【タイの市場調査】進出前に知っておくべきタイ経済や消費者ニーズまとめ
東南アジアの中でも特に経済成長が著しいタイでは、富裕層と中間層の拡大に伴い、多くのビジネスチャンスが生まれています。実際に豊かな購買力や戦略的立場を背景に、タイに進出した多くの日本企業が功を収めています。
しかし進出には、産業の特性や労働市場の状況、法的規制などといった、具体的な市場データについての調査が不可欠です。
今回はタイ市場への進出を検討している企業が、必ず把握しておくべき情報を網羅的に解説しています。
この記事ではタイに関して、次のような内容を紹介しています。
- 経済面における特徴
- 進出における注意点
- 進出におすすめの最新業種
ぜひ最後までお読みいただき、タイ市場の概要と具体的な進出戦略についての理解を深め、現地でのビジネス成功に役立ててください。
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タイの市場調査①経済面での特徴
タイは東南アジアの中でも経済成長が急速に進んでいる国の一つです。特にバンコクを中心に発展しており、多くの日本企業が進出を果たしています。
タイ市場の特徴として、富裕層と中間層が増加している点が挙げられます。これにより消費者市場は拡大傾向にあり、特に高級消費財やサービスの需要が高まっています。
また、タイは製造業の拠点としても知られ、特に自動車産業が盛んです。政府は外資企業への優遇策を設けており、投資環境の改善が進められています。しかし、言語や文化の違い、政治的不安定さなど、市場進出の際には考慮すべき点も多く存在します。
タイ市場は東南アジア市場の中で富裕層と中間層が多い
東南アジア市場において、特に富裕層と中間層の所得が高い国々は、その地域全体の購買力も高く押し上げます。
1人あたりの国内総生産(GDP)は地域での所得水準を測る重要な指標です。この数値が高い国では、消費者の購買意欲も高くなりがちです。これにより、高価な消費財やサービスへの需要が増加するので、GDPは企業の市場参入戦略において重要な情報源となっています。
続いて、タイのGDPを見ていきましょう。
タイの経済をGDPやCPIから見た場合
タイの経済は国内総生産(GDP)、消費者物価指数(CPI)、および実質経済成長率を指標に見ると、ゆるやかながらも上向きです。
タイのGDPは持続的に成長しており、消費者物価指数も安定した上昇を示しています。これは、内需の拡大と国内市場の強化が反映されたものです。
さらに、実質経済成長率の改善は、タイ経済の底力とポテンシャルの高さを意味しており、投資家にとって有望な指標といえます。こうした経済データから、タイはアジアでのビジネス拡大に適した市場といえるのです。
タイの市場調査②東南アジアの物流の要所
タイは大メコン経済圏の心臓部であり、周辺国と密接に繋がっています。この繋がりにより、タイは東南アジアの他の国々への物流拠点として適しているのです。
こうした地理的利点により、タイは生産拠点としても理想的です。加えて、東南アジアにおける日系企業の拠点数も第一位となっています。
タイに進出している日本企業の数・推移
タイは東南アジアで最も多くの日系企業が進出している国として知られています。最新の外務省「海外在留法人数調査統計」と「海外進出日系企業拠点数調査 / 2022年調査結果」によると、タイには数千社の日本企業が設立されていることがわかります。
タイに進出した企業は自動車、電子機器、食品加工と多岐にわたり、地域経済の重要な推進力となっています。タイの政治的安定性と優れた基盤施設は、こうした企業にとって魅力的な投資地であり、その結果として、進出企業数は年々増加しています。
アジアでビジネスを行う日本企業にとって、こうした背景があるためタイは魅力的な地域となっているのです。
タイに実際に進出している日本企業の事例
タイには、トヨタやデンソー、ブリヂストンなど日本の名だたる大手企業が進出していますが、多くの中小企業も進出しています。
その中でもタイ進出に成功している企業の好事例とも言えるのが、Vライントリマー販売事業を手がける興栄工業株式会社です。
日本で商品を販売する企業の多くが「海外で販売したい」と思っても販売できない理由の1つが、人材や資金など限られたリソースの中での進出の難しさです。
大企業であれば、豊富な人材、資金などから色々な選択肢が取れますし、仮に失敗しても撤退などの判断ができます。
しかし、中小企業はそうはいきません。
すべてにおいて限りがあるため、限られたリソースの中で取り組まなければなりません。
こういった悩みを、「海外展開に関するノウハウを持った企業と組む」ということで解決し、半年でタイでの自社商品の販売に成功した好例と言えるでしょう。
また、自社商品をどう販売していくか、だけではなく、現地の悩みを解決する、という観点も進出成功には重要です。
日本のAIテクノロジー企業である株式会社RUTILEAは、タイのキングモンクット工科大学と連携し、タイ国内の銃犯罪抑止に向けたプロジェクトを進行中です。
具体的には、画像解析AIを用いて銃器を検出するシステムを開発しており、タイ国内での治安向上に貢献しています。
タイでは近年銃犯罪が多発しており、観光客などを巻き込む犯罪も多発しています。
こういった、その国特有の悩みの解決、という観点から現地の政府や自治体、企業と連携することで現地の人々の信頼や協力を得やすくなりますし、海外進出に成功しやすくなると言えるでしょう。
自社の商品をどう売るか、という観点だけではなく、現地の悩みを自社の商品や技術でどう解決するか、という観点も海外進出に成功するためには重要なのです。
タイの市場調査③豊富な労働力
タイは東南アジア地域において経済発展が著しい国の一つであり、その成長を支える重要な要素の一つが周辺国からの出稼ぎ労働者です。
特に近隣のミャンマー、カンボジア、ラオスから多く流入しており、製造業や建設業、農業などのさまざまな産業で活躍しています。
出稼ぎ労働者は経済の柔軟性と競争力を高め、タイがASEAN内で経済的なハブとして機能する一因ともなっています。
さらに、以下の理由もタイ経済成長の要因です。
・2031年頃まで続くと予想される人口ボーナス
・就業率・失業率
・労働者の平均月収/年収
次に、こうしたタイの経済成長の背景について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
タイの人口ボーナスは2031年頃まで続くと予想
タイでは、2031年頃まで続くと予想される人口ボーナスが経済成長の大きな支柱となっています。
人口推移と人口ピラミッドを分析すると、若年層が多く、これからも長期間にわたり労働力としてのポテンシャルが高いことがわかります。特に、15歳から64歳までの働ける年齢層が人口の大部分を占め、これがタイの労働市場にとって大きな利点です。
この豊富な若年労働力は、国内外からの投資を引き寄せる要因ともなっており、経済の持続可能な成長を支える基盤として機能しています。
タイの就業率と失業率
タイの就業率と失業率は、経済活動の活発さを示す重要な指標です。
近年の統計によると、タイの就業率は非常に高く、ほとんどの労働者が雇用されているといえます。一方で、失業率は非常に低く、これはタイが労働市場において安定していることを示しています。
特に、若年層の間での就業が盛んであり、国内の多様な産業が若者たちに幅広い職業選択肢を与えていることがその理由の一つです。
こうした背景により、タイはASEAN地域内で経済的にも一層強固な位置を築いており、国際的なビジネスと投資の魅力的な場となっています。
タイの市場調査④サービス業と製造業
タイの労働市場における平均月収および年収は、その経済発展と地域間の経済格差によって大きく異なります。
主要都市圏、特にバンコクでは、高い教育レベルと技術を持つ労働者が多く、月収は平均約30,000バーツ(約1,000米ドル)です。
一方、農村地域では月収が約9,000バーツ(約300米ドル)程度となることが一般的です。
年収に関してもこの傾向は同様で、都市部の労働者は年間360,000バーツ(約12,000米ドル)、農村部では108,000バーツ(約3,600米ドル)となります。
こうした数値はタイの経済成長と共に徐々に上昇しており、特に技術力や専門知識を要する職業ではさらに高い収入を得ることも可能となりつつあります。
サービス業と製造業が産業の中心である
タイの経済は多様な産業に支えられており、特にサービス業と鉱工業が中心的な役割を果たしています。
サービス業は観光、金融、教育など広範な分野に及び、国内外からの投資を呼び込む貢献もしているのです。
一方、鉱工業や自動車産業をはじめとする製造業が盛んで、タイの輸出産業の大きな割合を占めています。
こうした産業はタイの経済成長を牽引し、雇用を創出する重要な源泉となっており、今後も発展が期待される分野です。
タイの主要産業
タイの経済は、その多様な産業構造に支えられています。独立行政法人労働制作研究・研修機構のデータによると、タイの主要産業は農業、製造業、観光業、およびサービス業であることがわかります。
特に製造業では、自動車産業が世界的にも重要な地位を占め、タイは「アジアのデトロイト」とも呼ばれているのです。
また、農業も国の重要な基盤であり、特に米の輸出においては世界トップクラスです。さらに観光業もまた経済成長に大きく貢献しており、国際的な観光地としての地位を確立しています。
タイの各産業の就業者比率
タイの経済における就業者の比率は、サービス業、製造業、農業の三つの主要部門に分けられます。
独立行政法人労働制作研究・研修機構による最新のデータに基づくと、観光業や小売業などを含むサービス業が最大の部門で、全就業者の約50%を占めています。
次いで製造業が約20%となり、タイの経済発展に不可欠な自動車製造や食品加工が主力です。
農業は約15%で、タイの伝統的な農業は依然として重要な役割を果たしており、生産者は主に米やゴム、タピオカの生産に従事しています。
こうしたデータは、タイの産業構造が多様化していることを示しており、特にサービス業の成長が目覚ましいことが分かります。
タイの市場調査⑤外資企業向けの税制優遇措置
多くの国々では、外資企業を惹きつけ、経済成長を促進するために税制上の優遇措置が設けられています。措置の中には法人税の免税や減税も存在します。
特に、新規投資を奨励するための措置として、初期投資に対する税額控除や、特定の高技術産業や研究開発プロジェクトへの投資に対する追加控除が設けられることがあります。
さらに、国際的なビジネスを行う企業にとって重要なのが、二重課税を避けるための二重課税回避協定(DTA)です。これにより、ある国で納税した後に他の国で再度同額を課税されることなく、より効果的な国際取引が可能になります。
このような措置は、外資企業にとって大きな救いであり、その国への投資を促し安くなるのです。
タイ市場進出における注意点
タイ市場に進出する際は、文化的違いと法律的な課題を理解することが重要です。
まず、言語の壁があり、英語が広く通用するわけではないため、タイ語の理解が不可欠です。
また、タイは外資規制が厳しく、特定の産業には外国人の投資が制限されています。
これに加えて、労働法が複雑であり、地元の労働者の権利が厳しく保護されているため、適切な労働契約の管理が求められます。
こうしたポイントを把握し、対策を講じることで、リスクを最小限に抑え、成功への道を開くことができます。
さらに、タイへの進出や投資を考える上では、以下の点も知っておきましょう。
・高齢化社会の到来と、出生率の低下
・外国人事業法による規制
・タイならではの就労意識
以下からは、こうしたタイ市場へ進出する際の注意点について詳しく見ていきましょう。
高齢化社会の到来と、出生率の低下
タイの高齢化は急速に進行しており、国立統計局によると、2030年には人口の約4分の1~3分の1が60歳以上になると予測されています。一方で、タイの出生率は過去数十年で大きく低下し、2020年の出生率は1.5未満という報告もあります。
こうした動きが続けば、労働力不足を深刻化させ、経済成長の鈍化を引き起こす可能性があるのです。さらに高齢者の増加は社会保障制度に大きな負担をかけ、若い労働世代に対する経済的な圧力を増やします。
一方、タイは国際労働力の活用を進めており、特に隣国からの労働者を積極的に受け入れています。これにより、人口構造の変化に対応し、経済活動の持続を図るのです。
タイの高齢化と少子化についての対策は急務であり、社会保障の改革、健康と福祉の充実、移民政策の調整など、多角的な対応をしなければ解決しづらい問題といえるでしょう。
外国人事業法による規制
タイの外国人事業法は、外国資本がタイ国内で事業を行う際のルールを定めた重要な法律です。この法律は、特定の業種に対する外国企業の参入を制限しており、外国資本の参入を規制する業種は合計で43に及びます。
法律の目的は、国内産業の保護、経済の安定、国家安全保障とされています。外資による完全な所有が禁じられている業種もあれば、一定の条件のもとでの参入が可能な業種も存在しているのが現状です。
この法律があることで、タイ進出を検討する企業は、投資前に詳細な市場調査と戦略的計画を行う必要があります。
タイならではの就労意識
タイにおける就労意識は、その文化的背景と社会的習慣に深く根ざしています。
一般的に、タイ人は非常に社交的でフレンドリーな性格を持っており、職場でもこの性格が反映されることが多いです。これは「サナック」という概念によるもので、楽しさや快適さを重視する文化的価値観です。
また、タイでは家族や地域社会との絆を重視する傾向があり、これが職場でのチームワークや協調性に良い影響を与えています。
中所得者層の増加による成長の鈍化
タイ経済は中所得国の罠に陥ることなく、これまで持続的な成長を続けてきましたが、最近では中所得者層の増加を抑えきれなくなっています。
中所得者層が増えると、一見経済にとって好ましいように思えますが、所得の増加が消費ではなく貯蓄に回されることが多くなるため、内需が期待ほど伸びなくなるのです。これにより、タイ国内の経済活動は、以前に比べて成長ペースが鈍化傾向です。
タイ政府はこの問題に対処するため、中所得者層向けの新しい市場を開拓するとともに、消費を刺激するさまざまな政策を導入しています。政策として減税や、特定の製品に対する補助金などが挙げられます。こうした取り組みにより、タイは中所得者層の増加がもたらす経済成長の鈍化を、ある程度抑制しようと努力しているのです。
政治的不安
タイにおける政治不安は、国内外の投資家にとって懸念すべきことです。
過去数十年にわたり、タイは軍事クーデター、高官の解任、大規模デモなど政治的な混乱が度々発生していました。
こうした政治的な動揺は経済活動に影響を及ぼし、特に外国からの直接投資に対する信頼感に悪影響を与えてきました。
政治的な不安定さは規制の変更や政策の不透明性を招き、ビジネス環境におけるリスクを高めています。投資家や事業主は、タイ進出や拡大を検討する際には、こうした政治リスクを考慮し、適切なリスク管理戦略を立てる必要があります。政治情勢の変化に柔軟に対応し、安定した事業運営を目指さなければなりません。
タイ市場進出におすすめな最新業種
豊富な環境資源や今後も増加するデジタル需要、政府の優遇措置など、様々なチャンスが広がるタイですが、どのような業種で進出すべきなのでしょうか。
今回はタイ政府が投資を推奨する次の3つの業種を紹介します。
- デジタルテクノロジー産業
- バイオサイエンス産業
- エコツーリズム産業
貴社がタイへの進出を検討する際の一助となれば幸いです。
デジタルテクノロジー産業
少子高齢化や、発展途上国の成長率が低下する、いわゆる「中所得国の罠」を背景に、タイ政府は2015年に「タイランド4.0」という政策を打ち出しました。
タイランド4.0とは、タイらしい(Thainess)産業ではなく、AIやビッグデータ、IoT技術を活用した、高負荷価値で競争力のある産業へ軸足をシフトすることで、先進国を目指す取り組みです。
政府は先進技術をもつ外資企業を積極的に誘致しており、関税・法人税の免除といった投資優遇措置が取られています。
また、タイではスマートフォンの普及により個人間のデジタル決済が盛んに行われており、フィンテックやEコマースの領域は今後も成長が見込まれています。
タイの成長を支えるデジタルテクノロジー産業は、これから進出するセクターとして最適と言えるでしょう。
バイオサイエンス産業
タイのバイオサイエンス産業(特に医療分野や健康食品分野)は、政府主導の「バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済モデル」により、急速に発展しています。BCG経済モデルとは、植物資源が豊富なタイにおいて生物資源の活用や、資源の再利用を通して、環境保護と経済成長を両立するためのモデルです。
タイ政府もバイオサイエンス分野に対しては積極的な外資優遇政策を取っており、タイの豊富なバイオ資源を活かした事業展開が期待できます。
また少子高齢化による健康志向の高まりから、医療・健康食品への需要も増加しており、タイのバイオサイエンス産業は日本企業にとっても大きなビジネスチャンスです。
エコツーリズム産業
エコツーリズムとは自然環境や歴史文化など、その国や地域固有の魅力を観光資源として活用することで、環境保全を目指す観光のあり方です。
観光地としての人気が高いタイですが、世界中から観光客が集まった影響による自然環境の破壊が問題となっていました。
タイ政府は過密状態を減らすための措置を講じており、2018年には一部のビーチへの立ち入りを禁止するなど、環境への配慮を行っています。
こうした背景から、タイではエコやSDGsを考慮した観光施設や文化体験型の観光ツアーが増加しています。政府もエコツーリズムへの投資を推奨しており、持続可能な新しい観光事業を展開する好機となっています。
東南アジアのテストマーケティングにタイは最適
タイの消費者市場は多様でありながら、アジア全体の消費者動向を反映する特性を持っています。そのため、タイは東南アジアでのテストマーケティングに最適な国といえるのです。
タイの人口構成は若年層が多く、デジタル技術の普及率も高いため、新しい商品やサービスに対する受容性が高いと考えられます。
また、タイは地理的にもASEAN諸国の中心に位置しており、物流の利便性も高いです。これにより、新製品の流通やマーケティング戦略の効果を迅速に評価することが可能です。
さらに、タイ国内での成功が他の東南アジア諸国への進出の足掛かりとなるケースも多く、多国籍企業にとっては戦略的な市場としての価値も高いです。
タイ市場の詳細な調査ならAXIA MARKETING
この記事では、タイにビジネス進出したい方に向けたタイ市場の特徴や、進出に向いた業種、政治状況などの重要な情報を詳しく解説しました。
タイはその戦略的な位置と経済の多様性により、多くの国際企業にとってアジア市場への進出第一歩目の国として魅力的です。
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