金田大樹

記事の監修者

金田大樹

AXIA Marketing代表取締役

リサーチ会社を活用した経営判断を、日本企業の常識にしていくことがモットー。

鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅から大手調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。

インドネシアは、人口約2億7,000万人を超える東南アジア最大の市場であり、豊富な労働力と高い経済成長率を背景に、多くの日本企業が注目する投資先です。特に製造業・インフラ・デジタル分野を中心に外資受け入れが進み、ASEAN域内でのハブ拠点としての重要性も高まっています。

一方で、会社設立には政府のオンラインシステム(OSS)を通じた手続きや、NIB取得・定款公証など独自のプロセスが必要です。本記事では、インドネシアで会社を設立する際の流れ・費用・注意点を分かりやすく解説します。

インドネシア進出の魅力と日本企業の動向

インドネシア進出の魅力と日本企業の動向

インドネシアはASEANの中でも最大規模の人口と豊富な天然資源を有し、経済成長率も高水準を維持している国です。若年層を中心とした人口ボーナス期が続き、国内消費市場の拡大が今後も期待されています。

さらに、政府による外資誘致政策やデジタル化推進の流れが加速しており、製造・小売・ITなど幅広い分野で日本企業の進出が増加中です。ここでは、インドネシアで会社を設立するメリットと、近年の日本企業の動向について詳しく見ていきます。

  • インドネシアで会社を設立するメリット
  • 日本企業の進出動向

インドネシアで会社を設立するメリット

インドネシアで会社を設立する最大の魅力は、巨大な消費市場と安定した経済成長です。人口約2億7,000万人を誇り、今後も都市化と中間所得層の拡大によって内需が堅調に伸びる見通しです。特に食品、日用品、電子機器、自動車などの消費財産業において、現地生産・販売の両面で高いポテンシャルがあります。

また、インドネシア政府は外資誘致を積極的に推進しており、OSS(Online Single Submission)制度の導入により、会社設立手続きや事業ライセンス取得がオンラインで完結可能になりました。

さらに、特定産業への税制優遇や経済特区(SEZ)での投資インセンティブも拡充されており、外国企業にとって参入しやすい環境が整備されています。加えて、インドネシアはASEAN諸国への輸出拠点としても戦略的な位置にあり、FTAやEPAなどの自由貿易協定を通じて広域展開がしやすいのも利点です。

人件費水準も比較的低く、製造コストを抑えながら現地市場と海外市場の双方を狙えるのが、インドネシア進出の大きな強みと言えるでしょう。

日本企業の進出動向

日本企業のインドネシア進出は年々拡大しており、製造業を中心に約1,500社以上が現地に拠点を構えています。特に自動車・電子部品・化学素材などの分野では、トヨタ、ダイハツ、パナソニックなどの大手企業が早期から現地生産体制を整え、インドネシアをASEAN市場の重要拠点として位置付けています。

また、近年は製造業だけでなく、デジタル・フィンテック・EC・物流といった新産業分野での参入が急増しています。GoTo(ゴジェック×トコペディア)やGrabなど現地大手プラットフォームとの提携を進める日系企業も多く、スタートアップ投資やDX支援を通じた協業が活発化しています。

さらに、インドネシア政府が掲げる「産業下請構造の高度化」政策に合わせ、日本企業の技術支援型投資にも注目が集まっています。特に環境・省エネ・インフラ領域では、JICAやJBICなどの支援を受けたプロジェクトも進行中です。

今後は、内需とインフラ需要を両立する新興市場として、インドネシアは日本企業のアジア戦略においてますます重要なポジションを占めていくでしょう。

インドネシアでの会社設立3つの形態

インドネシアでの会社設立3つの形態

インドネシアで外国企業が事業を展開する際には、「現地法人(PMA)」「駐在員事務所」「支店」のいずれかの形態を選択するのが一般的です。それぞれの形態には、活動範囲・税務上の扱い・設立要件に明確な違いがあります。例えば、PMA(外資系現地法人)は営業活動や利益追求が可能ですが、駐在員事務所は調査や連絡業務に限定されます。また、業種によっては設立形態が法律で制限されている場合もあるため、事前の確認が不可欠です。

ここでは、それぞれの特徴と留意点を詳しく解説します。

  • 現地法人(PMA)
  • 駐在員事務所
  • 支店

現地法人(PMA)

インドネシアで最も一般的な進出形態が外資系現地法人(PMA:Penanaman Modal Asing)です。PMAは、外国企業がインドネシア国内で営利目的の事業を行うために設立する法人であり、現地政府の投資調整庁(BKPM)への申請・認可を経て設立されます。

法人格を持つため、契約締結・資産保有・雇用などを独自に行うことができ、営業活動も自由に展開できます。資本要件として、最低投資額は10億ルピア(約1,000万円以上)、最低払込資本金は25%以上と定められています。

出資比率については、外資規制(ネガティブリスト)により業種ごとに制限が設けられており、100%外資が認められない分野も存在します。設立には、OSS(Online Single Submission)システムでの申請、NIB(事業基本番号)の取得、定款の作成・公証、商業登記、税務登録など複数の手続きが必要です。PMA法人は、本格的な営業活動を行いたい企業や長期的に現地展開を計画する企業に最適な形態と言えるでしょう。

駐在員事務所

駐在員事務所は、市場調査・情報収集・現地企業との交渉・連絡業務を目的として設立される非営利拠点です。インドネシア語では「Kantor Perwakilan」と呼ばれ、現地法人(PMA)を設立する前の準備段階として活用されるケースが多く見られます。

駐在員事務所は、営業活動や収益を伴う取引を行うことが法律で禁止されており、請求書の発行や契約締結もできません。そのため、あくまで情報拠点や連絡窓口としての役割に限定されます。設立にはBKPMへの登録が必要で、許可は1〜2年単位で更新が求められます。また、代表者(駐在員)は外国人が就任可能で、必要に応じて現地スタッフの採用も認められます。

ただし、法人格を持たないため、事務所の賃貸契約や銀行口座の開設などは親会社名義で行う必要があります。将来的に本格的な営業を予定している場合は、PMAへの移行を前提に設計するのが効果的です。

支店

支店は、外国企業が本社の延長としてインドネシア国内で事業を行う形態です。法人格を持たず、すべての契約責任は本社が直接負う点が特徴です。設立できるのは限られた業種のみで、主に銀行・保険・建設・海運・航空などの特定分野に限定されています。

これらの業種では、外資系企業が一定の条件を満たすことで、インドネシア政府の許可を得て支店を開設できます。支店のメリットは、PMA設立と比較して設立期間が短く、資本金の払い込みが不要な点です。一方で、税務上は本社と一体として扱われるため、利益の送金や課税処理に注意が必要です。

また、営業活動を行う場合には、各業種ごとに定められた特別ライセンスを取得しなければなりません。インドネシアで支店を設立する場合は、現地法人化が不要な業種に限られるため、法的要件を確認したうえで専門家のサポートを受けることが推奨されます。

金融・保険等特定業種に限定

インドネシアでは、支店を設立できるのはごく限られた特定業種(金融・保険・建設・海運・航空など)に限定されています。これらの分野は国家の安全保障や経済基盤に関わるため、政府による厳格な監督下に置かれています。例えば、銀行支店を設立する場合はインドネシア金融庁(OJK)の認可が必要であり、保険会社も同様に特別ライセンスを取得しなければ営業活動を行えません。

また、外資比率にも制限があり、金融・保険業では外国資本の上限が80%など、分野によって明確に定められています。さらに、事業開始後も定期的な監査報告や資本維持義務が課されるなど、運営上の規制も多いのが特徴です。こうした分野で進出を検討する場合は、JETROやBKPM、現地の法律事務所などを通じて最新の法令・ガイドラインを確認することが不可欠です。

支店設立を安易に進めるのではなく、法的要件・リスク・税務処理を総合的に精査した上で、最適な進出形態を選択することが成功の鍵となります。

インドネシアで会社を設立する主な流れ8ステップ

インドネシア会社設立の主な流れ8ステップ

インドネシアで会社を設立する際は、政府が運営するオンライン申請システム「OSS(Online Single Submission)」を通じて一連の手続きを進めるのが基本です。以前は各官庁ごとに手続きが分かれていましたが、現在はこのシステムの導入により、企業設立の効率化と透明性が大幅に向上しています。ただし、外国資本を含む場合は追加の許可や投資認可が必要となるケースもあります。

ここでは、会社設立に必要な8つのステップを順を追って解説し、スムーズに法人化を進めるための実務ポイントをまとめます。

  • ①各種規制に関する調査
  • ②事業内容と会社形態の決定
  • ③OSSシステムでのアカウント登録
  • ④NIB(事業基本番号)の取得
  • ⑤事業ライセンスの申請
  • ⑥会社定款の作成と公証
  • ⑦法人銀行口座の開設
  • ⑧税務登録と社会保険登録

①各種規制に関する調査

会社設立の第一歩は、事業分野に関する規制の確認です。インドネシアでは、すべての業種に対して外資参入の可否や出資比率が明確に定められており、これらはネガティブリスト(現在はポジティブリスト化)によって管理されています。このリストでは、完全外資が許可される業種、共同出資が義務付けられる業種、外国企業が進出できない業種などが分類されています。

特に、金融・通信・小売・農業などの分野では規制が厳しく、外国企業の出資比率が49%以下に制限されることもあります。また、インドネシア投資省(BKPM)が発行する最新の投資ガイドラインを確認しなければ、申請後に却下されるリスクも。さらに、進出地域によっても特別経済区(SEZ)や地方自治体の独自ルールが存在するため、法務・税務の専門家を通じた事前調査が不可欠です。

ここで慎重に調査を行うことで、後続のライセンス申請や設立登記をスムーズに進められます。

②事業内容と会社形態の決定

次に行うのは、事業内容の明確化と会社形態の選定です。インドネシアで外資系企業が設立できるのは主にPMA(外資系現地法人)であり、営利活動を行うにはこの形態が必要となります。一方で、市場調査や交渉など限定的な活動にとどめる場合は駐在員事務所でも対応可能です。

事業内容は、KBLIコード(インドネシア標準事業分類)に基づき申告する必要があります。KBLIコードを誤って選択すると、NIB(事業基本番号)やライセンス申請の際にエラーが発生するため注意が必要です。例えば、製造業・物流・ITサービスなどはそれぞれ異なる許可区分に分類され、求められるライセンスも異なります。

また、出資比率・資本金額・雇用計画などもこの段階で整理しておくことが重要です。特にPMAの場合、最低投資額10億ルピア以上・払込資本金25%以上が基本要件とされており、これを満たさない場合は認可が下りません。事業計画と会社形態の整合性を確認しながら、法的に最適な設立スキームを設計することが成功の鍵となります。

③OSSシステムでのアカウント登録

インドネシアでは、企業設立を含むすべての事業手続きを「OSS(Online Single Submission)」システムでオンライン化しています。まず、事業者または代理人がOSSサイトにアクセスし、法人設立申請用のアカウントを作成。このアカウントは会社の全手続きを統括する重要な管理IDとなるため、情報の正確性が求められます。

登録時には、会社名・出資者情報・所在地・事業目的・資本金などの基本情報を入力します。PMAの場合は、外国出資比率や投資予定額も明記する必要があります。入力が完了すると、OSSから「投資申請番号(Nomor Induk Berusaha:NIB)」の発行準備が進められるのです。

OSSの導入により、以前のように複数の官公庁を個別に訪問する必要はなくなりましたが、システム上の入力ミスや書類不備があると登録が無効になる点には注意が必要です。外国企業の場合、英語とインドネシア語の併記や、電子署名の整合性なども求められるため、現地専門家と連携して登録を進めるのが望ましいです。

④NIB(事業基本番号)の取得

NIB(Nomor Induk Berusaha)は、インドネシアで事業を行うための事業者識別番号であり、法人としての基本的な活動を行うための必須要件です。NIBを取得することで、企業は商業登記・税務登録・輸出入手続き・雇用契約など、あらゆる経済活動を正式に開始できるようになります。NIBはOSSシステム上で自動的に発行され、法人のデジタル身分証として機能します。

申請には、会社名・所在地・事業内容・資本金・出資者情報・KBLIコードなどを入力します。入力完了後、申請内容に不備がなければ数営業日でNIBが発行されます。また、NIBを取得すると同時に、企業は自動的に税務番号(NPWP)や社会保険関連の初期登録にもリンクされる仕組みになっているのです。

NIBが発行されていないと、銀行口座の開設やライセンス取得も行えないため、非常に重要なプロセスです。外資系企業の場合は、投資調整庁(BKPM)の承認内容と一致しているかを事前に確認し、整合性の取れた申請を行うことが求められます。

⑤事業ライセンスの申請

NIBを取得した後は、業種ごとに定められた事業ライセンス(Business License)を申請する必要があります。インドネシアでは、事業分野ごとに必要な許可や認可が異なり、製造業・小売業・物流業・金融業など、それぞれが管轄省庁で審査を受けます。

例えば、製造業であれば工業省(Kementerian Perindustrian)、建設業であれば公共事業省(PUPR)が所管機関となります。申請の際には、事業計画書、オフィス賃貸契約書、投資額証明、雇用計画などの書類が必要です。また、外国企業の場合、BKPMの投資認可が前提となるケースもあります。

ライセンスは原則としてOSSを通じて申請・発行されますが、補足書類の提出や現地確認が求められることもあるため、業種別ガイドラインに沿った書類準備が不可欠です。ライセンスが承認されることで、企業は正式に営業活動を開始でき、製品製造や取引契約の締結も可能となります。

⑥会社定款の作成と公証

会社設立の法的基盤となるのが、会社定款(Anggaran Dasar)の作成です。定款には会社名、所在地、目的、資本金、株主構成、取締役・監査役の任命、決算期など、企業運営に関わる基本事項を明記します。定款はインドネシア語で作成し、公証人による認証(Notarial Deed of Establishment)が義務付けられています。

公証人は、定款内容がインドネシア会社法(UU No.40/2007)に準拠しているかを確認した上で承認を行います。認証後、商業登記局(AHU:Administrasi Hukum Umum)に提出し、正式な登記番号を取得します。これにより、会社は法的に認められた法人格を持つことになります。なお、外国資本が含まれる場合は、定款内容とBKPM承認書の整合性を確認する必要があります。

誤記や不一致があると、定款の再認証が必要となり設立が遅延するため注意が必要です。定款の作成は、今後の株式譲渡や事業変更にも関わるため、専門家によるリーガルチェックを受けてから公証手続きを進めるのが望ましいでしょう。

⑦法人銀行口座の開設

会社設立後、資本金を払い込み、取引を行うためには法人銀行口座の開設が必要です。インドネシアでは、主要都市に拠点を持つ商業銀行で法人口座を開設することが一般的です。外国資本を含むPMAの場合、資本金の25%以上を開設口座に入金することが設立要件となります。銀行口座の開設には、定款の写し、公証書、NIB、NPWP、代表者の身分証明書を提出します。

外国人代表者の場合は、KITAS(滞在許可証)や労働許可証が求められる場合もあります。銀行によっては、取締役会決議書や事業ライセンスの提出が求められるケースも。また、開設する銀行は、送金コスト・為替手数料・国際取引ネットワークの有無などを比較検討し、事業内容に最適な金融機関を選ぶことが重要です。

銀行口座の開設完了をもって会社が正式に資金運用を開始できるため、手続きのスピードと正確さが求められます。

⑧税務登録と社会保険登録

最後のステップは、税務登録(NPWP)と社会保険登録(BPJS)です。NIB取得時に自動で税務番号(NPWP)が付与される場合もありますが、実務上は税務署への確認と追加登録が必要です。NPWPを取得することで、法人税・源泉税・付加価値税(VAT)などの申告が可能となります。

また、従業員を雇用する企業は、BPJS Ketenagakerjaan(労働保険)およびBPJS Kesehatan(健康保険)への加入義務があります。これは全従業員を対象とした社会保障制度であり、会社は給与から保険料を天引きして納付します。未加入のまま運営を続けると罰金が科される可能性もあるため、設立直後に登録を完了させることが望まれます。

さらに、月次・年次の税務申告スケジュールや帳簿保管義務もインドネシアの会計基準に従う必要があります。これらの手続きが完了すれば、企業として正式に活動できる体制が整います。税務・労務の初期設計を正しく行うことが、安定した経営の第一歩となります。

インドネシアで会社を設立するのに必要な費用

インドネシア会社設立に必要な費用

インドネシアで会社を設立する際の費用は、会社形態や事業規模によって異なりますが、一般的な外資系現地法人(PMA)を設立する場合、総額でおよそ50万〜150万円程度が目安とされています。

主な内訳は、定款作成・公証手数料、登記費用、翻訳・通訳費用、ライセンス申請費用、会計士・法務コンサルタント費用などです。特に外資を含む場合は、BKPM(投資省)での申請サポート費用や、英語・インドネシア語併記での書類準備にかかるコストが上乗せされます。また、設立後には、最低資本金要件(10億ルピア=約1,000万円以上)の払い込みが必要です。

この資金は運転資金として利用可能ですが、形式上、銀行口座に入金して証明書を提出する必要があります。その他、オフィス賃貸費用やスタッフ採用費、税務・社会保険登録費用も初期コストとして計上する必要があり、実際の総額は100万〜200万円規模になるケースも珍しくありません。

事前に現地専門家と見積もりを取り、予算計画を立てておくことが重要です。

インドネシアで会社を設立するために必要な書類と準備

インドネシア会社設立に必要な書類と準備

インドネシアで会社を設立する際には、事前に多くの書類を準備する必要があります。主な書類としては、定款(Anggaran Dasar)・株主リスト・取締役および監査役の任命書・資本金証明書・事業計画書などが挙げられます。

これらはすべてインドネシア語で作成され、公証人(Notaris)による認証が必要です。外国資本を含む場合は、親会社の登記簿謄本・定款・代表者のパスポートコピー・投資認可書(BKPM承認書)などの追加書類も求められます。また、法人登記に際しては、事業住所を証明する賃貸契約書(オフィスリース契約書)や、会社の印章(スタンプ)も必須です。NIB取得後に提出する場合もあるため、手続きごとに最新の要件を確認しておく必要があります。

さらに、書類の一部は英語とインドネシア語の併記が求められる場合があり、誤訳や形式不備があると承認が遅れることもあります。スムーズに設立を進めるためには、専門のリーガルアドバイザーや現地コンサルタントの支援を受け、必要書類を正確かつ体系的に整えることが重要です。

インドネシア進出を成功させる4つのポイント・注意点

インドネシア進出を成功させる4つのポイント・注意点

インドネシア市場は人口の多さと経済成長を背景に、東南アジアの中でも最も有望な投資先の一つとされています。しかし、商習慣や法律、文化の違いを理解しないまま進出を進めると、予期せぬトラブルやコスト超過に直面するリスクがあります。成功のためには、市場ニーズの正確な把握、法令遵守、現地人材の適切な活用、そしてリスクマネジメントが欠かせません。

ここでは、日本企業がインドネシアで事業を安定的に展開し、持続的な成果を上げるために押さえるべき4つの重要ポイントを解説します。

  • 市場ニーズ調査と戦略立案
  • 法律・規制の遵守
  • 現地人材の活用

市場ニーズ調査と戦略立案

インドネシア市場で成功するためには、まず現地の消費者ニーズと商習慣を深く理解することが不可欠です。国全体では約2億7,000万人の人口を有しますが、所得格差や地域による嗜好の違いが大きく、首都ジャカルタと地方都市では購買傾向がまったく異なります。

例えば、都市部では品質・ブランド志向が高い一方、地方ではコスト重視の傾向が強く見られます。また、イスラム文化の影響が強いため、ハラール認証の取得が求められる業種も多く存在します。食品・化粧品・医薬品などを扱う企業は、現地規制に沿った製品設計やマーケティング戦略を立てる必要があります。

さらに、デジタル化が進むインドネシアでは、EC市場やSNSマーケティングの活用が競争力を左右する重要な要素となっています。市場調査では、統計データだけでなく、現地パートナーや消費者の声を通じた一次情報を重視することが重要です。

その上で、段階的に地域拡大を進めるスモールスタート+スケール戦略を採用すれば、リスクを抑えながら事業を安定的に拡大できます。

法律・規制の遵守

インドネシアで事業を行う際、最も重要な法的ポイントが外国人投資(外資)に関する規制です。インドネシアでは、外資の受け入れを推進しながらも、国家の安全保障・経済主権・中小企業の保護などを目的として、投資法および「大統領令第10号/2021号(Omnibus Law関連)」で外国投資家に対するルールが定められています。この外資規制の中心にあるのが、「ネガティブリスト」および、現在の新制度である「ポジティブリスト」です。

従来のネガティブリストは、外国投資が禁止または制限される業種を明示したものでしたが、2021年に施行された新投資法により廃止され、代わって外資参入が可能な業種と優遇対象を明確化したポジティブリスト制度に移行しました。ポジティブリストでは、インドネシア国内産業の発展を目的に、外資が参入できる業種・出資上限・特別条件が整理されています。主に以下の4区分に分かれます。

  • 全面開放分野(Open Sectors):外資100%出資が認められる分野(例:ITサービス、物流、教育支援など)
  • 条件付き分野(Conditional Sectors):政府の特別許可や地域条件を満たすことで投資可能な分野(例:通信、エネルギー、保険業など)
  • 中小企業保護分野(Reserved for MSMEs):中小零細企業(MSME)専用とされ、外資が参入できない分野(例:小売業、簡易サービス業など)
  • 禁止分野(Prohibited Sectors):外資投資が完全に禁止されている分野(例:武器製造、麻薬取引、遺伝子改変生物など)

この新制度によって、以前のように複数の省庁を経由して確認が必要だった複雑な手続きが大幅に簡略化され、外資参入の透明性が高まりました。一方で、条件付き分野では政府承認や出資比率制限が残されており、実務上のハードルは依然として存在します。

例えば、金融・通信・運輸といった戦略的分野では、外国資本の出資比率が49%または67%に制限されるケースもあります。また、外資企業として正式に事業を行うには、「PMA」と呼ばれる外資法人を設立する必要があります。PMA企業は、設立時に最低資本金(通常は10億ルピア以上)の要件を満たす必要があり、さらにBKPMへの届出・許可取得を経て初めて営業可能になります。

インドネシアの外資規制は、経済政策や国際情勢によって頻繁に見直されており、特定分野での外資開放と制限強化が並行して進んでいます。そのため、事業計画を立てる際は、最新のポジティブリストとBKPM(投資調整庁)の公式情報を確認し、現地法律事務所や進出支援コンサルティング企業と連携して、外資比率・業種制限・設立手続きの可否を慎重に判断することが不可欠です。

ネガティブリスト

インドネシアでは、外国企業の出資制限を定めたネガティブリストが存在します。これは、国家安全保障や経済保護の観点から、外国資本が参入できる業種・できない業種を分類した制度です。2021年の改正によりポジティブリスト形式へ移行しましたが、依然として外資比率が制限される業種は多く残っています。

具体的には、農業・通信・小売・メディア・運輸・建設などの分野で出資上限が設定されており、外資100%が認められないケースも少なくありません。例えば、小売業ではインドネシア人パートナーとの合弁が義務付けられ、建設業では特定規模以上のプロジェクトでのみ外資が許可されるなど、条件が細かく分かれています。さらに、同一業種でも特別経済区(SEZ)やBOI(投資優遇地域)では例外が認められることがあります。

そのため、事業内容や投資エリアに応じて最新の法令を確認し、出資構成やライセンス戦略を柔軟に設計することが必要です。JETROやBKPMの最新ガイドラインを参考にしながら、事業計画段階でリスクを最小化しておくことが成功の鍵となります。

現地人材の活用

インドネシアで持続的に事業を展開するためには、現地人材の採用と育成が不可欠です。豊富な労働人口を抱える同国では、若年層を中心に優秀な人材が多く、特に英語力やデジタルスキルに長けた人材が増加しています。

一方で、文化的背景や働き方への価値観が日本とは異なるため、日本式マネジメントをそのまま適用するのは効果的ではありません。現地社員は「チームの一員としての尊重」「昇進機会の明確化」「成果に応じた報酬制度」を重視する傾向があります。

そのため、給与水準や福利厚生に加えて、スキルアップ研修や評価制度の整備が定着率向上の鍵となります。また、管理職ポジションにはローカルマネージャーを登用することで、現地顧客や行政機関との関係構築がスムーズになります。外国人駐在員と現地社員の間で役割を明確化し、双方向のコミュニケーションを促進することで、組織の信頼関係を高めることが可能です。

現地文化を理解し、現地人材の力を最大限に活かす経営体制を築くことが、インドネシア市場での長期的な成功につながります。

インドネシア進出支援ならAXIA Marketing

インドネシア進出支援ならAXIA Marketing

インドネシアでの会社設立は、OSSシステムによる申請やNIB取得、ライセンス許可など複数の手続きを伴うため、現地の制度に精通した専門サポートが欠かせません。

AXIA Marketingでは、市場調査から会社設立、法務・税務サポート、現地人材採用支援までワンストップで提供しています。日本企業特有の課題やリスクを理解し、最適な進出プランを提案できるのが強みです。

インドネシア進出を確実に成功させたい企業様は、ぜひAXIA Marketingへご相談ください。

参考文献

Copy Link

Share on

Share on X Share on X Share on Facebook > Share on Facebook >