金田大樹

記事の監修者

金田大樹

AXIA Marketing代表取締役

リサーチ会社を活用した経営判断を、日本企業の常識にしていくことがモットー。

鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅から大手調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。

日本に最も近いアジアの国は韓国です。この地理的な近さに加えて、ビジネスマナーや文化の共通点も多く、日本企業にとって親しみやすい市場です。

そのため、企業進出が比較的スムーズに進むことが期待できます。

一方で、韓国進出を検討する中で、現地の文化やビジネスマナー、市場特性について不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?

この記事では、韓国進出のメリットや成功しやすい理由を詳しく解説します。また、効果的な市場調査の方法や、実際に成功を収めた企業の事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。


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韓国の基本情報

まず、韓国の基礎データを確認しておきましょう。

韓国(正式国名:大韓民国)は東アジアの北東部、朝鮮半島の南側に位置します。国土は南北に約1,000キロメートルに及び、気候も地域によって異なります。首都ソウルには、総人口の約5分の1が集中しており、世界でも有数の人口密度を誇る都市です。

また、日本からはフライトで約2時間と近く、ビジネスだけでなく観光地としても人気があります。さらに、K-Popや韓流ドラマなどの韓国文化は世界中でブームを巻き起こしており、今後もその影響力は拡大していくと考えられます。

面積約10万平方キロメートル(朝鮮半島全体の45%、日本の約4分の1)
人口約5,156 万人(出典:2023年、韓国統計庁)
首都ソウル
公用語韓国語
主要産業電気・電子機器、自動車、鉄鋼、石油化学、造船
GDP(名目)1兆6,643億ドル(出典:2022年、韓国銀行)


出典:外務省「大韓民国基礎データ

韓国の貿易について

韓国は輸出主導型の経済を持つ国であり、貿易活動が国内経済の重要な柱となっています。主要な輸出品目には半導体、電子機器、自動車、石油化学製品、鉄鋼などがあり、世界市場でも競争力を持っています。特に半導体は世界的に高いシェアを誇り、日本企業との取引も多くあります。輸入品目は原材料、機械設備、農水産物などが中心で、日本からの輸入も活発です。

韓国は複数の自由貿易協定(FTA)を締結しており、関税優遇措置を活用することでコスト削減が可能です。例えば韓国・日本間のFTAや、韓国・EU、韓国・アメリカとの協定により、輸出入の際の関税負担が軽減され、ビジネス展開の効率化に寄与します。

貿易市場では中小企業も活発に活動しており、大企業との取引やサプライチェーンへの参加を通じて成長しています。日本企業が進出する際も、現地パートナーとの協業や現地調達を組み合わせることで、効率的な事業展開が可能です。

韓国の貿易は輸出入双方で日本企業に多くのビジネスチャンスを提供しており、FTAや物流環境を活用することで、進出企業は効率的に市場に参入することが可能です。市場の特性を理解し、戦略的に進出することが成功の鍵と言えるでしょう。

韓国の経済構造

韓国の経済は大企業と中小企業が複雑に絡み合う構造を持っています。特にサムスン、LG、現代自動車などの財閥系大企業は国内経済の中心であり、海外市場でも大きな影響力を持っています。これらの大企業は製造から販売までのバリューチェーンを自社で統括することが多く、技術開発やブランド戦略に強みがあります。

製造業だけでなくITやサービス業も発展しており、経済全体がバランスよく構築されています。特にICT(情報通信技術)分野の成長は著しく、ソフトウェア開発やAI技術、人材育成の面でも世界的に高い水準です。

スタートアップの支援体制も整っており、ベンチャー企業が新しい市場や技術に挑戦しやすい環境があります。このため、日本企業が進出する際には、現地の技術力や人材を活用することで事業拡大のスピードを上げやすくなります。

さらに韓国経済は輸出依存型であり、外部環境や貿易政策の影響を受けやすい一面があります。経済成長の大部分は海外需要に支えられているため、海外市場の変動に対応できる柔軟な戦略が必要です。

消費者市場では都市部の購買力が高く、トレンドやブランド意識が強いため、高付加価値商品やサービスが受け入れられやすい傾向があります。韓国経済の構造を理解することは、進出戦略やリスク管理を考える上で不可欠です。

韓国進出の7つのメリット

韓国は地理的にも文化的にも日本に近く、日本企業にとって魅力的な進出先となっています。近年、韓国市場では日本企業の進出が加速しており、その背景にはさまざまなメリットがあります。

韓国進出における7つのメリットとして、

1. 日本の文化が馴染みやすい
2. インバウンド事業が見込める
3. 整ったインフラ環境
4. 高いIT技術力と人材
5. 日本と地理的に近い
6.トレンドに敏感な若年層
7. 日本企業との協業を求める現地企業が多い

が挙げられます。韓国が持つ多くのメリットを知ることは、進出を目指す企業にとって非常に重要です。これらの魅力を理解することで、成功に向けた第一歩を踏み出すことができるでしょう。

1. 日本の文化が馴染みやすい

日本の伝統的文化である着物や茶道、アニメや漫画、J-popなどは、韓国でも非常に人気があります。特に、韓国の若者たちは日本のポップカルチャーに強く影響を受けており、そのため日本に対する親近感が高まっています。

首都ソウルには、幼稚園児から中学生まで通える「ソウル日本人学校」があり、日本と同じ義務教育制度が実施されています。これにより、教育の面でも日本の文化が身近に感じられます。

また、古来より中国から漢字語が伝わった影響で、日本語と韓国語には同じような発音や似た言葉が多く存在します。このため、日本語が浸透していることも、文化的な交流を促進しています。実際、韓国の居酒屋では日本風のメニューや看板が目立つようになり、食文化においても日本の影響を感じることができます。

このような文化的背景は、日系企業がスムーズに進出し、現地の消費者と良好な関係を築く助けとなります。

2. インバウンド事業が見込める

韓国は観光地として人気があり、韓国観光公社が発表した「2023年12月 韓国観光統計」によると、2023年に訪れたインバウンドの総数は約1,100万人に達し、コロナ禍前の2019年の63%水準まで回復しました。

特に日本からの観光客は、韓国までわずか2時間でアクセスできるため、インバウンド総数の中で232万人を占めており、最も多い国となっています。これは、LCC(格安航空会社)の増加により、手頃な価格で韓国を訪れることが可能になったことや、オフシーズンとハイシーズンの明確な区別がないため、比較的安定した価格で訪れることができる点が大きな要因です。

また、韓国には多様な観光資源があり、ショッピングやグルメ、文化体験など、旅行者にとって魅力的なアクティビティが豊富です。これにより、気軽に行ける海外旅行先としての需要が高まっています。

したがって、インバウンド向けの事業展開や対策が取りやすい環境が整っていることがわかります。観光業界においては、訪日外国人のニーズに応じた商品やサービスを提供することで、ビジネスチャンスが広がるでしょう。

3. 整ったインフラ環境

韓国は、世界的に優れたモバイル通信環境を整備しており、便利なビジネス展開や日常生活を支えています。OECD(経済協力開発機構)のデータによれば、韓国のモバイルインターネットの接続可能世帯の割合は99.98%に達しており、ほぼ全ての世帯がインターネットに接続可能です。

この高い普及率は、韓国の先進的な通信インフラを示しており、企業にとっても生活者にとっても、スムーズな通信が可能な環境を提供しています。

さらに、韓国では5Gネットワークの普及が進んでおり、高速かつ安定したデータ通信が可能です。このため、企業は最新のテクノロジーを活用したビジネス戦略を展開しやすく、特にEコマースやデジタルマーケティングの分野で競争力を高めることができます。また、整った交通インフラ(地下鉄やバス網など)もビジネス活動を円滑に進めるための重要な要素です。

このように、韓国の整ったインフラ環境は、企業の成長を促進する重要な基盤となっています。

4. 高いIT技術力と人材

韓国は世界でもトップクラスのITインフラを持つ国で、光ファイバー網の普及率やモバイル端末の利用率は非常に高く、デジタルマーケティングやEC事業が展開しやすい環境です。特に都市部ではスマートフォンやタブレットの利用が生活の一部となっており、オンライン広告やSNSを活用した販売戦略が短期間で成果を上げやすい特徴があります。

韓国には優秀なIT人材が豊富に存在し、ソフトウェア開発、アプリ開発、AI・データ分析などの分野で高度なスキルを持つ人材を確保しやすく、現地での事業展開やシステム開発がスムーズに行えます。企業が新しい事業モデルやデジタル施策を導入する際も、現地の技術力を活かすことで効率的に成果を出しやすいでしょう。

IT技術の高さは単にシステム開発に留まらず、物流や決済、マーケティングの効率化にもつながります。オンライン販売の決済手段や配送システムが整備されているため、顧客体験を向上させながら運営コストを抑えることが可能です。つまり、韓国のIT技術力と人材の充実は、現地進出企業にとって大きなメリットとなります。

5. 日本と地理的に近い

日本から韓国までは、最短で約2時間で到着することができます。この地理的な近さは、企業の海外進出において大きなメリットとなります。

特に、進出前の市場調査は極めて重要です。インターネットだけでは収集できない情報や、現地の実情を把握するためには、直接現地に足を運ぶ必要がある場合も多いです。この点で、日本と韓国の近さがアドバンテージとなります。

地理的に近いことで、複数回現地を訪問し、国民の生の意見を直接聞いたり、現地のサポーターと提携を組むことが容易になります。こうした直接的なコミュニケーションは、より正確な市場理解を促進し、成功に向けた重要なステップとなるでしょう。

6. トレンドに敏感な若年層

韓国の若年層は流行に対する感度が非常に高く、SNSやYouTube、TikTokなどのプラットフォームで最新の情報を日々チェックしています。そのため、新商品やブランドが話題になると瞬く間に認知が広がる傾向があります。企業が新商品を投入する際には、このトレンド力を活用することで短期間でブランドの知名度や売上を上げることが可能です。

消費者の購買行動はオンラインとオフラインが密接に連動しており、口コミやレビューが売上に直結しやすい環境です。そのため、SNSマーケティングやインフルエンサープロモーションが効果的に働きます。

若年層はトレンドに敏感なだけでなく、デザインや機能性、ブランドストーリーに対する評価も厳しいため、企業は商品やサービスのコンセプトを現地に合わせて調整する必要があります。

韓国の若年層市場はスピーディーに認知を拡大できる一方で、消費者の期待に応える戦略が求められるため、マーケティングの精度が重要となります。企業にとって、短期的な効果だけでなく、長期的なブランド構築にもつながる大きなメリットが存在しているのです。

7. 日本企業との協業を求める現地企業が多い

日本と韓国のビジネスシーンでは、両国の良好な関係が続いています。外交レベルでは日韓関係が時に複雑になることもありますが、韓国企業は日本企業に対して好印象を持っており、協業を望む姿勢が強いのが現状です。

韓国市場で活動する日本企業は、約70%が黒字を計上していることからも、そのビジネス展開のしやすさが示されています。これは、韓国市場における日本企業の信頼性と適応力を裏付けるデータです。

協業により市場の理解が深まり、現地のニーズや意見を直接知ることができるため、韓国進出に伴うさまざまな課題を解決しやすくなります。これにより、韓国と日本の協力関係は互いに良い影響をもたらすものとなっています。

韓国進出の4つのデメリットと注意点

韓国に進出する際は、韓国の国民性やビジネスマナーを理解することが重要です。日本と韓国は地理的に近く、互いの文化を理解し合おうとする姿勢があります。

しかし、ビジネスを円滑にするためには、日常生活だけでなく、ビジネスシーンでのマナーやポイントをしっかり押さえておくことが大切です。

韓国市場は魅力的ですが、進出には注意すべきリスクも存在しており、主な注意点の例は文化や商習慣の違い、競争の激化、政治や法規制の影響などです。特に日本企業にとっては、消費者の価値観や市場のスピード感が異なるため、単純に日本の戦略を持ち込むだけでは成功が難しい場合があります。

本章では、特に注意すべき4つのポイントについて詳しく解説します。

1. 日本との文化の違い

韓国と日本は地理的に近いものの、文化や商習慣には大きな違いがあります。例えば、契約交渉やビジネスコミュニケーションでは人間関係の構築が重視され、初回の商談で契約が成立することは少ないです。

消費者の価値観や商品に対する期待も日本とは異なる場合が多く、マーケティング戦略をそのまま流用すると成果が出にくいことがあります。

礼儀やコミュニケーションの細かい習慣も日本とは異なります。例えば、交渉や報告のタイミング、意思決定プロセスのスピード感などが違い、現地文化を理解せずに進出するとトラブルの原因になる可能性があるのです。

そのため、現地文化に精通した人材やパートナーと連携し、文化差を踏まえた戦略を立てることが不可欠です。文化面の違いを理解することは、信頼関係の構築や長期的な事業成功に直結します。

2. 競争や流行の激化

韓国市場は消費者のトレンド感度が非常に高く、ファッション、化粧品、食品などの分野では新商品が次々と投入されます。そのため、商品の寿命が短く、競争も激しいのが特徴です。企業は市場動向を常にチェックし、柔軟に商品やサービスを改良する必要があるといえるでしょう。

SNSや口コミの影響が大きく、評判が売上に直結しやすいため、消費者の反応に素早く対応する体制が求められます。競合他社が積極的にプロモーションを行う中で、自社の商品やブランドを目立たせるには、マーケティング戦略や広告手法を現地市場に合わせて工夫することが不可欠です。

競争の激しさとトレンドの変化の速さは、リスクであると同時に、戦略次第で大きなチャンスにもなります。

3. 政治情勢や法規制の影響

韓国では政治や法規制の影響を受けやすい側面があります。輸入規制や税制の変更、特定業種に対する規制強化などが突然発生することがあり、事業運営に影響を及ぼす場合もあるでしょう。

日韓関係の変化によって日本企業への評価や消費者心理が変動することもあります。進出企業は、こうしたリスクに備えて常に最新情報を確認し、法務やリスク管理体制を整える必要があると言えるでしょう。

現地の法律や規制を理解し、適切に対応できる仕組みを作ることが、安定した事業運営の鍵となります。特に新規事業や輸出入事業を行う場合は、リスクの影響範囲を事前に評価し、戦略に反映させることが重要です。

4.韓国のデジタル化やWeb環境への理解

韓国はアジアの中でも特にスマートフォンの普及率とWi-Fi環境が整っている国です。公共の場で快適にインターネットを利用できる設備が整っており、世界でも注目されています

特に、韓国の独自のWebサービスの一つとして「政府24」があります。このサービスでは、住民登録証明書や土地台帳、新型コロナウイルスのワクチン接種証明書など、さまざまな証明書をオンラインで取得できます。また、転出や転入、妊娠・出産など、ライフステージに応じた手続きを一元管理できるワンストップサービスも提供されています。

これらのデジタルサービスは、OECD加盟国の中でも「デジタル政府指数」や「開かれた政府」において高く評価されています。企業にとっても、こうしたWebサービスを活用することで、顧客との接点を増やし、ビジネスの効率を向上させる大きなチャンスとなります。

日本企業の韓国進出の現状

近年、日本企業の韓国進出は幅広い業種で活発に行われています。特に食品、化粧品、電子機器、サービス業などの分野で多くの企業が現地に拠点を構え、ブランド認知度の向上や売上拡大を目指しています。

韓国市場は規模は日本より小さいものの、前述してきた通り都市部の消費者購買力が高く、流行やブランドへの感度も高いため、高付加価値商品やサービスが受け入れられやすい特徴があります。現状の韓国市場における日本企業の立ち位置を理解すれば、これから進出を考えている企業としても、戦略的な進出計画を立てることができるでしょう。

韓国に進出している日本企業数

韓国に進出している日本企業は数千社規模と推定されており、特に食品や化粧品、電子部品などの分野で多く見られます。現地法人を設立して直接販売を行う企業もあれば、代理店やパートナー企業を通じて間接的に事業を展開する企業もあります。

進出形態は企業の規模や目的に応じて異なりますが、共通して言えるのは、現地市場の特性に合わせた戦略を練っている点です。実際、国内にある外資系企業全体が1万5千社ある中で、3千社は日本の企業というデータもあります。

韓国進出が注目されている市場

韓国への進出が注目されている市場は、特に「アプリ」と「美容・化粧品」の2つです。これらの市場は若年層を中心に急成長しており、高い市場価値を持っています

成功を収めるためには、適切な市場理解とターゲット年齢層の調査が不可欠です。市場価値が期待できるため、効果的な戦略を立てることが重要です。

・アプリ市場
韓国は優れたインフラ整備が進んでおり、米国の民間調査会社ピュー研究所の報告によると、スマートフォンの普及率は95%を超えています。このため、特に若年層のアプリ利用が非常に活発です。人口がそれほど多くないにもかかわらず、韓国のアプリ市場は大規模であるのが特徴です。

市場の特性やユーザーの傾向、トレンドを理解することで、効果的なアプリ展開が可能となります。具体的には、韓国のユーザーは新しい技術やデザインに対して非常に敏感で、特にSNSやゲームアプリに人気があります。

これらの洞察をもとに、ニーズに合ったアプリを開発することが成功の鍵となるでしょう。

・美容・化粧品市場
韓国の美容・化粧品市場は、第三次韓流ブーム(2016年~2017年)を背景に急成長しました。特に、韓国は日本の化粧品の主要な輸入先となり、フランスを上回る存在となっています。

2020年のコロナ禍で一時的に市場は落ち込みましたが、現在は回復傾向にあり、オンライン購入が増加しています。全体の購入の大きな割合がECサイト経由で行われており、特に「Qoo10」などのプラットフォームは若年層に支持されています。

さらに、スキンケアやメイクアップなどの製品が細分化され、消費者の多様なニーズに応える商品が増加しています。これにより、韓国コスメの購入率と売上はともに上昇しています。

市場のデジタル化が進む中、企業は現地のトレンドを把握し、効果的なマーケティング戦略を展開することが重要です。

韓国進出で成功を収めた日本企業の事例7選

韓国市場への進出は、多くの日系企業にとって魅力的な選択肢となっています。成功を収めた企業の事例を通じて、韓国の消費者ニーズに適応し、効果的な戦略を展開することがどれほど重要かを理解することができます。

ここでは、、韓国市場で特に成功を収めた日本企業の成功事例を7つ取り上げ、戦略や韓国市場での展開方法を紹介します。

日本の化粧品ブランド「SK-Ⅱ」

日本の高級化粧品ブランド「SK-Ⅱ」は、約20年前に韓国市場に進出し成功を収めました。主な成功要因は、「ブランドの高級化」と「親しみやすい広告」です。百貨店や免税店での販売に特化し、一般店舗での販売を控えることで、消費者の関心を引きました。

2011年の東日本大震災で、SK-Ⅱを含む日本の化粧品ブランドは売上が低下しましたが、この機会に現地支店を開設し、消費者との距離を縮めることに努めました。多くの美容ブランドが参入する中、SK-Ⅱは高級ブランドとしての地位を確立し、韓国人消費者に広く受け入れられることに成功しました。

連日大行列の焼き鳥チェーン「鳥貴族」

日本の焼き鳥チェーン「鳥貴族」は、2024年9月28日に韓国に進出しました。初出店は弘大地区で、価格設定は日本とほぼ同じです。鳥貴族ホールディングスは5月に100%出資の韓国法人「鳥貴族コリア」を設立し、進出への足掛かりとしていました。

韓国では高級店とリーズナブルな店の二極化が進んでおり、他の日本企業が韓国で苦戦する中、鳥貴族はリーズナブル市場における焼き鳥というジャンルが空いていることを追い風にして成功を収めています。

実際、出店して間もない期間で長蛇の列ができるほどの人気を確立しており、270分以上の待ち時間を要するほどになっています。「日本旅行で食べた鳥貴族の味をまた味わいたい」といった声も挙がっていることから、大きな成功事例と言えます。

ゲーム業界で世界的に知られる日本企業「任天堂」

世界的ゲームメーカーとして知られている任天堂は、韓国市場でもゲームソフトや家庭用ゲーム機を販売し大ヒットを記録しました。スーパーマリオやポケモンなど、任天堂が生み出したキャラクターは、韓国でも不動の人気を誇ります。

任天堂は2006年に、「韓国任天堂株式会社」を設立したことで韓国に本格進出しました。2007年にリリースした「Nintendo DS Lite」が大ヒットして以降は好調な売り上げを維持し、中でも「Nintendo Switch」は韓国で最も普及したゲーム機として知られています。

物流サービスを提供する日本企業「ヤマト運輸」

物流サービスを提供するヤマト運輸は、国際市場でも高いシェアを持つ企業として知られています。ヤマト運輸は韓国でも高いシェアを獲得し、韓国でオンラインショッピングが普及していくと共に、急速に需要を拡大していったのです。

ヤマト運輸は2024年1月から、越境EC事業者が利用できる日本向け海上輸送サービスを開始しました。輸入通関や保税手続きのサポートも行っていて、フェリーを使った海上輸送に力を入れることで、低コストで安心した輸送を実現しています。

飲料メーカーとして知られる日本企業「アサヒグループホールディングス」

飲料品メーカーとして知られるアサヒグループホールディングスは、ビールや清涼飲料水を販売して消費者のニーズに答えています。韓国では合弁会社であるロッテ七星飲料とビール事業を展開しており、ブランド力を伸ばしていきました。

近年ではノンアルコールビールや低アルコール飲料の販売にも力を入れていて、低アルコール飲料を提供する「#SUMADORI ME」を期間限定で韓国に出店しています。このように多様なニーズに答えられるように、常に事業拡大を目指しています。

日本で最初にオフィス向けのコーヒーサービス事業を始めた「株式会社ダイオーズ」

1969年に創業したダイオーズは、オフィスサービスを手がけている歴史のある企業です。国内屈指のトータルオフィスサービス企業として成長を遂げた同社は、米国進出に成功した後、2000年代から本格的なアジア進出を開始しました。

アジア各国で成功を収めた後、2005年にダイオーズ韓国を設立します。現地会社を設立するタイミングで日本貿易振興機構のジェトロの「韓国投資・ビジネスミッション」に参加したことで韓国市場でも成功を収めました。

オンラインゲームの運営サービスを展開する「サイバーステップ株式会社」

サイバーステップは、国内外でオンラインゲームの運営及びライセンス事業を展開している企業です。インタラクティブ性とリアルタイム性にこだわったゲームで知られていて、ゲームユーザーの間でも高い評価を得ています。

韓国に本格進出したのは2001年で、3D格闘ゲーム「GetAmped(ゲットアンプド)」をリリースし大ヒットを記録しました。韓国での成功をきっかけに、その後はアジア圏を中心にライセンスを拡大しています。

ユニクロ(UNIQLO)

ユニクロは、韓国市場への進出において成功を収めた日本のファストファッションブランドの一例です。現地の消費者に合わせたトレンドを把握し、手頃な価格と高品質な製品を提供しています。

韓国市場における消費者の嗜好や文化を深く理解し、それに基づいた商品展開を行いました。例えば、韓国の四季に合わせた衣料品のラインナップや、韓国限定デザインの商品を投入することで、現地の消費者の関心を引きました。

韓国ではSNSが非常に活発であり、ユニクロはInstagramやFacebookなどのプラットフォームを積極的に活用しました。特に、韓国のインフルエンサーとのコラボレーションや、SNS上でのキャンペーンを通じて、ブランドの認知度を高めました。

これらに加え、ソウルを中心に主要都市に店舗を展開し、実店舗での購買体験を提供するとともに、オンラインショップの利便性も向上させました。消費者はがライフスタイルに合わせて、店舗またはオンラインでの購入を選択できるようになったというわけです。

バルミューダ(Balmuda)

バルミューダは、デザイン性と機能性を兼ね備えた家電製品で知られる日本のブランドです。韓国市場においても、その独自性が評価され、成功を収めています。

韓国の消費者が求める高品質な製品を提供している点が特徴的で、特にデザイン性と機能性を兼ね備えた製品は、韓国の消費者のライフスタイルにマッチし、人気を集めました。韓国市場に特化したマーケティング戦略も展開し、韓国の有名な家電量販店との提携や、韓国のインフルエンサーとのコラボレーションを通じて、ブランドの認知度を高めたのです。

バルミューダの成功は、韓国市場における消費者のニーズを的確に捉えた製品展開と、効果的なマーケティング戦略によるものです。現地パートナーとの強固な連携も、ブランドの認知度向上と販売拡大に寄与したといえるでしょう。

韓国進出の主な3つの形態

韓国への進出を検討する日本企業にとって、適切な形態を選ぶことは成功の鍵となります。韓国市場には現地法人、支店、連絡事務所(駐在員事務所)の3つの主な進出形態があり、それぞれに特性やメリットがあります。

現地法人

韓国への進出において、現地法人の設立は非常に重要な選択肢です。以前は外資系企業に対する制限が多く、支店形態でしか進出できないという問題がありました。しかし、外国人投資促進法が制定されたことで、ほとんどの業種で現地法人の設立手続きが簡略化され、進出が容易になりました。

この法整備により、企業はより迅速に市場に参入し、競争力を高めることが可能になりました。

また、現地法人を設立することで、現地での新規事業を推進しやすく、スタッフの意識向上や現地市場への適応力を高めるというメリットがあります。さらに、法人税率が投資金額や地域によって優遇されることがあり、長期的なコスト削減が期待できます。

実際、日本から約2時間でアクセスできる韓国は、近接性も魅力的であり、多くの日系企業が現地法人または支店を設立してビジネスを展開しています。

支店

支店も現地法人と同じく、韓国国内で営業活動を行うことができますが、支店は現地法人とは異なり、本社と同一の事業体として扱われ、外国法人の国内支社に分類されます。登録上は営業所として位置づけられています。

支店の営業範囲は、現地法人とほぼ同じであり、韓国市場での製品やサービスの提供が可能です。

支店設立のメリットとして、現地法人と同様に税金面での恩恵を受けられることが挙げられます。例えば、特定の条件を満たす場合には法人税の優遇措置を受けることができる場合もあります。また、現地法人に比べて資本金の用意が少なくて済むため、初期投資を抑えたい企業にとって嬉しいポイントです。

これらの理由から、多くの企業が韓国市場への進出手段として支店を選択しています。

連絡事務所(駐在員事務所)

連絡事務所、または駐在員事務所とは、将来的な海外進出を見据えた事前調査を行うための拠点です。一般的には、日本国内の社員が現地に派遣され、マーケティングや市場調査を通じて、韓国を進出先として選ぶ際の適否を評価します。このような拠点は、他の海外拠点と比べて設立や撤退の手続きが簡素であるため、コストを抑えやすいというメリットがあります。

ただし、駐在員事務所では営業活動を行ったり、銀行口座を開設したりすることはできません。主な活動は市場調査や情報収集に限られているため、進出の戦略を練るための重要なステップとして位置づけられています。

韓国進出におけるフィジビリティスタディとは?調査項目も解説

フィジビリティスタディとは実現可能性調査のことで、新規事業やプロジェクトを実現できるかどうかを事前調査する意味です。プロジェクトや海外進出の構想が現実的に可能かどうかの調査や分析を行い、成功の見込みやリスクを決めます。

検討する内容は多岐にわたり、業界や競合だけでなくその国の政治経済や自然環境、市場調査や財務などあらゆる調査が必要です。調査する項目が多いことから、全ての調査が終了するまでには数年の月日がかかる場合があります。

他にも韓国の政治経済や社会情勢、貿易や投資に関する制度、パートナー企業の存在やインフラなど、あらゆる項目をリサーチしなければなりません。

フィジビリティスタディの調査項目

フィジビリティスタディにおける調査項目は、大きく分けて以下の3つです

進出国の基本的な情報
進出国の制度や規制
進出国の現地調査

進出国の基本的な情報とは、韓国の基本情報や政治経済、インフラなどの整備状況のことです。これらは主に国内で行う予備調査の段階にあたり、プレフィジビリティスタディとも言います

次に行うのは、進出国での制度や規制の調査です。これらの調査内容は、貿易や投資など金融に関する制度の調査や、法人税など海外企業に対する税制制度や労働に関する制度など、多岐にわたります。

これらの調査が終了したら、最後に進出国の現地調査を行います。日系企業の進出状況や現地パートナーの存在、労働者や人件費、環境規制など現地での細かい規制や情報を調査して、実効性があるかどうかを確かめましょう。

韓国市場に特化したフィジビリティスタディ

韓国市場では、都市圏と地方で消費動向が大きく異なり、特にソウル・釜山・大邱など主要都市は消費力が高く、トレンドへの反応も速い傾向があります。フィジビリティスタディでは、まず都市別・世代別・性別の購買動向を細かく分析することが重要です。

SNSやモバイルアプリを通じた口コミが購買決定に大きく影響する国でもあるため、Instagram、YouTube、Naverブログ、KakaoTalkなどのデジタル分析も欠かせません。また、現地で人気のブランドや商品レビュー、季節ごとの消費傾向をデータとして収集することで、参入タイミングやプロモーション戦略を精緻化できます。

競合企業の価格帯、販売チャネル、マーケティング戦略も詳細に把握し、差別化ポイントを明確化することが成功の第一歩です。

法規制・ビジネス環境に関しては、会社設立や税務、労務、輸入規制、消費者保護に関する法規制が細かく定められている部分があります。法律事務所やコンサルタントを活用して、会社設立手続き、知的財産権保護、労務管理の制度まで網羅的に確認することが推奨されます。

そのほか、財務分析では現地通貨(ウォン)の為替リスク、消費税(VAT)制度、地方税・補助金制度、インセンティブ制度も考慮する必要があります。都市圏の賃料や人件費は日本に比べて高めに設定されているため、初期投資額や固定費の正確な試算が不可欠です。

韓国の消費者はECやモバイル決済を好むため、オンライン販売にかかる手数料や物流コストも織り込んだシナリオ分析が必要です。これらを踏まえて複数の売上シナリオを検討することで、収益性や投資回収期間を現実的に見積もることができるでしょう。

韓国進出の市場調査ならAXIA Marketing

韓国進出においては、適切な市場調査と国民性、ビジネスマナーの理解が不可欠です。事前に市場を理解し、同業他社の成功事例を調査することで、韓国進出をよりスムーズに進めることができます。

成功の鍵は、デジタルマーケティング戦略や韓国独自のWebサイトの活用にあります。これにより、ターゲット層に効果的にアプローチでき、競争力を高めることが可能となるでしょう。

AXIA Marketingでは、韓国進出における市場調査を支援しています。

市場調査にあてる予算や望ましい調査内容を元に、最適な市場調査のサポートをいたします。

韓国の市場調査についての疑問点があれば、ぜひ弊社へお問い合わせください。
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参考文献
大韓民国(Republic of Korea)基礎データ-外務省
海外進出日系企業拠点数調査-外務省
韓国への進出方法に対するご案内(2024年2月)-JETRO
海外進出におすすめの韓国!84.9%の日本企業が黒字経営の理由-Majisuke
韓国企業の海外進出に学ぶ、「マーケットイン」の考え方-TENKAI-
現地法人・海外支店・駐在員事務所の違いとは?海外進出時のメリット・デメリット-circlase-
日本企業の韓国進出が重要視される理由とは韓国特有のビジネス事情成功事例とともにご紹介します-LIFE PAPER-
韓国の風習・文化が丸わかり!生活・お金・食事・仕事に関する価値観-Trip.com-
【わかりやすく解説】韓国のアプリ市場の特徴は?絶対押さえたい3つのポイント-AnyManager-
好調な韓国コスメ市場 ユーザーはどこまで拡がった?-知るぎゃらりー-

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