プロセス

1.支店開設許可申請(インド準備委員会など関連省庁へ)
2.登録に必要な日本本社の資料提出
3.税務登録(PANやGST番号の取得)
4.支店として営業活動の開始(拠点設置、人員配置)

駐在員事務所

駐在員事務所は営業活動を行わず、現地調査や本社との連絡窓口に限定されます。設置手続きは比較的簡素ですが、業務内容が制限されるため、市場調査や試験的進出に適しています。

プロセス

1.駐在員事務所設立届出の提出
2.駐在員の派遣と事務所設置
3.限定的な情報収集や連絡業務開始
4.必要に応じて会計・税務上の最低限の対応

インド市場調査ならAXIA Marketing

本記事では、インド市場に進出したい方向けの市場特徴や注意点、政治状況などの重要な情報を詳しく解説しました。

インドは世界人口第一位で今後も人口ボーナスが続くことからあらゆる可能性を秘めた国として魅力的です。

本記事の情報を、貴社の海外事業展開させる上でぜひ役立ててみてください。
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参考文献

メイク・イン・インディアの成果に夜明け?(インド) | 地域・分析レポート

インド進出日系企業リスト2022

株式会社MORESCO:海外進出で事業拡大 | ジェトロ活用事例

世界一の人口、旺盛な需要が見込まれるインドを自社成長に活かすには ジェトロ

離職率引き下げへ、日系企業が取り組み拡大(インド)-ジェトロ

インドにおける関税制度の概要

インドビジネス基礎知識まとめ-インド進出時に知るべき3つの情報 | 海外進出ノウハウ | Digima〜出島〜

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